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窓の外の気配
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そして理人の車は無事マンションに帰ってきた。車の時計は午後3時10分を表示していた。
ブルルーン
理人はエントランスの前に車を停めるとエンジンを切った。
車に積んでいた猫捕獲道具をここから家に運び戻すためだった。
理人はロイスを抱え車から降りていった。道具を降ろすことより、今最優先にしなくてはいけないのはロイスを家に連れ帰ることだったからだった。歩美に電話で約束させられていたことだった。
ロイスは抵抗しないで理人に運ばれていった。楽ちんだったからだった。
理人は家に入るとすぐに自分の部屋に向かって行った。そしてロイスをベッドの上に降ろした。今はここが一番落ち着ける場所だろうと思ったからだった。
ニャン
ロイスは理人に礼を言った。そしてゴロリと横になった。慣れない車の移動で少し疲れているみたいだったからだった。
「じゃあ、しばらくここでゆっくりしててくれ。俺は車から荷物を降ろしてくるから」
すると理人はそう言いドアを少し開けたままにして部屋から出て行ってしまった。
ロイスは大あくびをしながら理人を見送った。どうせ手伝いにいっても足手まといになるのは分かっているからだった。
ロイスは一眠りしようと目を閉じた。
でも、すぐに目を開いた。窓の外に人の気配のようなものを感じたからだった。当然かもしれないが理人や愛歩のものではないのは間違いなかった。
ロイスは窓の外に神経を集中させていった。
まだはっきりしたわけではないが、気配は一人の人間のもののようだった。
ロイスは窓の外を見に行くか、理人を呼びに行くかを考え始めた。
でもすぐに考えるのを止めた。
もし仕事中に出会った危険な気配の女に関係する人なら、用があるのは自分にだと思われるからだった。もしそうなら理人兄妹は絶対に巻き込みたくはなかった。
トン
ロイスはベッドから降り窓の方に歩いていった。窓の外を見るためだった。
しかし外の気配はそれに合わせるかのように窓から遠ざかり始めているようだった。ただ、その動きは妙に早いみたいだった。
ロイスは窓枠に飛び乗り窓の鍵を開けた。昔からの得意技だった。
そして窓を少し開け顔を少し外に出した。遠ざかっていく気配の主を見るためだった。
でも、人の姿はどこにも見当たらなかった。
ロイスは窓の外を見渡してから外に飛び降りていった。もし誰かが近くに居たのなら匂いが残っているはずだからだった。
ロイスは地面の匂いを嗅ぎ始めた。
すぐに足跡らしいものも見つかった。誰かがここに居たのは間違いないようだった。足跡の大きさは男のもののようだった。
ロイスは足跡の匂いを嗅いでみた。やはりあの嫌な女の匂いではないようだった。
ロイスは理人の部屋に戻ることにした。理人にこうしてるところを見られたくなかったからだった。
ロイスは部屋に戻り窓を閉め鍵をかけた。
そして理人のベッドに戻っていった。
窓の外にはもう人の気配が戻って来ることはないようだった。もしかしたらただの通りがかりの人の気配だったのかもしれなかった。
ロイスはベッドに横になり目を閉じた。
しばらくすると理人は部屋に戻ってきた。でもロイスが眠っているのを見ると、ロイスに声をかけることなく部屋を出て行ってしまった。夕ご飯を作りに行ったようだった。
ロイスは知らんぷりをした。もう少しここで窓の外の気配を監視していたいからだった。
でも、いつの間にか眠りに落ちてしまってたようだった。
ロイスが目を覚ましたのは、歩美と理人が口喧嘩をしている声を耳にしたからだった。
「ロイスを連れてくなんて、本当にどう言うつもりなの。約束して、もう絶対連れて行かないで」
「そ、そうは言うけど、ちゃんと帰ってこれたじゃないか」
