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ドリュアスちゃんが来た!その2
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4人前で肉500g剣コイン3枚。
新鮮野菜詰め合わせは剣コイン1枚盾コイン5枚。
肉と野菜だけで約4500円の出費とかかなり泣けてくる…。
所持金が一気に剣コイン4枚に盾コイン1枚。約4100円しかない…。
これは本当に《ディブル》での生活は大変だ。
一刻も早くヘイスにミール皿を作ってもらって、ユーリスたちにアクセサリー納品して報酬を手に入れねば!
だがしかし!今重大なことに気づいてしまった!
「今肉や野菜買っても夕飯までに鮮度下がるのでは?」
「え…お昼の買い物じゃなかったの?」
「てっきり昼飯だと思ってた」
oh…やっちまったぜ。
冷蔵庫がない世界での買い物は朝昼晩の1回ずつ買い物に行かねばならない。
朝買ったものは剥き出し状態で放置だから傷むし鮮度が落ちるし虫が集る!
真夏に生魚や生肉放置してごらんよ…すぐに腐るぞ。
「冷蔵庫偉大…冷蔵庫尊い…」
「「レーゾーコ?」」
いや、無いものを欲するな自分…!
無いなら無いなりの工夫するんだ自分!
お祖母様の知恵袋を思い出せ!
……文明の力ありきの知恵しか浮かばないこの恨めしさ。
「とりあえず…かなり早いけど
帰ってお昼にしようか」
腹が減っては戦はできぬというが、腹が減っては頭も働かないわけでして…。
新鮮なうちに食べて満足してから色々考えよう。
◇
「さて…何用かなドリュアスちゃん」
買って来た食材で肉野菜炒めを作り、ポムニット家の皆さんと一緒に食した。
ヘイスはしっかり双子との時間を大切にし仕事に戻った。双子は日課だという近くに住む指南役のおじいさんに剣を習いに行った。
私はといえば、夕飯の献立を考えるために料理本を開き読書の時間を満喫していた。
束の間の安息を過ごしていた私のところに、彼女はやって来たのだ。
「アキラお婆ちゃーん!」
「……うん。お姉さんな?
前にも言ったけどお姉さんな?」
何度も言うのはしつこいが見た目は老婆、中身は三十路だ。
まだ心は老婆であることを受け止めきれていないんだ。次お婆ちゃん言ったらデコピンかな。
「ア、アフロディーテ様!?」
一緒に献立を考えていたフィルギャが突如叫んだことに驚き、慌てて彼の方に目を向けた。
目に映るのはフィルギャだけと思っていたらもう一人そこにいた。
綺麗、美人、お姉様と呼ばれるタイプの絵に描いたような美女がフィルギャに微笑みながら立っていたのだ。
「……フィルギャの彼女?」
「違うよ!
こちらの方は木の精霊王・アフロディーテ様!
火の精霊王・へーパイストス様の奥方様だよ」
愛と美と性を司るギリシャ神話の女神…だったか?
アフロディーテとヘーパイストスって夫婦だったんだ…。
そこまで神話とかに詳しくないからわからないわ。
「初めましてですねアキラさん」
眩しい。眩しい。目が眩むほどの笑顔を私に向けないでほしい。
こういう作り笑顔を向ける人…女神…精霊王ほどロクなこと言ってこないからだ。
つまり下心、裏の顔があるってことだ。
メリットがあるからこそ人はいい顔して近づいてくるんだ。
騙されないからな。この素敵笑顔め。
「この度は私の眷属であるドリュアスが
アキラさんへのスキル付与を忘れてしまったこと
深くお詫び申し上げます」
……おや?
普通にまともなお方でしたか?
いやいやいや。まだこの一言だけではわからんよ。
本性を見せろ素敵笑顔女神精霊王様め。
「本来ドリュアスが授けるはずだったスキルの付与
さらにお詫びとしまして私の加護とスキル
全精霊王たちよりお詫びのスキル…計3つのスキルを
アキラさんに授けさせていただきますね」
み、3つ…だと…!?
