19 / 70
第一章 オクタヴィアンはハゲを治したいだけ
第十九話 黒いコートの男
しおりを挟む
オクタヴィアンは一人、パチパチと聞こえる焚き火の音を聞きながら、仰向けになりながら死を覚悟していた。
全身の痺れや腹痛、吐き気などを感じつつも、全く動くことのできない今の現状。
焚き火があるからまだ寒さはかろうじて防げている部分もあるが、地面についている背中からくる冷気はとんでもなく冷たい。それに風だってかなりな冷たさだ。
そして激しく鼓動していた心臓も弱ってきてるし、この毒が回るのが早いか、寒さか、どちらにしろ自分の意識がここでなくなれば、このまま死ぬだろう。
何と言っても、目の前でヨアナとローラがラドゥと黒い人達に連れて行かれてしまった。
ボクを残して……
きっとこのままボクは死ぬ運命なんだろう……
そうオクタヴィアンは考えていた。
「ふ~む……なんだ? この男は……」
そこにいきなりまた足音もなく目の前に男が現れた。
オクタヴィアンの意識は朦朧としていたが、あまりの出来事に目が覚めた。
その男は全身を黒いコートに身を包み、背丈はそれ程大きくなさそうだが背筋をピンと伸ばして姿勢がいい。
顔は彫りの深く髭はない。見た目は四十代くらい。鋭い目つきをしており、鼻は通り若ければかなりな美形だったと推測できる。髪は黒色でフサフサなのが分かる。その髪をオールバックにかためて実に渋い。
その男はラドゥと同じように空中を軽く浮きながら移動して、スープの入っていたお椀や、馬車やそこで動く気力もなくなっているアンドレアスの姿など、かなりじっくりと観察している。
「ふ~む……これは面白い。おまえはあの男に毒を飲まされたんだな? 口から出る匂いですぐに分かった。そしてそこの男。おまえはこの男を殺してどうしたかったのだ? どうやら他に人間が一人……いやもう一人、子供がいたようだが……。なるほど、ラドゥがその二人を連れ去ったとみえる。するとおまえ達はラドゥの知り合いか何かなんだな。なるほど~……」
その男はアンドレアスには目もくれず、仰向けに倒れているオクタヴィアンの元へ来ると、その場でしゃがみ込んだ。
自分には用がないと気がついたアンドレアスは、馬車に打ちつけられた全身の痛みを気にしながらもその場を離れようと少しずつ、少しずつ馬車から離れようと静かに移動を始めた。
しかし、道の奥からいくつもの松明の火と、人の話し声、それと道を歩く音がシャカシャカと聞こえてきた。
それはどんどん近くなり、それは十数人の団体と、大型の馬車である事が確認できた。
そしてそれが地元のジプシーであるのは明白だった。しかしアンドレアスはその顔を全く知らない。
ジプシー達はアンドレアスの近くまで来ると、周りを見渡して、何があった? だのどうした? だのと話をしている。
アンドレアスはすっかり逃げる事をあきらめた。
そしてジプシーの一人が男に向かって声をかけた。
「あ~、テスラ様。わしらどうしたらいいですかねえ」
「ふ~む。そこにいる男と馬車を運んで行ってほしい」
「分かりました~!」
その声と共にアンドレアスは無理矢理立たされて拘束され、馬車も没収され、再び闇の中へ消えていった。
そしてこの場には完全にオクタヴィアンと男の二人になった。
「ふ~む……。この匂いをザッと分析すると、トリカブトが主成分……後はヒ素と阿片……ひょっとするとカエルも入っているな? どのみちこのままだと君は後数分で死ぬんだが……。ここで二つの選択肢がある。一つはこのままここでのたれ死ぬ。もう一つは私の教材になる。実はな、私は吸血鬼という化け物でな。しかし研究者でもある。いろいろと過去に事例を見てきたし、実験した事もあるのだが、毒で死ぬ寸前の人間を吸血鬼に変える実験はしていなかったんだよ。どうだ? 私の実験に参加してくれないか? 何かしらの弊害が起こるのか見てみたい。このまま死ぬよりいいと思うんだが」
吸血鬼?
何を言ってるんだ? 正気なのか? あれ? でもラドゥも飛んだし、この人も足が浮いてたな……。え? ボクはこの後、吸血鬼にされるのか? 嫌だ! そんなのは断じてお断りだ!
オクタヴィアンは、その男の申し出を断ろうとしたが、やはり口がきけない。
オクタヴィアンは目でその意思を表そうとした。
「んん? 何も言わない……言えないのかな? 確かトリカブトには全身を痙攣させてしまう効果があったからな。しかしその目つき、私の申し出を心して受けると言うことと見た! 素晴らしい!」
違う~~~~~~~っっ!
そうじゃない~~~~~~~~~っっ!
オクタヴィアンはしっかり勘違いされた事に慌てて否定したいが、やっぱり身体は動かない。
しかしそんな思いを分かっていないこの男は、オクタヴィアンの首元の服をグイっと両手でよけると、オクタヴィアンの首筋に向かって顔を近づけた。
おいおいおいおい! やめてくれ~~~~! ボクの血を吸うのは勘弁してくれ~~~~っっ!
オクタヴィアンは噛まれたくない一心で身体を少しだけ動かした。するとその男はいった。
「何。吸血鬼になるのも悪くないぞ。見た目も若返る事もあるし、いろんな新しい能力が手に入る。私のようにな」
……え? 若返る? それはつまり……髪の毛が戻るっ?
オクタヴィアンは男に首筋を噛まれた。
き、吸血鬼になってまう!
