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深夜のわらべうた
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〽通りゃんせ通りゃんせ
深夜、どこからともなく聴こえてきた唄声に飛び起きた。目に飛び込んでくる見慣れぬ格天井。
ここは山中の小さな村。父が生まれ育った片田舎の旧家の座敷だ。この村では死者が出ると、通夜の前日に身内が死体の不寝番をする。
祖父が死んだと知らせがあったのが、大学の試験の最終日。
ちょうど試験休みだから行ってこい、と父の代理で送り込まれたのが運の尽き。一族に若い男が他にいないからと、不寝番をやらされる羽目になった。
棺の脇に置かれた座椅子で寝たフリをしながら、薄目でそっと声の方を見る。六歳くらいだろうか?おかっぱ頭の可愛らしい童女が軽く背伸びをするようにつま先立ちになって、両手を高く上げている。
そう、ちょうど小さな子供が「通りゃんせ」をして遊ぶ時のように。
少女はたった一人で執拗に歌い続ける。誰かが高く掲げた手をくぐるのを待っているのだろうか?
次第に歌は上ずって調子が外れ、きぃきぃと耳障りなまでに甲高くなった。何かを強いるような響きに頭が痛くなりかけたその時、棺の蓋がすぅっとズレると、中から白い人影のようなものが。
白い影は少女の手の下をくぐると、ひゅぅ、と吸い込まれるように縮んで虚空に消えた。
ぼんやりとしてはいたが、あの影は間違いなく亡くなった祖父の顔をしていた。
深夜、どこからともなく聴こえてきた唄声に飛び起きた。目に飛び込んでくる見慣れぬ格天井。
ここは山中の小さな村。父が生まれ育った片田舎の旧家の座敷だ。この村では死者が出ると、通夜の前日に身内が死体の不寝番をする。
祖父が死んだと知らせがあったのが、大学の試験の最終日。
ちょうど試験休みだから行ってこい、と父の代理で送り込まれたのが運の尽き。一族に若い男が他にいないからと、不寝番をやらされる羽目になった。
棺の脇に置かれた座椅子で寝たフリをしながら、薄目でそっと声の方を見る。六歳くらいだろうか?おかっぱ頭の可愛らしい童女が軽く背伸びをするようにつま先立ちになって、両手を高く上げている。
そう、ちょうど小さな子供が「通りゃんせ」をして遊ぶ時のように。
少女はたった一人で執拗に歌い続ける。誰かが高く掲げた手をくぐるのを待っているのだろうか?
次第に歌は上ずって調子が外れ、きぃきぃと耳障りなまでに甲高くなった。何かを強いるような響きに頭が痛くなりかけたその時、棺の蓋がすぅっとズレると、中から白い人影のようなものが。
白い影は少女の手の下をくぐると、ひゅぅ、と吸い込まれるように縮んで虚空に消えた。
ぼんやりとしてはいたが、あの影は間違いなく亡くなった祖父の顔をしていた。
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