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「さむい!さむい!さむい!」
残暑が去ったばかりとは思えない冷え込みに出勤早々大声で叫んでしまう私大崎麻衣佳は店内を掃除中の黒服たちに呆れた眼差しを向けられる。
「そんな短いスカートはいて半袖だから寒いんだよ」
だっさいセカンドバッグ(今日の釣銭)を持って入ってきた店長にまで呆れられた。
「昼はあったかかったから半袖なの!スカート短いのは脚が長くみえるから。それより寒いから今日から呼び込みジャケット着ていい?」
「まだダメ。ちょっと冷えるけどあのセク嬢めっちゃ頑張ってる、あっためてあげようかな(はーと)みたいな人を呼び込むためにもまぁぴょんにはがんばってもらわなくちゃ」
「うーん…わかった。じゃあヒーターだけつけてね。マジで寒くて凍死したらシャレになんないから」
「まぁぴょん、店まだクーラーだからヒーターなんか出さないよ。去年のカイロなら更衣室にあるだろうから外ほんとに寒かったらそれ出して使いな」
「わーい!カイロ探す!てんちょーありがとう!だいすきちゅっ!」
「うえっ投げキッスとかいらねー。俺にはかわいい娘と奥さんがいればそれでいいんだよ」
シッシッと虫でも払ってるように私の投げキッスを拒否する店長。なにがかわいい娘と奥さんだよ、キャバクラの店長やってるって嘘ついてるくせに。キャバはキャバでもセクシーの方のだよ。しかもにバニー服が売りの。
奥さんはここの系列店の元キャバ嬢、店長はその店の雇われ店長。辞めてから付き合ったらしいけど本当かどうかは知らない。
奥さんも辞めたし系列のセクキャバに異動。バレろ、奥さんにバレろ。そして引かれろ。
「おはようございまーす」
「まぁぴょんおは」「おはよー」
先に出勤してきていた同僚たちは更衣室で座ってスマホいじったりタバコ吸ったり化粧したり髪セットしたりといつもの光景
「今日さむくない???」
「あー、まぁぴょん入ってきて早々言ってたね。あたし全然寒くないや」
「え?ま?悪寒?悪寒かな?」
「まぁぴょんに悪寒って…なに?なんかした?」
「いや、なんもしてないけど。もしかしたら今日は貧乳フェチが来るとか!?」
「ウケる!それはまぁぴょん悪寒するわ」
更衣室中が大笑いだ。なんと失礼な
ちなみに私がなぜまぁぴょんなんてふざけた呼び方をされているのかと言えば、源氏名だ。源氏名がまぁぴょん。本名が麻衣佳だからまぁぴょん。安直な付け方だ。
他の嬢も、あーぴょん、きぃぴょん、なぁぴょんなどなど、みんなぴょんである。本当に店長の源氏名の付け方は安直すぎる(2回目)
とりあえず着替えの前に一服しよう。ロッカーに入れっぱなしになってるタバコとライターを持って灰皿前に座る。外でもないのにクーラーの風は当たるから手で遮って火をつける。火をつけるために吸い込んだ一服目が何よりも幸せである。
「あ~生き返る」
「まぁぴょんおっさんくさいよー。せめてなにも言わなければかわいいのに」
「そりゃ1ミリなんて吸ってる女子はかわいいでわ。指名もバンバン入るわ」
「ありがと。ほめてんの?けなしてんの?自虐?でもまぁぴょんの歳でセッター吸ってる子あんまいなくない?」
「そう?」