フィルギャもスキル3つという単語に驚いているくらいだから、相当凄いことなんだと思う。
「(フィルギャ、フィルギャ…スキル3つって
やっぱり異常?異常?異常なこと?)」
「(異常も異常!異常事態!
スキル3つ持ちなんて過去に例がないし
スキル2つ持ちだって2、3人いたかいないかだよ!)」
まずい…まずいぞ。
ドリュアスちゃんのスキル付与忘れが倍になって返って来た。
これは相当な裏があると見た…!
まずい…これは謙虚にお断りする必要がある。
「こんな老い先短いばあちゃんに3つもスキルなんて要らないでしょ
本来貰うはずだったドリュアスちゃんからのスキル1つで十分」
「いけません!!」
近い近い近い。すごい顔を近付けてくるじゃないか女神精霊王様。
離れたところからでも思ったけどこの人すごい良い香りするな。
私なんて水浴びもできてないから自分が臭くないか不安だっていうのに良い身分だなおい。
それを思うといつもできていたことができなくなった代償として、多少の恩恵は貰って良いのでは?と欲が出る。
しかしそれを受け入れてしまったら最後…一生恩に着せられる。
「スキルがたくさんあることはアキラさんにとってはメリットです!
なによりアキラさんには木属性の可能性を広めていただくというお役目があります!
私の信仰者を増やしていただける最高の手ゴ…ホンッ!
最高の恩人となる方なのですから、先行投資は必要かと」
「……」
ふっ…本性を見せたな女神精霊王よ。
手駒と口走ってるからね。咳き込んであやふやにしたつもりだろうが甘い。
私の耳は年老いていない。正常だぞ女神精霊王!
女神精霊王様の本性はこれでわかったから良しとしよう。問題はスキルだ…。
たくさんスキルがあるのはたしかにメリットだ。
ゲームの世界なら数多くのスキル獲得が可能。
でもこの世界でのスキル事情を聞く限り1人に1つが定番。
2つ持ちだって2、3人いたかいないかだっていうのに3つ持ちなんて…。
「(最早チート級ばあちゃんになってしまうのでは?)」
「(アキラアキラ。貰えるものは貰っておいた方が良いよ
アキラはただでさえ非力なんだから)」
「(…そりゃそうなんだけどさ
スキル3つも貰ってからの見返りがね…)」
渋った顔をさせる私にドリュアスちゃんはそっと耳打ちして来た。
「あのね。多分アフロディーテ様は
私がお供え物で貰ったネックレスがほしいんだと思う」
「え、あの魅了効果がついたやつ?」
なるほど…女神精霊王とて女ということか…。
だがしかし!付与能力は狙ってつけられるもんじゃないわけでして……。
「もしかしてそのためにスキルを与えに来たのか?」
「アフロディーテ様、私直々に赴いて
好きなスキルを与えます!って
すごい目を輝かせてたわ」
oh…そこまでして魅了効果付きネックレスがほしいのか?
女神精霊王既に美貌もなにもかも持ってるようなものじゃないか。
それ以上に美しくってか?
永遠に綺麗でモテていたいってか?
いい歳なんだからそろそろ落ち着けよと言いたくなるな。
……いや、女神精霊王に年齢という概念はないのかもしれないけど。
「こちらスキルをまとめた本です
アキラさんの望まれるスキルを3つお選び下さい
決められない分は後日でも構いませんわ」
スキルをまとめた本ね~…。
選んで貰えるなら付与能力に役立つスキルか、冷蔵庫とかお風呂とか作れるような生産系スキルが好ましいかな。
ミール皿についてはヘイスに任せてるけど…レジンで使う色粉や中に入れる小物なんかを自分で作れたらレジンアクセサリーのバリエーションも増えるはず。
蓄光粉とかも使いたい!
昨日街を歩いてて思ったけど、少しの光がほしいよ。
前から人が歩いて来てても暗過ぎてぶつかりそうだし…。
あれ?こうやって冷静に考えるとスキル3つ貰っても良いんじゃないか?
3つあっても足りないんじゃないかと思ってきた。
「ごゆっくりお選び下さい」
渡された本を開くとスキル名と効果が簡略的に書かれていた。
例えばこれ。龍殺し。説明文は“ドラゴンを仕留めるスキル”
わあ…なんてシンプルでわかりやすい説明。
「とりあえず目を通したいから
今日のところはお引き取り願えますかね?」
「ええ。元々謝罪第一でしたので…
それではアキラさん。また来ますね」
“また来ますね”
女神精霊王そんなちょいちょいこっち来て良いものなのかい?
そこはドリュアスちゃんにお任せ……できないから来るんだろうねきっと。
風のようにやって来て風のように帰って行った女神精霊王アフロディーテ様とドリュアスちゃん。
もうさっきから心の中で女神なのか精霊王で良いのかわからず女神精霊王言ってるけど良いよね。所詮心の声ですから。
「こうして見るとたくさんスキルがあるんだね」
「あり過ぎて候補絞るのも大変だよ
紙とペンどこかで借りれないかね?」
「工房の受付にあるんじゃないかな?」
スキルをまとめた本をフィルギャに預け、私とフィルギャは部屋を出た。
軋む廊下を歩き進み工房へ続く階段を降りていく。
工房では真剣な面持ちでミール皿作りに奮闘するヘイスの姿があった。
邪魔をしないようにササっと工房から受付へ続く扉へ向かった。
工房と店が繋がる扉を開け、店内受付に出ると、店の扉には看板が吊り下げられ、きっとオープンという文字が通りの方からは見えているのだろうと推測できるが、店にお客の姿はない。
ヘイスから話は聞いていたとは言え、ここまでガラガラな店を見るのは久しぶりだ。
「昔みたいにお客さん
来るようになると良いね」
「ヘイスなら大丈夫でしょ
それにミール皿ができればレジンアクセも色々作れて
能力の付与もできる!」
そう。私が今考えている計画プランはこれだ。
魔核を小出し小出しで冒険者ギルド、もしくはメルに売ってもらいまず資金を用意する。
商業ギルドで装備の効果が見える特殊な水晶玉を借りる。
ヘイスと契約して色々なミール皿を卸してもらう。
能力が付与されたレジンアクセ、または魔核を冒険者向けに販売。
販売方法については人間の欲を掻き立てるあの手法を取らせていただく!
商売が良い方に転んだら商業ギルドに子供でもできる求人出して、レジンアクセに使えそうな花やクローバー採取をしてもらう。
私はただただ材料が届くのを待てば良い算段だ!
ふっ…我ながら悪どいぜーー。
「紙とペンないね」
「……仕方がない。買いに行くか」
所持金約4100円で買えるペンと紙があれば良いな…。
◇
ところ変わってやって来ました商業ギルド。
ペンはペンでも羽根ペン。そしてインクを購入し、いざ紙だ!と息混んでいたら店のおばちゃんに言われたよ。
「羊皮紙は商業ギルドに登録してるなら
格安で手に入るわよ」と。なんて親切なおばちゃんなんだろうと心の中で私は小躍りしてたよ。
ちゃんとお礼は言ったけどね。
受付カウンターのベルを2、3回鳴らす。
初めてユーリスに連れられて来た時同様にギルド内に人の姿はなく、受付嬢のタルディの姿もない。
受付に立たずして給料が貰えるなんて楽な仕事だなとさえ思ってしまう。
「……」
もう1、2度ベルを鳴らすも空振り。
「(留守なのかな?)」
「(仮にも商業ギルドなんだから
留守なんてありえないでしょ…)」
何度目かのベルを鳴らそうとした時、遠くの方で足音が聞こえた。
走っているのであろう、バタバタやかましい音がしている。
あれ?デジャブ?と思った。
これでタルディがまた顔面ダイブしたら真のドジっ子として“私はドジです”と書いた板を首から提げてもらうか。
「お待たせしてすみませんで、ぶっ!!」
「……」
「(うわぁ…顔面強打。痛そう)」
うん。真のドジっ子だわ。
新鮮野菜詰め合わせは剣コイン1枚盾コイン5枚。
肉と野菜だけで約4500円の出費とかかなり泣けてくる…。
所持金が一気に剣コイン4枚に盾コイン1枚。約4100円しかない…。
これは本当に《ディブル》での生活は大変だ。
一刻も早くヘイスにミール皿を作ってもらって、ユーリスたちにアクセサリー納品して報酬を手に入れねば!
