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序章

プロローグ

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 この物語はフィクションです。
 設定、登場する人物、団体及び名称は一切関係有りません。

 ……

 俺の名前は、最上鈴谷もがみすずや
 年齢は30代に入ってしまい……世間では、おっさんと言われ始める世代だ。

 俺は残念ながらチー牛顔で有り、女性にモテたことは無いし、彼女も出来たことが無い。
 当たり前だが、女性の親友も当然いない。

 また、俺は運動神経も鈍く、勉強も嫌いだったので、きらめく青春は無かった。
 甘酸っぱい思い出も、俺の中には存在しない。

 学校での苛めは余り受けなかったが、スクールカーストは常に底辺へ属していた。
 なので、俺の場合は青春を楽しむより、学歴を得るのが目的で有った。

 だが、俺はチー牛顔で有るが、メガネはしていない。
 視力はこの年代でも1.0以上有り、視力は普通に有る。

 これでメガネを掛けていたら、俺の人生は本当に終わっているだろう!?

 ……

 俺は無職では無いが、家族経営の中小企業に勤めている。
 俺みたいな低学歴では、大手企業は採用してくれなかったからだ。

 家族経営企業で有るから、ほぼブラック企業に等しく、有給なんて『なに、それ。美味しいの?』状態だし、給与もギリギリ生活出来る給料しか貰えない。
 転職を何度も考えたが、俺は自分を無能と感じているため、今の企業にすがり付くしか無かった。

 楽な仕事では無いが、正社員の身分で有るため堂々と町中を歩ける。
 中小企業でも、正社員は正社員だからな。

 ちなみに、住まいは実家暮らしでは無く、ひとり暮らしをしている。
 チー牛の実家暮らしなんて、恥の上塗りだからな///

 飯の方も節約のために、なるべく自炊をしている。
 味の方は、例の人では無いが、○○の素を使えば不味い物も旨くなる。

 男の一人自炊には欠かせない物で有るし、手間も大幅に省ける。 
 
 ……

 はたから見れば、俺は独身生活を満喫しているように見えるが(?)、俺は将来性の見えない自分に嫌気がさして、遂に自殺する道を選んだ。
 チー牛顔のおっさんに、美人で心優しい女性が俺を好くわけは無いし、学歴や能力の無い俺が、この先一生懸命働いても、稼げる金はたかが知れているからだ。

 この先一生懸命働いても、独身税が創設されたり、力を付けた女達に迫害される事が目に見えている!
 そんな世界では、独身でもつつましく暮らす事も出来ない。

 俺は運も無いから一攫千金を出来ないし、才能も無いから芸術方面もてんで駄目だ。
 これで、まだ才能があれば、別の道が開けたのだが……

 自殺も色々な方法があるが、俺はダムや池への入水自殺を決める。
 入水前に酒を飲んで、泥酔状態で池に飛び込めば、楽に死ねるだろう。

 電車に飛び込むのは鉄道会社に迷惑をかけるし、首つりも部屋が汚れるから、後のことを考えれば、入水自殺が現実的で有った。
 死ぬ時ぐらいは、最低限の迷惑にしておかないと……

 ☆

 冬間近のとある日の夜。
 自殺するのに相応しい池を、俺は近隣で見付けて自殺の実行をする。

 其処には、俺はボロでも車は持っているので、車で来た。
 辺鄙へんぴな場所で無いと自殺もしにくい。

 昼間は人が多少来るが、夕方以降は人が来ない事を、俺は事前に調べている。
 この池は調整池であり、利水に使われていない事も事前に調べてある。

 なので、俺の死体水を誰かが飲むことは無いだろう。

 自殺する前の、最後の晩餐では無いが車内で、此処へ来る前にコンビニで買った惣菜をに、俺はストロング系缶酎ハイを飲み始める。
 こいつは悪酔いするし、手っ取り早く泥酔状態に為れる。

 日中が暖かい日で有ったので、夜の時間帯でも寒くは無い。
 最後の食事を一応楽しむ。

 ……

『カラン!』

「ふぅ~~///」

 缶酎ハイを3本飲んだぐらいで、俺はと出来上がった。
 酒臭い溜め息を吐くと、それが車内に広がる。
 
 今。この状態で池に飛び込めば、俺は間違いなく死ねるだろう。
 俺は車外に出て、池への転落防止フェンスを乗り越え、そのまま池に飛び込む!

「よっと!」

『ざぱん!』

 俺は完全酔っているため。水は案外冷たくは無く、却って気持ち良いぐらいである。
 俺は、ゆっくりと目をつぶる。

「……」

(さよなら……このクソ人生……)
(来世はイケメンと金持ちの家で産まれたいな……)

 俺はそう思いながら……水面に顔を付けた……

『パシャ……』

 ……
 …
 ・

「はっ!?」

『ガバッ!』

 俺は目を覚ます!
 目を覚ました俺は飛び起きるように、上半身を起こす。

「……」

『きょろ、きょろ、―――』

 俺は辺りを見渡すと、この部屋は洋風部屋で有り、高級そうなベッドへ寝ている事にも気付く。
 南側の窓から、太陽の日差しが差し込んでいるので、自殺を計った翌日の午後以降なんだろう?

 俺は思わず、悔しい口調で呟いてしまう。

「くそ!」
「誰かが、助けやがったな!!」

「このまま死ねとったら、全て問題なく終わっていたのに…!」

『ガン!』

 俺は右拳で、右の太ももを叩く。
 痛みも感じるから、間違いなく生きているだろう。

『ガチャ!』

 その時。部屋の扉が突然開いて、10代ぐらいの銀色髪をした少女が入って来る。
 少女は薄手の黄色いロングセーターと、水色系のスカートを穿いている。

 少女は俺の顔を見ると、凄く嬉しそうな表情をしながら近付いて来た。

「あっ。目が覚めたんですね!」
「心配しましたよ!!」

「……///」

(凄く、可愛い子だ!///)
(まるで、ゲームに出て来るぐらいの美少女だ…)

 俺は思わず、その少女を見とれてしまう。
 さらさらの銀色髪ロングヘアー。顔付きも、けがれを知らない童顔。

 育ちの良いお嬢様かと言いたいが、それぐらいの美少女で有った。

「?」
「……どうしましたか?」

 少女は俺が見とれているの対し、尋ねる表情で聞いてくる。
 俺はバツの悪い表情をしながら、少女に話し始めた。
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