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しおりを挟む「今日もありがとー♡」
センターの子が挨拶して今日は終わり。
5人組アイドルのうちの一人、私は私服に着替えて誰よりも先に控え室を出る。
「みおぴ今日出勤なの?」
「そ。面倒だけどでなきゃ」
「だから自分でSNSしなって言ってるのに~。マネージャーも困ってるじゃん」
「そーゆーキャラ付けなの」
「みおぴの個人のやつ事務所が更新してるだけじゃん」
「盛るの苦手なんだって。みんなのやつに載せてもらうだけでいいの」
面倒だからなのはメンバーもマネージャーも事務所も知ってる。だからこそそのキャラでやっていけてる。SNS更新しないキャラってこのご時世しんどいけど、メンバーはtktkやったりがんばってるから別にファンがいない訳じゃない。箱推し本当にありがとう。
出勤は事務所が噛んでるコンカフェ。やらなくてもいいんだけど、時給いいしバック多いから助かってる。お金が必要な理由?それは
「しゅーとぉー♡」
ドルオタである。出来れば全通したいから地方も行く。今回は首都だけで夜公演だけだから助かる。事務所にも言ってあるから、メイク変えてウィッグ被れば全くバレない。
そんなに売れてないアイドルだからってついてくるやつはついてくるのだ。このSNS時代、すぐ炎上するんだからやってらんない。だからコンカフェ勤務なこともちゃんと公式で言ってるし、コンカフェのスケジュールもアイドルのスケジュールも全部事務所が公表してくれてるから助かるっちゃ助かる。
こんな風にペンライト振り回してるなんてファンや客は誰も想像もしてないと思う。
「みおぴなんでうちわ作んないの?ファンサ欲しがってるくせに」
「うちわ公式のだけでいいし、ファンサは流れでいいんだよ。確定ファンサもらった日には発作起きて倒れるから会場スタッフの方々に迷惑かけちゃう」
帰りは電車ではなく、駅とは少し離れたところに事務所の車が来てくれる。今日の同行者は事務所の別タレントのマネージャー。男性アイドル研究のため同行してくれた。
「なにそれ、私可愛いからファンサ絶対もらえるって自信?」
まぁなくはないけど、推しからファンサもらったら何であろうとやばいし、顔割れたりしたら嬉しいより申し訳なさすぎて…ファンでもっとかわいい子いっぱいいるの知ってる。だてに長年ファンやってないし。
「顔割れたファンって結構大変だよ。私もファン大体わかるもん。強烈なれななファンとか面白いよ。私とれなな絡むとめっちゃ睨んでくるの」
「それみおぴが男装コンカフェで働いてたときでしょ?」
「そ。なんか嫉妬されてて。今のとこに変えたら全然。百合営業だったのに本当だと思われてたの。めいわくー」
「みおぴのファン女の子多いしね」
「箱推し以外の男性ファンほとんどいないよ。いてもおねえさんだったりするから笑」
私の推しうちわにはだいたい「みおぴ魔法かけて♡」だ。適当にはやってみるけど、かけられるわけねーだろってチェキとか握手会の時に言うとファンの子は満足そうにしている。ちなみにコンカフェの方にも来てくれるいいファンが多い。
「みおぴこの前グラドルにパーティー誘われたでしょ?」
「そ。しゅーとの事務所だから行こうかと思ったけど他グルっぽかったし、そんなとこいたって万が一にもしゅーとにバレたら死ねるから蹴った」
「当たり前じゃない。そんなとこ撮られたらグループ終わりよ。港区ダメ絶対!」
事務所の圧がここでかかった。
無事に車に乗ってスマホチェック。SNS自分ではやらないけど、コンカフェの個人アカウントは使ってる。全部店の出勤情報をリポストするだけだけど。あとは完全な趣味情報集め用のアカウントがある。どっちもうかつに呟かないようにしている。
店の個人アカウントにはDMが来るのでちょくちょく見はする。ファンの子がいついつ行きますーとかお礼とか。丁寧に返したりはしないけれど、絵文字だけとかスタンプとか返すだけで「みおぴファンサ」って喜んでくれるから意外とちゃんとやってる。
『明日みおぴに会いに行ってもいいですか?』
アイコンも初期設定のままのアカウントからきた。まぁファン以外からもあるし、いたずらだろうって流した。
*****
「みおぴ指名~」
魔法少女のボス、店長は元アイドルだ。運営に回って今は魔法少女コンカフェの店長をやっている。
「いつもの子達じゃない!新規で男性」
珍しい。ってあれ?あの初期設定のやつかな?
