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しおりを挟む一目惚れだった。
高1のとき、廊下で他より頭が突出した二人をみた。おんなじ顔で背が高くて。背の高さより顔があまりにも好みだった。
強豪と呼ばれるこの学校に推薦で入ってきた名物双子、優勝コンビ。優理勝理だから優勝。顔面も優勝してるなって思ってたけれど、気持ちが抑えられなくて気付いたら告白していた。
「好きです、付き合ってください」
「えっと…誰?」
「C組の伊野瀬真理奈」
「うーん、まぁかわいいからいいよ」
優理くんはドライだった。
「部活だから」
「友達と出掛けるから」
「デートなんて必要なくない?」
大体これ。それでもバスケをしているところを見たり、なにより顔を見ているだけで幸せだった。
それでもいいって思えていたけれど限界は来るものだ。
『放課後』
その3文字だけで呼ばれるのはあまり人が来ない特別教室棟のトイレ。そこで体だけ求められることが続いていた。
キスもなし、愛撫もなしのとりあえず突っ込むだけの愛も何もないセックス。
「声だすな」
最初は興奮も相まっていたから声は漏れそうになっていたけれどもう出もしない。痛みに耐えるだけの苦行となった。
避妊もしてもらえないから自分でピルを飲んで、婦人科の先生や看護師さんにも怒られるけれど、自衛のために仕方ないのだ。
「それは愛でもなんでもないDVだよ」と看護師さんにも言われたけれど、笑ってごまかすことしか出来なかった。
「じゃあ部活いくから、また明日も放課後ここいろよ」
そろそろ生理がきそうなんて言ったら怒られるんだろうな。なんて思いながら一人で片付けて手を洗ってトイレを出る。涙なんて多分とうに枯れた。
「ゆーうーりーっ!きょうもがんばってねー♡」
ばかでかい声で私の彼を呼ぶのは同級生のチア部の女。
満更でもなさそうな態度で手を振り返してる彼氏を見るのは
「もう無理」
声に出してしまえばやっと受け入れられた気がする。
スターの卵な彼氏、一目惚れした彼氏、本当に好きだったはずなのに、今はもう顔以外好きなところが1つもない。
これ以上傷付きたくないし別れようと決心しながらも涙が止まらなかった。
廊下でうずくまって泣いて、でも放課後だら人が来ることもほとんどないこの場所で。あーもうしんどい。絶対別れる。
次の日、放課後なんてこなければいいと昨日から思っていたけれど、来るものは来る。
大嫌いなチアの女がチラチラ私を見ながら「ゆうりがねー、今度一緒に遊びに行かない?って誘ったら考えてくれるって!」なーんてマウントとってくるけど正直どうでもいい。熨斗つけてくれてやるわ
『おい早く』
スマホに通知がきて優理くんがもう待っていることがわかる。
あんたに気を持たせてるその男はヤりたくてヤりたくて仕方がないみたいだよって言ってやりたい。
「おっせーんだよ、早くしろ」
便座に座って待っていた優理の前に無理やり膝をつかされてフェラチオをさせられる。勃たせろってことだよ。顔も見えないこんな状況、苦痛以外のなにものでもない。
ある程度勃起したら立たされてつっこまれた。あー、痛い。でも痛いじゃ涙もでなくなった。はぁはぁと優理くんの息遣いだけが聞こえるこの状況をおかしいとと思ってくれないんだな。
いっそう強く突かれたあと、中に出されてる感覚と優理くんのが抜かれたのもわかった。
「また明日もな」
さっさと行こうとしている優理くんを引き留めた
「おい、なにするんだよまい」
「…私マイじゃないんだけど」
名前すら間違えられた。
「あー…間違えた」
「私の名前わかってる?」
「わかってるよ、なんだよめんどくせーな」
愛情なんて残ってなかったけどマイナスだよマイナス。本当に無理。ちなみにまいはあのチア部の女の名前。
「もう別れてほしいです」
「はぁ?お前から付き合って欲しいって言ってきたんだろ?」
「彼女らしいことなんてしてもらえなかった。チアの子とかマネとか優理くんのことが好きな女たちから疎まれて、支えて欲しい彼氏からは体しか求められなくて。こんなん彼女じゃないじゃん」
「お前が言ってきたからだろ」
「それでも!可愛いからって言ってもらえて、体も求めてもらえて…でももうキスすらしてないんだよ?」
身に覚えがあるからか黙った優理くん。もうとっくに終わってたんだな
「なにより名前を間違えられたのが一番キツかった。もうここにくることもないし、私なんかのことは忘れてください」
「あー、わかった」
普通に出ていった優理くん。彼が出ていったドアが閉まるのをみて涙も出なかった。
とりあえず連絡先はすべてブロック。私の中から優理くんを消すことにした高校2年の春だった。
そのあとは少しだけ波乱はあったけれど概ね平和だった。
