後宮にて、あなたを想う

じじ

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102 皇帝の落胆

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「恥?」

にやりと笑った黄貴妃を見て、皇帝は深い溜め息をついた。

「話すから、相談に乗ってくれ。そしてそんな面白そうな顔をするな」
「はい」

わざとらしく神妙な顔をした黄貴妃を見て、皇帝は再度息を吐いた。

「つまり、自分が他の側妃にばかり声をかけても落ち込むな、と仰ったのですか?」
「ああ」
「自信家ですわね。さすが、皇帝ともなると…すごいですわねー」
「やめてくれ」
「その場面、直接見たかってですわ。惜しいことをしました」
「それでだな。相談したいことにうつっていいか。」

皇帝が無理やり話題を変えると、黄貴妃はさっと次の言葉を引き継いだ。

「蔡怜様の皇后位の扱い、ですわね」
「ああ。話が早くて助かる。彼女はおそらく機会が来ればあなたに皇后位を譲りたいと考えているだろう。全体の調和と自分の立ち位置を冷静に把握してるからな。」
「迷惑ですわ」
「私の前だぞ。もっと他に言いようがないのか」
「あら、私が本気で皇后位を欲しがって困るのは陛下ではございませんか」
「ああ。さすが奸智に長けた黄狐姫こうこき殿だな」
「なんでしょうか、そのとってつけたような二つ名」
「言い得て妙だと思わないか。皇后は憂いの美姫、なんだろう?あなたも何か通り名が欲しいかと思ってな。」
「奸智に長けた、も狐も褒めているようには思えませんが」
「私の率直な感想だ」
「不要です。それより話を戻してくださいませ」
「ああ。皇后位、どうすれば彼女をそのまま据え置けるかと思ってな。」
「ちなみに蔡怜様のご意思を尊重される気はございますか」
「悪いが、ない。嫌がっても手放せない。彼女は私にとって掌中の玉だ。もちろんこの国にとってもだが」
「それをそのままおっしゃればいかがですか?」
「伝えたが響いてる気がしない。」
「どうせ言葉半分なのでしょう。蔡怜様はしっかり口説き落とすとして、問題は周りの貴族達かもしれませんね。」
「そちらは無視する。」
「分かってませんね。蔡怜様の皇后位を守りたければ、周りの貴族達の積極的な肯定が必要です。それが整わない限り蔡怜様は機を見て正妃の座を降りようとなさるでしょう」
「なぜだ」
「陛下の治世を重んじておられるのですから。足を引っ張るような真似なさるはずがありません。ご自身の立場が陛下の足手まといだと感じられれば、潔く身を引かれるでしょう。」
「私はそんなこと望んでいないのにか」
「同様に蔡怜様も陛下から家臣方が離れられる状況をお望みではないのでしょう。大切に思われておいでですわね」
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