婚約を破棄するため記憶がなくなったふりをします

2話記憶喪失

「公爵様、いかがいたしましょう。お嬢様は記憶がなくなられてしまわれました。このままでは王太子殿下との婚約も破棄されてしまいます。」

そう言ったのは何人かいるドウェインの側近の1人目、ジェフリーである。

「分かっている！しかし、婚約を破棄するかしないかは全て王太子殿下が決めることなのだ...！私たちにはどうにもできん...。あぁ、クリスティアーナ...何故記憶をなくしてしまったんだ...！」

「公爵様、慌てふためいていてもどうしようもありません。とにかく知らせの手紙を王城に送らせて王太子殿下に知らせなくてはなりません。」

そう冷静になっているのは何人かいるドウェインの側近の2人目、アルバートである。

「...そうだな。しかし、手紙ではなく使いをだして知らせに行かせよう。」

そう言い、クリスティアーナの現状の状態を知らせに行かせた。その様子をバレないようには盗み聞きしている影があることに誰も気づくものはいなかった。

　　　　　　　王城では

「レスター様！たった今イヴェット家からの使いのものがやってきました！」
「そうか、してなんと？」

伝令係は気まずそうな顔で言った。

「それが..クリスティアーナ様が階段から落ち頭を強く打ってしまい、目は覚められましたが、記憶がなくなってしまった、とのことです。」

普段はどんな情報が来ても動じなかったレスターはこの情報で初めて動じた。

「...なんだって？！すぐにイヴェット家に行くぞ！」

「お待ちください！クリスティアーナ様はまだ目覚めた直後とのことです！なので何日か置いてからの方が宜しいと思います！」

そう言うのはレスターの側近、カイルだった。

「そうだな...。日を置いてからの行くとしよう。クリスティアーナ...まさかあの頃の私まで忘れてしまったのか...？」

そして現在イヴェット家では...

ふふっ！思い通りだわ！私って演技が上手いのね！このまま殿下との婚約を破棄して私は毎日趣味の洋服作りに専念できるわ...！妃になんてなってしまったら公務やら社交界とやらで忙しくて趣味に没頭出来ないもの！

さて、先程の話を盗み聞きし、そんなことを悪の笑みで思っているのは記憶を無くしてしまった、、、いや、王子との婚約を破棄させるために記憶喪失のふりをしている(現在進行形)の公爵令嬢のクリスティアーナである。

途端に頭がぐらついた。

そうか、頭を強く打ったのだから当たり前ね。しばらく寝ましょう。起きたら婚約破棄という言葉を聞くのが楽しみね！

そう思いながらまた夢の中へと入っていった。