そう思いながらも、実は内心何かちょっと期待をし始めた。
自分の血が首筋から吸われている感覚がしっかりあるが、それは痛みではなく、むしろ気持ちがいい気がする。
これで髪の毛が生えれば……
オクタヴィアンはそのまま意識を失った。
全身の痺れや腹痛、吐き気などを感じつつも、全く動くことのできない今の現状。
焚き火があるからまだ寒さはかろうじて防げている部分もあるが、地面についている背中からくる冷気はとんでもなく冷たい。それに風だってかなりな冷たさだ。
そして激しく鼓動していた心臓も弱ってきてるし、この毒が回るのが早いか、寒さか、どちらにしろ自分の意識がここでなくなれば、このまま死ぬだろう。
何と言っても、目の前でヨアナとローラがラドゥと黒い人達に連れて行かれてしまった。
ボクを残して……
きっとこのままボクは死ぬ運命なんだろう……
そうオクタヴィアンは考えていた。
「ふ~む……なんだ? この男は……」
そこにいきなりまた足音もなく目の前に男が現れた。
オクタヴィアンの意識は朦朧としていたが、あまりの出来事に目が覚めた。
その男は全身を黒いコートに身を包み、背丈はそれ程大きくなさそうだが背筋をピンと伸ばして姿勢がいい。
顔は彫りの深く髭はない。見た目は四十代くらい。鋭い目つきをしており、鼻は通り若ければかなりな美形だったと推測できる。髪は黒色でフサフサなのが分かる。その髪をオールバックにかためて実に渋い。
その男はラドゥと同じように空中を軽く浮きながら移動して、スープの入っていたお椀や、馬車やそこで動く気力もなくなっているアンドレアスの姿など、かなりじっくりと観察している。
「ふ~む……これは面白い。おまえはあの男に毒を飲まされたんだな? 口から出る匂いですぐに分かった。そしてそこの男。おまえはこの男を殺してどうしたかったのだ? どうやら他に人間が一人……いやもう一人、子供がいたようだが……。なるほど、ラドゥがその二人を連れ去ったとみえる。するとおまえ達はラドゥの知り合いか何かなんだな。なるほど~……」
その男はアンドレアスには目もくれず、仰向けに倒れているオクタヴィアンの元へ来ると、その場でしゃがみ込んだ。
自分には用がないと気がついたアンドレアスは、馬車に打ちつけられた全身の痛みを気にしながらもその場を離れようと少しずつ、少しずつ馬車から離れようと静かに移動を始めた。
しかし、道の奥からいくつもの松明の火と、人の話し声、それと道を歩く音がシャカシャカと聞こえてきた。
それはどんどん近くなり、それは十数人の団体と、大型の馬車である事が確認できた。
そしてそれが地元のジプシーであるのは明白だった。しかしアンドレアスはその顔を全く知らない。
ジプシー達はアンドレアスの近くまで来ると、周りを見渡して、何があった? だのどうした? だのと話をしている。
アンドレアスはすっかり逃げる事をあきらめた。
そしてジプシーの一人が男に向かって声をかけた。
「あ~、テスラ様。わしらどうしたらいいですかねえ」
「ふ~む。そこにいる男と馬車を運んで行ってほしい」
「分かりました~!」
その声と共にアンドレアスは無理矢理立たされて拘束され、馬車も没収され、再び闇の中へ消えていった。
そしてこの場には完全にオクタヴィアンと男の二人になった。
「ふ~む……。この匂いをザッと分析すると、トリカブトが主成分……後はヒ素と阿片……ひょっとするとカエルも入っているな? どのみちこのままだと君は後数分で死ぬんだが……。ここで二つの選択肢がある。一つはこのままここでのたれ死ぬ。もう一つは私の教材になる。実はな、私は吸血鬼という化け物でな。しかし研究者でもある。いろいろと過去に事例を見てきたし、実験した事もあるのだが、毒で死ぬ寸前の人間を吸血鬼に変える実験はしていなかったんだよ。どうだ? 私の実験に参加してくれないか? 何かしらの弊害が起こるのか見てみたい。このまま死ぬよりいいと思うんだが」
吸血鬼?
何を言ってるんだ? 正気なのか? あれ? でもラドゥも飛んだし、この人も足が浮いてたな……。え? ボクはこの後、吸血鬼にされるのか? 嫌だ! そんなのは断じてお断りだ!
オクタヴィアンは、その男の申し出を断ろうとしたが、やはり口がきけない。
オクタヴィアンは目でその意思を表そうとした。
「んん? 何も言わない……言えないのかな? 確かトリカブトには全身を痙攣させてしまう効果があったからな。しかしその目つき、私の申し出を心して受けると言うことと見た! 素晴らしい!」
違う~~~~~~~っっ!
そうじゃない~~~~~~~~~っっ!
オクタヴィアンはしっかり勘違いされた事に慌てて否定したいが、やっぱり身体は動かない。
しかしそんな思いを分かっていないこの男は、オクタヴィアンの首元の服をグイっと両手でよけると、オクタヴィアンの首筋に向かって顔を近づけた。
おいおいおいおい! やめてくれ~~~~! ボクの血を吸うのは勘弁してくれ~~~~っっ!
オクタヴィアンは噛まれたくない一心で身体を少しだけ動かした。するとその男はいった。
「何。吸血鬼になるのも悪くないぞ。見た目も若返る事もあるし、いろんな新しい能力が手に入る。私のようにな」
……え? 若返る? それはつまり……髪の毛が戻るっ?
オクタヴィアンは男に首筋を噛まれた。
き、吸血鬼になってまう!
そう思いながらも、実は内心何かちょっと期待をし始めた。
自分の血が首筋から吸われている感覚がしっかりあるが、それは痛みではなく、むしろ気持ちがいい気がする。
これで髪の毛が生えれば……
オクタヴィアンはそのまま意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる