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135話 初めましてのご挨拶
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セドリックさんの部屋には、現在8人の人間が集まっている。『とまり木』の隊員が5名、レオン殿下にルーイ先生……最後に私。会合はこの8名で行われる。
テーブルを囲うようにソファと椅子が配置され、私達は席に着いた。ソファには殿下と先生が座っている。レナードさんとルイスさんは給仕をすると言っておられたので、椅子には座らず、皆のお茶の準備をしていた。
ひとまず落ち着いたので、改めて参加者全員を見渡してみた。ほぼ見知った方ばかりだ。初めてお会いしたのはおひとりだけ。王宮警備隊三番隊の隊長である、クライヴ・アークライトさんだ。
黒と茶色の短いツートンカラーの髪、三白眼気味のキリッとした瞳……クレハ様から事前に彼の情報を聞いていたので、取り乱したりはしなかったけど……男前です。殿下面食い疑惑が更に深まっていく。もとより殿下ご自身が美人だからなぁ。毎日見ている顔があれでは、無意識に周囲へ求める基準も高くなってしまうのかもしれない。お茶が全員に行き届くのを確認すると、殿下が口を開いた。
「ちょっとしたトラブルもあったが、皆集まったことだし……始めようか」
会合の開始が告げられた。私も姿勢を正す。すると、それを見た殿下はくすりと笑った。
「リズ、そんなに緊張しなくていいから」
「はい……」
殿下は先生や私のことを考えて、集まりをフランクなものに変更して下さったが、このキラキラ空間にいるだけで緊張してしまうのですよ。目の前にずらりと並んだ美形達の圧が強い。隣が同性であるミシェルさんだったのがせめてもの救いだ。
「トラブル? 何かあったんですか」
「それについては、今この場で提起すべきではないでしょう。時間も限られているし、蒸し返すほどのものでもない」
トラブルという言葉にクライヴさんが反応を示したが、それに対してセドリックさんがすかさず割って入る。後から来たクライヴさんとミシェルさんは、会合前にあったいざこざを知らないのだ。
「そうだな……セドリックの言う通り、当事者には後で事情を聞くにしろ、ここで話題にするには不適切だろうな」
セドリックさんは、話し合いが始まる前からすでに疲れ切ったような顔をしている。彼は何も悪くないのに……イタズラを仕掛けられるは、着替えを見られるはと散々だな。そんなセドリックさんとは対照的に、ルーイ先生は鼻歌でも歌いそうなくらいに機嫌が良さそうだった。
「ルーイ先生、リズ。ここにいる者達が俺直属の部隊兵……『とまり木』の隊員になります。すでに見知った者もいるでしょうが、今一度彼らを紹介させて頂きますね」
殿下は隊長であるセドリックさんを筆頭に、順番に隊員達の名前を上げていく。この時『とまり木』のメンバーが全部で7人だということを知った。しかし、不在の2名については存在を明らかにされたというだけで、それ以上の詳細が語られる事はなかった。
「俺達の横で使用人の真似事をしているのが、現在クレハの身辺警護を勤めておりますクラヴェル兄弟です。茶髪の方が兄のレナード、黒髪が弟のルイスです」
「ああ、サークスを撃退したっていう……はじめまして、ルーイです。さっきは恥ずかしい所を見せちゃって悪かったね」
「わざとな癖に……」
「何か言ったかな、セディ」
「別に……」
必死に扉を開けるなと叫んでいたセドリックさんを無視して、先生は呑気に入っておいでと言っていたのだ。ご兄弟は面白そうな方を優先し、先生の言葉に従い扉を開けた。先生も殿下達と同類かな。セドリックさんで遊んでるように見える。
「レナード・クラヴェルです。先生のお噂はかねがね……。まさかあのような場に遭遇してしまうとは思っておりませんでしたが、お会いできて光栄です」
「若いとは聞いてたけどさ、先生っていくつなの? 俺らとそんな変わんないよね」
