昼の蟷螂 ネタバレ

歌川ピロシキ

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昼の蟷螂

其の四

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 アザット君の普段の仕事場です。
お友達に一か月近く会えていないのに、うまく丸め込まれてしまっているのは彼が人間と精神構造が違うから。
妖精なので、思考や発想がどうあっても人外なんですね。

 この世界線の草原妖精は徹底的に明るく楽観的な性質で、自分も他人も楽しかったり気持ち良かったりすることが大好きです。
だから、自分に対して楽しい事や嬉しい事、気持ち良い事を共有しようとしてくる相手にはあっさり気を許してしまい、友達として大切にします。

 その一方で憎んだり疑ったり悲しんだりと言ったネガティブな感情はきわめて苦手で、そういった感情を自分自身が抱くのも、他人がまき散らしているのも生理的に受け付けられず、避けようとします。
他の妖精族よりも精霊に近い存在のため、良くも悪くも純粋なんですね。
哀しみや怒りと言った強い負の感情はバンシー(悲哀)やフューリー(憤怒)といった自分と相性の悪い精霊が寄ってきてしまうので、受け入れることができないのでしょう。
逆にレプラコーン(悪戯や困惑)やフォーン(快楽)といった草原妖精と相性の良い精霊もいるようです。

もちろん、一話目のターゲットのような輩は大嫌いだし、お仕事で殺しをすること自体にもあまり忌避感はありません。
ただし、アザットにすれば嫌悪や憎悪の感情と暗殺という行為は全く結びついておらず、単純に任務だから実行しただけにすぎません。

 もしターゲットがアザットに対して好意的で、一緒に楽しい事や嬉しい事を共有しようとしてきたら簡単にほだされてしまうんでしょうが、元締めも彼のそういう本能的な部分をわかった上で躊躇なく殺せる相手だけをターゲットとして選んでいます。

 さて、今回もアザットは丸め込まれてしまいましたが、いつまでこの状態が続くでしょうか?
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