【BL】空と水の交わる場所~ゲーム世界で竜騎士になりました。

梅花

文字の大きさ
84 / 124
7章 記憶

7-1

漸く寝台から降りることができるようになって、部屋のなかを自由に歩く許可が出ると、セラフィリーアは良く窓辺に置かれた椅子に腰掛け、ゆったりと身体を休めながら外を見ていた。
窓を開けてもらい、白いレースのカーテンがはためくように風を入れる。
暖かくなってきた風を感じながら。

こうして動けるようになってから、此所はファレナスではなく、アルトリアという国だと聞いた。
不慮の事故で最近の記憶を無くしているが、アルトリアには留学をしに来ていること。
あの事故から3年の月日が経ったこと。

沢山の新しい情報に頭のなかが飽和状態でくらくらとしている。
ぎゅっと、目を閉じると瞼の裏にはいくつもの映像が浮かび上がった。



「綺麗」

ゆっくり目を開くと遠くでは飛竜が騎士を背中に乗せて空を駆けている。
遠目でもわかる優美な姿。
鮮やかな色彩。
時折混ざる金は上級色の証であり、隊長以上の階級が主だ。

「もっと近くで見てみたい……」

セラフィリーアは何度も頼んだが、なかなか受け入れて貰えない。
通常の人には危険だからと言われている。
1度だけ、白い飛竜が窓際を飛んだ事がある。

精悍な顔立ち。
引き締まった体躯。

それを見た瞬間、何故か涙が溢れたのは、その荘厳な姿だからだろう。

早く歩けるようになって、あの竜達が飛び交う近くまで行きたい。
それにはしっかりと食べて体力をつけてからでないといけないと、セラフィリーアは軽く手を握る。
服で隠れてはいるが、アスランに身体を拭いて貰う度に浮き出た肋骨や手足の筋が嫌でも目に入る。
アスランは筋肉でなく脂肪でも構わないというが、少し食べ過ぎてしまうと身体が辛くなる。

困ったなと笑いながら、用意されたお茶を飲む。
ふわりと甘く花が香るお茶はファレナスの物で、懐かしい。
添えられた焼き菓子はファレナスの物ではなかったが、何故か懐かしく優しい味がした。

少しずつ覚えることと思い出す事がある。

「アイヴィス……様」

窓際に置かれた小さな花瓶の中が毎日変わっているのは、アイヴィスが送ってくれるからだとアスランが言った。
アスラン以外にもリオルが侍従としているのたが、やはり何だか慣れないため、アスランにばかり負担が行ってしまうのが申し訳なく思う。
ファレナスではできることは自分でするため、誰かに何かを頼むのが得意ではなく、だからといって今の自分は何もできないのだ。
お荷物なのだとわかってはいる。

早く本当の自分を取り戻したい。
もやもやした気持ちのままただ窓から外を見るだけだった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!

くすのき
BL
最初に謝っておきます! 漬物業界の方、マジすまぬ。 &本編完結、番外編も! この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ゲームの世界はどこいった?

水場奨
BL
小さな時から夢に見る、ゲームという世界。 そこで僕はあっという間に消される悪役だったはずなのに、気がついたらちゃんと大人になっていた。 あれ?ゲームの世界、どこいった? ムーン様でも公開しています

【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。