「魔法かけちゃうぞっ!みおぴでーす。指名ありがとー」
言わなきゃいけない決まり文句をかわいいステッキ片手に言う。
バケハに眼鏡、マスクで怪しさ満点な一人客である。
「…昨日DM?初めてしてみたんですけど届きました?」
DMの犯人らしい。
「届きましたよ。ごめんなさい、返信しなくて」
「いや、いいっす。澪奈さん塩だって知ってたんで」
「澪奈ってことはグループの方知ってくれてるんですか?」
「現場は、ちょっと色々あって行けてないんですけど、配信とか他のメンバーのSNSとかグループの公式とかで澪奈さん追っかけてます」
「えー、うれしー。」
塩対応なのは織り込み済み、自分のSNSじゃなくて写り込みと公式にしかでないことを知ってるってことは長いファン?えー、知らない。現場来ないから?
「男装のときは行こうとしたらあっという間に辞められて…あんまり画像も残ってなくて」
「えー、それも知ってるんですか?あれは百合営業の一環だったんですよ。そしたら思ったより燃えたんで辞めました」
まぁ他のお客さんに聞かれても大丈夫な有名な話なので普通にカウンター越しに話してても平気。
「このVIPって?」
メニュー表みながら聞かれたのはセット料金の下。桁が普通とは違うVIPのやつだ。
「個室で二人でお酒のめまーす。みおぴの分もお酒あったらうれしいな♡」
普段ならしない手でハート作って冗談めかして言えば
「じゃあこのセットで。ドリンクはみおぴが嬉しいやつならなんでも」
「え?じゃあこれいっちゃう?」
キャストバック率70%なんてふざけた50万円のボトル。開店以来1度も出てない笑えるメニューだ。店長の昔のファンすら入れなかった高級ボトルをふざけて指差せば「じゃあそれとVIPルームで」
さすがの私もポカン、店長はアイドル時代ばりの笑顔でスキップしてる。
「見せパンじゃなくてあれ、衣装についてきたフリルのパンツ履きな。みたところイケメンそうだし、引っ張れるだけ引っ張って」
「はぁ?なにそ「ドルオタしてるって公式でバラすぞ」
「…やるわよ」
「店内で本番はダメだからね。風営法引っ掛かるから」
要は体売ってこいってことか?この時代のコンプライアンス絶対だめだと思うんだけど。しかも事務所の人間が。マネージャーにチクるぞマジで
でも見せパンは脱いで普通に自前のにした。それぐらいのサービスはする。今度の現場代ありがとうって気持ちを込めて。いいさ、太もも触られるくらい、いいさ、もういっそおっぱい触られたって。
「監視カメラ切っといたから。ヤバかったら大声出して。それまでは近づかないから」
「絶対ヤらないから安心して。私一応アイドルだし」
「信じてるよみおぴ」
私はグラスを両手に、店長がシャンパンクーラー持って部屋にはいる。あら、近付いたら意外と背が高い。あと脚長いし。ん????
「会ったことある?」
「え?ない、と思う、けど…」
「そう?なんかみたことある気が…」
「みおぴ営業やめてー。現場に来て♡とかするんでしょ?おにーさん気を付けてよ、みおぴ塩だけど沼だから。あ、チェキ撮る?今日ならチェキ代で普段なら禁止のセルフィーもOKしちゃう。チェキ代1000円ですけど」
「じゃあチェキ1枚とセルフィーで。おつりいらないです」
「まいど!手出すのだけ禁止でーす。ごゆっくり♡あっチェキ今撮る?あとみおぴの写真SNSとか禁止でーす。一応アイドルなんでね」
「今撮ります。あっみおぴ、片手だけ頬ハートおねがいします」
5000円店長に手渡しした男はバケハ、メガネ、マスクフル装備のままチェキ撮った。え?
