暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第1章 精霊と一人の少女

第3話 力と信用

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「サラマンダー! 何をしている!」

「お前ら気づいていないのか!? そいつの中に眠る力に!! そいつは人間とは思えん力を隠している! コイツらは騙せても、僕は騙せないぞ!!」

「もー、力のことは皆気がついた上で、人格を判断して……」

「僕がお前を裁く!!」


 スキル『山椒竜の息吹サラマンダーブレス


 凄まじい火炎放射が私に襲いかかる。
 私は余裕を持ってそれを躱す。

「ウンディーネ」

「わかってるわよ~」

 森に引火しそうな火の粉を的確に消しているウンディーネ。

「あの馬鹿……! ルミツよ、アイツに1発かましてやってくれ」

「えー、大丈夫……?」

「大丈夫だ。アイツは多分お前に殴られれば落ち着くだろう」

「まぁ、そういう事なら……」

 モースがそう言うなら大丈夫だろう。
 それよりも問題はどうやって空中に行くかだ。相手は飛んでいる敵。体力切れも精霊相手を考えると見込めない。

「いつまで余裕こいていられるかな!!」


 スキル『山椒竜の咆哮サラマンダーロアー


 とてつもなく速い火炎放射。けれど手加減も見える。相手は精霊。この森を焼く訳にもいかないだろう。
 私はそれを避ける。

「くっ、ちょこまかと……!」

「包丁は心許ないけど、峰打ちくらいには十分か」

「ぐぬぬ……! 僕をあまり舐めるなよ……!!」


 火炎魔法『紅蓮の炎柱フレアストーム


 足元から魔力を感じる。
 私は近くの高い木と並行するように、上空へ飛び上がる。

「かかったな! 空中戦は僕の方が圧倒的に有利だ!!」


 スキル『山椒竜の鉤爪サラマンダークロー


「よっ」

 ガキィン!!

 包丁と爪がぶつかり合い、私は遠くへ弾かれる。

「ふっ、人間は空中で方向転換できまい!」

「確かにできない、けど……!」

 私は背の高い木を足場とする。そして、脚全体に限界まで力を溜める。重力に逆らうように、足で木の幹を掴む。


 蝶華心得ちょうかこころえほむら朱雀飛斬すざくひざん


 刹那の間、サラマンダーに見えたのは、既に自分の目前まで迫り来ていたルミツの姿であった。

 バシィン……!










