薬屋アトリエハーバル

たまに金無郎

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第3章

第12話 迫る百合の花、守れ小さな蕾

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 セドリックは、朝からひどい頭痛に襲われていた。
 ――たぶんきっと、いや、絶対。昨日の薬のせいだ。セドリックは確信していた。
(あいつ……どんだけ盛ったんだよ)
 お薬を使用する際は、用法容量をきちんと守りましょう。
 セドリックは改めてそう思った。
「こんにちは。ふふっ」
 ひどい頭痛にさらに追い打ちをかけるように、ミレイユは懲りずに店へやってきた。
「セドリックのおかげで、完成したわよ~。多分……これ、マダムたちに大人気になると思うの! またよろしくね!」
(使用許諾をちゃんと取っていただきたいものだ……)
 昨日の記憶を――思い出すのはやめておこう。セドリックはそう心に決めた。
「絶対無理。俺じゃなくてもいいだろ」
「そんなこと言わずにぃ~、ねっ? お礼に、完成した化粧水あげるわよ!」
「いらねーよ。そもそも化粧水なんて使ったことないし……」
「んー……じゃあ、クロエちゃんにあげようかなっ」
 セドリックの背筋が凍る。
「は? その原料って……」
 ミレイユはにっこりと微笑む。
「そうよ」
「やめろ! そんなものあげるな! クロエには必要ないッ!」
 ちょうどそのとき、セドリックが声を張り上げるのと同時に、クロエが庭から店へ入ってきた。
 クロエは、ミレイユがまた現れたことに動揺したが、それ以上に、先ほど聞こえてきたセドリックの言葉に不安を覚えた。
「なに? 私に必要ないって? どういうこと?」
 ミレイユが来てからというもの、クロエはひどい疎外感を感じていた。だからこそ、必要以上にセドリックへ詰め寄ってしまう。
「いやぁ……なんでもない。気にするな」
「……」
 クロエは唇を噛む。
「ねぇ、セドリック。それじゃ、クロエちゃんが可哀そうじゃない。ふふっ、ちゃんと教えてあげればいいのにぃ~。ねぇ? クロエちゃんっ」
(やめろッ! それ以上、変なことをクロエに言うんじゃないッ!!)
 セドリックは目線でミレイユに訴えかける。
 だが、鋭い眼光を向けるセドリックを、ミレイユは楽しげに見つめ返すだけだった。
 そしてクロエの手を取り、庭へと続く扉のほうへ一歩近づいた――。

「クロエちゃん! 私にいろいろ聞きたいことあるんじゃない? なぁ~んにも教えてくれないセドリックなんてほっといて、私とデートしましょうよっ」
 急に手を引っ張られ、クロエは驚いた。けれど、ミレイユに聞きたいことがあるのは本当だった。
「……で、でも……お仕事中だし……」
 ミレイユの魔の手がクロエに迫る危機を察し、セドリックも慌てて止めに入る。
「そうだ! クロエは暇なお前と違って、今は仕事中だッ!」
「え~、でも、もうお昼の時間よぉ。ここの職場は、見習いにお昼休憩も与えてあげないのぉ? ひど~い! 鬼畜ぅ~」
(くっそぉーッ! ミレイユめ! 計りやがったな……)
 セドリックは、ミレイユに言葉で勝てたためしがなかった。
「……じゃあ、お昼休憩行ってきます……」
 セドリックが心配しているのは、何となくわかっていた。でも、クロエにはどうしても確かめたいことがあった。気に食わないが、ミレイユの提案に乗らざるを得なかった。
 ミレイユに手を引かれ、店を出て行くクロエ。セドリックは、それ以上引き止める術を持ち合わせていなかった。
(どうする……これ。あいつは、いったい何を企んでるんだ……クロエがミレイユに毒されてしまう……)
 セドリックは頭を抱える。
 ただ、最近のクロエは少し様子が変だった。
 以前よりも暗い表情を見せることが多かったのが気になっていた。だから、少しでも気晴らしになればいい。セドリックの心の中には、そんな思いも、わずかにあったのだった。

