ハニードロップ

蜜柑大福

文字の大きさ
27 / 34

この気持ちの名は…

しおりを挟む
※三条優紀視点

「いてて…」

「優紀くん大丈夫?変わろうか?」

「…いえ、平気です」

「そう?無理しないでね」

子供向けイベントの会場作りのバイト中、椅子を持つと腰に負担が来て痛くなる。

河原の奴、好き勝手やりやがって…俺がその気にさせたとはいえ加減を知らないのか。

腰だけではなく、なんか尻も違和感が残っている。

まさか、俺の尻が壊れたなんて事はない…よな?

バイト仲間のおじさんに心配され笑顔で断る。

息を吐いて、足と腕に力を入れて一気に運ぶ。

このくらいやらなきゃな…妹のチケット代もあるし…

椅子を組み立てて、看板の設置を手伝い掃除してバイトは終わった。

休みの日のバイトじゃないからあまり給料はもらえないが、まぁいいか。

日給の休日バイトは競争率が高くて、なかなか出来ないんだよな。

だから暇があれば平日の学校終わりにバイトをする。

頬をかすめる冷たい風を感じてすっかり遅くなった夜道を歩く。

空が暗闇に覆われ、星が散りばめられていた。

そういえば河原も出かけてるんだっけ、もう帰ってるのか?

教室では隣なのに一度も目が合わなかった。

気まずいというより、なんか違う感じだった。

紫乃が一生懸命声を掛けていたが、河原は無視していた。

紫乃も紫乃なりに心配してくれたんだろう。

俺からは、どうしても声を掛ける雰囲気ではなかった。

今朝はそんな事なかったのに、なにかしたっけと不安な気持ちになる。

……もしかして、俺を抱いた事…後悔してるのか?

最初は俺の悪ふざけだったけど、嫌なら突き飛ばせば良いのに…最後までするとは思わなかった。

なんで嫌ならあの時、俺にあんな事したんだよ。

なんか傷付く、もし河原が帰ってなかったら俺のせいだよな。

河原との関係が分からなくて、気まずくは感じていたがあからさまに嫌がられると胸が苦しい。

どうせ性処理に使ってるなんて自分で思っていたのに、なんか……何だよこの気持ち。

「早く物置片付けなきゃな」

顔も見たくないだろうし、今日は物置で寝るから……安心して帰ってこいよ、河原。

自然と歩くスピードが落ちてきた時、ズボンのポケットが短く震えた。

電話ではないな、SNSメッセージだろう…紫乃か始か?

電話じゃないから緊急ではなさそうだし後ででいいか、もう食堂閉まってるしコンビニで夜食を買ってから帰る事にした。

寮前に着き、自分の部屋がある窓を見つめた。

電気付いてるな、今朝は付けていないから河原帰ってるのか。

もう顔も見たくないのかと思っていたから、一先ずホッとして寮に入った。

もう10時半だ、夜更かしして何してるんだ?

……もしかして、俺が帰ってくると思って襲われるとか思って怖くて眠れないとか。

河原にかぎって怖いとか、ないなとその考えは消えた。、

というか俺が襲うってなんだよ、と自分で勝手に思って微妙な顔をしながら部屋の前で鍵を差し込み開けた。

まだ気まずくて部屋を覗く、リビングのみ明かりが漏れて暗い廊下を薄く照らす。

「…た、ただいまー」

返事がない、声が小さかったからか…それとも俺とはもう話してくれないのか?

河原とはいい友達になれると思ったのにな、と寂しく思う。

…胸がズキズキ痛む、彼女にフラれた時と同じだ。

何だこれ、河原に嫌われたと思っただけなのに吐き気がする気持ち悪い。

夜食が入ったコンビニ袋を落として急いでトイレに駆け込む。

吐きたいが飯を食べていないから液体しか出ない。

……あの時と同じだ、違うのは場所くらいだ。

そういえばあの時、誰かがいたような気がした。

「メンタル弱いな、また吐いてんのかよ」

「…っ!?」

後ろから聞き覚えある声がしてこの部屋にいる人物なんて一人しか思い付かない。

トイレのドアに寄りかかる河原は俺をずっと見ていた。

吐いてる場面なんて汚くて見れないだろうに動こうとしない。

なにか用があるのか、あ…俺じゃなくてトイレにか。

仕方ない、コンビニ袋の中身全部出してビニール袋にでも出すしかない。

動くのもダルいけど何とか足に力を入れて立つ。

河原のためにも俺はいない方がいいだろう。

トイレの入り口に立つ河原を押し退けて歩き出した。

河原がどんな顔をしてるか分からない、顔を見る勇気はなかった。

玄関に起きっぱなしの買い物袋に近付こうとしたらいきなり後ろから肩を掴まれた。

驚く暇もなく押し倒されて地面に叩きつけられた。

頭を打ち顔を歪めていると目の前に河原の顔がありなにか言う前に唇を塞がれた。

「ふっ、ん、んー!!」

「…ちゅ、はぁ…んっ」

河原の口からなにかを流し込まれた、これは…水か?