「そうだよーやっぱ男?あれ?まぁぴょん今彼?あれ?フリーじゃなかったっけ?」
「すごいいい男とワンナイしたときその人が吸っててなんか覚えてたからやめられなの。彼氏はフラれました。しかも3日前!みんな知ってるじゃん!」
またもドッと笑い出した更衣室のメンツ。失礼な話だ。
確かに彼氏にはフラれた。理由はセク嬢だから。ふざけた話だ。夜の商売の子と付き合いたいと言って告ってきたくせに、セクとは聞いてないキャバだと思った。おっぱい他人に吸われてる子はイヤだ。というなんとも言えない理由でフラれた。いや、気付けよ。普通のキャバじゃバニー服は制服じゃねーよ。
フラれた翌日の出勤は泣いて荒れてみんなに愚痴ったけど
「そもそもまぁぴょん指名もあんまないからうちらほどおっぱい吸われてないじゃん」
という同僚のとんども発言で我に返った。そうだ私は落ちこぼれセク嬢なのだ。おっぱいがある者が正義であり勝者になる世界だ。
この店『らびばに』は名前からも連想出来るようにバニー服で接客するセクキャバ(おっパブ)
制服はバニー服。ダウンタイムのみおさわりで上半身、キスのみ。意外とハートカットのレオタードは前をぺろんめくるだけなので楽。
同僚達はほぼ丸出しで着替えている。おっぱい、おっぱい、おっぱいだらけだ。
そんな中私だけはに前屈みになり背中から脇から、あわよくばと脇腹からも肉という肉を集めてヌーブラをつけて寄せる。1枚ではない、2枚だ。2枚重ねるとBカップだった胸に立派な谷間ができる。
「いつみてもまぁぴょんの詐欺胸やばいわ」
「今日は寒空の中健気にがんばるウサギを温めてあげたいエロいやつひっかけなきゃいけないらしいから深めに見えるようにしたわ!」
谷間にシャドウまでいれておっぱいは完璧。
温めてもらうのは客だというのになんという健気な私。
ハイレグのレオタードを着て、意味あるのか?みたいな襟チョーカーをつたら手のひらに軽く香水を吹き付けてから髪につける。髪につけるのはタバコの匂い消しもあるけど首だとショートボブの私ではダイレクトすぎ。セックスのときに男に嫌がられるやつだ。
あとは手首につけたやつを膝裏。そして足首。みんなが香水つけるから更衣室は色んな香りが混ざり合い、女だらけの職場独特の空間になる。そんな空間は私は好きだ。
スリッパはいてロッカーから出した耳カチューシャを持ってミーティングへ向かう。
ミーティングといっても名ばかり。今日は誰が同伴でくるよとかそんなもんだ。
「まぁぴょんは1回目のダウン終わったら外ね」
「りょーかいでーす」
よし、最初はヘルプだな。げっ網タイツ忘れたけどレオタード脱いではくのも面倒だから今日はナマ足。スリッパも黒いエナメルのピンヒールに履き替えて今日の仕事が始まる。
今日はあーぴょんの指名卓のヘルプ。カノバレは回避したいから残業って嘘ついてオープンと同時にきて1セット楽しんだら帰る健全(?)な遊びをしてくれるお客様だ。
「まぁぴょんおっぱい大きくなった?」
「え?マジ?そうみえる?」
「こうく~ん、まぁぴょんのおっぱいは一朝一夕じゃぁ大きくならないよ~」
「だよねーあはははっ」
うるせぇ巨乳フェチ。乳さえあればいいのか?彼女もあーぴょんのおっぱいすけべな顔でもんだり吸ったりしてるの見たらドン引きだよ。
てかあーぴょんもなにげ下げてない?
