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113話 二番隊(1)
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「セドリックさんが頼んだらあっさりなんだな。俺達なんて調書も見せて貰えなかったのに……。担当してるのが三番隊だったら、こんな苦労無かったのにね」
「三番隊の長はクライヴだしな。俺がどうとかじゃなく、お前らの素行が悪いせいだ。良い機会だからちょっとは改めろ」
三番隊には知り合いが多いから、こいつらも動きやすいだろうな。クライヴの隊は釣り堀の方を調べてたはずだから……どのみちあいつにも話を聞くことになるね。
「二番隊はまだ優しい方だよ。最悪なのは一番隊。あそこなんて隊長が率先して私達を邪険に扱うんだから酷いもんだ」
「達って……一括りにするな。嫌われてんのはハゲだけだろ。俺らは巻き添え食らっていい迷惑だっつーの」
「触れ回るような事じゃないから今まで黙っていたが、レナード……お前あそこの隊長の恋人を奪い取ったんだってな? それで根に持たれてんだぞ」
「えっ、何それ。セドリックさんマジで? うわぁ……お前それは無いわ。恨まれて当然じゃん、引く……」
「はっ? 嘘だよ!! そんなことしてないからね!!!! 隊長の恋人とか顔も知らないし……」
「そう言われても本人……バルト隊長から聞いたんだぞ。お前が粉をかけたせいで彼女が離れて行ったって……忘れてるだけなんじゃないか?」
こいつは関係を持った女性の名前や顔を覚えていない。もし仮に今、その女性の特徴を伝えたとしてもレナードは分からないだろう。なかなかにクズだ。クレール隊長が一緒にされて怒るのも無理もない、爛れた異性交遊を行っていたのだ。
一番隊の隊長には当時かなり嫌味を言われたから、向こうの勘違いである可能性は低いと思う。やはりレナードが忘れている線が濃厚だな。
「さすがに人様の恋人に手を出さないくらいの分別はありますって。それも知り合いの恋人なんて尚更ですよ、信じて下さい。ルイス!! 何で目逸らすの!? こっち見て!!」
レナードがぐずりだした。そりゃ俺だって部下の方を信じてやりたいけどさ。実際に恋人を失ってしまった隊長が存在している訳で……
しかし、これだけ必死に否定をしているし……嘘をついているようにも見えないな。ひょっとして隊長の方に思い違いがあるのかもしれない。今度詳しく聞いてみるか……いや、わざわざ古傷を抉るような真似はすべきではないな。ルイスの冷たい目がレナードを射抜いている。それを受けて奴は今にも泣きだしそうだ。お前が見ろって言ったからだろうが……相変わらず弟に弱い。
「もーっ!! やめやめ! 止めよう、私の話は。誰も楽しくないし、なにも良いことない!!」
涙目になりながらレナードが叫ぶ。これも若気の至りと言ってしまっていいものか……彼にとって過去の女性遍歴は、あまり蒸し返されたくない事柄なのだろう。
そうこうしているうちに、部下を呼びに行っていたクレール隊長が戻って来た。彼女が退室して10分も経っていない。その短い間に何が起きたんだと、彼女は訝しげな顔をしながら兄弟を見つめた。
「どうしたんですか、クラヴェル兄の方。ずいぶんと塞ぎ込んでいるようですが……」
「いや、こいつの事は気にしなくいい。それより、すまなかったな隊長」
机の上に顔を伏せながら、レナードは『違うのに……』と呻いている。ちょっとウザいな。俺が切り出した昔話のせいだというのはさておき、一番隊の隊長の主張だけを聞き入れるのはフェアではないか。それでもレナードの分が悪いことに変わりはないが……
「ルイス、レナードもこう言ってるし、せめてお前だけはこいつの味方でいてやれ。このままだと鬱陶しくて敵わん」
ルイスは呆れた様子で溜息を吐くと、レナードの後頭部を軽く叩いた。
「ほら、ハゲ。分かったから……信じてやるから、めそめそすんな」
「るいすぅ……」
レナードはルイスに勢いよく抱き付いた。大の男が泣きながら弟にしがみ付いている。絵面がキツい。クレール隊長と、彼女に連れて来られた兵士達も唖然としているじゃないか。よその隊の前で醜態晒しやがって……
とりあえず兄弟は放っておき、クレール隊長が連れてきてくれた兵士達に挨拶をすることにしよう。
「わざわざ来て貰った上に、見苦しいものを見せてしまい申し訳ないな。俺はセドリック・オードラン。レオン殿下専属近衛部隊の隊長を任されている者だ」
「はい! もちろん、存じ上げております。私は二番隊のベアードと申します。こっちは……」
「私はフェリスです。同じく二番隊です」
俺が話しかけると、兵士も自らの所属と名を名乗る。ベアードとフェリスか……兵士は2人でどちらも女性だった。二番隊は女性の割合が他ふたつの隊より高い。しかし、グレッグの監視を彼女らだけで行っていたのか……
「クレール隊長、監視に付いていたのはこの2人だけなのか?」
「いえ、後3人います。全部で5人です。監視自体は交代で行っていたのですが、鳥襲撃時に現場にいたのがこのふたりだったのです」
「なるほどな」
たった2人で突然現れた人喰い鳥もとい、シエルレクト神の対処をしていたと思うと同情してしまうな。
「さっそくだがベアード、フェリス。クレール隊長から聞いているだろ? 君達がグレッグを張っていた時のこと、詳しく教えて貰いたいんだが……」
「は、はい……」
