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Quma

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ロイスの仕事

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 でも、愛歩の話はそこで終わりだった。そこまで話すとお風呂に入りにいってしまったからだった。
 それにロイス自身も少し疲れてしまっていたようだった。愛歩に着いて風呂まで一緒に行ってはみたがバスタブの上ですぐにウトウトしてしまっていた。お風呂を出てからも眠気は取れず部屋に戻るとすぐに歩美のベッドに飛び乗り寝てしまったようだった。
 目を覚ました時にはすでに時遅しだった。歩美はすぐ近くで寝息を立て眠ってしまっていたからだった。ロイスもしょうがないので歩美の寝息を聞きながらまた寝てしまっていた。

 「ロイス、お留守番よろしくね」
 愛歩は朝食を食べ終えると、ロイスにそう言いダイニングルームからバタバタと走り出て行ってしまった。ちょっと寝坊をしてしまったようだった。
 ニャン
 ロイスは歩美に返事をした。愛歩に安心して仕事に行って欲しかったからだった。
 そしてロイスはテーブルの向かいに座る兄の方に顔を向けた。
 愛歩が帰ってくるまではこの男と一人と一匹だけで居なくてはいけないからだった。
 「まあ、よろしくな」
 すると兄の方からロイスに話しかけてきた。
 でも、ロイスは返事をしないで大きなあくびをして見せた。
 「おいおい、何だよそれ、歩美が出かけていったらやけに寛いでないか」
 すると兄は不満そうな顔をしてそう言った。
 「俺は理人、暇そうにしてるように見えるかもしれないが、これでも今は一応仕事中だからな。仕事は探偵をしている。と言っても、アニメのロイスみたいに推理で事件を解決したりする仕事は受けたことはないけどな」
 そして、ロイスの気を引こうとするように自己紹介を始めた。
 ロイスは黙って聞いていた。まだ兄をよく知っているわけではなかったからだった。
 でも、兄はロイスの態度をそれほど気にしてはいないようだった。それからも仕事の悩みや愚痴だったり、これからの希望とか歩美を安心させるために頑張っていることを話し続けた。
 「そこでなんだけど、ロイスに頼みがあるんだ。とりあえずは迷子猫探しを手伝って欲しいんだ。具体的に言うと小型カメラや録音機を持って俺の入っていけないような所を調査してきてもらいたいんだ。もちろんGPSも持って行ってもらうから絶対に見失ったりはしないからな」 
 そしてロイスお待ちかねの探偵のお手伝いの話を話し始めた。
 ロイスは考え始めた。確かに兄の行けない所でも自分なら行ける所は多いに決まっていた。それにカメラや録音機は使ったことはないが、鼻には自信があった。兄には悪いが迷子猫探しなんてそんなに難しい仕事とは思っていなかった。
 ニャーン
 ロイスは兄に返事をした。断る理由はなさそうだったからだった。
 「いっ、良いのか」
 兄は驚いたような顔をしてロイスに聞き返した。
 ニャーン
 ロイスはまた返事をした。もちろん良いという意味だった。
 「あっ、そ、それじゃさ」
 すると兄はガタガタ音を立て椅子から立ち上がると部屋を出て行こうとし始めた。何かをロイスに見せようとしているようだった。
 トン
 ロイスもフロアーに下り兄に着いていった。
 「じっ、実は、俺の部屋にもう用意してる物があるんだ」
 兄はロイスが着いて来るのを見るとそう言った。ロイスは兄が何を言っているのか分からなかったがちょっと楽しみな気はしてきていた。
 「入ってくれ」
 すると兄は事務室のすぐ横の部屋のドアを開けそう言った。兄の部屋のようだった。
 ロイスは部屋に入り部屋の中を見渡した。
 愛歩の部屋とはだいぶ雰囲気が違っているようだった。フロアーには足の踏み場がないくらい色んな物が置かれていた。それにあちこちに棚があってたくさんの機器や雑誌が並べて置かれていた。
 ロイスはフロアーに置かれてる物を踏まないように注意しながら部屋の中へと入って行った。
 「昨夜色々作りものをしてたから散らかってるけど気にしないでくれ」
 すると兄はロイスを見ながらそう言った。そしてフロアーに置かれている物を拾い集めだした。
 ロイスは返事をせずベッドの上に飛び乗っていった。ベッドの上は散らかっていないようだったからだった。
 それに、まだ兄を完全に信頼しているわけではなかった。身を護るには足場が良い所にいた方が有利だと思ったからだった。
 「この3つを持って色んな所に行ってきて欲しいんだ。カメラと録音機とGPSだよ。どうやって身につけるかまだこれからだけどね」
 すると兄は3つの小さな機器をロイスに見せながらそう言った。
 意外と小さな機器のようだった。そんなに重そうではなさそうだった。
 「それでさ、一応こう言うのも作ってみたんだ」
 そして今度は小さなタータンチェックの布切れを手に取りロイスに見せた。3つの機器を入れるためのポケットも付けられているようだった。どうやらロイスの作業着のような物のようだった。
 「ロイス、悪いけどちょっとこの布を体に巻かせてもらえないかなあ」
 そしてロイスに布切れ見せながらそう言った。
 ニャン
 ロイスは返事をした。仕事着だと言うなら仕方がないと思ったからだった。
 「そ、そうか、じゃ、じゃあ、ちょっと寸法測るな」
 すると兄は布切れをベッドに置きメジャーを手に取った。どうやらロイスの体型に合わせて布を仕立て直すつもりのようだった。
 ロイスはベッドの上に立ち兄に寸法を測らせてあげた。
 
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