音楽も変わって照明が暗くなったから私は席を立つ。鏡で顔チェックしてリップ塗り直して前髪整えて店名の看板(棒にパネル貼っただけの手抜き!)持って出陣
歓楽街でもメイン通りはホストやキャバクラがやっぱり多い。この店があるところは1本入った風俗通りだ。無駄にギラギラしてる。
このビルは小さいけどセクは2店舗、アジアンガールズバーと麻雀店、地下はダイニングバーがある。アジアンガールズバーはよくわからないけど呼び込みで出てるお兄さんがたまに差し入れでくれる東南アジア系料理はすごくおいしい。ガールズバーじゃなければ通ってた。
地下のダイニングバーのお兄ちゃんたちはうちの店やもう一店舗の嬢を楽しくつまみ食いしてる。近くのイケメンって手頃だよねってうちの嬢たちも言ってるから需要と供給はとれてる。
私は店長さんがタイプだけど前に笑顔で「ない」と言われたから軽く失恋した。
「おはよーございまーす」
もはや仲間と化してる系列のセクのボーイくんとガールズバーのお兄さんに挨拶して今日も店頭に立つ。
制服のまま外に出るのをいやがる嬢が多いけれど私は全く苦ではない。むしろ卓についているよりいい。
向けられる視線は様々あるから最初は落ち込んだりもしたけれど、大半はエロい視線なのでいっそ清々しい。妬み嫉みの視線よりもよっぽど私の自己顕示欲を満たしてくれる。
出てくる前に自分の店にいたお客様は大体覚えているので彼らが帰る際は必ずまたきてねという気持ちも込めて
「バイバイぴょん!またきてね!」
と満面の笑みで送ってあげる。客商売、笑顔は大事だ。直接私のお客ではなくても、彼らが落としてくれたお金は少しであっても私の懐に入る分にもなっているので気分よく帰ってもらいたい。
「おっぱいも指名もないまぁぴょんがうちに必要な人間なのは、その愛想と顔の良さがあるからだよ」と以前店長に言われた。系列のキャバの方に移籍を持ちかけられたこともあるが、私はバニーでいたいし、この店の嬢やスタッフとうまくやれているので当分続けさせてもらうつもりだ。
「ぶえっくしょんっ!!!!!!」
「まぁぴょん、寒い?鳥肌やべぇよ。煙草休憩がてらあったかい飲み物作ってもらって飲んでおいでよ」
「まだ1時間くらいしか立ってないのに?まぁでも風邪引きたくないから一旦戻るね」
系列店の黒服にそう言ってもらえたので店に戻ることにした。自分の店の子じゃなくても気を遣える彼はよくできた男だ。きっとすぐ店を任されるか、昼職に転職だろうな。年齢がもう10や20上なら好きになっていただろう。
「てんちょーいる?」
小さいキッチンに顔を出せばドリンク作ってる黒服とPCとスマホ交互にみてる店長がいた。
「どうしたの?まぁぴょん」
「鳥肌やべぇから煙草がてらあったかいもの作ってもらって飲んできなって上の子が」
「へぇ優しい、よかったね。なんか作ってあげるから待機室のほうで煙草吸って待ってな」
ロッカーに戻ってタバコの入ったポーチとスマホを出して、意味あるのかわからないレオタードのセットのジレを着て待機室のほうに行く。
黄緑のSNSチェックしたけど今日に限ってお誘いがない。こんな寒気がする日は誰かといたい気分だったのに。
「なに?また男?」
「ううん、今日は誘いないなーって」
「珍しいじゃん。はい、どーぞ」
カップに入ったのはホットレモンだった。ドリンクに使うレモンじゃん、申し訳ないけどありがたくいただくことにした。
「まぁぴょんまだ恋愛対象おっさんなの?」
「なにその言い方!恋愛も遊びも30代以上からなの!ほうよーりょく?求めてるの!」
「包容力?もうデブと付き合えば?」
「ちがう!ギラギラした、昔もモテたけど今もまだまだ男盛りです!みたいな人がいいの!女の扱い?めっちゃ楽だけどそれが?みたいな男」
「なんでそんなことになったんだか…」
人のポーチからタバコだして勝手に吸う店長よ…でも私もよく店長からもらってるから何も言わない。
ちなみに店長は顔はいいかもだけど奥さんと子供がいるのでなし。不倫は面倒事しかないからしない主義。
パパ活や愛人なんかもお金だけの関係や対等でない関係がイヤだからしない。お金なら自分で稼ぐよ!