緊張はしているようだが、こちらに対して不快感を示すことはなく、快く応じてくれそうで安心した。彼らと話を始める前に、いまだルイスに抱き付いてぐずついているレナードの頭を、俺も一発叩いておいた。
「三番隊の長はクライヴだしな。俺がどうとかじゃなく、お前らの素行が悪いせいだ。良い機会だからちょっとは改めろ」
三番隊には知り合いが多いから、こいつらも動きやすいだろうな。クライヴの隊は釣り堀の方を調べてたはずだから……どのみちあいつにも話を聞くことになるね。
「二番隊はまだ優しい方だよ。最悪なのは一番隊。あそこなんて隊長が率先して私達を邪険に扱うんだから酷いもんだ」
「達って……一括りにするな。嫌われてんのはハゲだけだろ。俺らは巻き添え食らっていい迷惑だっつーの」
「触れ回るような事じゃないから今まで黙っていたが、レナード……お前あそこの隊長の恋人を奪い取ったんだってな? それで根に持たれてんだぞ」
「えっ、何それ。セドリックさんマジで? うわぁ……お前それは無いわ。恨まれて当然じゃん、引く……」
「はっ? 嘘だよ!! そんなことしてないからね!!!! 隊長の恋人とか顔も知らないし……」
「そう言われても本人……バルト隊長から聞いたんだぞ。お前が粉をかけたせいで彼女が離れて行ったって……忘れてるだけなんじゃないか?」
こいつは関係を持った女性の名前や顔を覚えていない。もし仮に今、その女性の特徴を伝えたとしてもレナードは分からないだろう。なかなかにクズだ。クレール隊長が一緒にされて怒るのも無理もない、爛れた異性交遊を行っていたのだ。
一番隊の隊長には当時かなり嫌味を言われたから、向こうの勘違いである可能性は低いと思う。やはりレナードが忘れている線が濃厚だな。
「さすがに人様の恋人に手を出さないくらいの分別はありますって。それも知り合いの恋人なんて尚更ですよ、信じて下さい。ルイス!! 何で目逸らすの!? こっち見て!!」
レナードがぐずりだした。そりゃ俺だって部下の方を信じてやりたいけどさ。実際に恋人を失ってしまった隊長が存在している訳で……
しかし、これだけ必死に否定をしているし……嘘をついているようにも見えないな。ひょっとして隊長の方に思い違いがあるのかもしれない。今度詳しく聞いてみるか……いや、わざわざ古傷を抉るような真似はすべきではないな。ルイスの冷たい目がレナードを射抜いている。それを受けて奴は今にも泣きだしそうだ。お前が見ろって言ったからだろうが……相変わらず弟に弱い。
「もーっ!! やめやめ! 止めよう、私の話は。誰も楽しくないし、なにも良いことない!!」
涙目になりながらレナードが叫ぶ。これも若気の至りと言ってしまっていいものか……彼にとって過去の女性遍歴は、あまり蒸し返されたくない事柄なのだろう。
そうこうしているうちに、部下を呼びに行っていたクレール隊長が戻って来た。彼女が退室して10分も経っていない。その短い間に何が起きたんだと、彼女は訝しげな顔をしながら兄弟を見つめた。
「どうしたんですか、クラヴェル兄の方。ずいぶんと塞ぎ込んでいるようですが……」
「いや、こいつの事は気にしなくいい。それより、すまなかったな隊長」
机の上に顔を伏せながら、レナードは『違うのに……』と呻いている。ちょっとウザいな。俺が切り出した昔話のせいだというのはさておき、一番隊の隊長の主張だけを聞き入れるのはフェアではないか。それでもレナードの分が悪いことに変わりはないが……
「ルイス、レナードもこう言ってるし、せめてお前だけはこいつの味方でいてやれ。このままだと鬱陶しくて敵わん」
ルイスは呆れた様子で溜息を吐くと、レナードの後頭部を軽く叩いた。
「ほら、ハゲ。分かったから……信じてやるから、めそめそすんな」
「るいすぅ……」
レナードはルイスに勢いよく抱き付いた。大の男が泣きながら弟にしがみ付いている。絵面がキツい。クレール隊長と、彼女に連れて来られた兵士達も唖然としているじゃないか。よその隊の前で醜態晒しやがって……
とりあえず兄弟は放っておき、クレール隊長が連れてきてくれた兵士達に挨拶をすることにしよう。
「わざわざ来て貰った上に、見苦しいものを見せてしまい申し訳ないな。俺はセドリック・オードラン。レオン殿下専属近衛部隊の隊長を任されている者だ」
「はい! もちろん、存じ上げております。私は二番隊のベアードと申します。こっちは……」
「私はフェリスです。同じく二番隊です」
俺が話しかけると、兵士も自らの所属と名を名乗る。ベアードとフェリスか……兵士は2人でどちらも女性だった。二番隊は女性の割合が他ふたつの隊より高い。しかし、グレッグの監視を彼女らだけで行っていたのか……
「クレール隊長、監視に付いていたのはこの2人だけなのか?」
「いえ、後3人います。全部で5人です。監視自体は交代で行っていたのですが、鳥襲撃時に現場にいたのがこのふたりだったのです」
「なるほどな」
たった2人で突然現れた人喰い鳥もとい、シエルレクト神の対処をしていたと思うと同情してしまうな。
「さっそくだがベアード、フェリス。クレール隊長から聞いているだろ? 君達がグレッグを張っていた時のこと、詳しく教えて貰いたいんだが……」
「は、はい……」
緊張はしているようだが、こちらに対して不快感を示すことはなく、快く応じてくれそうで安心した。彼らと話を始める前に、いまだルイスに抱き付いてぐずついているレナードの頭を、俺も一発叩いておいた。
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