唇が離れたと思ったら河原は持っていたペットボトルに口付けて、俺に口移しする。

前にも、こんな事があった…唇の感覚…水が喉に通る気持ちよさ…

今まで忘れていた事が一つ一つ思い出される。

そうだ、彼女にフラれた時同じ事をされたんだ。

じゃあ河原がファーストキスだと思ったら違ったのか?

いや、そうじゃない……同じなんだ…荒いのに何処か優しいキス…それに河原は転校する前から俺を知っていたという。

あの人は、河原だったのか…恩を覚えていたが顔はぼやけていて思い出すのに時間が掛かった。

ペットボトルの水が半分くらいになり、もういいと河原の肩を押す。

誰が訪ねてもいいように変装のままだった。

これじゃあ河原の顔が見えない、今どんな顔をしてるのか見たい。

河原のかつらを引っ張るとズルッと簡単に落ちて美しい金髪の河原が見えた。

いつもの河原らしくない、眉を寄せて悲しげな顔をしていた。

「…悪かった、俺としたからお前吐いたんだろ」

「……違う、河原が俺とした事を後悔してるって思ったら急に気持ち悪くなって」

素直に思った事を言ったら河原は目を丸くしていた。

なんだよ、変かよ…俺だってちょっと変だとは思ってるけど…

河原は何を思ったのかまた水を口に含み唇を重ねてきた。

もう良いって言ってるのに今度は俺の舌を吸ったり噛んだりしてだんだん濃厚になっていく。

肩を押すが今度はびくともしない、荒くなる息がこぼれ落ちる。

力が抜けていき、肩に手を添えるだけになりやっとキスから解放された。

何故今こんなキスをするんだ、河原が分からない。

「お前が苦しんでる顔は好きだ、綺麗だと思ってる」

「……いきなり何言って」

「でも、一人で勝手に自己満足して苦しんでるお前には腹が立つ」

河原は俺を睨んでいた、なにか言おうとした口が閉じる。

自己満足ってなんだ?河原が後悔してるって言った事か?

だってそうだろ?普通の男なら勢いでヤって後悔するだろ。

それとも写真でもあって脅しに使うとか?河原ならあり得そう。

俺の考えに気付いたであろう河原はデコピンしてきた。

…いてぇ、そういうところは勘がいいんだな。

「俺は一度でも後悔してるって言ったか?」

「………それはだって、普通の男なら」

「普通、な…じゃあ俺は普通じゃないんだな…お前を好きになったんだし」

…これは幻聴だろうか、好き?誰が?河原が?俺を?

河原はもう一度、今度は確実に伝わるように耳元で「俺はお前が好きだ」と言った。

その言葉は砂を吐くように甘く俺の脳をとろとろに溶かすようだった。

もやもやしていた感情が嘘のように晴れていく。

不思議だ、もしかして俺はずっと河原にこう言われるのを待っていたのか?

それはなんでなんだ?…今朝の紫乃の言葉が脳内に何度も響いた。

河原は耳元でクスクス笑う、正直くすぐったい。

「お前も俺が好きなんだろ?」

「な、何言って…」

「だって俺にフラれたと思って吐いたんだろ?元カノにフラれた時と同じじゃねーか」

あ、そういえばあの時の彼が河原なら元カノにフラれたの知っているのか。

河原がからかうように俺を見ていてムスッとする。

……違う違うと否定するのももう限界かもしれない。

河原に元カノ……いや、それ以上の感情を抱いていたのは事実だ、それは認めよう。

しかし、それを素直に河原に言うのはなんか嫌だ。

どうせまたからかうんだし、自分の気持ちにはとっくに気付いているけど…

「俺はノーマルだから男を好きになったりしねーよ」

「ノーマルだからって男を好きにならない保証はねぇだろ、俺がそうなんだから…男好きじゃなくてもたまたまタイプが好きな人だっただけだ」

俺のタイプが可愛いげがない俺様長身イケメン?男として随分マニアックだな。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

処理中です...