「18のときかな?なんかすごい、色々すごいお兄さんと出会ってから年上好きに拍車かかっちゃって」
「なにそれ初耳なんだけど」
「アプリで会ったんだけど、いい男だったし、なんかやり手っぽい人でね、テクとかアレとかもうすごすぎるし理想そのものすぎて一晩で落ちた」
「え?その人今もセフレなの?」
「残念ながらそのあとスマホぶっ壊れて連絡先なんて残ってなかったし電話番号も教えてなかったから一晩だけだった。とりあえず話してたら夜関係ってことはわかったからいつか会えたらって思って夜の世界飛び込んだの。ちなみに会えてませーん」
「ダメじゃんwww」
夜の街なんて都内だけでもいっぱいあるからこの街にいるわけがないんだろうなってことはわかってる。でもいつかまた会えたらいいなーと軽く思ってはいる。
「どんな人だったか覚えてるの?」
「もう2年も前だし色々あったから薄れてはいるな~思い出って美化しちゃうし。でもタバコだけは覚えてるからセッターなの」
「そっかー…この業界なら喫煙者多いし、よっぽどレアなのじゃない限りわかんないね…まぁぴょんにもそんな過去があったなんて」
「過去なんて大それたもんじゃないって!別にその人と付き合いたいとかもないし、今は今でセフレともうまくやれてるしお金にも困ってないしー、唯一不幸せなのは彼氏がいないことくらい?」
あー、もうっ!彼氏にフラれたのほんと意味不明。ちょっとイライラしてくる。
2本目に火をつけてゆっくり吸い込んで吐き出す。
「まぁぴょん別れたんだっけ?荒れてたよね。何日前?」
「もういいからー!着替えてるときみんなにからかわれたもん」
「男なんていくらでもいるよ。すぐ彼氏できるでしょ」
「顔がよくて30歳以上、仕事はしててー、女慣れしててー、喫煙者で性欲もギンギンで浮気しなくて、結婚とか理不尽な別れを切り出してこなくて職業に偏見ない一途な人いないかなー」
「すげー条件…もう遊び相手と遊びって割りきって、結婚したくなったら真面目に婚活とかすれば?まだ全然若いんだし」
一理ある。そうだ、別に彼氏なんていなくていいんじゃん。
「そうだよね!なんか元気でた!ホットレモンとタバコとてんちょーのおかげで元気でた!また外いく!」
「無理しないで、具合悪くなったらすぐ戻っておいで」
「OK!りょ!タバコ出しっぱでいい?」
「いいよ、スマホは?持ってようか?」
「うん、次戻ったら取りに行く」
「じゃあもうちょっとだけお願いね」
そうだ。彼氏じゃなくても一夜を共にしてくれる人がいればそれでいいんじゃん。
残暑が去ったばかりとは思えない冷え込みに出勤早々大声で叫んでしまう私大崎麻衣佳は店内を掃除中の黒服たちに呆れた眼差しを向けられる。
「そんな短いスカートはいて半袖だから寒いんだよ」
だっさいセカンドバッグ(今日の釣銭)を持って入ってきた店長にまで呆れられた。
「昼はあったかかったから半袖なの!スカート短いのは脚が長くみえるから。それより寒いから今日から呼び込みジャケット着ていい?」
「まだダメ。ちょっと冷えるけどあのセク嬢めっちゃ頑張ってる、あっためてあげようかな(はーと)みたいな人を呼び込むためにもまぁぴょんにはがんばってもらわなくちゃ」
「うーん…わかった。じゃあヒーターだけつけてね。マジで寒くて凍死したらシャレになんないから」
「まぁぴょん、店まだクーラーだからヒーターなんか出さないよ。去年のカイロなら更衣室にあるだろうから外ほんとに寒かったらそれ出して使いな」
「わーい!カイロ探す!てんちょーありがとう!だいすきちゅっ!」
「うえっ投げキッスとかいらねー。俺にはかわいい娘と奥さんがいればそれでいいんだよ」
シッシッと虫でも払ってるように私の投げキッスを拒否する店長。なにがかわいい娘と奥さんだよ、キャバクラの店長やってるって嘘ついてるくせに。キャバはキャバでもセクシーの方のだよ。しかもにバニー服が売りの。
奥さんはここの系列店の元キャバ嬢、店長はその店の雇われ店長。辞めてから付き合ったらしいけど本当かどうかは知らない。
奥さんも辞めたし系列のセクキャバに異動。バレろ、奥さんにバレろ。そして引かれろ。
「おはようございまーす」
「まぁぴょんおは」「おはよー」
先に出勤してきていた同僚たちは更衣室で座ってスマホいじったりタバコ吸ったり化粧したり髪セットしたりといつもの光景
「今日さむくない???」
「あー、まぁぴょん入ってきて早々言ってたね。あたし全然寒くないや」
「え?ま?悪寒?悪寒かな?」
