僕は全てを許さない。

Rim

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僕は全てを許さない。

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そこはまるで、地獄だった。
いや、地獄の方がマシかもしれない。

「あ、金髪野郎がいるぞ!」
「やーい、ぼっち野郎ー!」
「金髪菌が感染るぞー、近づくなー!」
そう言いながらあいつらは笑いながら去ってゆく。
何が面白いんだろう。僕はただ歩いているだけなのに。
迷惑もかけてないし、ましてや悪いこともしてないのに。
恐怖は無知からくると言われている。
でも、僕は周りの人が怖いとは思わない。
それは知っているからだと思ってる。
僕は理解しようとしているんだ。
なのに何故、僕のことをわかってはくれないのだろう?
「....高望み....かな....」
僕は一生孤独。例え友達ができたとしても.....
「結局孤独なんだよなー」
自分で言って涙が出てくる。
肌、髪、目の色が違う?
耳の形が違う?
民族が違う?
寿命が....違う?
そんなのどうだっていいじゃん。
ボーッと考えていると....
「....っ!」
「キャ!」
人間とぶつかってしまった。もし相手が怪我をしていたら....顔が青ざめる。
「ご、ごめんなさい!」
「....え....?」
年は5、6位の女の子。お嬢様っぽい高価な服を着ている。
うつむい今にも泣き出しそうな顔をしていた。
それにしても....ここ数十年生きてきて人間に謝られたことなど一度もなかった。
「....負けた。」
「え?」
うつむいていた女の子はそう呟いた途端、ガバっと顔を上げる。
「背の高さ、負けた!」
そう叫ぶ。背の高さがコンプレックスなのかもしれない。
「えっと....僕は実質君より20歳年上だし。....見た目はこんなだけど。」
「そんなのどうだっていいじゃん。負けは負けなんだもん。」
「え....」
そんなことを言ってもらったのは初めてだった。
「“どうだっていいじゃん”....か....」
「なんか言ったー?」
「なんでもないよ。」
すると、女の子のメイドらしき服を着た人が血相を変えてこちらに走ってくるのが見えた。
僕は慌てて女の子に聞く。
「君、怪我はない?大丈夫?」
そう聞くと女の子がコクリと頷いた。
「そっか、良かった。じゃあね。」
僕はそう言い置き、その場から走り去った。
「お嬢様!お嬢様はお体が弱のですから、走ってはいけません!お嬢様のお体は貴方様だけの物ではないのです!」
風にのってそんな声が聞こえてきた。

数日後、いつも通り菌扱いされ、それをうつむいて黙って聞いている。
その時、
「ちょっと!よってたかって何してんの!」
この前ぶつかってしまった女の子があいつらと僕の間に立っていた。
「あん?お前には関係無いだろ?」
「....っ!」
あいつらの形相に一瞬怯んだ女の子だったが、前みたいに顔をバッと上げ、
「関係なくないもん!この子は私の友達だもん!」
僕はあ然呆然だ。
「おい、ナヨナヨ女が出しゃばってるぞ。」
そう言いながら一人が女の子を殴った。
その瞬間が僕にはスローモーションに見えた。
ドサリ
女の子が倒れる音がする。
僕は急いで女の子の近くに駆け寄った。
「おい、殴るなよ!女の子だろ!この子は関係ないだろ!」
非難の意味とありったけの力を込めて叫ぶ。
「チッ、今日は勘弁してやるよ。」
僕の気迫に気圧されたのか、そう捨て台詞を吐きながらあいつらは去っていった。
「....あ、ありがとう!」
女の子は立ち上がって、手についた土をはらう。
「大丈夫?痛くない?お医者さんに行こう!」
「大丈夫よ。これくらい。」
「いいから、行こう!」
女の子の手を引いて医者のところに行く道すがら、気になったことを聞いてみる。
「ねぇ、僕達って、友達?」
すると助けてくれた女の子はニパッと笑って言う。
「友達だよ!これからよろしくね!」
信じたいな。信じてもいいかな?
でも今まで受けてきた扱いによって心の底から信じることは難しかった。
いつか裏切られてしまう。そのいつかがくるのが怖かったのかもしれない。
僕は今まで孤独だった。
誰かと一緒に生きてみたかった。
これは僕が生まれて初めての、人との触れ合いの物語。

あれから数年、今、彼女は僕の家で暮らしている。彼女は家を追い出されたのだ。
全て僕のせいだ。
彼女は、僕を庇うどころか、友達として接していたためだ。
「それは明らかにおかしい!彼女は....!」
声が枯れるまで彼女の家の前で叫んだ。
勿論、嫌われ者の僕が言ったことで何も変わらなかったが。
その時の彼女の言葉を今も鮮明に覚えている。
「私は大丈夫だよ。君がいてくれるし。」
そう言った彼女の笑顔は少し無理をしているような気がしてならなかった。
でも僕がその事で謝ると、彼女は怒った顔をしながら、
「これ以上謝ったら、この家出てくから!」

「....ゲホ....ゲホゲホッ」
「ん....?」
「....あ、ごめんね。起こしちゃったかな。」
「あ、うんん。大丈夫?........懐かしい夢を見てたんだ。」
生まれつき体が弱かったらしい彼女は、今、流行病をこじらせていた。
....久々に幼い頃の夢を見た。
彼女と出会ったことで僕は変わった。
いい機会だから、あの日答えが怖くて今まで聞けなかった事を聞いてみよう。
「ねぇ、何で僕なんかを助けたの?僕なんか放っておけばよかったのに。」
彼女は、悲しそうに告げた。
「....私ね、体がこんなだから家族に迷惑かけるし、将来は絶対死ななくてはならなかったの。」
「えっ!それってどういう意味....」
「いわゆる生贄ね。」
彼女は申し訳無さそうに続ける。
「それでね、どうせ死んじゃうんだったら、嫌われ者と友達になってやろう!って思ったの。自分の運命に抗いたかったのかも。私の事情で振り回してしまって本当にごめんなさい。」
「それは良いんだけど....」
「それにね....」
彼女が、少しやつれた顔で初めて会った時みたいにニパッと笑って続けた。
「君、いつも悲しそうだったじゃん。バイバイって言うとき、凄く寂しそうな顔してたんだもん。」

彼女は寿命を全うしたが、寿命が長い僕にとってはその歳月は一瞬だった。
僕は悲しみに暮れながら、また孤独になった。
....僕は全てを許さない。
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