追放された俺は逆行転生した〜TS吸血姫は文化を牛耳る〜

石化

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第1章至る平安

白2

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なぜか白を抱いて布団に包(くる)まっている。
あったかくてもふもふしていて、落ち着く。

「未来視は夢と同調させるのが一番効率がいいの。」

白はそう言っていた。

ついでに、白の一部に触っていないといけないらしい。

そういうわけで、二人で同じ布団に眠ることになったのだ。

「白、起きてる?」

「夜。目をつぶらないとダメよ。」

「もう⋯⋯。」

ちょっと恋人っぽい雰囲気を味わいたかっただけだって。
⋯⋯兎相手に何言ってるんだ俺は。

だいぶ疲れている気がしてきた。
旅から旅で歩き詰めだったし、久しぶりの柔らかい布団だ。

普通に眠たい⋯⋯。
寝よう。

「おやすみなさい⋯⋯。」
「ふふ。おやすみ、いい夢を。」

白に耳元で囁かれながら俺は、夢の中に落ちていった。



豪華なシャンデリアが頭上できらめくホテルの大広間だ。

出版業界は活気付いているようで、多くの人々が楽しそうに喋っている。

この間思いついたすごい伏線を自慢したり、お互いの作品の感想を言い合ったり。そうそうこれこそ、出版社の忘年パーティだと言いたくなるような光景が広がっている。

俺は、その光景を満足げに見つめていた。

俺がこれを作り上げたという充実感と自負が、芽生えている。

紫のパーティドレスを優雅に翻して、会場を見て回る。
小説談義に突っ込んで行きたいのも山々だが、俺が行くと相手が萎縮してしまう。節度はわきまえないといけない。

視界の端に、何かを捉えた。

でっぷりと太った男だ。
着ている物がスーツではないので、小説家だろう。

だが、その小説家を見た途端、とんでもない怒りと憎しみの波が俺を襲った。
普段の俺は、小説家なら無条件で好ましく思うというのに。

なぜだ。
自分でも心当たりがない。
意味がわからないなりに、そちらに近づく。
会話でも聞けば、わかるんじゃないかと思ってのことだった。

近づけば近づくほど、憎しみがふつふつと湧き上がってくる。
よっぽど相性が悪いか、前世の因縁があるかだろう。

まだ一言も喋っていないというのに。

近づいてくる俺を見た隣の編集が、そいつを突いた。

そいつも気づいたようでこちらを見ると満面の笑みを浮かべる。
まるで自分が褒められることを確信しているような無邪気な笑みだった。

その子供のような笑みでさえ、俺の怒りを増幅させる効果しか生まない。

つかつかと歩み寄った俺は、そいつの胸ぐらを掴んで宙に浮かせた。

いきなりのことに目を白黒させるそいつを衝動のままに床に叩きつけようとして⋯⋯。

目が覚めた。

いつの間にか、朝になっていた。

白い光が社(やしろ)に射し込んでいる。

夢、いや、未来を思い出す。
あれは、なんだったんだ?

なんであいつのことがあんなにも許せなかったのか。
わからない。

でも、あいつの顔を思い出すと、強い怒りが湧いてくる。

あいつにでかい顔をさせない。それが至上命題とまで思えてくる。

でもあれは未来の出来事で、あいつは未来の住人だ。
今考えても仕方がない。これ以上生産性のない思考を向ける必要はないだろう。

最高の小説を作る件だが、ヒントはあまりなかったと言わざる得ない。

出版社のパーティでも我が物顔で振る舞えるということはわかったが、それは作家としての成功を意味していても、どんな物語を俺が作り出したかに関してはわからない。
むしろ、あれは出版社の方を掌握していたような気もする。
編集たちがやけにうやうやしかった。

あの時代まであと千二百年あるんだし、出版社の整備、掌握も計画しておいて損はないかもしれないな。少なくとも、裏切らない編集は絶対に必要だ。

チクリと胸に痛みが走った。まるで一度裏切られたことがあるような⋯⋯。

まあ、いい。やることは決まった。
その1。最高の小説を作る。
いろんな経験をして、それを文章に起こして備えていこう。
その2。出版社を掌握する。
全てを自由にできるほどの権力やお金。もしくは、創立への干渉などで、俺に逆らえないようにする。終戦後を目処に行動に起こそう。その前に財閥になってても、解体されちゃうし⋯⋯。戦争を起こさせないルートもワンチャンあるか⋯⋯?
ここら辺は臨機応変に。
その3。あのいけ好かない男に復讐する。
多分、その1とその2が出来たら自動的に達成できるだろう。
あとはあいつがデビューするところを見張っていれば完璧だ。
絶対に地獄に落としてやる。最強の復讐プランを千五百年かけて練ってやるから覚悟しておけよ。



それはそうと、白がもふもふしていて気持ちいい⋯⋯。

彼女が起きないのをいいことにもふもふを堪能する俺だった。



白にお礼を言って出発することにした。
改めて目標が定まったんだ。白には感謝しても仕切れない。

寂しそうな白にまた来ると約束する。

「百年に一回は来てよね!」

「ちょっと多くない⋯⋯?」

「夜は時間感覚がおかしいよ、百年って言ったら一生に一度だよ。普通の人基準だと。」

「確かに⋯⋯!」

俺はショックを受けた。
いつの間にか時間感覚が人外になっていたようだ。
このままでは、人の気持ちがわからない化け物になってしまって、小説を書いても登場人物の心情が共感できませんなどと言われるようになってしまう。

それは良くない。

時間感覚のリハビリをしよう。

「あ、そういえば、ウズメの神社、知らない?」

「ああ。多分、猿田彦の神社に行ったら会えるよ。」

「なるほど。」

そういう関係になってたわ。忘れてた。

別れを惜しむ白をなんとか振り切って、俺は再び、旅に出ることにした。

竹取物語の作者、どこにいるのかよくわからないから、一回京都に戻るとするか。ウズメと会うのは、その後かな⋯⋯?



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