「みおぴあの曲のときちゃんとファンサしてますよね」
飲み始めたら饒舌になったこの謎の客は私がちゃんとアイドルしてるって熱弁してきた。
「恥ずかしがってるし小さくしかしないけど、常連にはちゃんとしてますよね」
「よく知ってますね。誰か友達に私のファンでもいます?」
「…とあちが」
「とあち!私の一番のファンですよ。1つお姉さんなんですけど、中学の時の、デビュー前からずっと応援してくれるすっごく大事なファンです」
「本人が聞いたら泣いて喜ぶでしょうね」
とあちの知り合いか!ほぼ見えてないけどなんとなく顔整ってるのも納得。マスクとってお酒飲むとき私と顔合わせないの謎だけど。
「澪奈、一緒にとってもいい?」
スマホ出してきた。まぁお金もらってるし、ツーショ流出させるような人じゃないと信じる。
「こっちもっと寄れる?」
2人掛けソファに座ってるけどもっと近づけってことか。
「じゃあ画面じゃなくてインカメみて」
見るなってことでしょ?マスク取った一瞬で撮ってた。「見せて」って言っても「宝物なんで駄目です」って。ちょっと待て、マジで顔をよく見せてくれ。
「ねぇ、名前。そう、名前呼べないと不便だから。なんて呼べばいい?」
「…カナタ」
推しグルのセンターの名前と一緒だった。あんなキラキラ王子様とは違うから偽名だろうけど、ちょっと待って。なんかもう思いたくないけど既視感あるんだよ。ほんともう、なんでも都合よく考えちゃう、みおぴったらおばかさん。昨日現場行ったから?いや、それなら髪色が!ちがう!昨日の現場はキレイな金髪だったからこんな暗い髪色じゃなかった。しかも長めだったからこんな短くないし。あーもうみおぴったらぁ都合よく考えちゃうんだから、妄想も大概にしなくちゃ。
高いお酒はおいしかったです。そのあとをよく覚えていない。私お酒弱かったっけ?
「じゃあアフターですね。みおぴをよろしくー」
え?アフターとか聞いてないって言おうとしたら更衣室に店長に突っ込まれた
「あんた酔わされてるよ。チェイサーってスポドリ一緒に出されたでしょ?」
「あー確かに」
「それ常套手段だから。とりあえずヤバいやつじゃないと思うけど、一発ヤってたまにはストレス発散したら?」
この人は知っている、昔隠れて遊んでいたのを。事務所にバラしてないのは温情、うまく使うためだって知ってるけど逆らおうとも思わない。
20も過ぎたしアイドルなんて職業に私の先がないことだって知ってる、れななはワンチャンタレントでやっていけるだろうけど、私は運営に回るつもりだ。まぁそれも事務所が雇ってくれたらの話になるけど。
だからそんな私が太客になりそうな若い男とヤろうがヤらなかろうが、店の売り上げになればいいってのが店長の考え。
「わかった。とりあえずアフターどこだかしらないけど行く。やるかやらないかは気分」
「それでいい。撮られるのだけ気を付けて」
「わかってるって」
相手がわかってくれてるかは知らないけど。
…完璧だった。ホテルに連れていかれたけど、先にとっててくれたのかカードキー渡されて向こうは地下駐車場入る前に降りた。私は地下から上がってルームキーに書いてある部屋に向かう。あーもうヤリアフターじゃん。この店入ってから初めてなんだけど。枕営業とは無関係でアイドルやってきたけど、こんなコンカフェの仕事で枕か。
「おじゃましまー、す…」
