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第2部 第1章 俺の過去……

第71話 惨めな人生 その3

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 ……

 俺は再び失業保険を貰いながら、俺は新たな就職先を探すのだが……その頃は同人誌ブームが訪れていて、同人誌も即売会だけでなく、同人誌専門店が地方出店したり、電子データに依るWeb販売も出来るように成っていて、簡単に同人業界へエントリー出来るように成っていた。

(また変な企業を引く可能性も高いし、景気も余り良いとは言えないから、ブームである同人業界で食べていくのも悪くないよな……)
(即売会や専門店に卸して、同人活動だけで生活をしている人が居るのだから、俺だってやれば出来るはず!)

 俺は子どもの頃から落書きを良くしていたので、多少の絵心は有った。
 人気アニメや漫画のエロ同人誌を描いて、それで生活を立てようなんて思い始める……

(辞める直前の休暇は、ほぼ寝るばっかりで過ごし、貯蓄も十分に有るから思い切って同人デビューするか!)
(俺は同人界の、ワ○ピースに成るぞ!!)

 何故当時……俺はあんな事を思ったのが、未だに理解出来ない。
 あの時代は確かに、ドが付く下手くそ同人誌でも、二次創作物なら有る程度売れていた。

 だが、ブームに成れば成る程…。新規参入者も増え、同時に客の奪い合いも発生するのは分かり切っていたはずだ。
 だが、世の中を甘く見ていた俺は同人活動へ舵を切る。

 パソコンやタブレットを用意して、同人活動を開始するがそれは……物の見事に失敗する!///
 初めの頃は落書きの延長線でも、二次創作品なら多少は売れた!

 だが、同人ブームの影響で一気に絵師の品質が上がり、また時の政府や行政も、イラスト業界を育成するとか“とち狂った”政策を打ち出すから、たったの数年で付け焼き刃絵師は退場を余儀なくされる。

 俺は下手くそなりに、同人業界にしがみついたが……絵力の向上が見られないのと、孤軍奮闘の絵師では孤独、有益な情報交換が出来ないなどで、俺は“しがみつく”のを諦める時が遂に来る。
 その時の年齢は、優に30歳を超えていた……

 30歳と言えば、世間ではお兄さんでは無く“おっさん”に入り始める年で有る。
 殆どの人が“おっさん”では無く、お父さんやパパに為れている人も多いだろうが、俺の場合は“おっさん”で分類される。

 30歳越えの人を『お兄さん!』とは呼んでくれないだろう……

 俺は同人業界を諦めて、数年ぶりの就職活動を再開するが、30歳超えた人間を未経験で採用してくれる企業は無かった。
 経験者採用も、同じ職種には就きたく無かった。
 貯蓄もほぼ底を付いていた事から……俺は正社員への道を諦め、派遣社員で働き始まる。

 派遣社員は先ず、派遣元企業に登録が必要で有るが、テンプレートに従っていけば簡単に登録が出来る。
 後は派遣元企業に有る派遣リストから、希望の仕事を選択して、俺の派遣社員生活が始まる…

 大手倉庫業、大手重工・電気メーカーなどに俺は派遣社員で行った。
 大手だから社内設備もしっかりしているし、給与もまぁまぁ良いし、休暇も確実に取れる。

 派遣先企業での雇用契約はキチンと結ばれるが、給与の支払いは派遣元企業からで有るから、賞与(ボーナス)は元から無いし、交通費も派遣社内規定で一日500円までしか支給しないので、俺のアパートから派遣先企業に向かうには足が出ていた!!

 だが、俺にはそれしか道が無かった……

 ☆

 俺はとある派遣先企業で知り合った、派遣元企業は違うが、同じ派遣同士で親友が出来る。
 相手は勿論男性で有る。俺より5歳年上の人で有った。

 その人は妻子持ちで有るが、今までキチンとした職歴が全く無くて、仕方なく派遣業界に流れて来たらしい。
 俺はその人と仲を深めると共にその人の勧めで、俺は青い鳥のイラストが出て来るSNSを始める。

 俺はほぼ読み専で有ったが、SNSで派遣先で出来た親友と交流を深める。
 その人は比較的フォロワー数も多く、自分のタイムラインにその人のフォロワー絡みのツイートが勝手に流れてくる。

 これが前世での、俺が結花との間接的な出会いに成る切っ掛けだ。
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