30 / 44
第2章 退魔
30話
しおりを挟む
「鴇…今夜は俺の番なんだけど」
蜜柑の少し低い声に俺は目を開いた。
昔から眠りは浅くて、他人の動きがわかってしまう。
もう、店や路地の提灯も消えて静かになっているなかで、隣に眠っていた蜜柑がもぞりと動く。
「ん、一緒に寝る?」
少しだけ肌寒い深夜に他人のぬくもりは幸せで。
ぺらりと上掛けを捲ると、びっくりしたように蜜柑は目を見開いてからもぞもぞと布団の中を移動してきた。
「ん、あったかい…」
ぬくぬくと布団の中で暖かくなっていた蜜柑の体温が心地いい。
「ひゃっ!」
するりと浴衣の中に入ってきた手に声が出た。
冷たい訳ではないが、意思を持って動く指は艶かしく敏感な部分を撫でていく。
それに身を強張らせると蜜柑の指先が動きを止めた。
「鴇…仲間内でなら仕方ないって思ってた…でも、白銀…あいつは仲間じゃない…」
「蜜柑?」
「誰かに取られるなんて嫌だ…俺のものにしたい…」
普段あまり喋らない蜜柑が少し低い声で喋るのが珍しい。
そんなところは師匠の鶸と似ているななんて思ってしまう。
「蜜柑…どうしたんだよ…」
兄弟子だという矜持があるのだろう、蜜柑に酷いことをされたことはない。
まぁ、他の皆にもされたことはないけれども。
「急がせないし、強要しないと決めたけれど、それは俺たちの中の誰かを選んでくれることが前提だった、でもそうじゃない場合も出てくるんだろ…それだけは嫌だ…」
蜜柑の言葉に、あぁ、そうかと思い至る。
俺はこの世界が乙女ゲームだと知っているけれど、知らないのか普通なんだよな…。
「わかってる…皆にも言われたから。
まだ俺が誰かを選べないのがいけないんだよな」
押し倒されるような形で蜜柑を見上げているが、怖さはなくて、ただ淡々と俺は喋ることができる。
「ごめん…蜜柑」
そっと手を伸ばして蜜柑を抱き締めてやる。
ポンポンと背中を叩くと蜜柑が脱力したのがわかった。
「蜜柑が嫌いな訳じゃない。でも1番が決められないんだ…皆それぞれいいところがあるからさ?」
「そう、だな…」
「でも、何で俺なんかを好きになってくれたんだ?蓮も雀も女の子だし、優しくて可愛いだろ?」
「そうだけど…好きに理由はないだろ?」
「蓮にも言われたよ…ちょっと本気で誰を選ぶか考えるよ…できるだけ早く答えを出すから…さ」
俺が息を吐き出すと、蜜柑はごろりと隣に横になった。
「今夜だけは抱き締めて寝たい…」
蜜柑の切ない声に頷いた。
浴衣の下の厚い筋肉はしっかりと鍛えている証。
ちゃらちゃらとした付け焼き刃の俺とは違う。
蜜柑の腕の中で誰が好きなのだろうかと眠れぬ一夜を明かしたのだった。
蜜柑の少し低い声に俺は目を開いた。
昔から眠りは浅くて、他人の動きがわかってしまう。
もう、店や路地の提灯も消えて静かになっているなかで、隣に眠っていた蜜柑がもぞりと動く。
「ん、一緒に寝る?」
少しだけ肌寒い深夜に他人のぬくもりは幸せで。
ぺらりと上掛けを捲ると、びっくりしたように蜜柑は目を見開いてからもぞもぞと布団の中を移動してきた。
「ん、あったかい…」
ぬくぬくと布団の中で暖かくなっていた蜜柑の体温が心地いい。
「ひゃっ!」
するりと浴衣の中に入ってきた手に声が出た。
冷たい訳ではないが、意思を持って動く指は艶かしく敏感な部分を撫でていく。
それに身を強張らせると蜜柑の指先が動きを止めた。
「鴇…仲間内でなら仕方ないって思ってた…でも、白銀…あいつは仲間じゃない…」
「蜜柑?」
「誰かに取られるなんて嫌だ…俺のものにしたい…」
普段あまり喋らない蜜柑が少し低い声で喋るのが珍しい。
そんなところは師匠の鶸と似ているななんて思ってしまう。
「蜜柑…どうしたんだよ…」
兄弟子だという矜持があるのだろう、蜜柑に酷いことをされたことはない。
まぁ、他の皆にもされたことはないけれども。
「急がせないし、強要しないと決めたけれど、それは俺たちの中の誰かを選んでくれることが前提だった、でもそうじゃない場合も出てくるんだろ…それだけは嫌だ…」
蜜柑の言葉に、あぁ、そうかと思い至る。
俺はこの世界が乙女ゲームだと知っているけれど、知らないのか普通なんだよな…。
「わかってる…皆にも言われたから。
まだ俺が誰かを選べないのがいけないんだよな」
押し倒されるような形で蜜柑を見上げているが、怖さはなくて、ただ淡々と俺は喋ることができる。
「ごめん…蜜柑」
そっと手を伸ばして蜜柑を抱き締めてやる。
ポンポンと背中を叩くと蜜柑が脱力したのがわかった。
「蜜柑が嫌いな訳じゃない。でも1番が決められないんだ…皆それぞれいいところがあるからさ?」
「そう、だな…」
「でも、何で俺なんかを好きになってくれたんだ?蓮も雀も女の子だし、優しくて可愛いだろ?」
「そうだけど…好きに理由はないだろ?」
「蓮にも言われたよ…ちょっと本気で誰を選ぶか考えるよ…できるだけ早く答えを出すから…さ」
俺が息を吐き出すと、蜜柑はごろりと隣に横になった。
「今夜だけは抱き締めて寝たい…」
蜜柑の切ない声に頷いた。
浴衣の下の厚い筋肉はしっかりと鍛えている証。
ちゃらちゃらとした付け焼き刃の俺とは違う。
蜜柑の腕の中で誰が好きなのだろうかと眠れぬ一夜を明かしたのだった。
22
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
ルティとトトの動画を作りました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
本編、両親にごあいさつ編、完結しました!
おまけのお話を、時々更新しています。
本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる