Reborn

調査室への急襲

　そしてクラークは何とか国家安全保証局まで車を運転し帰ってきた。そして車両整備施設まで走って行き停車させた。
　「この車の内部調査をお願いします」
　そして車に気づいて出てきた整備士にそう言った、
　「内部調査ですか、だいぶ外回りも傷んでるみたいですが」
　「しかも、危険物や危険生物が入っている可能性もあるんだ」
　「分かりました。厳戒態勢で調査致します」
　「お願いします」
　クラークはそう言うとロイスと一緒に車から降りていった。
　「ロイスは怪我はしてないか」
　「俺は大丈夫。それより狐の匂いに気が付かなくて済まなかったね。また危ない目に合わせてしまった」
　「狐も馬鹿じゃないということだろう。しょうがない」
　「いや、油断してたのかもしれない」
　「ロイスだけじゃないよ」
　「次は気をつけるよ」
　「お互いにな。しかし、狐の作戦はだんだん変化してきてるみたいだな」
　「そうだね。俺の知っている狐はそんな奴じゃなかったけどな」
　「俺達との戦いで学習していってるのかもしれないな」
　「そうだろうか」
　ロイスは黄泉の国での狐の作戦を思い出してみた。
　あの頃も大胆で残虐なところはあったが、その場その場で悪ふざけを楽しむような作戦ばかりだったような気がした。とても学習して成長していくような奴には思えなかった。
　ロイスは実は学習しながら成長していった人間を知っていたからだった。どう考えてもその人間と比べると狐では足元にも及びそうもなかった。
　「まあ、どうでも良いけどな。とりあえず今は調査室で休憩しよう」
　クラークは時計を見ながらそう言った。
　まだ午前4時前だった。2～3時間くらいなら寝れるかもしれなかった。

　ウイーン
　そしてクラークとロイスは誰もいないだろう調査室へと入って行った。
　「失礼します」
　「お疲れ様」
　すると部屋の奥から返事が返ってきた。室長が先に来て二人を待っていたようだった。
　「大変だったみたいだね」
　「マリアの息子の所に行ったんだけど、狐につけられることになってしまった」
　「そうみたいだな」
　「龍が殺られたようです」
　「龍の遺体が車のハッチバックから見つかったそうだ」
　「そうですか」
　「痛い損失だな」
　「はい」
　クラークは室長に頭を下げた。自分に責任があると思っているからだった。
　「頭を上げたまえ、君の責任ではない。それよりこれからの事を考えないとな」
　しかし室長はそう言った。クラークを責める気はないようだった。

　その時、ロイスは部屋に嫌な匂いが入って来ているのを感じた。
　「気をつけろ。狐の気配がする」
　ロイスは周りを見渡しながらクラークと室長に伝えた。
　「SG」
　クラークはそう言うと銃を構え身構えた。
　室長は急いでデスクの下に身を隠した。
　クラークとロイスは攻撃体勢を取り部屋を見渡した続けた。
　でも、どこにも敵の姿は目に入ってこなかった。
　クラークはパンツのポケットからヘッドマスクのような物を取り出し頭に被った。そしてマスクからゴーグルのような物を降ろし周りを見始めた。赤外線サーモ感知機能のあるゴーグルだった。
　「クラーク左後方が怪しい」
　ロイスは匂いを探りながらそう言った。
　「了解」
　クラークは前方に進み出て後ろを振り返った。
　そして赤いかたまりが近づいて来ているのに気がついた。
　ボシュッボシュッボシュッ
　クラークは赤いかたまり目掛けて銃撃した。
　キーッ
　獣の叫び声が部屋に鳴り響いた。そして赤いかたまりは白い狐の形に変わっていった。
　しかし絶命はしていないようだった。狐はクラークの方に進み続けクラークの顔に液状の物を吐きかけた。
　「うっ、」
　クラークは慌てて手で拭き取ったが、少し鼻と口に吸い込んでしまったようだった。
　そしてクラークは床に崩れるように倒れていった。
　狐はそれを見ると気持ちの悪い笑顔を浮かべ室長のデスクの方に走っていった。次は室長を狙うつもりつもりのようだった。
　ボシュッボシュッ
　ロイスは狐を銃撃した。
　キーッ
　狐はまた悲鳴のような声を発しロイスの方に顔を向けた。怒り狂ったような顔だた。
　ヒューン
　するとその時、ドアの外から何か小さな物が飛んできた。
　ピカッ
　そして部屋は目が開けなくなるような眩しい光で包まれていった。
　ドドドドドドドド
　ダダダダダダダダダ
　すると部屋の中は大勢の人の足音と銃声が激しく鳴り響いていった。
　キィーッ
　狐の苦しそうな声も部屋に響き渡っていった。
　「封印カプセルに入れろ」
　「了解」
　「封印完了」
　「ご苦労」
　そして室長の声が聞こえた。
　どうやら狐をカプセルに捕らえたようだった。
　「クラーク、大丈夫か」
　クラークから返事は返ってこなかった。ロイスは目を凝らしクラークを探し始めた。