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2章
11話
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「ティア、少し話をさせてくれ」
長椅子に導かれ、ふたり並んで腰を下ろす。
キラが静かにお茶を用意して下がっていった。
「ティアに求婚をしてから7日通った…1日も拒まれることは無かったからティアを皆に披露したい」
「披露…ですか?」
「ああ」
「皆と言いますと?」
「国民に」
「えっ!?」
レイジュの口からありえない単語が聞こえた気がした。
普通なら親族とか、そう言う事なのだと思うのだけれど…。
「皆に祝福をされたいのだが、ティアは嫌か?」
「レイジュ?国民って、家族とかではなく?私はまだ、レイジュの家族にも合わせていただいていないのに……」
そうレイジュに伝えると、レイジュははっとして申し訳なさそうに目を伏せた。
「俺には…もう、両親はいない。キラが異母兄弟だ……そうか、その話はまだしていなかったか」
レイジュはゆっくりと背凭れに背中を預けて息を吐き出す。
「何処から話そうか…」
レイジュは天井の一点を見つめながら呟く。
「話したくないのであれば、無理に聞きませんよ……レイジュはレイジュですから」
何となく思うところはある。
レイジュは自分とは違って高貴な血族なのだと。
「いや、聞いてほしい……が、それで嫌われたくはない……」
「こんな出自の私を愛してくださっているのですから、レイジュを嫌いにはなりませんよ?」
膝の上で握り締められたレイジュの手にそっと手を重ねた。
嫌いになんかなるはずがない。
私の世界はレイジュで埋め尽くされているのだから。
「そう…か」
そう言って話し出したレイジュの言葉に、驚きしか出てこない。
ただ、それでレイジュを嫌いにはならなかった。
この国の皇帝であること。
幼い頃は市政で育てられていたこと。
母から引き離され、宰相の屋敷で育てられていたこと。
ある日、私と出会ったこと。
王宮に引き取られて会えなくなったこと。
皇太子になったこと。
私を呼んだこと。
ゆっくりと言葉を選んで教えてくれる。
知っていたことも気づいていたこともあったが、レイジュの言葉で聞けて良かったと思った。
「レイジュ……わかりました。全員に祝福されないと思います。
反対の方はたくさんいらっしゃるでしょう……でも、私はレイジュの伴侶になりたい」
心からのお願いにレイジュは嬉しそうに笑った。
長椅子に導かれ、ふたり並んで腰を下ろす。
キラが静かにお茶を用意して下がっていった。
「ティアに求婚をしてから7日通った…1日も拒まれることは無かったからティアを皆に披露したい」
「披露…ですか?」
「ああ」
「皆と言いますと?」
「国民に」
「えっ!?」
レイジュの口からありえない単語が聞こえた気がした。
普通なら親族とか、そう言う事なのだと思うのだけれど…。
「皆に祝福をされたいのだが、ティアは嫌か?」
「レイジュ?国民って、家族とかではなく?私はまだ、レイジュの家族にも合わせていただいていないのに……」
そうレイジュに伝えると、レイジュははっとして申し訳なさそうに目を伏せた。
「俺には…もう、両親はいない。キラが異母兄弟だ……そうか、その話はまだしていなかったか」
レイジュはゆっくりと背凭れに背中を預けて息を吐き出す。
「何処から話そうか…」
レイジュは天井の一点を見つめながら呟く。
「話したくないのであれば、無理に聞きませんよ……レイジュはレイジュですから」
何となく思うところはある。
レイジュは自分とは違って高貴な血族なのだと。
「いや、聞いてほしい……が、それで嫌われたくはない……」
「こんな出自の私を愛してくださっているのですから、レイジュを嫌いにはなりませんよ?」
膝の上で握り締められたレイジュの手にそっと手を重ねた。
嫌いになんかなるはずがない。
私の世界はレイジュで埋め尽くされているのだから。
「そう…か」
そう言って話し出したレイジュの言葉に、驚きしか出てこない。
ただ、それでレイジュを嫌いにはならなかった。
この国の皇帝であること。
幼い頃は市政で育てられていたこと。
母から引き離され、宰相の屋敷で育てられていたこと。
ある日、私と出会ったこと。
王宮に引き取られて会えなくなったこと。
皇太子になったこと。
私を呼んだこと。
ゆっくりと言葉を選んで教えてくれる。
知っていたことも気づいていたこともあったが、レイジュの言葉で聞けて良かったと思った。
「レイジュ……わかりました。全員に祝福されないと思います。
反対の方はたくさんいらっしゃるでしょう……でも、私はレイジュの伴侶になりたい」
心からのお願いにレイジュは嬉しそうに笑った。
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