 ミレイユは、町に入るとすぐにあるケーキ屋へ向かいながら、クロエの手を引いて歩いた。
 複雑な思いを抱えるクロエは、自信満々に堂々と振る舞うミレイユを見て、(こんなの勝てないよ……)と切なさに顔を歪めるしかなかった。
「それでねぇ~、セドリックが……」
 道中も、店に着いてからも、ミレイユはずっとセドリックの昔話を語り続けた。
 最初は自慢されているようで少し腹立たしかったが、次第にセドリックの過去を知れる喜びのほうが勝っていく。
「ふふっ。クロエちゃん、可愛い! ムッて怒った顔も可愛いけど笑ってるほうがもっと可愛いわよぉ」
 そう言いながら、ミレイユはクロエの頬を撫でる。
 クロエは思わず頬を赤らめた。
 そんな様子を楽しむように、ミレイユはニコニコと笑いながら続ける。
「セドリックは鈍感だし、性についても子供みたいだし、クロエちゃんからガッといかないとだめだと思うのよねぇ~」
 突然のアドバイスに、クロエは目を見開いた。
(この人は……敵なの……味方なの? おじさんのことが好きなんじゃないの?)
 頭が混乱し、クロエは思考の整理が追いつかない。そんなクロエの戸惑いをよそに、ミレイユはなおも話を続ける。
「……だからね、私がクロエちゃんにいろいろ教えてあげる! セドリックを虜にするテクニック」
 思考をまとめようと、話半分に聞いていたクロエだったが、ミレイユの最後の言葉には反応せずにはいられなかった。
「……おじさんを、虜にするテクニック……?」
 ミレイユは顔の前で両手を合わせ、妖しげな微笑みを浮かべながらクロエを見つめる。
「そう! 虜にするテクニック……ふふっ」
 魅力的な響きに、クロエは思わず吞み込まれそうになる。
 だが、ぎゅっと拳を握り、理性を取り戻した。
(ううん! この人が味方だと決まったわけじゃない……油断してはいけないわっ!)
「お断りします」
「えぇー? なんでよぉ~? クロエちゃん! あなた、セドリックと居すぎて似てきちゃってるわよぉ~。いやよぉ~、可愛くないぃ」
 クロエはきりりとした表情で、まっすぐ前を見据えていた。
 帰りの道中も、ミレイユはしつこくクロエに迫り続ける。だが、クロエは動じず、セドリックのように「いえ、結構です」と突っぱねた。
 ミレイユもしつこかったが、それを断固として拒否するクロエの頑固さ。
 セドリックとミレイユの言い合いを思い出しながら、クロエは心の中でつぶやく。
(おじさんの気持ちが、少しわかる気がする……)

 店についてからも、ミレイユはしつこくクロエにまとわりつく。セドリックに助けを求めようと店内を見回したが、姿がない。
 机の上には置き手紙があり、「急な配達が入った。すぐ戻る」とセドリックの文字で書かれていた。
 その手紙を一緒に見たミレイユは、妖しく微笑む。
「ねぇ、クロエちゃん……昨日、見てたでしょ?」
 ミレイユの問いかけに、クロエの心臓がドキッと跳ねる。
 ――やはり、目が合ったような気がしたのは気のせいではなかったらしい。
 黙ってうつむくクロエに、ミレイユはさらに問いかける。
「知りたくない? 昨日、私とセドリックが何をしていたか……」
 クロエは息をのむ。
 ゆっくりとうつむいていた視線を上げ、まっすぐにミレイユを見つめた。
 ――それが、一番聞きたかったことだったから。
「ふふっ。……特別に教えてあげるっ」
 ミレイユはスカートのポケットから小瓶を取り出し、クロエに見せる。中には、紫色をしたさらりとした液体が入っていた。
 ゆっくりと小瓶のふたを開けるミレイユ。
「昨日のセドリックが、どういう状態だったのかわかるぅ?」
 ミレイユの問いかけに、クロエは静かに首を横に振った。
 そして、小瓶のふたに付いたスポイトで液体を吸い上げながら、ミレイユは続ける。
「セドリックがなんで私の言いなりだったのか……知りたくなぁい?」
 誘うような笑みを浮かべながら、クロエの口元へスポイトを運ぶ。
 ミレイユは、スポイトを持つ手の薬指で、そっとクロエの顎を押し下げ、口を開けさせた。
 甘ったるいミレイユの声が、クロエの思考を鈍らせる。
 されるがままに開いたクロエの口に――ポタッと、小さな雫がひとつ落ちた。
 
 舌に落ちた雫は、一瞬でクロエの中に取り込まれる。
「これはねぇ、男性には三滴で体の自由を奪い、快楽を与えてくれるの……そして、女性には二滴でオーガズムを迎える準備を整えてくれるの」
 クロエの顔がとろけそうになる。
「……そして、クロエちゃんは体が小さいから、小さな一滴にしてみたんだけどぉ……どうなるのか、楽しみねぇ」
 クロエの呼吸が次第に荒くなる。
 頬を赤く染め、いまにもとろけそうな表情でミレイユを見つめる。
 もう、何も考えることができなかった。
 クロエの手が少しずつ上がっていく。――むず痒くなっている場所に向かって。そんなクロエを、ミレイユは楽しそうに眺める。
「あら……クロエちゃんは、そっちがお好みなのねぇ~。うふふっ」
 クロエは、知らず知らずのうちに自分の胸元の服をギュッギュと握り、引っ張っていた。むず痒さに耐えきれず、力任せに服をこすりつけるクロエ。
 その手を、ミレイユはそっと下ろす。
「大丈夫……私に任せてねっ」

