遑神 ーいとまがみー

慶光院周

文字の大きさ
34 / 82
第1章

女執事、ツァスタバ

しおりを挟む
 「そうだな。例えば執事、メイド、と言ったところか」
 「はい! 執事で、個人的には目が赤くて雰囲気が黒い、悪魔的な万能型を!」

 例え話をすると瞬時に手が上がり執事に一票が入った。確か、その特徴を持つキャラクターが漫画でいた筈だ。こいつまた趣味に走ったな。

 「お前また趣味に走っただろ」
 「いいじゃん、別に問題はないだろ?」
 「無くは無いが……まぁいい執事だな?  物は試しだ使える能力を探してみよう」
 「わーい、オネシャス!」

 私個人としては、執事でもメイドでもちゃんと使えるやつならどっちでもいいのでメイドはまた今度にして今は執事にしよう。
 能力として人を創ることが出来るかわからないがとにかく『生命体を作るには』と検索をかけてみる。


 『特殊スキル【生命の息吹】を使いますか?』


 あった。まず説明をを読んでみる。

 『特殊スキル【生命の息吹】とは、神、もしくは神に近い者のみが使える特殊スキルです。
 媒体となる物に自身の血を一滴与え、特殊スキル【生命の息吹】を使い、名前と形を与えることで発動します。
 しかし、この特殊スキルは創造力が必要となります。また、媒体により生命が宿った者の魔力の量が決まります』


 媒体か、ならあれが使えるか。
 一旦、外に出ると私は【無限の胃袋】の中からとあるアイテムを出した。途端にドシン!  という音と共に、銀色に輝く巨大な山羊の角が出くる。

 『【シルバーゴートの角】

 銀色に輝く巨大な山羊の姿の魔獣、シルバーゴートの角。
 シルバーゴートは身長300m、体重5tにもなる目が赤く、銀色の巻角、千年を超える寿命を持つのが特徴の魔獣。
 百年生きた山羊の姿とも言われ、その見た目は巨大であるが故に神々しくも見える。
 備考:毛は最高級の生地に、角、目、蹄は錬金の素材となります』

 これは一昨日、私がこの世界の全ての国を一足先に回って家具を買っていた時に出会った魔獣の角だ。私は戦う気は無かったのだが、いかせん相手がやる気満々だったので私も相手になってしまった。
 勿論、結果は私の勝ち。シルバーゴートは呆気なく私に敗れた。この角はそのまま放置するぐらいなら持っといた方が役立つだろうと毛と一緒に採取したものだ。

 「でっかいね。これ使うの?」
 「あぁ、こいつの背格好はお前が決めろ。名前は」

 名前、そうだ。名前を決めなくてはいけないんだったな。

 「名前……“ツァスタバ”でどうだ?」
 「ツァスタバ?  じゃあ、つーちゃんだな。了解! ちょっと待ってね」

 名前を決めると、新月は「よしゃあ! 名前に負けない美形を考えてやるぜ!」  と意気込んでシルバー  ゴートの角を観察し始めた。

 待つこと3分、暇だったのでパイプに再挑戦していると「出来たよ!」という声と同時に『つーちゃんの構成図☆』と書かれたものが頭の中に送られてきた。
 以外と早かったな。送られてきた構成図とやらをざっと見ていると私が考えていたものとはだいぶ違った形の執事が書かれていた。
 どうやら私が考えていた執事と新月が考えていた執事に違いがあったらしい、がまだ許容の範囲内だったのでこのまま実行しよう。
 私はまだ吸っている途中だったパイプを新月に渡して構成図を元に【生命の息吹】を使ってみる。


 1、『血を一滴垂らす』
 ナイフは持ってはいるがゴブリンを解体したものを使う訳にはいかないので手を噛み、角に血を垂らす。(血と言っても人間のように赤い血ではなく神血といわれるものなので色が違うが)

 2、『特殊スキル【生命の息吹】を使って名前と姿を与える』
 手順通りにやると、『特殊スキル【生命の息吹】が使われました』という声がして角から白い光が出始めた。
 光は角全体を包み込むと一箇所に集まり人型を描いていく。
ある程度人型に近いものが出来ると今度は段々と小さくなり、やがてビー玉サイズにまで縮みーーー……


   いきなり弾け飛とんだ。

 「っ!!」「んきゃーー!!」

 弾け飛んだ光と一緒に暴風が吹く。これ絶対に息吹じゃないだろ!
 いきなりのことで油断していた私は地面に踏ん張り、新月は咄嗟に私の腰にしがみついて飛ばされそうになるのを防いだが私じゃなかったら2人とも飛ばされていただろう。


 しばらくして暴風の勢いが弱まり始めると見た目がわかってきた。
 身長は平均そこそこ、体格は腰が細めだがぱっと見でもわかるS字曲線と、銀髪の天然パーマに銀色の巻き角が生えた赤い目の、女性。大事なことなのでもう一度言う、女性。
 私も執事と言っていたので男かと思っていたが新月に渡された構成図にはしっかりと女性と書かれていた。全然黒くなかった。寧ろ白い。