「ルイス……失礼だろう」
「レナード君にルイス君……それにクライヴ君だね。年齢は……若く見られがちだけど、君達よりかなり上だと思うよ。でも、だからといって畏まらず、気軽に接してくれると嬉しいな」
ルーイ先生は人当たりの良い笑顔で挨拶をしている。『先生』は気難しいという、私が持っていたイメージを払拭したそれ。やっぱりカッコいいよなぁ。勝手に20代前半くらいだと思ってたけど、もう少し上なんだ。30代? 40はいってないだろうし……いくつなんだろ。
「ルーイ先生、ミシェルです。一度店でお会いしておりますが、覚えていらっしゃいますか?」
「もちろん。ミシェルちゃん、あの時はどうも……」
「またお話できて嬉しいです。相変わらずセドリックさんと仲がよろしいようで」
「あっ、分かっちゃう? 滲み出てる? でもね、俺はまだ全然満足できてないんだよね。もっとこう、体の深いとこで繋がりた……」
「先生、要らんこと言わんで下さい。くそっ、もとはといえばミシェルのせいだ……」
先生とミシェルさんを悔しそうに見つめているセドリックさん。おふたりは、そんな彼の様子に気付いているのかいないのか……楽しそうに会話を続けている。すると、ここまで先生方のやりとりを静かに見守っていた殿下が、私の方へ向き直った。
「リズはクライヴと初対面だったね。こいつは警備隊の隊長も兼任してて、『とまり木』の中でも少し特殊な立ち位置をしている。見た目はいかついけど、優しい奴だよ」
こういうのは最初が肝心だ。私はクレハ様の侍女……自分の王宮での振る舞いが、あの方の評価にも繋がってしまう。迷惑をかけないよう、しっかりしなければ。
「はじめまして。私、ジェムラート公爵家御息女クレハ様にお仕えしております、リズ・ラサーニュと申します。どうぞお見知りおきを」
「あっ、これはこれは……ご丁寧な挨拶痛み入ります。クライヴ・アークライトです」
「ふたり共固い。クライヴ……お前リズにつられてるじゃないか」
「すみません、つい。いやぁ、賢そうなお嬢さんですね」
「無礼講とまでは言わないが、もうちょっと楽にしていいんだよ。リズの礼儀正しい所はとても良いことだけれど、ここには身内しかいないからね」
殿下は再び視線を先生達の方へ向けた。私もそれに倣うと、先生がお茶と一緒に出されたマロンクッキーをほうばっている姿が目に映った。あまりに彼が美味しそうに食べるものだから、ミシェルさんとクラヴェルご兄弟は、自分達の分のクッキーも先生に渡している。そういえば、甘い物に目がない方だったな。
テーブルを囲うようにソファと椅子が配置され、私達は席に着いた。ソファには殿下と先生が座っている。レナードさんとルイスさんは給仕をすると言っておられたので、椅子には座らず、皆のお茶の準備をしていた。
ひとまず落ち着いたので、改めて参加者全員を見渡してみた。ほぼ見知った方ばかりだ。初めてお会いしたのはおひとりだけ。王宮警備隊三番隊の隊長である、クライヴ・アークライトさんだ。
黒と茶色の短いツートンカラーの髪、三白眼気味のキリッとした瞳……クレハ様から事前に彼の情報を聞いていたので、取り乱したりはしなかったけど……男前です。殿下面食い疑惑が更に深まっていく。もとより殿下ご自身が美人だからなぁ。毎日見ている顔があれでは、無意識に周囲へ求める基準も高くなってしまうのかもしれない。お茶が全員に行き届くのを確認すると、殿下が口を開いた。
「ちょっとしたトラブルもあったが、皆集まったことだし……始めようか」
会合の開始が告げられた。私も姿勢を正す。すると、それを見た殿下はくすりと笑った。
「リズ、そんなに緊張しなくていいから」
「はい……」
殿下は先生や私のことを考えて、集まりをフランクなものに変更して下さったが、このキラキラ空間にいるだけで緊張してしまうのですよ。目の前にずらりと並んだ美形達の圧が強い。隣が同性であるミシェルさんだったのがせめてもの救いだ。
「トラブル? 何かあったんですか」
