10 / 30
10 獣耳
「アイ…ヴィス様?」
何それ。
アイヴィスの端整な顔立ちは変わらないのだが…
何故かその頭の上。
本来何も無い筈の所にちょこんと黒い猫耳が鎮座していた。
「か、可愛い」
セラフィリーアが呟くとピクッと動くそれは作り物には見えなかった。
「どうなされたのですか?」
「わからぬ…起きたらこうなっていたのだが…」
「触ってもよろしいですか?」
セラフィリーアの手が触りたそうに動いている。
「少しだけならな?」
ふにっとセラフィリーアが耳に触れる。
くすぐったさでビビビッと耳が震えた。
「今日は身体が慣れないから、宰相に公務を最低限にしてもらったから、セラと一緒にいられるんだ」
幸せそうに笑うアイヴィスの耳を堪能しながら、ふと背中側で揺れる同じ色の尻尾に気付く。
たしったしっと執務室の椅子を叩くそれはすらりと長く綺麗な尻尾。
「はい、今日は誰にも見つからないように部屋にいましょう?
これを知っているのは誰ですか?」
「ハワードと、今日の担当侍従二人、宰相とネイトくらいか?場合によってはルシウスとカラクもな」
そのくらいだろうとアイヴィスが数えると、いつものメンバーですねとセラフィリーアが笑う。
なんだかんだでお世話になるひとは決まっているのだ。
「なら、せっかくアイヴィス様がにゃんこになったなら、暖かい場所でゆっくりのんびりしましょうか。
アイヴィス様の部屋でいいですか?ハワードに飲み物を持ってきて貰いましょう」
チリンとベルを鳴らすと、控えていたハワードが顔を出す。
いつ見ても穏やかそうなイケメンだと思いながらも、部屋に戻ることと、飲み物を頼み、場合によっては温めのものになるかもしれないとお願いをした。
味覚が猫になっているかはわからないが、普段のアイヴィスは猫舌ではなかった筈だ。
ハワードが下がると、セラフィリーアはアイヴィスの手を取り執務室を出る。
あまり離れてはいないが、誰かに見られたらきっと困るだろう。そう思いながら少し早足で部屋に向かい、アイヴィスを寝室に向かわせる。
そして、耳を赤く染めながらセラフィリーアは入口の造花を水色の物に変えた。
これは、侍従や近しい人達への合図。
在室中、執務室など、アイヴィスの場所を簡単に伝えるためのもの。
そして、セラフィリーアが選んだ水色は
寝室、誰も近寄ることなかれ。
例外でハワードのみだけは許すけれど、副団長ですら近付くなというサイン。
もちろん理由は
『いたしています』
『只今、絶賛交わり中』
以前にイチャイチャしていたときにルシウスに踏み込まれて、そこから1ヶ月セラフィリーアはアイヴィスを拒んだため、苦肉の策で新しく始めたことなのだった。
まぁ、これが侍従だったら見て見ぬふりだが、この事でルシウスが軽くセラフィリーアをからかったからで。
ルシウスはアイヴィスに夜が解禁になるまではかなり苛められたようだけれど、セラフィリーアの知ったことではない。
「緊急事態だし…仕方ないよね」
探されても困るし、急に入ってこられても困るからと、理由をつけながら、セラフィリーアも扉を潜った。
「セラ、ハワードが用意してくれたぞ?」
甘くないミルクティにガレット等の焼き菓子が並べられている。
ハワードの姿は既に無く、ティーカップからはまだ湯気が上がっていた。
「お待たせしましたアイヴィスお隣よろしいですか?」
最初は向かい合うようになっていた椅子が、いつの間にか並んで座れるソファーになっていて、アイヴィスの隣が定位置になっている。
アイヴィスの私室にはセラフィリーア以外はほとんど入らないからだ。
そっとアイヴィスの隣に座ると、その長い尻尾が腰に回される。
その尻尾の先がたしったしっと動いていた。
「アイヴィス様、熱くはありませんか?」
ぬるめの紅茶を口にすると、大丈夫だろうかとちらりと見上げると、アイヴィスは美味しそうにミルクティを飲んでいる。
「んんっ…セラ?」
カチャリとアイヴィスがティーカップをソーサーに戻すと尻尾が巻き付けられた辺りに腕が回され撫で上げられた。
「尻尾はダメだ…気持ちよくなってしまう」
そっとその手触りを楽しんでいたのがいけなかったみたいだ。
いつも以上に雄々しく強引に見えるのは…猫のせい?
