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繰り返すわけにはいかない
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ミラー中尉の運転する『トヨタ』に揺られながら、イツキはぼんやりと荒野を見ていた。
月光を浴びる荒野を見ながら、なにも考えないようにしようとしたけれど、油断するとレヴィーンの姿が溢れて、目に映る世界が歪んでしまいそうになった。
見え隠れする虚ろな世界は、イツキの知らない、音も色もない世界だった。
そこには、人の営みや、紡がれる生命の気配のような物は、ぜんぜん何もなくて、乾いていて、とても清潔だった。
足を踏み出しさえすれば、そこに行けると思った。
そこには喜びや愛しさのようなものがない代わりに、憎しみや苦痛も存在しない。
なにも望みさえしなければ、完璧な、安定した世界だ。
実際にはそんな姿見たことはないのだけれど、日本の女の子みたいなポップな服装のレヴィーンが現れて、イツキに微笑みかけた。
――だめよイツキ。そこは、イツキにはまだ、早すぎるわ。
どうして? レヴィーンがそこで暮らせるのなら、ぼくだって大丈夫さ。
――イツキにはまだ無理よ。だってイツキはわたしのことを思い出しているもの。ここは、誰も誰かのことを考えたりしない場所なの。わたしのことも、自分のことさえ――なにもかも忘れてしまうわ。それでもいい?
でも、レヴィーン。こんなに苦しいんだ。
――それは、イツキの心臓がまだ動いている証拠よ。もし、イツキがわたしのことを憶えていてくれなかったら、わたしは世界に生まれてこなかったと同じなの。そんなの悲し過ぎるでしょ。だからイツキ……あなたは、生きていて。
あなたは、生きて苦しむのよ、とそう言われたような気がした。
それは、足元に水たまりが静かに広がっていくような、冷え切った感覚だった。
こんなことは、終わりにしなくてはいけない。
こんなことは繰り返すわけにはいかない。レヴィーンのような被害者を、これ以上、増やすわけにはいかない。
イツキは、誰にも知られることなく、一人、静かに決意した。
こんな病気は、地球上から消してしまわなくてはいけない……たとえ、どのような手段を使ってでも。
月光を浴びる荒野を見ながら、なにも考えないようにしようとしたけれど、油断するとレヴィーンの姿が溢れて、目に映る世界が歪んでしまいそうになった。
見え隠れする虚ろな世界は、イツキの知らない、音も色もない世界だった。
そこには、人の営みや、紡がれる生命の気配のような物は、ぜんぜん何もなくて、乾いていて、とても清潔だった。
足を踏み出しさえすれば、そこに行けると思った。
そこには喜びや愛しさのようなものがない代わりに、憎しみや苦痛も存在しない。
なにも望みさえしなければ、完璧な、安定した世界だ。
実際にはそんな姿見たことはないのだけれど、日本の女の子みたいなポップな服装のレヴィーンが現れて、イツキに微笑みかけた。
――だめよイツキ。そこは、イツキにはまだ、早すぎるわ。
どうして? レヴィーンがそこで暮らせるのなら、ぼくだって大丈夫さ。
――イツキにはまだ無理よ。だってイツキはわたしのことを思い出しているもの。ここは、誰も誰かのことを考えたりしない場所なの。わたしのことも、自分のことさえ――なにもかも忘れてしまうわ。それでもいい?
でも、レヴィーン。こんなに苦しいんだ。
――それは、イツキの心臓がまだ動いている証拠よ。もし、イツキがわたしのことを憶えていてくれなかったら、わたしは世界に生まれてこなかったと同じなの。そんなの悲し過ぎるでしょ。だからイツキ……あなたは、生きていて。
あなたは、生きて苦しむのよ、とそう言われたような気がした。
それは、足元に水たまりが静かに広がっていくような、冷え切った感覚だった。
こんなことは、終わりにしなくてはいけない。
こんなことは繰り返すわけにはいかない。レヴィーンのような被害者を、これ以上、増やすわけにはいかない。
イツキは、誰にも知られることなく、一人、静かに決意した。
こんな病気は、地球上から消してしまわなくてはいけない……たとえ、どのような手段を使ってでも。
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