部屋は真っ暗。え?間違えた?でもシャワーの音する。え?人と一緒にきてるのに先に入っちゃうの?でも見る気はないし、電気つけたら部屋ゴージャスだし、酔いざましにタクシー乗る前に買った水でも飲んでよ
『店だとどーこー言うからホテル連れてこられたけど、ヤるかんじじゃなさそうラッキー。入口も別にしてくれてたし多分業界の人』
『枕させる気はなかったんだ本当に。ごめんね』
店長は店長で悪いとは思っているらしい。やるかんじじゃないって送ったけど、相手シャワー浴びてる時点で多分ヤる
無駄にテレビつけてバラエティをみて水飲んでスマホいじる。スポドリとアルコール意外ときく。びっくり。バストイレトイレ別でよかった。
「ほんとに澪奈がいる…」
お風呂から出てきてもマスクと眼鏡だった。髪型も髪色は…やっぱり昨日ステージの上に見た推しとは違う。やっぱり都合いいように考えちゃっただけだ。でも声は
「ついてきてよかった?店長さん怒ってなかった?」
「怒ってはないよ。心配もしてない」
「そう?ならよかった。まだ飲める?ルームサービスでも冷蔵庫に入ってるやつでもいいけど」
まだ飲ませる気か。いいやもうヤケだよヤケ!飲むだけのんでやる!
「だからね、塩対応なのも仕方なくない?」
「まぁそうだろうけど。それより飲みすぎじゃない?」
「いーのいーの。昨日いいことあったし、明日どっちの仕事もオフだし」
「昨日いいことあったの?」
「えーっとね、カナタって名前って言う人にはおしえませーん」
また酔っぱらってて頭はあんまり働かない。気付いたら自称カナトの肩に首乗っけてお酒と水交互に飲んでる。
帽子もマスクはとってるみたいだけど顔を覗き込むような無粋な真似はしない。だってなんか見ちゃったらおわりそうだもん。
「昨日どこいたの?もしかしてだけど、有明?」
「え?すご、エスパー?やっぱカナタだから?全然カナタ推しじゃないけどやっぱりカナタ?」
「好きなのカナタなの?」
「ううんしゅーと。しゅーとのデビュー前からもう何年もずーっとしゅーとのことしか見えてないの。」
「リアコ?」
「高校生くらいまではね。自分もアイドルやってるし今は弁えてるよ。繋がりたいとも思わないし、アイドルのしゅーとが好きなの。」
やっぱりこの人横顔がしゅーとかもしれない。ずっと考えないようにしたけど、やっぱり似てる。何年みてきたと思ってるの?デビュー前からずっとずっと好きだったんだもん。
「現実だったらどうする?」
「え?」
「目の前の俺がしゅうとで、澪奈が好きって言ったら」
「…夢」
「夢じゃないかもよ」
そこでキスされてから目が覚めたら朝だった。なんで朝かわかるかって?ブラインドから漏れてたのが陽の光だから。
「やばい、やばすぎる」
全裸で目が覚めて隣に寝ていたのは紛れもなくガチ推し。酔っ払ったのと信じられないのでずーーーーーっと現実を見ないでいたけれど、紛れもなく一昨日ステージに立ってた推しだ。え?明るい髪色も長めの髪もよかったけどやっぱ暗め短髪最高…じゃない!!!!やばい!!!!!なにがやばいってすべてがヤバイ。
幸いにもあちらはお疲れ(でしょうね)なのかよく眠ってらっしゃるし、まだめっちゃ朝(6:45)だからちょっとやそっとじゃ起きないはず。昔から雑誌のインタビューとかでしゅーとは朝が弱いって言い続けてるし、メンバーも動画とか雑誌でも言ったりしてるくらいだからガチで大丈夫なはず。はぁ~、香水の匂いなのかしゅーとの匂いなのかわかんないけどいい匂い…いや!ホテルの匂いだ絶対!しゅーとの匂いだなんて妄想はしない!