「今回はね。それにロイスが行きたくて行ったわけじゃないでしょ。まだ昨日家に来たばかりなのよ」
「それはそうだけど、GPSを付けてたし、一匹でここで留守番させるのも可哀想だと思ったんだよ」
「お兄ちゃんと一緒ならロイスは安心だったとでも言うの」
「安心と言うか、その、何と言うか、俺より仕事を頑張ってくれてたみたいだった」
「もう、何を言ってるの。そんなことあるわけ無いでしょ。ロイスは猫なのよ」
「ほ、本当なんだってば」
「とにかく、次の仕事には絶対に連れて行かないで」
「そ、それは、勘弁してくれよ」
「駄目、」
どうやら歩美はロイスに理人の仕事の手伝いをさせるのは問答無用に反対のようだった。
「分かって。もし、元飼い主の遺産相続人が猫を引き取りたいって言ってきたらどうするつもりなの」
「それは、うーん」
だんだん理人の言葉が歯切れ悪くなっていった。どうやらそんな事までは考えていなかったようだった。
トン
ロイスはベッドから降り理人の部屋を出て行った。二人にこれ以上言い争いを続けさせるのは好ましい事とは思えなかったからだった。
ニャーン
そして歩美の側まで行き二人に声をかけた。
「あっ、起こしちゃった、ごめんね」
歩美はしゃがみ込みロイスの頭を優しく撫で始めた。
ニャーン
ロイスは甘えた声で返事をした。そして抱っこしてくれと歩美にせがんだ。
「えっ、だっこ、どうしたの、寂しかったの」
歩美はそう言いながらロイスを優しく抱き上げた。
「分かったわね」
そして理人に釘を刺すようにそう言った。
「分かった」
理人は渋々そう返事をした。歩美の言うことも一理あるかもしれないと思ったようだった。
ロイスもここは歩美の言う通りにしておいた方が良いかなと思っていた。こんな事で兄妹の仲を壊したくなかったからだった。
「ロイス、ごめんね。今日は大変だったみたいだもんね」
すると歩美はロイスにそう言いながら自分の部屋の方に歩き始めた。どうやら兄弟喧嘩は一時休戦となったようだった。
ニャーン
ロイスは甘えたような声上げ歩美の手をペロペロと舐めてあげた。兄妹喧嘩を止めてくれたお礼のためだった。
ブルルーン
理人はエントランスの前に車を停めるとエンジンを切った。
車に積んでいた猫捕獲道具をここから家に運び戻すためだった。
理人はロイスを抱え車から降りていった。道具を降ろすことより、今最優先にしなくてはいけないのはロイスを家に連れ帰ることだったからだった。歩美に電話で約束させられていたことだった。
ロイスは抵抗しないで理人に運ばれていった。楽ちんだったからだった。
理人は家に入るとすぐに自分の部屋に向かって行った。そしてロイスをベッドの上に降ろした。今はここが一番落ち着ける場所だろうと思ったからだった。
ニャン
ロイスは理人に礼を言った。そしてゴロリと横になった。慣れない車の移動で少し疲れているみたいだったからだった。
「じゃあ、しばらくここでゆっくりしててくれ。俺は車から荷物を降ろしてくるから」
すると理人はそう言いドアを少し開けたままにして部屋から出て行ってしまった。
ロイスは大あくびをしながら理人を見送った。どうせ手伝いにいっても足手まといになるのは分かっているからだった。
ロイスは一眠りしようと目を閉じた。
でも、すぐに目を開いた。窓の外に人の気配のようなものを感じたからだった。当然かもしれないが理人や愛歩のものではないのは間違いなかった。
ロイスは窓の外に神経を集中させていった。
まだはっきりしたわけではないが、気配は一人の人間のもののようだった。
ロイスは窓の外を見に行くか、理人を呼びに行くかを考え始めた。
でもすぐに考えるのを止めた。
もし仕事中に出会った危険な気配の女に関係する人なら、用があるのは自分にだと思われるからだった。もしそうなら理人兄妹は絶対に巻き込みたくはなかった。
トン
ロイスはベッドから降り窓の方に歩いていった。窓の外を見るためだった。
しかし外の気配はそれに合わせるかのように窓から遠ざかり始めているようだった。ただ、その動きは妙に早いみたいだった。