ティーカップを取り上げられると、そのまま軟らかなソファーに押し倒された。
「すまない、我慢がきかない」
首筋に噛みつかれるようにキスをされる。
それが気持ちよくてアイヴィスの頭を抱き締める。
「構いません…時間はありますから」
こうなることを予測しなかったとは言えない。
噛みつくようなキスを受け入れながらセラフィリーアはペロリと唇を舐めた。
何それ。
アイヴィスの端整な顔立ちは変わらないのだが…
何故かその頭の上。
本来何も無い筈の所にちょこんと黒い猫耳が鎮座していた。
「か、可愛い」
セラフィリーアが呟くとピクッと動くそれは作り物には見えなかった。
「どうなされたのですか?」
「わからぬ…起きたらこうなっていたのだが…」
「触ってもよろしいですか?」
セラフィリーアの手が触りたそうに動いている。
「少しだけならな?」
ふにっとセラフィリーアが耳に触れる。
くすぐったさでビビビッと耳が震えた。
「今日は身体が慣れないから、宰相に公務を最低限にしてもらったから、セラと一緒にいられるんだ」
幸せそうに笑うアイヴィスの耳を堪能しながら、ふと背中側で揺れる同じ色の尻尾に気付く。
たしったしっと執務室の椅子を叩くそれはすらりと長く綺麗な尻尾。
「はい、今日は誰にも見つからないように部屋にいましょう?
これを知っているのは誰ですか?」
「ハワードと、今日の担当侍従二人、宰相とネイトくらいか?場合によってはルシウスとカラクもな」
そのくらいだろうとアイヴィスが数えると、いつものメンバーですねとセラフィリーアが笑う。
なんだかんだでお世話になるひとは決まっているのだ。
「なら、せっかくアイヴィス様がにゃんこになったなら、暖かい場所でゆっくりのんびりしましょうか。
アイヴィス様の部屋でいいですか?ハワードに飲み物を持ってきて貰いましょう」
チリンとベルを鳴らすと、控えていたハワードが顔を出す。
いつ見ても穏やかそうなイケメンだと思いながらも、部屋に戻ることと、飲み物を頼み、場合によっては温めのものになるかもしれないとお願いをした。
味覚が猫になっているかはわからないが、普段のアイヴィスは猫舌ではなかった筈だ。
ハワードが下がると、セラフィリーアはアイヴィスの手を取り執務室を出る。
あまり離れてはいないが、誰かに見られたらきっと困るだろう。そう思いながら少し早足で部屋に向かい、アイヴィスを寝室に向かわせる。
そして、耳を赤く染めながらセラフィリーアは入口の造花を水色の物に変えた。
これは、侍従や近しい人達への合図。
在室中、執務室など、アイヴィスの場所を簡単に伝えるためのもの。
そして、セラフィリーアが選んだ水色は
寝室、誰も近寄ることなかれ。
例外でハワードのみだけは許すけれど、副団長ですら近付くなというサイン。
もちろん理由は
『いたしています』
『只今、絶賛交わり中』
以前にイチャイチャしていたときにルシウスに踏み込まれて、そこから1ヶ月セラフィリーアはアイヴィスを拒んだため、苦肉の策で新しく始めたことなのだった。
まぁ、これが侍従だったら見て見ぬふりだが、この事でルシウスが軽くセラフィリーアをからかったからで。
ルシウスはアイヴィスに夜が解禁になるまではかなり苛められたようだけれど、セラフィリーアの知ったことではない。
「緊急事態だし…仕方ないよね」
探されても困るし、急に入ってこられても困るからと、理由をつけながら、セラフィリーアも扉を潜った。
「セラ、ハワードが用意してくれたぞ?」
甘くないミルクティにガレット等の焼き菓子が並べられている。
ハワードの姿は既に無く、ティーカップからはまだ湯気が上がっていた。
「お待たせしましたアイヴィスお隣よろしいですか?」
最初は向かい合うようになっていた椅子が、いつの間にか並んで座れるソファーになっていて、アイヴィスの隣が定位置になっている。
アイヴィスの私室にはセラフィリーア以外はほとんど入らないからだ。
そっとアイヴィスの隣に座ると、その長い尻尾が腰に回される。
その尻尾の先がたしったしっと動いていた。
「アイヴィス様、熱くはありませんか?」
ぬるめの紅茶を口にすると、大丈夫だろうかとちらりと見上げると、アイヴィスは美味しそうにミルクティを飲んでいる。
「んんっ…セラ?」
カチャリとアイヴィスがティーカップをソーサーに戻すと尻尾が巻き付けられた辺りに腕が回され撫で上げられた。
「尻尾はダメだ…気持ちよくなってしまう」
そっとその手触りを楽しんでいたのがいけなかったみたいだ。
いつも以上に雄々しく強引に見えるのは…猫のせい?
ティーカップを取り上げられると、そのまま軟らかなソファーに押し倒された。
「すまない、我慢がきかない」
首筋に噛みつかれるようにキスをされる。
それが気持ちよくてアイヴィスの頭を抱き締める。
「構いません…時間はありますから」
こうなることを予測しなかったとは言えない。
噛みつくようなキスを受け入れながらセラフィリーアはペロリと唇を舐めた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。