リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

文字の大きさ
20 / 302

19話 婚約者

しおりを挟む
「王子様と婚約かぁ……ということは、クレハは将来王妃様になるんだな。なんつーか、こういう話を聞くとお前がいいとこのお嬢様なんだって実感するな」

 ルーイ様はお茶請けのお菓子を食べながら、いつもの軽い口調で言った。遊びに来ていた彼に、先日決まった私の婚約の話をしてみた。ルーイ様がどういう反応をするか、ちょっと興味があったのだけど……あまりにもあっさりしていてつまらない。

「……ルーイ様は人ごとだと思って」

「ははっ、人ごとだからな」

 コスタビューテ王国の王太子、レオン様と私の婚約が正式に決まった。ルーイ様とは違い、屋敷のみんなは大騒ぎだ。まだ婚約しただけだというのに祝辞を述べられるし、式のドレスや宝石類はどんなものが良いかとか、何とも気の早い話題まで飛び交っている。みんな私がまだ8歳という事を忘れていますよね。

「それはそうと、その王子様ってどんな奴なんだ?」

「実は、私もよく存じ上げなくて……」

「はぁ? お前なぁ……仮にも未来の旦那だろ。そんな感じでいいわけ?」

「良くないですけど! まさかこんな事になるとは思ってもいなかったんです。それに……」

 私は18歳の誕生日に死亡するという未来が待っている……いや、全力で回避するつもりですけども。そんな危うい立場の私が、婚約などしても良いのだろうか。それも王太子殿下とだなんて。
 ルーイ様は私の顔を見て、考えていることを何となく悟ったのか、私の頭をくしゃりと撫でた。

「……レオン殿下は私より2歳ほど上で、現在10歳。とても優秀な方だと伺っています。5日後に王宮で王妃様主催のお茶会があるのですが、殿下もご出席されるそうです。私もそれに出席するように言われています」

「なるほどね……顔合わせを兼ねたお披露目みたいなもんか。そこでお前は初めて、その王子様と対面するわけだな」

 おそらく殿下だけでなく、国王陛下や親戚の方々などもいらっしゃるのだろう。うわぁ……今から緊張でお腹が痛くなりそう。

 たたたたっ……

 そんな時、廊下から慌しい足音が聞こえてきた。それは、どんどんこの部屋に近付いてきている。

「誰か来たみたいだな。それじゃあクレハ、俺はひとまず帰る。また話を聞かせてくれ」

 ルーイ様は指を鳴らし、その場から消え去った。それとほぼ同時に、こちらに向かっていた足音が部屋の前で止まる。

「クレハ様! クレハ様! リズです」

 リズ? 扉を開けると、勢いよくリズが抱き付いてきた。いつも礼儀正しい彼女にしては珍しい。顔を覗き込むと、瞳に涙が浮かんでいた。

「ど、どうしたの? リズ」

「クレハ様っ! 王太子殿下の所へお嫁に行かれるって本当ですかっ……!?」

 リズまで……どうしてみんなそんなに気が早いの? きつく抱きついて離れないリズを優しく押し返し、濡れた目尻を指先で拭ってやる。

「あのね……リズ。まだ婚約しただけなの。結婚するとしても、ずっと先の話よ」

「クレハ様! 私、クレハ様の侍女になります!!」

「はっ?」

 なに……何だって、侍女? なんでそんな急に突拍子もないことを……

「実は前から考えていたのです……本来なら私の様な平民がクレハ様の専属になどなれません。ですが、父が長年ジェムラート家でお仕えしてきた事や、私自身がクレハ様と親しくさせて頂いているのが考慮され、特別に許可がおりたんです。父にも既に了承を貰っています。来週から、このジェムラート公爵家の侍女見習いとしてお仕え致します」

「ちょっと……リズ」

 私の知らない所でこんな話が進んでいたなんて……。殿下との婚約に引き続き、頭がついていかない。1人だけ置いてけぼりを食らったような気分だ。

「ですから、クレハ様お願いです。お輿入れの際は、どうか私も一緒に王宮へお連れ下さい。私はクレハ様のお側でずっとお仕えしたいのです」

 リズは私の両手を握り締め、涙で潤んだ焦げ茶色の瞳で真っ直ぐ見つめてくる。

「だから……あのね、まだ結婚はしないから」   









 そのあと何とかリズを落ちつかせ、家に帰って貰うと私はバルコニーへ向かった。今日はさらりとした良い天気だ。手摺りに手をかけて、上を見上げると澄んだ青い空に白い雲がまばらに広がっている。

「エリス来ないかなぁ……」

 エリスは天候さえ悪くなければ、2日に一度は必ず来てくれていた。今日もきっと手紙を持って来てくれるはずだ。
 ローレンスさんは、私と殿下の婚約をご存知だろうか。王宮によく出入りしているらしいので、すでに噂としてくらいなら耳に入っていそうな気がする。殿下にお会いした事あるのかな……
 昨日から、なんだか体がそわそわして落ち付かない……じっとしていられないのだ。殿下との婚約なんて重大事を伝えられたのだから、動揺しているのだろうか……
 姉様とルーカス様の婚約が決まったのは、姉様が9歳の時だ。いずれ自分にもそんな話が来るのだろうかと、ぼんやりだが考えてはいた。だとしても、私の場合はもっとずっと先だと思っていたのに……
 私は1日中バルコニーをうろうろしてエリスを待っていた。しかし……結局その日、あの赤い美しい鳥が訪れる事は無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m 第1部の加筆が終わったので、ここから毎日投稿致しますm(_ _)m

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...