「まぁぴょんに悪寒って…なに?なんかした?」
「いや、なんもしてないけど。もしかしたら今日は貧乳フェチが来るとか!?」
「ウケる!それはまぁぴょん悪寒するわ」
更衣室中が大笑いだ。なんと失礼な
ちなみに私がなぜまぁぴょんなんてふざけた呼び方をされているのかと言えば、源氏名だ。源氏名がまぁぴょん。本名が麻衣佳だからまぁぴょん。安直な付け方だ。
他の嬢も、あーぴょん、きぃぴょん、なぁぴょんなどなど、みんなぴょんである。本当に店長の源氏名の付け方は安直すぎる(2回目)
とりあえず着替えの前に一服しよう。ロッカーに入れっぱなしになってるタバコとライターを持って灰皿前に座る。外でもないのにクーラーの風は当たるから手で遮って火をつける。火をつけるために吸い込んだ一服目が何よりも幸せである。
「あ~生き返る」
「まぁぴょんおっさんくさいよー。せめてなにも言わなければかわいいのに」
「そりゃ1ミリなんて吸ってる女子はかわいいでわ。指名もバンバン入るわ」
「ありがと。ほめてんの?けなしてんの?自虐?でもまぁぴょんの歳でセッター吸ってる子あんまいなくない?」
「そう?」
「そうだよーやっぱ男?あれ?まぁぴょん今彼?あれ?フリーじゃなかったっけ?」
「すごいいい男とワンナイしたときその人が吸っててなんか覚えてたからやめられなの。彼氏はフラれました。しかも3日前!みんな知ってるじゃん!」
またもドッと笑い出した更衣室のメンツ。失礼な話だ。
確かに彼氏にはフラれた。理由はセク嬢だから。ふざけた話だ。夜の商売の子と付き合いたいと言って告ってきたくせに、セクとは聞いてないキャバだと思った。おっぱい他人に吸われてる子はイヤだ。というなんとも言えない理由でフラれた。いや、気付けよ。普通のキャバじゃバニー服は制服じゃねーよ。
フラれた翌日の出勤は泣いて荒れてみんなに愚痴ったけど
「そもそもまぁぴょん指名もあんまないからうちらほどおっぱい吸われてないじゃん」
という同僚のとんども発言で我に返った。そうだ私は落ちこぼれセク嬢なのだ。おっぱいがある者が正義であり勝者になる世界だ。
この店『らびばに』は名前からも連想出来るようにバニー服で接客するセクキャバ(おっパブ)
制服はバニー服。ダウンタイムのみおさわりで上半身、キスのみ。意外とハートカットのレオタードは前をぺろんめくるだけなので楽。
同僚達はほぼ丸出しで着替えている。おっぱい、おっぱい、おっぱいだらけだ。
そんな中私だけはに前屈みになり背中から脇から、あわよくばと脇腹からも肉という肉を集めてヌーブラをつけて寄せる。1枚ではない、2枚だ。2枚重ねるとBカップだった胸に立派な谷間ができる。
「いつみてもまぁぴょんの詐欺胸やばいわ」
「今日は寒空の中健気にがんばるウサギを温めてあげたいエロいやつひっかけなきゃいけないらしいから深めに見えるようにしたわ!」
谷間にシャドウまでいれておっぱいは完璧。
温めてもらうのは客だというのになんという健気な私。
ハイレグのレオタードを着て、意味あるのか?みたいな襟チョーカーをつたら手のひらに軽く香水を吹き付けてから髪につける。髪につけるのはタバコの匂い消しもあるけど首だとショートボブの私ではダイレクトすぎ。セックスのときに男に嫌がられるやつだ。
あとは手首につけたやつを膝裏。そして足首。みんなが香水つけるから更衣室は色んな香りが混ざり合い、女だらけの職場独特の空間になる。そんな空間は私は好きだ。
スリッパはいてロッカーから出した耳カチューシャを持ってミーティングへ向かう。
ミーティングといっても名ばかり。今日は誰が同伴でくるよとかそんなもんだ。
「まぁぴょんは1回目のダウン終わったら外ね」
「りょーかいでーす」
よし、最初はヘルプだな。げっ網タイツ忘れたけどレオタード脱いではくのも面倒だから今日はナマ足。スリッパも黒いエナメルのピンヒールに履き替えて今日の仕事が始まる。
今日はあーぴょんの指名卓のヘルプ。カノバレは回避したいから残業って嘘ついてオープンと同時にきて1セット楽しんだら帰る健全(?)な遊びをしてくれるお客様だ。
「まぁぴょんおっぱい大きくなった?」
「え?マジ?そうみえる?」
「こうく~ん、まぁぴょんのおっぱいは一朝一夕じゃぁ大きくならないよ~」
「だよねーあはははっ」
うるせぇ巨乳フェチ。乳さえあればいいのか?彼女もあーぴょんのおっぱいすけべな顔でもんだり吸ったりしてるの見たらドン引きだよ。
てかあーぴょんもなにげ下げてない?