別れた直後、優理くんが欲求不満からか放課後私のところに来たけれど拒否したら逆上、殴られそうになったところを他の男子達が止めてくれた。
あのチア部の女は笑っていたけれど、今度はこいつが便器ないしオナホ扱いされると思ったらこっちも笑えてきた。
優理くんとは別々に先生に呼び出されたけれど、もう別れていること、私としては関わりたくないことをしっかり伝えたからか3年になったらクラスはかなり離れたので安心した。
5月の体育祭、日焼けもしたくないし校舎の日陰で休んでいたらチア部や後輩といちゃついている優理くんが目に入った。すごい、もうなんとも思わない。あのマウントチア女もクラスは違うし平和な日々を送れている。
「伊野瀬さん」
名前を呼ばれて振り返ったら長身の男が3人。知ってる、バスケ部の同級生、しかもそのうちの一人は
「ごめん、優理じゃないけど顔、みたくないよな」
優理くんの双子の片割れ、優勝コンビの勝理のほうだ。
「ううん、大丈夫。ごめんね」
さっきまで視界にいた元カレと取り巻き女達の姿はもうなかった
「ずっと謝りたかったんだ。優理のやつのせいで傷付けてたし…いじめとかは」
「それはないよ大丈夫。友達もいるし」
「そっか…よかった。優理ほんとバスケ以外人間としてクソすぎてさ。一番ヤバいときに伊野瀬さんと付き合っててすっごい迷惑かけたって思ってて。俺らずっと謝りたかったんだ」
初耳である。
「いいの。私も優理くんのこととかバスケのことなにも 知らなくてただ顔が好きだってだけで…勝理くんの前で言うことでもないよね、ごめん」
「え?伊野瀬さんって優理の顔が好きだった、の?」
「うん。あれ?知らなかった?1年のとき先輩に顔ファンのくせにって文句言われたことあるくらいだから」
勝理くん以外の二人が笑っている
「あの優理の顔ファン(笑)」
「顔同じでよかったな勝理www」
「うっさい!伊野瀬さん引いてるだろ」
久々にあの顔を近くでみた。優理くんと同じだけどちょっと違う、一卵性双生児すごい。
「あのさ、顔も見たくないとかなら諦めようと思ってたんだけど」
「言えっ!」
「恥ずかしがってんなよ勝理」
目の前の3人は楽しそうだ。
「優理とは関わらせないから俺とは仲良くしてほしい!です…」
「なんで最後かっこつかねーんだよ(笑)」
「そーゆーとこだって(笑)」
「とりあえず部活対抗リレーみて。優理は出ないから俺のこと見てほしい」
嵐が去っていった。
「まーりーなっ」
うしろから来たのは友達。応援団だから今日は大忙しなのに
「優勝コンビの片割れだったじゃん。あれ元カレじゃない方?」
「うん」
「へー、見分けはつかないけど女連れてるか連れてないかが見分けるポイントだよね」
たしかにそうだ。
「いまだに謎なんだよねー。真理奈どうして優勝のクズの方と付き合ってたのか」
「顔しか見えてなかったからね」
「一緒じゃん!顔一緒じゃん!」
「どーしてだろうね(笑)」
部活対抗リレーを見ながら本当に自分でも謎だった。
勝理くんは優理くんと同じ顔なのに全然違った。勝手に同じ顔だから同じような人だろうって思っていたけれど違った。なんで好きになったのが優理くんだったんだろう、思い出だってあるはずなのにいい思い出は思い出せない。私は自分のことを肉便器だとまで卑下してたあの時、どうして優理くんは支えてくれなかったんだろう。優理くん以外に助けてって言えば違ったかな?あーもう泣きそう
*****
「成人式終わったばっかりなのに?」
『そうそう、なんか地元いるメンツで同窓会しようよって。みんなお酒飲める年齢になったでしょ?』
都会に住んでいればあまり皆が外には出ない。だから集まろうとしたら集まれるのだ。
「うーん、再来週だっけ?」
『そうそう、優勝コンビは来ないみたいだし一緒に行こうよ』
優勝コンビはコンビを解散というか勝理くんが高校でバスケを辞めた。優理くんは地方の強豪大学でのバスケの道に進んだらしい。だから双子ではあるがもうコンビではない。
『チアのOG会も同じ日だからあの女も来ないし!』
朗報だった。
「なら行こうかな」
『OK!真理奈も参加で返事しとく』
返事しなきゃよかったって会場に着いたときに後悔した。
「はぁ?話ちがくない?」
一緒にきた友達が部屋に着くなり怒って幹事を探してた。
さう、怒ったのもわかる、いないはずのあのチア部と優理くんがいるんだから。
「真理奈きてんのかよ」
名前すら呼ばれたくないのに。
「お前のせいで地元居づらいんだけど」
「えー、元カノちゃんのせいじゃなくて優理のせいでしょ(笑)」
ほんっと不快
「呼んでないのにどこで聞いたか来てるみたいだよ。あの女はチア部OG会でよく思われてないからこっち来たみたいだけど、よく思われてないなら尚更行かなきゃならないのにね」