 ミレイユは、机の上のものをぐっと押しやり、そこにクロエを座らせた。そして、そのままそっと寝かせる。ゆっくりと服のボタンを外し、下着の中に手を滑り込ませた。
 ミレイユの手はすべすべで、少しひんやりしていた。おなかに触れた瞬間、クロエの体はびくりと跳ねる。
 可愛らしい反応を見せるクロエに、ミレイユは満足げに微笑んだ。そのまま、さらに奥へと手を潜り込ませる。
 ぷにっとした膨らみへとたどり着いたミレイユの手は、そのままクロエを包み込んだ。ミレイユの手から少しこぼれるクロエの膨らみ。
「クロエちゃん意外とあるのねぇ~。可愛いっ」
 細くしなやかな人差し指が滑り、クロエの先端をかすめる。
「ふぅ……ぅっ」
 ミレイユは、クロエの足の間に押し入り、さらに距離を縮める。指先がぷっくりとした先端を往復するたび、クロエの体は熱くなっていく。
「あぅ……ふぁっ」
 ――ぷにっ、くにっ……ギュムゥーッ。
「へぁぃっ……ぁあっ……んっ……」 
 クロエの表情がとろけていくたび、ミレイユも恍惚とした笑みを浮かべる。
「あぁっ、もうっ我慢できなぁいっ。クロエちゃんが可愛すぎるのがいけないのよぉ~」
 ミレイユは言葉と同時に、クロエの下着を一気に鎖骨までまくり上げた。
 ――ぽゆんっ。
 形を残しながらも、両側に流れるクロエの柔らかな膨らみが、わずかに揺れている。
「やだぁ~! すっごく綺麗! 大きさも形もバランスが取れてて……美しいわぁ」
「ちくび可愛すぎぃっ。くろえちゃんのお豆さんは小さめで、周りがぷっくりしてるタイプなのねぇ~」
 ミレイユは興奮した様子で、クロエの先端や膨らみをぷにぷにとツンツンと弄ぶ。
「ぅうっ……はぅっ……ぁぅ」
「お姉さん……頂いちゃってもいいかしら? いいわよねぇ? ……ごくんっ」
 生唾を飲み込むミレイユの目は、飢えた獣のようにギラギラと輝いていた。
「いただきます! あーん……」
 ――ゴツンッ!!
「い゙だっ……じだがんだぁ……っ!」
「自業自得だろっ!!」
 セドリックの拳骨がミレイユに炸裂する。
「お前は……目を離すとすぐこれだ……」
 そう言いながら、セドリックはミレイユをクロエから引き剥がした。たくし上がっていたクロエの下着をぐっと下ろし、朦朧としているクロエをゆっくり起こす。
 ぐわんぐわんと揺れるクロエを見て、セドリックはため息をついた。
「お前、また薬使ったのか? その薬、自分で試したことあるのか? 副作用がきつすぎる! そんなの、ほとんど失敗作だ!」
「えぇ……嘘ぉ……そうなのぉ~!?」
 ショックを受けるミレイユは放っておいて、セドリックはクロエを抱き上げ、二階へ向かう。
 カウチに座らせ、大きなコップに水をなみなみと注いで持たせる。
「クロエっ! しっかりしろ! いいか、この水は全部飲み干すんだ。水をたくさん飲めば、薬の作用が早く抜ける。ふらつきが収まったら、冷たい水で顔を洗いなさい。そしたら、このまま少しここで横になっていいから、休んでなさい」
 真剣な表情でクロエに話しかけるセドリック。
 クロエも、こくんと頷いた。

 一階の薬房から、セドリックの怒鳴り声が鳴り響いている。
 ふわふわとする意識の中、クロエはセドリックの言いつけを守り、水を飲み干し、顔を洗った。
 そして、ふらふらとカウチへ向かう。
 ――まだ、胸のあたりがじんじんと熱を帯びている。
 むず痒さを鎮めたい気持ちで、クロエの手が下着の中を這う。
「ふっ……くぅっ……」
 痒いところをギュッとつまんでいた。
 知らず知らずのうちに、クロエはカウチの横を過ぎ、その奥のセドリックの寝室へとたどり着いていた。
 ゴソゴソと布団の中に潜り込む。懐かしく、幸せな気分が蘇る。
 布団にくるまり、枕に顔を埋めると、セドリックの匂いが全身を包んだ。
 クロエは、そのまま、むず痒さを鎮めるように、そっと指を動かした。
 おへその下あたりが、きゅぅっと締めつけられ、ふっと力が抜ける。
 セドリックの匂いは心地よくて、クロエはそのまま眠りに落ちた。
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