だがしかし!今重大なことに気づいてしまった!
「今肉や野菜買っても夕飯までに鮮度下がるのでは?」
「え…お昼の買い物じゃなかったの?」
「てっきり昼飯だと思ってた」
oh…やっちまったぜ。
冷蔵庫がない世界での買い物は朝昼晩の1回ずつ買い物に行かねばならない。
朝買ったものは剥き出し状態で放置だから傷むし鮮度が落ちるし虫が集る!
真夏に生魚や生肉放置してごらんよ…すぐに腐るぞ。
「冷蔵庫偉大…冷蔵庫尊い…」
「「レーゾーコ?」」
いや、無いものを欲するな自分…!
無いなら無いなりの工夫するんだ自分!
お祖母様の知恵袋を思い出せ!
……文明の力ありきの知恵しか浮かばないこの恨めしさ。
「とりあえず…かなり早いけど
帰ってお昼にしようか」
腹が減っては戦はできぬというが、腹が減っては頭も働かないわけでして…。
新鮮なうちに食べて満足してから色々考えよう。
◇
「さて…何用かなドリュアスちゃん」
買って来た食材で肉野菜炒めを作り、ポムニット家の皆さんと一緒に食した。
ヘイスはしっかり双子との時間を大切にし仕事に戻った。双子は日課だという近くに住む指南役のおじいさんに剣を習いに行った。
私はといえば、夕飯の献立を考えるために料理本を開き読書の時間を満喫していた。
束の間の安息を過ごしていた私のところに、彼女はやって来たのだ。
「アキラお婆ちゃーん!」
「……うん。お姉さんな?
前にも言ったけどお姉さんな?」
何度も言うのはしつこいが見た目は老婆、中身は三十路だ。
まだ心は老婆であることを受け止めきれていないんだ。次お婆ちゃん言ったらデコピンかな。
「ア、アフロディーテ様!?」
一緒に献立を考えていたフィルギャが突如叫んだことに驚き、慌てて彼の方に目を向けた。
目に映るのはフィルギャだけと思っていたらもう一人そこにいた。
綺麗、美人、お姉様と呼ばれるタイプの絵に描いたような美女がフィルギャに微笑みながら立っていたのだ。
「……フィルギャの彼女?」
「違うよ!
こちらの方は木の精霊王・アフロディーテ様!
火の精霊王・へーパイストス様の奥方様だよ」
愛と美と性を司るギリシャ神話の女神…だったか?
アフロディーテとヘーパイストスって夫婦だったんだ…。
そこまで神話とかに詳しくないからわからないわ。
「初めましてですねアキラさん」
眩しい。眩しい。目が眩むほどの笑顔を私に向けないでほしい。
こういう作り笑顔を向ける人…女神…精霊王ほどロクなこと言ってこないからだ。
つまり下心、裏の顔があるってことだ。
メリットがあるからこそ人はいい顔して近づいてくるんだ。
騙されないからな。この素敵笑顔め。
「この度は私の眷属であるドリュアスが
アキラさんへのスキル付与を忘れてしまったこと
深くお詫び申し上げます」
……おや?
普通にまともなお方でしたか?
いやいやいや。まだこの一言だけではわからんよ。
本性を見せろ素敵笑顔女神精霊王様め。
「本来ドリュアスが授けるはずだったスキルの付与
さらにお詫びとしまして私の加護とスキル
全精霊王たちよりお詫びのスキル…計3つのスキルを
アキラさんに授けさせていただきますね」
み、3つ…だと…!?