ロイスは窓枠に飛び乗り窓の鍵を開けた。昔からの得意技だった。
そして窓を少し開け顔を少し外に出した。遠ざかっていく気配の主を見るためだった。
でも、人の姿はどこにも見当たらなかった。
ロイスは窓の外を見渡してから外に飛び降りていった。もし誰かが近くに居たのなら匂いが残っているはずだからだった。
ロイスは地面の匂いを嗅ぎ始めた。
すぐに足跡らしいものも見つかった。誰かがここに居たのは間違いないようだった。足跡の大きさは男のもののようだった。
ロイスは足跡の匂いを嗅いでみた。やはりあの嫌な女の匂いではないようだった。
ロイスは理人の部屋に戻ることにした。理人にこうしてるところを見られたくなかったからだった。
ロイスは部屋に戻り窓を閉め鍵をかけた。
そして理人のベッドに戻っていった。
窓の外にはもう人の気配が戻って来ることはないようだった。もしかしたらただの通りがかりの人の気配だったのかもしれなかった。
ロイスはベッドに横になり目を閉じた。
しばらくすると理人は部屋に戻ってきた。でもロイスが眠っているのを見ると、ロイスに声をかけることなく部屋を出て行ってしまった。夕ご飯を作りに行ったようだった。
ロイスは知らんぷりをした。もう少しここで窓の外の気配を監視していたいからだった。
でも、いつの間にか眠りに落ちてしまってたようだった。
ロイスが目を覚ましたのは、歩美と理人が口喧嘩をしている声を耳にしたからだった。
「ロイスを連れてくなんて、本当にどう言うつもりなの。約束して、もう絶対連れて行かないで」
「そ、そうは言うけど、ちゃんと帰ってこれたじゃないか」
「今回はね。それにロイスが行きたくて行ったわけじゃないでしょ。まだ昨日家に来たばかりなのよ」
「それはそうだけど、GPSを付けてたし、一匹でここで留守番させるのも可哀想だと思ったんだよ」
「お兄ちゃんと一緒ならロイスは安心だったとでも言うの」
「安心と言うか、その、何と言うか、俺より仕事を頑張ってくれてたみたいだった」
「もう、何を言ってるの。そんなことあるわけ無いでしょ。ロイスは猫なのよ」
「ほ、本当なんだってば」
「とにかく、次の仕事には絶対に連れて行かないで」
「そ、それは、勘弁してくれよ」
「駄目、」
どうやら歩美はロイスに理人の仕事の手伝いをさせるのは問答無用に反対のようだった。
「分かって。もし、元飼い主の遺産相続人が猫を引き取りたいって言ってきたらどうするつもりなの」
「それは、うーん」
だんだん理人の言葉が歯切れ悪くなっていった。どうやらそんな事までは考えていなかったようだった。
トン
ロイスはベッドから降り理人の部屋を出て行った。二人にこれ以上言い争いを続けさせるのは好ましい事とは思えなかったからだった。
ニャーン
そして歩美の側まで行き二人に声をかけた。
「あっ、起こしちゃった、ごめんね」
歩美はしゃがみ込みロイスの頭を優しく撫で始めた。
ニャーン
ロイスは甘えた声で返事をした。そして抱っこしてくれと歩美にせがんだ。
「えっ、だっこ、どうしたの、寂しかったの」
歩美はそう言いながらロイスを優しく抱き上げた。
「分かったわね」
そして理人に釘を刺すようにそう言った。
「分かった」
理人は渋々そう返事をした。歩美の言うことも一理あるかもしれないと思ったようだった。
ロイスもここは歩美の言う通りにしておいた方が良いかなと思っていた。こんな事で兄妹の仲を壊したくなかったからだった。
「ロイス、ごめんね。今日は大変だったみたいだもんね」
すると歩美はロイスにそう言いながら自分の部屋の方に歩き始めた。どうやら兄弟喧嘩は一時休戦となったようだった。
ニャーン
ロイスは甘えたような声上げ歩美の手をペロペロと舐めてあげた。兄妹喧嘩を止めてくれたお礼のためだった。
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