音楽も変わって照明が暗くなったから私は席を立つ。鏡で顔チェックしてリップ塗り直して前髪整えて店名の看板(棒にパネル貼っただけの手抜き!)持って出陣
歓楽街でもメイン通りはホストやキャバクラがやっぱり多い。この店があるところは1本入った風俗通りだ。無駄にギラギラしてる。
このビルは小さいけどセクは2店舗、アジアンガールズバーと麻雀店、地下はダイニングバーがある。アジアンガールズバーはよくわからないけど呼び込みで出てるお兄さんがたまに差し入れでくれる東南アジア系料理はすごくおいしい。ガールズバーじゃなければ通ってた。
地下のダイニングバーのお兄ちゃんたちはうちの店やもう一店舗の嬢を楽しくつまみ食いしてる。近くのイケメンって手頃だよねってうちの嬢たちも言ってるから需要と供給はとれてる。
私は店長さんがタイプだけど前に笑顔で「ない」と言われたから軽く失恋した。
「おはよーございまーす」
もはや仲間と化してる系列のセクのボーイくんとガールズバーのお兄さんに挨拶して今日も店頭に立つ。
制服のまま外に出るのをいやがる嬢が多いけれど私は全く苦ではない。むしろ卓についているよりいい。
向けられる視線は様々あるから最初は落ち込んだりもしたけれど、大半はエロい視線なのでいっそ清々しい。妬み嫉みの視線よりもよっぽど私の自己顕示欲を満たしてくれる。
出てくる前に自分の店にいたお客様は大体覚えているので彼らが帰る際は必ずまたきてねという気持ちも込めて
「バイバイぴょん!またきてね!」
と満面の笑みで送ってあげる。客商売、笑顔は大事だ。直接私のお客ではなくても、彼らが落としてくれたお金は少しであっても私の懐に入る分にもなっているので気分よく帰ってもらいたい。
「おっぱいも指名もないまぁぴょんがうちに必要な人間なのは、その愛想と顔の良さがあるからだよ」と以前店長に言われた。系列のキャバの方に移籍を持ちかけられたこともあるが、私はバニーでいたいし、この店の嬢やスタッフとうまくやれているので当分続けさせてもらうつもりだ。
「ぶえっくしょんっ!!!!!!」
「まぁぴょん、寒い?鳥肌やべぇよ。煙草休憩がてらあったかい飲み物作ってもらって飲んでおいでよ」
「まだ1時間くらいしか立ってないのに?まぁでも風邪引きたくないから一旦戻るね」
系列店の黒服にそう言ってもらえたので店に戻ることにした。自分の店の子じゃなくても気を遣える彼はよくできた男だ。きっとすぐ店を任されるか、昼職に転職だろうな。年齢がもう10や20上なら好きになっていただろう。
「てんちょーいる?」
小さいキッチンに顔を出せばドリンク作ってる黒服とPCとスマホ交互にみてる店長がいた。
「どうしたの?まぁぴょん」
「鳥肌やべぇから煙草がてらあったかいもの作ってもらって飲んできなって上の子が」
「へぇ優しい、よかったね。なんか作ってあげるから待機室のほうで煙草吸って待ってな」
ロッカーに戻ってタバコの入ったポーチとスマホを出して、意味あるのかわからないレオタードのセットのジレを着て待機室のほうに行く。
黄緑のSNSチェックしたけど今日に限ってお誘いがない。こんな寒気がする日は誰かといたい気分だったのに。
「なに?また男?」
「ううん、今日は誘いないなーって」
「珍しいじゃん。はい、どーぞ」
カップに入ったのはホットレモンだった。ドリンクに使うレモンじゃん、申し訳ないけどありがたくいただくことにした。
