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7章新しい生命
8話
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詰所でわいわいとしていると、扉がバタンと開いた。
「レイモンド!」
「あら、ムファサ」
レイモンドはゆっくり腰をあげた。
騎士の一人がリッツを抱いてくれ、レイモンドはムファサへと近付きぎゅっと抱き締める。
「ごめんなさいね、団長様から聞いたのかしら?」
「いや」
「じゃあ、ラックね。まったくそっと団長様にお願いねって言ったのに」
ムファサを離すと肩を竦める。
「でも、会えて良かったわ」
「そうだな……お前の子か?」
「えぇ、リッツよ抱いてあげて?」
レイモンドはリッツを見ると騎士から受け取りムファサに差し出す。
「鳴かない良い子だから大丈夫よそんなに怖がらなくても」
「そう……か?」
おっかなびっくりリッツを抱いたムファサは何かを言いかけて口を噤んだ。
「レイモンド様、団長からお返事を預かって参りました」
飛び込んできたのはラックだった。
「ラック、ありがたいけれど……団長様、いらっしゃったの?」
「はい、たまたま執務室に戻っていらっしゃって、これから帰宅するところだったらしく……良かったです」
手渡された封筒には、しっかりと封蝋がされていてそれは団長が私的に使っていた可愛らしい花を象ったものだった。
「あら……ラック、助かったわ……ムファサ時間があるかしら?」
「あぁ」
「そろそろ帰るわね?皆ありがとう。また時間があれば遊びに来るわ。今度はちゃんと手土産を持って」
レイモンドはムファサからリッツを受け取ると、この騒ぎでも起きない豪胆なリッツの頬を撫でてから行きましょ?と、ムファサを促す。
その部屋の中にいた騎士たちは一斉に立ち上がり、レイモンド二向けて礼をする。
「やだわ、アタシはもう上官じゃないのよ?」
ゆっくりと、騎士たちが下げた頭を撫でてやりムファサに行きましょうと促し詰所を出た。
門の左右に立つ騎士にもお礼をして馬車に向かう途中、ムファサが呟いた。
「……で、どうすんだ」
「ちょっと話し合いが必要になっちゃってね……都合のいい日に来てもらわなきゃならないのよ……親にバレたの」
「そうか……団長にも許可を貰ったんだろ?今夜行かせる。夜勤なら俺が代わるから何があっても行かせてやるからしっかりと話をしろよ?」
「それが、どうかしらね……団長からの手紙を読んで何かあったらムファサにも手紙を書くわ……でも、約束して?できるだけ関わらないで。貴方の手を煩わせたくないの」
そう言ってムファサは足を止めた。
少し先には一台の馬車が停まっている。
「詳しくは言えなくて申し訳ないわ……でも、これ以上は本当に貴方に迷惑をかけたくないわ。今まで良くしてくれた事は本当に嬉しいの。でもね、言わなかったことは言えなかったことなのよ……後で怒られるから今は聞かないでいて」
色々とムファサにすら言えなかったことはある。レイモンドは目を伏せて笑みを作る。
「ごめんなさいね……ムファサ」
そう謝ってから馬車に乗り込む。
御者が扉を閉めて馬車はゆっくりと動き出した。
「レイモンド!」
「あら、ムファサ」
レイモンドはゆっくり腰をあげた。
騎士の一人がリッツを抱いてくれ、レイモンドはムファサへと近付きぎゅっと抱き締める。
「ごめんなさいね、団長様から聞いたのかしら?」
「いや」
「じゃあ、ラックね。まったくそっと団長様にお願いねって言ったのに」
ムファサを離すと肩を竦める。
「でも、会えて良かったわ」
「そうだな……お前の子か?」
「えぇ、リッツよ抱いてあげて?」
レイモンドはリッツを見ると騎士から受け取りムファサに差し出す。
「鳴かない良い子だから大丈夫よそんなに怖がらなくても」
「そう……か?」
おっかなびっくりリッツを抱いたムファサは何かを言いかけて口を噤んだ。
「レイモンド様、団長からお返事を預かって参りました」
飛び込んできたのはラックだった。
「ラック、ありがたいけれど……団長様、いらっしゃったの?」
「はい、たまたま執務室に戻っていらっしゃって、これから帰宅するところだったらしく……良かったです」
手渡された封筒には、しっかりと封蝋がされていてそれは団長が私的に使っていた可愛らしい花を象ったものだった。
「あら……ラック、助かったわ……ムファサ時間があるかしら?」
「あぁ」
「そろそろ帰るわね?皆ありがとう。また時間があれば遊びに来るわ。今度はちゃんと手土産を持って」
レイモンドはムファサからリッツを受け取ると、この騒ぎでも起きない豪胆なリッツの頬を撫でてから行きましょ?と、ムファサを促す。
その部屋の中にいた騎士たちは一斉に立ち上がり、レイモンド二向けて礼をする。
「やだわ、アタシはもう上官じゃないのよ?」
ゆっくりと、騎士たちが下げた頭を撫でてやりムファサに行きましょうと促し詰所を出た。
門の左右に立つ騎士にもお礼をして馬車に向かう途中、ムファサが呟いた。
「……で、どうすんだ」
「ちょっと話し合いが必要になっちゃってね……都合のいい日に来てもらわなきゃならないのよ……親にバレたの」
「そうか……団長にも許可を貰ったんだろ?今夜行かせる。夜勤なら俺が代わるから何があっても行かせてやるからしっかりと話をしろよ?」
「それが、どうかしらね……団長からの手紙を読んで何かあったらムファサにも手紙を書くわ……でも、約束して?できるだけ関わらないで。貴方の手を煩わせたくないの」
そう言ってムファサは足を止めた。
少し先には一台の馬車が停まっている。
「詳しくは言えなくて申し訳ないわ……でも、これ以上は本当に貴方に迷惑をかけたくないわ。今まで良くしてくれた事は本当に嬉しいの。でもね、言わなかったことは言えなかったことなのよ……後で怒られるから今は聞かないでいて」
色々とムファサにすら言えなかったことはある。レイモンドは目を伏せて笑みを作る。
「ごめんなさいね……ムファサ」
そう謝ってから馬車に乗り込む。
御者が扉を閉めて馬車はゆっくりと動き出した。
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