とりあえずベッドの下に落ちてた下着を身に付けて、服、服、服は一緒に飲んでた部屋に落ちてた。忘れ物はない、マスクしてカードキーを分かりやすくテーブルに置いて、痕跡は一切残さず音も立てず出る。嘘でしょ?夢じゃないの?やばっやばすぎる。
「うえっ」
「ちょっとー、おねえさん吐かないでよ」
タクシーでうえってなったのは二日酔いより現実が受け止めきれないからだ。
「大丈夫。気持ち悪いとかじゃないから」
「ならいいんだけど。吐きそうなら早めに言ってね」
吐いて昨日のことがなかったことになるなら今すぐ吐くんですけど
*****
「みおぴ顔やばくない?」
「え?浮腫んでるとか?」
「ちがうちがう、なんか隈やばいし、こけてる」
「このコンシーラーいいよ。光飛ばしてもらっても隈消える」
「マジか借りるわ」
今日はグループで週一生配信の仕事だ。とはいえ今回は事務所でお喋りだから企画とかないし楽なんだけど、メイクチェックのため事務所でみんなでメイクだ。
「ねー、この前のティントどうだった?」
「あれまだらに落ちるからダメ。」
「マジかー。ねぇ、事務所のあれ貸りようよ諭吉シリーズ」
「いいね!みおぴコンシーラーのあとファンデあのくそ高ファンデ使ってよ!血色死んでてもどうか知りたい」
ゆまちぴとにゃーなはめちゃくちゃお喋りしながらメイクだ。れななはメイク中なのに事務所の人に呼ばれた。
結論、諭吉シリーズとんでもなかった。
「やばっ、みおぴのあのヤバかった顔がたまごみたいになった。毛穴なし、くすみなし、やばっ」
「でも汗落ちとか気になる。ねぇ配信終わったらレッスンルームでダンスしよ。キープできたらプライベートで買う。みおぴもそうじゃない?」
「たしかに。汗落ちとかないなら私も買おうかな」
「現場行くときとかにいいじゃん!みおぴまだ通ってるんだもんねー。ちゅきちゅきな推しのために」
でかいブラシでフェイスパウダー乗せてるときに
言われたからむせた。今は聞きたくはなかった推しの名前
「もしかして繋がれたとか!?やっぱグラドル港区パーティー私もいけばよかった~」
そんなことを事務所で言ったゆまちぴはメイクしながら事務所の人にめちゃくちゃ説教された。私そもそもそのパーティー行ってないし
*****
「じゃーあー、れななから、週末の現場に向けて一言!」
「いーっぱい練習してるし、珍しく結構前の衣装着るから見に来てねー!あっ投げ銭ありがとー♡」
隣にいてもかわいいれなな。めちゃくちゃアイドルだし本当に好き。れななのファンもれななと一夜とか過ごしちゃったらどうなるんだろーって司会のにゃーなの声とかテキトーに聞いてたら
「はい次、みおぴ!みーおーぴー!」
「あっ、ごめんごめん。」
「配信中に考え事はやめてくださーい。ちょっと今日はみおぴ顔面に3万乗っけてるから最後にみてみて!アップにしてあげる」
「ちょっと、やめてよ」
「はい塩~。でもやめなーい。みてよ、この陶器肌!スマホの最新技術をもってしても粗が出ないみおぴの顔面をみよ!」
「うっわー陶器!ってかまたみおぴに高額投げ銭!とあちだな~、セレブめ!ほらみおぴお礼言わなきゃ」
「とあちありがと」
「塩~」
わいわいしながら配信終わって4人でダンスレッスンして、ファンデの性能の高さにビビって楽しかった。やっぱりグループは好き。言えない悩みがあることに3人は気付いてたっぽいけど直接言ってこないことが本当に救われる。
「ちょっとみおぴ来て」
マネージャーに呼ばれたからなにかと思えば
「このアカウント心当たりある?」
「え?なにが?知らないけど」
「とあちじゃない高額投げ銭。コンカフェの客でふっといの来たって聞いたから。澪奈なんか要求した?」
「するわけないじゃん」
「だよね…澪奈はそんな器用じゃないもんね。ちょっと心配になっただけ。変なやつじゃなかった?」
そこはもう忘れさせてくれ。
「大丈夫。手出されたりしてないし」
「ならいいんだ。金銭盾になんか言ってくるようなやつだったらすぐ言ってね」
こんな塩アイドルやってても事務所は守ってくれる。デビュー前はこたえたくて無理したときもあったけど、澪奈はそのままでいいと言ってもらえたからこのキャラでやっていけてる。
*****
週末ライブのあととあちからDMがきた。
『みおぴ、2人で話したいことあるからマジカル行ってもいい?』
『了解。今週は明日と水曜日と金曜日出勤』
『早めがいいから明日行くね。みおぴに会えるの楽しみ』
がっつりチェキも撮ったし、握手もした。楽しみと言われてもって思ったら当日VIPで土下座された。
「え?とあちどうしたの?」
「本当にごめんなさい」
「だからなにが!?」
パニックのあたしとカーペットに額擦り付けてるとあち。
「みおぴがしゅうと推しだってすっごい前から知ってた。デビューする前?しゅうとの現場でみたことある」
「え…」
「関係者席の前だったことあるでしょ…?」
ある。初めてのアリーナツアーのときに横浜で。え?