「うっ、ぐ……」

「あっ、起きた?」

「……!?」

「ほらほらそんなに警戒しないの~。貴方はルミツちゃんに倒されたのよ~」

「……」

 あの時峰打ちでサラマンダーの首を強打し、気絶させた。
 それと同時に少女の姿となったサラマンダーが今目覚めた。

「あ……」

「? どうしたの?」

「主様~!!」

「えっ、あうっ!」

 サラマンダーが思いっきり抱きついてくる。

「えっ、なになに!?」

「その力、受けてみて気がつきました! 強大であるが極めて温和なその力に! そして僕は主様の従者となるべきだということに!」

「えっ、ちょっ、」

 ぎゅーっと抱きしめてくるサラマンダー。

「サラマンダー! なにしてんのー!」

 頑張って私からサラマンダーを引き剥がそうとするシルフだが、圧倒的体の大きさの違いのせいで全く微動だにしない。

「ふぬぬぬぬ! ふぬぬぬぬ!」

「全然動いてないよシルフ」

「がーん!」

「……まぁ、丸く治まったのだから良いだろう。サラマンダー、迷惑をかけたことを謝りなさい」

「あっ、ごめんなさい、……えっと?」

「ルミツだよ」

「ルミツ様! これからよろしくお願いします!」

「……うん」

「あらあら~」

「全く……」





 ◇◇◇

 私たちは今、モースの家に戻ってきた。

「さて、とりあえず一件落着だけど……」

「……」
「……」
「……」
「あるじさま~」

 今私は四大精霊のうち3人にものすごい剣幕で見られている。1人は少女の姿で私の腕にすり着いてきている。

「ルミツよ」

「はい、なんでしょ……」

「サラマンダーに一撃を喰らわせたあの技、スキルとはまた違うよな? あれは一体なんなのだ?」

「あー、あれね……」

「あんなスピードこの世で見たことないよー。光かと思ったもん」

「そこまで速くしてな……」

「って事は更に速くできたって事~?」

「……」

 ……まぁ、隠してても仕方ないか。

「あれは蝶華心得って言って、私の暗殺技なの」

「ほう、暗殺技とな……」

「といっても初代が作り上げた技なんだけどね」

「なるほど」

「凄いですねぇ、主様!」

「サラマンダーうるさーい」

「なんだとシルフ。やんのか」

「いつでもこいよ」

「喧嘩しないの~」

 ……話を続けよう。

「普段は自分の種は明かさないんだけど、まぁ皆なら良いかなって思って話した。あれだけじゃなくて、他にも技がある。まぁここで見せびらかしたところでだけどね」

「それはなかなか興味があるな」

「まぁ後々見せると思うから」

「……なるほど。では決めたぞ」

「?」

「私もルミツの従者となろう」

「ほ、ホントに……!?」

「えーっ、じゃあ私も私もー!」

「まぁ皆この子の事は気に入ってるしね~。もちろん私も従者になるわ~」

「シルフにウンディーネも……!?」

「ルミツはどうせこの森から出ていくんだもんねー?」

「なんでそれを……!?」

「精霊に隠し事は基本通用せん。ルミツがそう考えていたことはすぐに分かった」

「……なるほどねぇ」

 そりゃあ怖い怖い。
 でも、この4人なら信用できる。多少心が読まれたって構わない。そう思えた。

「確かに私は森を出るって決めてた。この決定を変えるつもりは毛頭ない。皆は私について来てくれる?」

「……もちろんだ」

「!!」

 こうして私は、四大精霊を連れ、この森から出ることを決めたのだった。








 ◇◇◇

「そうだルミツ、主の武器は何なのだ?」

「急にどうしたの?」

 旅支度の途中、私はモースに話しかけられる。

「なに。ルミツに1本、剣を打ってやろうと思っただけだ」

「えっ、いいの?」

「えーっ! すごいすごい!」

「わっ、どこに居たのさシルフ」

「髪の毛の中」

「本当にどこにいるんだよ」

 急に飛び出してきたシルフがとても盛り上がっている。

「何でそんなに驚いてるの?」

「モースって言ったら火の神であり鍛冶の神、ヘパイストス様の1番弟子だったんだよ!」

「ヘパイストス……!」

 神話で聞いたことがある。神々の武器を作り上げ、パンドラをも作り上げたという炎と鍛治を司る神。

「私だって杖とか欲しいのに、モースったら作ってくれないんだもーん」

「何度も言っておるだろう。お前の持っている杖よりも高度なものは出来んと。それは職人のプライドが許さんというだけよ」

「ちぇーっ、けち」

「とにかくルミツ、私は主の武器を作りたい」

「えっ、そんな、え、緊張しちゃうなぁ」

「遠慮することは無い。私の技術は所詮、ヘパイストス様に及ぶことは無い」

「……そう? じゃあ遠慮なく頼んじゃお」

「あぁ、それでいい」

 そっか、それは凄く嬉しい。
 ……そうだな。

「私の使う武器は、刀かな」

「暗殺者なのに刀を使うのか。珍しいな」

「いや、短剣も使うんだけど、質を求めるなら刀がいいかなって思って。戦闘に至っちゃった時に関しては刀の方が使い勝手がいいしね」

「なるほど。じゃあ短剣と刀、どちらも作ってやろうか?」

「え、いいの!?」

「ああ、ここで出し惜しみする必要もあるまいと思えてな。今作るからちょっと待っとれ」

「……あー」

「……どうした?」

「……おこがましいのは重々承知なんですけどー……」

「なんだ、まさか3本目が欲しいとでも?」

「いや、えっとー……、私基本二刀流なので、2本ずつ欲しいなー?みたいな……」

「……ほう」

「いや別に大丈夫なんだけど! うん! 全然無くても」

「まぁ4本くらいなら別に良い」

「えっ! いいの!?」

「あぁ。別に見返りを求める訳でもない。少し時間はかかるが品質は保証しよう」

「流石モースだねー!」

「ありがとうモース!!」

「へっ、じゃあ支度しといてくれ。出来るだけ早く終わらせる」

「うん、お願い!」

 そうして私は武器をモースに作ってもらうことになり、本格的に旅の準備が整うのであった。

「じゃあ私はその間にー」

「?」

「ルミツに魔法を教えたげる!」

「魔法…!」

 サラマンダーの火炎魔法を受けて、私も使ってみたいと思っていた。

「今すぐ使えるの!?」

「うーん、どうかなー。魔法は8割方才能で、努力で補う実力は大した事ない。だから最初に才能がないと感じたら金輪際魔法は諦めた方がいい」

「そっか、才能かぁ……」

「でもまぁ大丈夫でしょー。ルミツは魔力が感じとれるんだよね?」

「うん、まぁね」

「じゃあ大丈夫だよ。あ、才能に自惚れて努力を怠ればそれはそれで大した魔法使いになれないから注意だけどね」

 サラマンダーとの戦闘中、魔法というものが存在したことに私は目を輝かせていた。

「じゃあ、まずは適正属性を調べて見よう」

「おぉ、なんかそれっぽい……!」

「それっぽいって…。えっと、適正属性っていうのは簡単に言えばその人にあった属性だね。四大精霊はそれぞれ火、水、風、土だけど、そこからの派生属性もあるから、何が出るかはお楽しみだねー!」

「へぇ、私の適正属性はなんだろうな……!」

「それじゃあ早速……、あっでも水晶持ってな……」

「私持ってるわよ~」

 藪から棒に出てきたのはウンディーネであった。

「あっ、ウンディーネ! 盗み聞きしてたなー!」

「そっちこそ抜け駆けしてるじゃない~」

「そうだそうだ」

「サラマンダーまでいたの……。まぁいいや」

「ルミツちゃ~ん、この水晶に手をかざしてみて~」

「う、うん」

 私はどんな属性が適正なのか、心躍らせるのであった。
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