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2章
3話
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「それでな、ティア…結婚をしてくれると言ってくれたのだが、それに合わせて今いる部屋から違う部屋へと移って欲しい。
目が見えていなかったから少しでも段差や調度等が無くて過ごしやすい部屋を選んでいたのだが、もう大丈夫そうだし…ティアが望まないな…ら無理にとは言わない」
レイジュの優しい声にそちらを向く。
音のする方を向いてしまうのはもう習性だ。
目を見て喋ることに慣れていかなければならないが、今までの事が覆される行為はやはり慣れるまでに戸惑いがあるのは否めない。
「今のお部屋でも充分な広さもありますし、寝台も快適ですし…」
「部屋の物は全て運ばせるし、新しい部屋には調合ができるように個室がもうひとつついているし、風呂もつけてある。
この四阿にも近いから…行ってみないか?それから決めてもいいだろう?」
「ふふ、じゃあ」
レイジュのお散歩はそれが目当てだったのだろう。
最初からそう言ってくれればいいのに。
こう見えて案外可愛いのだと笑ってしまう。
「レイジュ、お茶が終わったらつれていってください」
そう言えばこんなに広い庭があるのに、それ以外にも建物等があるらしい。
建物の外にあまり出たことがないため、ティアは他の建物の存在を知らなかった。
レイジュが飲み干したカップを置くと立ち上がる。
差し出された手に手を重ねると、嬉しそうに笑った。
連れていかれたのは四阿からすぐ近いが、木々や生け垣が上手く存在を隠しているのか其処にあるとは全く気付かなかったが大きな建物。
今までいた建物の倍ほどあるだろう。
柔らかな木目調の装飾が施された建物。
中に入ると大きな広間、寝室、小部屋がふたつ。
服をしまう部屋などもあり、浴室や廁もある。
この広さは目が見えないときは歩き回るにはかなり辛い広さだ。
「レイジュ、また目が見えなくなったときに困ります…」
「そうはならない。だが、気に入らないか?」
「そんなことはありませをんが、こんなに部屋があって…」
「そのうち必要になる部屋だから問題ない」
「え?」
「いや、何でも…嫌でなければキラに頼んで此処に引っ越しだな」
「此処に住んでいた方は?」
「ずっと空き家だから、気にするな」
その割には綺麗に整えられている。
不思議な事ばかりでティアはまた首を傾げるのだった。
目が見えていなかったから少しでも段差や調度等が無くて過ごしやすい部屋を選んでいたのだが、もう大丈夫そうだし…ティアが望まないな…ら無理にとは言わない」
レイジュの優しい声にそちらを向く。
音のする方を向いてしまうのはもう習性だ。
目を見て喋ることに慣れていかなければならないが、今までの事が覆される行為はやはり慣れるまでに戸惑いがあるのは否めない。
「今のお部屋でも充分な広さもありますし、寝台も快適ですし…」
「部屋の物は全て運ばせるし、新しい部屋には調合ができるように個室がもうひとつついているし、風呂もつけてある。
この四阿にも近いから…行ってみないか?それから決めてもいいだろう?」
「ふふ、じゃあ」
レイジュのお散歩はそれが目当てだったのだろう。
最初からそう言ってくれればいいのに。
こう見えて案外可愛いのだと笑ってしまう。
「レイジュ、お茶が終わったらつれていってください」
そう言えばこんなに広い庭があるのに、それ以外にも建物等があるらしい。
建物の外にあまり出たことがないため、ティアは他の建物の存在を知らなかった。
レイジュが飲み干したカップを置くと立ち上がる。
差し出された手に手を重ねると、嬉しそうに笑った。
連れていかれたのは四阿からすぐ近いが、木々や生け垣が上手く存在を隠しているのか其処にあるとは全く気付かなかったが大きな建物。
今までいた建物の倍ほどあるだろう。
柔らかな木目調の装飾が施された建物。
中に入ると大きな広間、寝室、小部屋がふたつ。
服をしまう部屋などもあり、浴室や廁もある。
この広さは目が見えないときは歩き回るにはかなり辛い広さだ。
「レイジュ、また目が見えなくなったときに困ります…」
「そうはならない。だが、気に入らないか?」
「そんなことはありませをんが、こんなに部屋があって…」
「そのうち必要になる部屋だから問題ない」
「え?」
「いや、何でも…嫌でなければキラに頼んで此処に引っ越しだな」
「此処に住んでいた方は?」
「ずっと空き家だから、気にするな」
その割には綺麗に整えられている。
不思議な事ばかりでティアはまた首を傾げるのだった。
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