-PEACE KEEPER- (バルバロイR2)アルファ版

ずかみん

文字の大きさ
79 / 85

もうお休み

しおりを挟む
 アリシアがバランスを崩して転倒している間に、イツキは弾倉を交換した。手慣れた素早い動きだった。イツキは、倒れた強化外骨格XOS-5に、また斉射を加えて、今度は右腕が取れた。

「……アリー……」

 唯斗の声には、がっかり感が滲み出ていた。

 なによ、あたしは、あんたの指示に従っただけじゃない!

「うるさいわね! あんただって騙されたでしょ!」

 コディが向き直るのが、視界の端に見えた。ミニガンの六つある銃口を、全部、覗くことができた。
 ああ……ばらばらだ。

「ま、いいよアリー。時間的には十分間に合った」

 閃光で、センサがホワイトアウトした。音圧がリミットを超えて、全ての音が掻き消える。アリシアの感覚野は、一時的に感覚を消失した。

 ハレーションを起こしたカメラが光量調整を終えると、コディの半分が消失し、残りの半分はねじ曲がった金属塊になっていた。
 脚は自重を支えきれず、コディは横転して、生き物のように痙攣した。蓄電素子が熱溶解して、体液のようにこぼれた。

 ……え、なに?

「まったく……バックグラウンドで操縦するのは大変だったよ、アリー」

 アリシアの足元で残骸になっている、唯斗の強化外骨格XOS-5が喋った。

 一機の【ピクシー】が、数十メートル先の稜線から現れた。コディを攻撃したのは対戦車ミサイルフランキスカだったようだ。
 ドローンの【ファハン】が頭上に浮いていた。【ファハン】のレーザースポットで照準し、稜線の死角から攻撃したのだ。

 イツキが【ピクシー】に銃弾を浴びせたけれど、それは意味がない攻撃だった。おそらく、イツキにもそれは分かっている。アリシアだって、銃弾がある間は可能性を探る。たまたまセンサを破壊するかもしれないし、装甲の隙間から銃弾が滑り込むかもしれない。

 弾切れと同時に、イツキは銃を捨て、肩をすくめた。

「タフだな、ヌエ。最初からずっと機体を運んでいたのか?」

 コディは、痙攣しながらなんとか立ち上がろうともがいていた、主人であるイツキの身を案じているのだ。電気部品の焦げる匂いがした。
 イツキは、コディに歩み寄り、痙攣する脚に、優しく手を触れた。

「もういいんだ、コディ。ぼくは大丈夫だ。『ハルシオン』はこれでも人道団体だからね……ありがとう。もうお休み」

 安心したように、コディは痙攣をやめ、動かなくなった。
 しばらくの間、イツキは動かないコディに手を触れたままだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...