「男しかみえてないんだよ」
「伊野瀬さん気にしない方がいいよ」
周りが味方が多いことに驚いている。
「優理が悪いんだろ?勝理いないのになんで来たんだよ」
「いたら来るわけねーだろ」
「たしかにな」
優理くんは意外と男友達も多いのだ。向こうは向こうで盛り上がっているみたいでよかった。変に浮いて逆恨みされても困るし。
席は離れたし楽しく飲み会も出来たし時間も時間だから先に帰ることにした。二次会も行きたいけれどあの二人がいなくなるとは思えないし、厄介事からは逃げるに限る
「真理奈」
「迎えにきてくれたの?」
「優理来たって友達から連絡もらったから心配で来た。車親父から借りてきたから送る」
迎えにきてくれた彼氏に助手席開けてもらって座って待ってる。スマホに席離れてた友達とかから心配の連絡きてる。意外と周りには恵まれてたのかも。
しばらく待っても運転席に彼が来なくて心配になったけれど、外なるべくみないで待っててって車に乗るときに言われたから律儀に守ろうと思う。
「おまたせ」
「ううん、そんなに待ってないよ」
「今日写真とった?俺も行きたかったしあとでみせてよ」
運転席の彼がシートベルトをして発進する。
「楽しかった?」
「最初はちょっとな、ってなったけど楽しかったよ。来ればよかったのに」
「仕事の時間がわかんなかったからさ。でも迎えに行けてよかった。まさか優理が帰省するなんて思ってもなかったから。親も知らされてないから遠征ついでみたい。」
運転席の恋人の顔は真っ直ぐ前を向いているから安心できる。
「着信、めっちゃ来てるけど」
「いいの無視無視。自分が悪いって気付かないんだからいちの」
ブルートゥースで繋がってるカーナビに優理くんから着信がきてることが出てるのに無視を決め込むらしい。
「家、そのまま帰る?ちょっとどっか行く?」
「車置いてこないとお父さんに迷惑じゃない?」
「仕事に使わないから今晩はいいって」
「じゃあ一緒にどっか行く」
「泊まりでもいい?家に車置いたら二人でホテルいこ」
*****
「なんで勝理が真理奈に」
「優理だけはあの子のこと気にする権利ないんだけど」
「はぁ?元カノなんだし」
「デートDV野郎がなに言ってんだか…双子として恥ずかしい」
彼女である真理奈の危機に来てやるのは彼氏として当たり前だと思う。ましてやそれがDVしてきた元カレがいる所になんて。その元カレが自分の双子の片割れだってことが一番気にくわないけれど。
彼女を迎えに来て車に乗せたあとに優理に話しかけられた。真理奈車に乗らせててよかった。
「そもそも呼ばれてないだろ?あの女も。あいつももうOG会に2度と行けねーな。本当にバカな女」
「それより真理奈は」
「優理が真理奈のこと気にする権利なんてねーんだよ。うちの親ももう2度と優理は関わるなって高2のとき言われたの忘れた?」
あんな態度とってたくせに真理奈のことが好きってことが気にくわない。わざと真理奈の目につくように女と絡んでみせたり嫉妬を煽っていたのかもしれないけれど逆効果だった。
「つーか親父の車じゃん」
「俺らは親公認なの。優理のこともあったけどもう2年はうまくやってんだから邪魔すんなよ」
「はぁ?聞いてないんだけど」
「DV被害者のこと加害者に言うわけないだろバカ」
本当なら優理とはもう関わりはもってほしくなかった。でも俺の双子の片割れだし、一生関わらないのは無理、そこは真理奈もわかってくれている。うちの親も気にしてたけれど、真理奈は優理に対する感情より俺に対する愛情のほうが大きいから大丈夫だと言ってくれた。その真理奈の言葉を俺が信じなくてどうするんだ。
「どうせ優理のことだから反省してるとか口だけで言うんだろうけどさ、真理奈とは結婚前提なわけ。真理奈が大学卒業したら結婚もするつもりだし、そしたら優理とは義理のきょうだいになるけど…それもわかって真理奈は俺といるんだから優理の入る隙なんてもうないよ」
「…」
「あの女だって勝手に優理についていって大学も一緒なんだろうけどさ、態度わかりやすすぎ。都合のいい女なのはわかるけど真理奈傷付けたんだから真理奈に会いたいとか話したいんだったら連れてこなきゃよかったんだよ。ほんと優理、そういうとこだよマジで」
「勝理にいわれたくねーんだけど」
「俺はちゃんと考えてる。優理は双子だから嫌いにはなりたくないんだよ…それだけはわかってほしい」
優理だってクズだけど昔からそうだったわけじゃない。周りの期待とか色々でおかしくなっただけ。バスケを高校で辞めた俺にはわかんないし、だからって真理奈を傷つけてよかったわけじゃない。
「勝理のくそ野郎」
「そっくりそのまま優理に返す」
end
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