「はなしかけなかったんだけどさ、あたし関係者席にいて…公式のしゅうとのうちわ持ってたからみおぴはしゅうと推しなんだって…先週まで…」
いや合ってます。むしろあんなことがあってもまだ推しです。
「あたしさ、みおぴに本名教えたことないじゃん?」
「…うん」
たしかにそうだ。とあちってのはあだ名だけど、とあちの本名はとうあ、だからとあち。それだけは知ってる
「苗字さ…ごめん、ほんとうにごめん」
「え?なに?とあち頭あげてよ」
「しゅうとあたしのお兄ちゃんなの!」
目眩ってマジである。ダンス頑張りすぎて酸素足りなくてじゃなくて、現実をうけとめきれなくて目眩。生まれてはじめてだ。え?とあちのおにいちゃんがしゅうと?え?????
「しゅうとの家族構成知ってる、でしょ?」
「近所に母方の祖父母がいて、両親、姉、いもう、と…」
「幼稚園とか小学校から一緒の人達はみんな知ってるんだけど、高校くらいからは隠してて…みおぴにもずっと言いたかったけど、みおぴも隠してたから言えなくて…ごめんなさい」
私を推してくれてるとあちのお兄さんが私の推し?
「えー、もうわっかんない。無理ぃ~」
「無理ついでに、お兄みおぴのこと結構前から認知だよ。毎回客席みおぴ探してるって」
死んだ
「とあち、私を殺して…」
「え、やだよ。みおぴいなくなったらあたしが無理。あと今度お兄と来るね。みおぴに会いたいんだって」
数日前にお会いしました
「ほんとむりぃ~」
「お兄とホテル行ったのに朝逃げたのも教えてもらった」
「もうだめだ…とあち私生きていけない」
「みおぴがだめだととあもダメだからやめて」
無理すぎて逃走したい。でも事務所との契約もあるし今すぐは無理。
「とあちもうだめ…私アイドルやめて隠居する」
「おにいと結婚してくれればずーっとみおぴといられるからそっちに期待しとく」
「とあちは私を殺したいの?」
「幸せでならみおぴが再起不能になっても、とあとお兄が介護するから大丈夫」
逃げ道もないらしい。
平和にアイドル辞めて事務所に就職する夢も叶いそうにない。あーむり。まさかとあちが障壁になるとは…
推しは推しとして好きでいたいの。夢じゃないんだしリアコでもないんだから付き合うとか、とあちの言う将来とか無理。無理無理、ガチで無理。
もういっそしゅうとの数少なくなったリアコに刺されて今すぐすべてなかったことになる方が幸せな気がする。
神様ごめんなさい、しゅうともごめんなさい、とあちもごめんなさい。むしろご両親ごめんなさい。
夜逃げってどうやるんだろう。あとでグー○ルに聞いてみるしかない
end
こんなことは絶対に起こらない
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