188 / 696
本編
193話
どのくらい経っただろうか。
用意された紅茶は冷めてしまって、俺はどのくらい待たされるのだろうかと立ち上がった瞬間ビーグルさんが現れた。
「お待たせしました」
「いえ、で、俺は何故此処へ?」
「それは……」
何となく理由はわかっている。
「取り敢えずこちらへ」
まだ、丁寧に接してくれるだけいいかとビーグルさんに着いて行くと、少し大きなサロンのような部屋に入った。
内装は落ち着いていて、物も雰囲気もいい。
俺の後から入ってきたのは、ベンガル風の猫獣人ふたりだった。
特徴のある斑の毛並み。
顔は整っているが、目付きは少し鋭く感じる。
「聖樹の実をつけてくれると聞いた……」
「どうか、私たちに子供を授けて欲しいの」
そう言ってベンガル夫妻は頭を下げた。
「俺にはそんな能力はありません」
「でも、皆が……」
小さな方のベンガルさんがハンカチを握り締めている。
それを抱き寄せるようにしついたもうひとりがこちらを見据えた。
「街の聖樹で様々な枝に実をつけさせたと聞く。望むだけの報酬は払うどうか」
「報酬とか、必要はありませんし俺が出来ることはします。だからリルとレヴィに連絡を……」
させてくださいとお願いした瞬間、何処か遠くで何か壊れるような爆発音がした。
「だ、旦那様、奥様!」
駆け込んで来たのはビーグルさん。
そして、その後ろには……
完全武装のリルとレヴィがいた。
「リル、レヴィ?」
「大丈夫か、リクト」
「うん、大丈夫だけどふたりはどうしたの?そんな格好で……」
見たことが無いくらいの重装備なふたりは、ベンガルさん達を睨み付けた。
「おい、貴族さまが何てぇことしてんだよ、俺らいち市民だろうが、それを誘拐なんてなぁ?」
「あぁ」
「は、誘拐!?」
「え?」
リルとレヴィの言葉に驚いたのはベンガル夫妻。
すると、近くに居たビーグルさんがガタガタと震えだした。
「も、申し訳……」
その場に這いつくばって頭を下げるビーグルさん。
「リルもレヴィも大丈夫だよ、俺は。酷いこともされていないし、誘拐じゃないって」
ポンポンとリルとレヴィの腕を叩くと、ふたりは手にしていた武器を納めた。
流石にレヴィのハルバードは邪魔だからね。
誘拐されたって思い込んで来てくれたふたりには感謝しなきゃいけない。スマホとか無いのに、良く俺の居場所がわかったなと、どうしてか後で聞いてみようと思う。
「えぇと、おふたかたが子供が欲しいんだってさ、だから俺で良ければお手伝いするつもりだけど」
「はぁ?あっちはどうするんだよ」
「え?」
「レオンの方だよ」
「あ」
時折、顔を出してくれと言われていたのを思い出してどうしようかと考える。
「毎日行く訳じゃないから大丈夫でしょう」
俺は何とかなるでしょうとあっけらかんと笑った。
用意された紅茶は冷めてしまって、俺はどのくらい待たされるのだろうかと立ち上がった瞬間ビーグルさんが現れた。
「お待たせしました」
「いえ、で、俺は何故此処へ?」
「それは……」
何となく理由はわかっている。
「取り敢えずこちらへ」
まだ、丁寧に接してくれるだけいいかとビーグルさんに着いて行くと、少し大きなサロンのような部屋に入った。
内装は落ち着いていて、物も雰囲気もいい。
俺の後から入ってきたのは、ベンガル風の猫獣人ふたりだった。
特徴のある斑の毛並み。
顔は整っているが、目付きは少し鋭く感じる。
「聖樹の実をつけてくれると聞いた……」
「どうか、私たちに子供を授けて欲しいの」
そう言ってベンガル夫妻は頭を下げた。
「俺にはそんな能力はありません」
「でも、皆が……」
小さな方のベンガルさんがハンカチを握り締めている。
それを抱き寄せるようにしついたもうひとりがこちらを見据えた。
「街の聖樹で様々な枝に実をつけさせたと聞く。望むだけの報酬は払うどうか」
「報酬とか、必要はありませんし俺が出来ることはします。だからリルとレヴィに連絡を……」
させてくださいとお願いした瞬間、何処か遠くで何か壊れるような爆発音がした。
「だ、旦那様、奥様!」
駆け込んで来たのはビーグルさん。
そして、その後ろには……
完全武装のリルとレヴィがいた。
「リル、レヴィ?」
「大丈夫か、リクト」
「うん、大丈夫だけどふたりはどうしたの?そんな格好で……」
見たことが無いくらいの重装備なふたりは、ベンガルさん達を睨み付けた。
「おい、貴族さまが何てぇことしてんだよ、俺らいち市民だろうが、それを誘拐なんてなぁ?」
「あぁ」
「は、誘拐!?」
「え?」
リルとレヴィの言葉に驚いたのはベンガル夫妻。
すると、近くに居たビーグルさんがガタガタと震えだした。
「も、申し訳……」
その場に這いつくばって頭を下げるビーグルさん。
「リルもレヴィも大丈夫だよ、俺は。酷いこともされていないし、誘拐じゃないって」
ポンポンとリルとレヴィの腕を叩くと、ふたりは手にしていた武器を納めた。
流石にレヴィのハルバードは邪魔だからね。
誘拐されたって思い込んで来てくれたふたりには感謝しなきゃいけない。スマホとか無いのに、良く俺の居場所がわかったなと、どうしてか後で聞いてみようと思う。
「えぇと、おふたかたが子供が欲しいんだってさ、だから俺で良ければお手伝いするつもりだけど」
「はぁ?あっちはどうするんだよ」
「え?」
「レオンの方だよ」
「あ」
時折、顔を出してくれと言われていたのを思い出してどうしようかと考える。
「毎日行く訳じゃないから大丈夫でしょう」
俺は何とかなるでしょうとあっけらかんと笑った。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―
猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。
穏やかで包容力のある長男・千隼。
明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。
家事万能でツンデレ気味な三男・凪。
素直になれないクールな末っ子・琉生。
そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。
自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。