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本編
292話
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「リル、レヴィ……無理はしないで……」
俺の声に、リルもレヴィも静かに頷く。
俺は言われた通りに腰を屈めてゆっくりゆっくりと、木の方へ向かった。
怖い。
こんな動物は見たことも無かった。
日本には人間を襲う動物など少なかったし、都会で生きてきた俺は野生の動物に会うことも無かったから。
だけど、俺はルスとライの親なのだから怖くても双子は護らないといけない。
それが俺の義務なのだ。
リルとレヴィが闘ってくれる。きっと二人だって怖いに違いない。
冒険者だって闘える相手とそうでない相手がいるらるだろう。
これが、俺や子供たちがいなければきっと逃げられたかもしれない。
だけど2人はそれをしなかった。
「……足だけは引っ張らないようにしなきゃ」
ルスも、ライも泣かないで……。
祈るように抱き締めながら俺は空を見上げずに進む。
もう少し。
ほんの数mが長く長く感じられた。
『ガアアッ』
轟く程の咆哮に、俺ははっとして振り向く。
其処には獸化したリルがいた。
それを狙うように滑空してきたケツァルコアトル。
次の瞬間、レヴィの持つ刀がケツァルコアトルの翼の被膜に突き刺さったのが見えた。
『ギャアッギャアッ』
痛みを感じるのだろうか、ケツァルコアトルが鳴き声を上げた。
怖いけれど……。
俺は見ていた闘いから目を逸らして木の下に辿り着く。
此所なら木が上空からの視界を遮る。
「どうか、ふたりとも無事で……」
祈るように目を伏せる。
どのくらい経っただろうか。
「リクト~片付いたぞ~」
なんてリルの声が聞こえて、俺は漸く顔を上げた。
ほぼ半裸のリルが、ヒラヒラと手を振っている。
その後ろにレヴィもいた。
良かった……ふたりとも怪我は無かったの?
駆け寄りたかったが、足が言うことをきかない。
双子を抱き締める腕にも力が入らない。
「……リル……レヴィ……」
「リクト、びっくりしたなぁ」
駆け寄ってくれたリルに双子を受け取って貰う。
「無事か?」
泣きそうになっていた俺は、レヴィにぎゅっと抱き締められた。
「ふたりは?怪我……」
「俺たちは平気だって、たかがケツァルコアトルだ」
リルがちらりと振り向いた先には小山のようになったケツァルコアトルがいた。
「あぁ、だが俺かリルが病的ならどうとでもなるが、リクトや子供たちが標的になって拐われたらと、それが心配でな」
「リクト、双子を護ってくれてありがとなぁ」
リルに抱かれた双子は、その騒動を知らずにぐっすりと眠りこけている。
「ううん、ふたりともありがとう……怪我が無くて良かった……」
本当に、何かあったらと思ってしまった。
「大丈夫だって、なぁレヴィ?」
「あぁ」
家族を護ることができて良かったと、笑うふたりの前で俺は安心からかぎゃん泣きをしてしまうのだった。
俺の声に、リルもレヴィも静かに頷く。
俺は言われた通りに腰を屈めてゆっくりゆっくりと、木の方へ向かった。
怖い。
こんな動物は見たことも無かった。
日本には人間を襲う動物など少なかったし、都会で生きてきた俺は野生の動物に会うことも無かったから。
だけど、俺はルスとライの親なのだから怖くても双子は護らないといけない。
それが俺の義務なのだ。
リルとレヴィが闘ってくれる。きっと二人だって怖いに違いない。
冒険者だって闘える相手とそうでない相手がいるらるだろう。
これが、俺や子供たちがいなければきっと逃げられたかもしれない。
だけど2人はそれをしなかった。
「……足だけは引っ張らないようにしなきゃ」
ルスも、ライも泣かないで……。
祈るように抱き締めながら俺は空を見上げずに進む。
もう少し。
ほんの数mが長く長く感じられた。
『ガアアッ』
轟く程の咆哮に、俺ははっとして振り向く。
其処には獸化したリルがいた。
それを狙うように滑空してきたケツァルコアトル。
次の瞬間、レヴィの持つ刀がケツァルコアトルの翼の被膜に突き刺さったのが見えた。
『ギャアッギャアッ』
痛みを感じるのだろうか、ケツァルコアトルが鳴き声を上げた。
怖いけれど……。
俺は見ていた闘いから目を逸らして木の下に辿り着く。
此所なら木が上空からの視界を遮る。
「どうか、ふたりとも無事で……」
祈るように目を伏せる。
どのくらい経っただろうか。
「リクト~片付いたぞ~」
なんてリルの声が聞こえて、俺は漸く顔を上げた。
ほぼ半裸のリルが、ヒラヒラと手を振っている。
その後ろにレヴィもいた。
良かった……ふたりとも怪我は無かったの?
駆け寄りたかったが、足が言うことをきかない。
双子を抱き締める腕にも力が入らない。
「……リル……レヴィ……」
「リクト、びっくりしたなぁ」
駆け寄ってくれたリルに双子を受け取って貰う。
「無事か?」
泣きそうになっていた俺は、レヴィにぎゅっと抱き締められた。
「ふたりは?怪我……」
「俺たちは平気だって、たかがケツァルコアトルだ」
リルがちらりと振り向いた先には小山のようになったケツァルコアトルがいた。
「あぁ、だが俺かリルが病的ならどうとでもなるが、リクトや子供たちが標的になって拐われたらと、それが心配でな」
「リクト、双子を護ってくれてありがとなぁ」
リルに抱かれた双子は、その騒動を知らずにぐっすりと眠りこけている。
「ううん、ふたりともありがとう……怪我が無くて良かった……」
本当に、何かあったらと思ってしまった。
「大丈夫だって、なぁレヴィ?」
「あぁ」
家族を護ることができて良かったと、笑うふたりの前で俺は安心からかぎゃん泣きをしてしまうのだった。
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