「まぁぴょんまだ恋愛対象おっさんなの?」
「なにその言い方!恋愛も遊びも30代以上からなの!ほうよーりょく?求めてるの!」
「包容力?もうデブと付き合えば?」
「ちがう!ギラギラした、昔もモテたけど今もまだまだ男盛りです!みたいな人がいいの!女の扱い?めっちゃ楽だけどそれが?みたいな男」
「なんでそんなことになったんだか…」
人のポーチからタバコだして勝手に吸う店長よ…でも私もよく店長からもらってるから何も言わない。
ちなみに店長は顔はいいかもだけど奥さんと子供がいるのでなし。不倫は面倒事しかないからしない主義。
パパ活や愛人なんかもお金だけの関係や対等でない関係がイヤだからしない。お金なら自分で稼ぐよ!
「18のときかな?なんかすごい、色々すごいお兄さんと出会ってから年上好きに拍車かかっちゃって」
「なにそれ初耳なんだけど」
「アプリで会ったんだけど、いい男だったし、なんかやり手っぽい人でね、テクとかアレとかもうすごすぎるし理想そのものすぎて一晩で落ちた」
「え?その人今もセフレなの?」
「残念ながらそのあとスマホぶっ壊れて連絡先なんて残ってなかったし電話番号も教えてなかったから一晩だけだった。とりあえず話してたら夜関係ってことはわかったからいつか会えたらって思って夜の世界飛び込んだの。ちなみに会えてませーん」
「ダメじゃんwww」
夜の街なんて都内だけでもいっぱいあるからこの街にいるわけがないんだろうなってことはわかってる。でもいつかまた会えたらいいなーと軽く思ってはいる。
「どんな人だったか覚えてるの?」
「もう2年も前だし色々あったから薄れてはいるな~思い出って美化しちゃうし。でもタバコだけは覚えてるからセッターなの」
「そっかー…この業界なら喫煙者多いし、よっぽどレアなのじゃない限りわかんないね…まぁぴょんにもそんな過去があったなんて」
「過去なんて大それたもんじゃないって!別にその人と付き合いたいとかもないし、今は今でセフレともうまくやれてるしお金にも困ってないしー、唯一不幸せなのは彼氏がいないことくらい?」
あー、もうっ!彼氏にフラれたのほんと意味不明。ちょっとイライラしてくる。
2本目に火をつけてゆっくり吸い込んで吐き出す。
「まぁぴょん別れたんだっけ?荒れてたよね。何日前?」
「もういいからー!着替えてるときみんなにからかわれたもん」
「男なんていくらでもいるよ。すぐ彼氏できるでしょ」
「顔がよくて30歳以上、仕事はしててー、女慣れしててー、喫煙者で性欲もギンギンで浮気しなくて、結婚とか理不尽な別れを切り出してこなくて職業に偏見ない一途な人いないかなー」
「すげー条件…もう遊び相手と遊びって割りきって、結婚したくなったら真面目に婚活とかすれば?まだ全然若いんだし」
一理ある。そうだ、別に彼氏なんていなくていいんじゃん。
「そうだよね!なんか元気でた!ホットレモンとタバコとてんちょーのおかげで元気でた!また外いく!」
「無理しないで、具合悪くなったらすぐ戻っておいで」
「OK!りょ!タバコ出しっぱでいい?」
「いいよ、スマホは?持ってようか?」
「うん、次戻ったら取りに行く」
「じゃあもうちょっとだけお願いね」
そうだ。彼氏じゃなくても一夜を共にしてくれる人がいればそれでいいんじゃん。
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