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自己嫌悪はいつまでも

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僕は、あの日のことを忘れはしない、を失うのはどんなに辛いだろうかと考えたことはあった、だけど、それが自分に起こるなんてことは考えてはいなかった


だからだろうか、『自己嫌悪』に陥ってしまったのは、だからだろうか? 、生きる気力はあるだろう、だけど生きる意味がない、これは生きる気力がないと言えるのだろうか


だから、いつまでも自分を責めて、責めて、あの頃、心が機能しなくなってから、今までその機能しなくなった心という名の置物を処分しているのだろう


だけれど、結局、僕はあの頃を思い出してしまう、そして心が痛くなるんだ、壊れたはずなのに、涙が出てくるんだ、なんでだろうか


何を求めて歩くのだろうか、何を気力に生きているのだろうか、隣を歩く人はいるのだろうか


隣を歩く人がいない世界、それはひどく残酷で、心が壊れてしまう、その壊れた心が最後の雫を絞り出しているのだろう、だからこんなに胸が苦しいんだろう、そしてこんなにも悲しいんだろう


僕はわからないや、願っても君は帰ってこない、祈っても僕はあの頃には戻れない、そして過去の自分は力がないことを呪ったのだろう、いや今も呪っているのだろう


やり直しができたらどんなによかっただろうか?きっと、また失敗するのだろう、そして僕はまた自己嫌悪に堕ちる


これは運命なのだろうか?他の選択肢はないのだろうか、君と僕が生きている世界、僕が死んで君が生きている世界、戦争がない世界、僕と君が出会わなかった世界

君と僕が生きてる世界があればどれだけ良かっただろうか、二人で笑って、時には喧嘩して、そして最後に仲直りするんだ、そんな世界があればどれだけ、どれだけよかっただろうか


僕は随分変わったよ、君がいなくなってから、人間根本からは変わらないというけれど、僕にとって君は根本そのもの、希望だったんだよ


学園の入学初日に最初から世界に期待してなかった僕に話しかけてくれたのは君だったね、僕は君に話しかけられて最初「なんだこいつ」って思ったっけな、だけど君はそんな僕には気にせず、何度も何度も声をかけて「一緒に帰ろう」って言ってくれたね


そして、僕と君、僕だけが帰ってきた、一緒じゃなく、僕だけ、もう一緒に君と帰ることはできないのかな?


そして夏、僕は感情表現が得意じゃなかったね、でも君はそんな僕を「いいよ、大丈夫」って言ってくれたんだ、それがどれだけ嬉しかっただろうか


だけどね、僕はその言葉だけじゃなくて、君の言葉、君の存在がいてくれるだけで嬉しかった、最初の頃の僕では想像もつかないだろうね


秋、君は寒いのが嫌いだったね、3年前は異常気象で低温になっていたね、今に思うけど、あの頃はそこらの冬より寒かった気がするよ、そしてその頃から、僕は君に変えてもらったんだよ、人見知りで、無愛想で、無気力だった僕、そんな僕に君は心をくれたんだ、欠陥品だった僕を完成品にしてくれたんだ


そして君の家族にもあったね、暴走気味で僕は苦笑いしていたけど、面白い人達だった、君の葬式でも顔を合わせたよ、だけど僕は君を助けられなかったことの罪悪感で挨拶だけしてすぐにどこかにいったよ、だめだな、君の親は娘を助けられなかった僕に怒っているだろうね、でもこれは当たり前のことだろう、僕だって自分自身が許せないんだ、だから自信が付いたら会いにいってみようと思う、自身がいつ付くかわからないけどね


そして冬、三年前は異常気象で冬の気温もいつもより低温になっていて、僕の注意も聞かないで冬なんて寒くないなんて言って外に出たら我慢できなくて震えてたね、あの時は僕のコートを羽織ってあげたんだっけかな?君がいた時は思い出せなかった記憶が、君がいなくなってから溢れるように思い出すよ、なんでだろうか、君といた時が濃厚過ぎたってことかな?