 「おー、俺が考えた通りだな。えーっと、つーちゃんって喋れる?」
 「っ……はい」

 風が止み、身動きが取れるようになると新月がツァスタバに質問を投げかけると小さめに、はい  っと言う鈴を鳴らすような、中性的な声が夜の草原に響く。これがツァスタバの声なのか。

 新しく仲間になった執事を連れて中に戻ると、ツァスタバ用の生活に困らない程度の服(全部新月が考えた)を渡して、これまでのことを大体教えて今日はもう休んでもらう。


 「ねぇクロ、あの角ってなんなの?」

 リビングに2人だけになると、ぽかーん っとした顔で新月が質問してきた。角とは勿論、ツァスタバの媒体に使ったもののことだ。
 
 話は数分前に遡る。



 ツァスタバが出来ることを教えてもらった時、あまりにも万能だったのだ。
ざっと聞いたところ、ステータスは以下の通りだった、

**********************

 【Name】ツァスタバ

 【種族】魔族? 多分魔族。

 【性別】女

 【年齢】1450(媒体の年齢)

 【Lv】201

***【称号】***************
【千年の歴史を知る者】【神の従者】   
**********************
 【体力】   666
 【魔力】   999
 【攻撃力】  444
 【魔力攻撃力】90
 【防御力】  251
 【命中率】  145
 【知力】   203
 【素早さ】  504
 【精神力】  165
 【運】    50

***【装備】***************

頭  :無し

耳  :無し

腕  :手袋(綿)

上半身:、燕尾服、ベスト (黒)、シャツ、リボンタイ

下半身:ベルト 、スラックス

靴  :靴下、ハイヒール(黒)

***【スキル】***************
【執事の嗜み】【美食家】【掃除屋】
***【特殊スキル】*************
【千年の歴史】【シークレットバトラー】【裏仕事】
***********************
 【職業】執事
***********************
 

 とまあ、こんな感じで、運動神経抜群、この世界の歴史に強い、裏仕事OK、掃除、洗濯炊事OK、これは本人が言ったことでは無いが光り輝く容姿と笑顔という超が付くほど潜れた執事さんで現代の人々が欲しがる万能型でござったのだ。(多分、2次元から来ましたとか言っても通じるんじゃないだろうか)

 余談だが、【美食家】は新月が持っていたのと同じだったのでどんなものなのか聞いてみると料理が得意なやつが持っているスキルで別に珍しくはないらしい。金がかかるスキルではあるらしいが。


 「シルバーゴートの角だ。お前にも教えただろ。ただ、私もここまで万能なのが出来るかと思って無かったが」
 「はー、……クロ、座っていいから何があったのか教えて」
 「あぁ」

   私と新月はお互いに自身が創った存在が完璧過ぎてぽかーんっとした表情を隠せないままテーブルの席に座り、数日前の出来事を話始めた。


****
 ~数日前~

 あいつに押し付けられた我儘リストには、

 『チェスト  クロも欲しければクロのも、
 衣装タンス、クローゼット作ってくれるならそれでもいい。そろそろハリスくんに部屋あげたいから計3、カーペット、絨毯でも可、
 ソファー(いいのがあったら)、ローテーブル、本棚、ランプシェード、なんかあった時用に旅行鞄、クッション、ハリスくんに合いそうなもの、畳、こたつ、テレビ
 PS:俺用のはアンティークがいいな。クロもちゃんと自分の欲しいの買ってきなよ!
 じゃあ、よろしく(」・ω・)』



 なんて我儘満載のお願いがずらりと書かれていた。
 衣装タンスなんて要らないだろ。クローゼットを作ればいいじゃないか。あと、テレビなんてものこの世界には無い。
 言いたいことが多いがこんなところで愚痴を言っても誰も聞いてくれるやつはいない。さらに言えば動かなければ何も終わらない。
 仕方なく我儘リストをポケットにしまい込むと【世界の図書館】を使かって効率的にアンティークを集めるために今後開催される蚤の市やオークション、世界中の骨董品店を探す。
 するとちょうどいいことに今日の夜に《オージュン》の大陸でオークション、明日はヴェレンボーンで年2回の巨大蚤の市が開かれるらしい。

 オークションは武器と魔法が使えないように武器は預け、魔道士は魔力封じの指輪を渡されるが金があれば誰でも入れるみたいだ。もっとも着ている服で通されるオークション会場が違うらしいが。
 私は今の服装を確認する。今日の私は依頼を受けていないので新月が作った服を着せられていた。


 濃い紫色のベロアで作られたロングコート、ボルドー色のベスト、黒いスラックに革靴。
 カフスは新月が貴族から貰ったらしい(本当は、報酬をアップさせる代わりに渡されたものなのではないかと推測する)赤い石が付いているカフス、多分ルビーあたりだ。
まぁ、これなら大丈夫だろう。


 大体の目的が決まったので私はヴェレンボーンから東にある《オージュン》に向かって文字通り飛んだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

処理中です...