フィルギャもスキル3つという単語に驚いているくらいだから、相当凄いことなんだと思う。
「(フィルギャ、フィルギャ…スキル3つって
やっぱり異常?異常?異常なこと?)」
「(異常も異常!異常事態!
スキル3つ持ちなんて過去に例がないし
スキル2つ持ちだって2、3人いたかいないかだよ!)」
まずい…まずいぞ。
ドリュアスちゃんのスキル付与忘れが倍になって返って来た。
これは相当な裏があると見た…!
まずい…これは謙虚にお断りする必要がある。
「こんな老い先短いばあちゃんに3つもスキルなんて要らないでしょ
本来貰うはずだったドリュアスちゃんからのスキル1つで十分」
「いけません!!」
近い近い近い。すごい顔を近付けてくるじゃないか女神精霊王様。
離れたところからでも思ったけどこの人すごい良い香りするな。
私なんて水浴びもできてないから自分が臭くないか不安だっていうのに良い身分だなおい。
それを思うといつもできていたことができなくなった代償として、多少の恩恵は貰って良いのでは?と欲が出る。
しかしそれを受け入れてしまったら最後…一生恩に着せられる。
「スキルがたくさんあることはアキラさんにとってはメリットです!
なによりアキラさんには木属性の可能性を広めていただくというお役目があります!
私の信仰者を増やしていただける最高の手ゴ…ホンッ!
最高の恩人となる方なのですから、先行投資は必要かと」
「……」
ふっ…本性を見せたな女神精霊王よ。
手駒と口走ってるからね。咳き込んであやふやにしたつもりだろうが甘い。
私の耳は年老いていない。正常だぞ女神精霊王!
女神精霊王様の本性はこれでわかったから良しとしよう。問題はスキルだ…。
たくさんスキルがあるのはたしかにメリットだ。
ゲームの世界なら数多くのスキル獲得が可能。
でもこの世界でのスキル事情を聞く限り1人に1つが定番。
2つ持ちだって2、3人いたかいないかだっていうのに3つ持ちなんて…。
「(最早チート級ばあちゃんになってしまうのでは?)」
「(アキラアキラ。貰えるものは貰っておいた方が良いよ
アキラはただでさえ非力なんだから)」
「(…そりゃそうなんだけどさ
スキル3つも貰ってからの見返りがね…)」
渋った顔をさせる私にドリュアスちゃんはそっと耳打ちして来た。
「あのね。多分アフロディーテ様は
私がお供え物で貰ったネックレスがほしいんだと思う」
「え、あの魅了効果がついたやつ?」
なるほど…女神精霊王とて女ということか…。
だがしかし!付与能力は狙ってつけられるもんじゃないわけでして……。
「もしかしてそのためにスキルを与えに来たのか?」
「アフロディーテ様、私直々に赴いて
好きなスキルを与えます!って
すごい目を輝かせてたわ」
oh…そこまでして魅了効果付きネックレスがほしいのか?
女神精霊王既に美貌もなにもかも持ってるようなものじゃないか。
それ以上に美しくってか?
永遠に綺麗でモテていたいってか?
いい歳なんだからそろそろ落ち着けよと言いたくなるな。
……いや、女神精霊王に年齢という概念はないのかもしれないけど。
「こちらスキルをまとめた本です
アキラさんの望まれるスキルを3つお選び下さい
決められない分は後日でも構いませんわ」
スキルをまとめた本ね~…。
選んで貰えるなら付与能力に役立つスキルか、冷蔵庫とかお風呂とか作れるような生産系スキルが好ましいかな。
ミール皿についてはヘイスに任せてるけど…レジンで使う色粉や中に入れる小物なんかを自分で作れたらレジンアクセサリーのバリエーションも増えるはず。
蓄光粉とかも使いたい!
昨日街を歩いてて思ったけど、少しの光がほしいよ。
前から人が歩いて来てても暗過ぎてぶつかりそうだし…。
あれ?こうやって冷静に考えるとスキル3つ貰っても良いんじゃないか?