そしてまた春がきたね、この頃のことは今でもよく覚えているよ、初めて恋をした時だ、僕は君が好きになっていたね、相当昔から恋をしていた可能性はあるけれど、初恋だったからかな、気付けなくて、君の顔を見るとあたふたしていたね、君は鈍感だから熱でもあるのかって心配していたけれど


そして君は美しい銀髪、人形のような顔立ちをしていたからか、よく告白されていたね、僕はあの頃度胸がなかったから言えなかったけれど、いつも君が誰かのところに行くんじゃないかってドキドキしていたよ、失って後悔した、君に早く求婚していればってね

でも、僕が好きになった理由は、顔でもないし、美しい髪でもない、僕は君の内面に触れて、君の弱さを知った、君の強さも知った、そして君は脆くて、ちくはぐで、不安定な存在だと知ったんだ、そんな君を支えて行こうと思ったんだよ


そして、2年の夏は闘技大会があったね、懐かしいな、君の剣技は僕の剣技と違って、綺麗で美しかったね、僕のは剣技というよりかは我流だからなぁ、君に剣技を習おうかと思っていたけど、君に負けるのは嫌だったから言えずにいたな


そして初めて長期休暇で海に行ったね、君の水着姿を見て僕は相当顔を赤くしていたと思う、君も顔が赤かったね、カナヅチだと知った時僕は驚いたよ、運動神経抜群、学年成績一位の天才の君が泳げないなんて、僕はそれはみて僕は笑っちゃったね、後で殺されかけたけど


そしてここからが絶望の始まりだった、隣国の帝国が王国を攻めてきたんだ、帝国は周辺諸国と手を組んで攻め込んできたんだ、王国を危機感を覚えたのか、学園の生徒を戦争に投入しだしたんだ、僕たちも当然された、だけど君は強過ぎたからかな、帝国では悪魔と言われて、王国では英雄と言われていたね


帝国と周辺諸国が君を危険と思ったのか、一年前、君に帝国の最終兵器を投入してきたね、だけど僕と君はそれすら打ち倒したんだ、それを罠とは知らずに


あの瞬間は僕はこれでもないぐらいに鮮明に覚えている、今でも夢の中に出てくるんだ


僕達は勇者を倒した後、その場を離れようとしたんだ、だけど君は動かなかった、正確には勇者にかけられた呪いだった、それは勇者が死んだ瞬間に発動する類のもので、帝国は勇者を捨て駒として使ったんだ、当時の僕は君が動かないことを冗談だと思って、何度も何度も何度も何度も、動かそうとしたね


でもその特性は体を硬直させている間に呪いの術式を新たな呪いに書き換える物だったんだ、だから動いた時には遅かった、いや勇者を殺した時点で…


それからの僕は意識が薄れて、なんて言っているかもわからない声をあげて、泣いていたな、君はそんな僕をみて、笑みを浮かべたんだ


君は死ぬ直前まで笑って、僕に大丈夫って言ってくれたね、私は大丈夫だからって、でも君はわかっていたんだろうね、自分はもう少しで死ぬってことを、君は最後に鋼鉄の仮面という名の笑顔をなくして、泣いていたね、僕とずっとに居たいって言ってくれた、僕も君とずっと一緒にいたいよ


君はもう存在しないけど、僕の頭の中には、みんなの記憶の中には存在しているんだ、僕が君を愛していたように、みんなも君を孫のように扱うものもいたし、娘のように思う人もいた、君のいう英雄は、ずっとみんなの心に残るだろう、そして僕という欠陥品もそうだよ、と、

自分を欠陥品と言わないで、そんなことを言われた気がする、だけど、これは僕の過ち、君を助けられなかった、救えなかった、いや、違うな、僕は君がいたから完成品だったんだ、君がいない世界は僕にとって欠陥品で、僕も欠陥品


君は何を今思っているのかな?空から僕のことを見ているのかな、見ているなら僕は君に、いや神様っていうのがいるのなら、最後に祈るよ、貴女を返してください、と









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