3つあっても足りないんじゃないかと思ってきた。
「ごゆっくりお選び下さい」
渡された本を開くとスキル名と効果が簡略的に書かれていた。
例えばこれ。龍殺し。説明文は“ドラゴンを仕留めるスキル”
わあ…なんてシンプルでわかりやすい説明。
「とりあえず目を通したいから
今日のところはお引き取り願えますかね?」
「ええ。元々謝罪第一でしたので…
それではアキラさん。また来ますね」
“また来ますね”
女神精霊王そんなちょいちょいこっち来て良いものなのかい?
そこはドリュアスちゃんにお任せ……できないから来るんだろうねきっと。
風のようにやって来て風のように帰って行った女神精霊王アフロディーテ様とドリュアスちゃん。
もうさっきから心の中で女神なのか精霊王で良いのかわからず女神精霊王言ってるけど良いよね。所詮心の声ですから。
「こうして見るとたくさんスキルがあるんだね」
「あり過ぎて候補絞るのも大変だよ
紙とペンどこかで借りれないかね?」
「工房の受付にあるんじゃないかな?」
スキルをまとめた本をフィルギャに預け、私とフィルギャは部屋を出た。
軋む廊下を歩き進み工房へ続く階段を降りていく。
工房では真剣な面持ちでミール皿作りに奮闘するヘイスの姿があった。
邪魔をしないようにササっと工房から受付へ続く扉へ向かった。
工房と店が繋がる扉を開け、店内受付に出ると、店の扉には看板が吊り下げられ、きっとオープンという文字が通りの方からは見えているのだろうと推測できるが、店にお客の姿はない。
ヘイスから話は聞いていたとは言え、ここまでガラガラな店を見るのは久しぶりだ。
「昔みたいにお客さん
来るようになると良いね」
「ヘイスなら大丈夫でしょ
それにミール皿ができればレジンアクセも色々作れて
能力の付与もできる!」
そう。私が今考えている計画プランはこれだ。
魔核を小出し小出しで冒険者ギルド、もしくはメルに売ってもらいまず資金を用意する。
商業ギルドで装備の効果が見える特殊な水晶玉を借りる。
ヘイスと契約して色々なミール皿を卸してもらう。
能力が付与されたレジンアクセ、または魔核を冒険者向けに販売。
販売方法については人間の欲を掻き立てるあの手法を取らせていただく!
商売が良い方に転んだら商業ギルドに子供でもできる求人出して、レジンアクセに使えそうな花やクローバー採取をしてもらう。
私はただただ材料が届くのを待てば良い算段だ!
ふっ…我ながら悪どいぜーー。
「紙とペンないね」
「……仕方がない。買いに行くか」
所持金約4100円で買えるペンと紙があれば良いな…。
◇
ところ変わってやって来ました商業ギルド。
ペンはペンでも羽根ペン。そしてインクを購入し、いざ紙だ!と息混んでいたら店のおばちゃんに言われたよ。
「羊皮紙は商業ギルドに登録してるなら
格安で手に入るわよ」と。なんて親切なおばちゃんなんだろうと心の中で私は小躍りしてたよ。
ちゃんとお礼は言ったけどね。
受付カウンターのベルを2、3回鳴らす。
初めてユーリスに連れられて来た時同様にギルド内に人の姿はなく、受付嬢のタルディの姿もない。
受付に立たずして給料が貰えるなんて楽な仕事だなとさえ思ってしまう。
「……」
もう1、2度ベルを鳴らすも空振り。
「(留守なのかな?)」
「(仮にも商業ギルドなんだから
留守なんてありえないでしょ…)」
何度目かのベルを鳴らそうとした時、遠くの方で足音が聞こえた。
走っているのであろう、バタバタやかましい音がしている。
あれ?デジャブ?と思った。
これでタルディがまた顔面ダイブしたら真のドジっ子として“私はドジです”と書いた板を首から提げてもらうか。
「お待たせしてすみませんで、ぶっ!!」
「……」
「(うわぁ…顔面強打。痛そう)」
うん。真のドジっ子だわ。
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