「それについては、今この場で提起すべきではないでしょう。時間も限られているし、蒸し返すほどのものでもない」
トラブルという言葉にクライヴさんが反応を示したが、それに対してセドリックさんがすかさず割って入る。後から来たクライヴさんとミシェルさんは、会合前にあったいざこざを知らないのだ。
「そうだな……セドリックの言う通り、当事者には後で事情を聞くにしろ、ここで話題にするには不適切だろうな」
セドリックさんは、話し合いが始まる前からすでに疲れ切ったような顔をしている。彼は何も悪くないのに……イタズラを仕掛けられるは、着替えを見られるはと散々だな。そんなセドリックさんとは対照的に、ルーイ先生は鼻歌でも歌いそうなくらいに機嫌が良さそうだった。
「ルーイ先生、リズ。ここにいる者達が俺直属の部隊兵……『とまり木』の隊員になります。すでに見知った者もいるでしょうが、今一度彼らを紹介させて頂きますね」
殿下は隊長であるセドリックさんを筆頭に、順番に隊員達の名前を上げていく。この時『とまり木』のメンバーが全部で7人だということを知った。しかし、不在の2名については存在を明らかにされたというだけで、それ以上の詳細が語られる事はなかった。
「俺達の横で使用人の真似事をしているのが、現在クレハの身辺警護を勤めておりますクラヴェル兄弟です。茶髪の方が兄のレナード、黒髪が弟のルイスです」
「ああ、サークスを撃退したっていう……はじめまして、ルーイです。さっきは恥ずかしい所を見せちゃって悪かったね」
「わざとな癖に……」
「何か言ったかな、セディ」
「別に……」
必死に扉を開けるなと叫んでいたセドリックさんを無視して、先生は呑気に入っておいでと言っていたのだ。ご兄弟は面白そうな方を優先し、先生の言葉に従い扉を開けた。先生も殿下達と同類かな。セドリックさんで遊んでるように見える。
「レナード・クラヴェルです。先生のお噂はかねがね……。まさかあのような場に遭遇してしまうとは思っておりませんでしたが、お会いできて光栄です」
「若いとは聞いてたけどさ、先生っていくつなの? 俺らとそんな変わんないよね」
「ルイス……失礼だろう」
「レナード君にルイス君……それにクライヴ君だね。年齢は……若く見られがちだけど、君達よりかなり上だと思うよ。でも、だからといって畏まらず、気軽に接してくれると嬉しいな」
ルーイ先生は人当たりの良い笑顔で挨拶をしている。『先生』は気難しいという、私が持っていたイメージを払拭したそれ。やっぱりカッコいいよなぁ。勝手に20代前半くらいだと思ってたけど、もう少し上なんだ。30代? 40はいってないだろうし……いくつなんだろ。
「ルーイ先生、ミシェルです。一度店でお会いしておりますが、覚えていらっしゃいますか?」
「もちろん。ミシェルちゃん、あの時はどうも……」
「またお話できて嬉しいです。相変わらずセドリックさんと仲がよろしいようで」
「あっ、分かっちゃう? 滲み出てる? でもね、俺はまだ全然満足できてないんだよね。もっとこう、体の深いとこで繋がりた……」
「先生、要らんこと言わんで下さい。くそっ、もとはといえばミシェルのせいだ……」
先生とミシェルさんを悔しそうに見つめているセドリックさん。おふたりは、そんな彼の様子に気付いているのかいないのか……楽しそうに会話を続けている。すると、ここまで先生方のやりとりを静かに見守っていた殿下が、私の方へ向き直った。
「リズはクライヴと初対面だったね。こいつは警備隊の隊長も兼任してて、『とまり木』の中でも少し特殊な立ち位置をしている。見た目はいかついけど、優しい奴だよ」
こういうのは最初が肝心だ。私はクレハ様の侍女……自分の王宮での振る舞いが、あの方の評価にも繋がってしまう。迷惑をかけないよう、しっかりしなければ。
「はじめまして。私、ジェムラート公爵家御息女クレハ様にお仕えしております、リズ・ラサーニュと申します。どうぞお見知りおきを」
「あっ、これはこれは……ご丁寧な挨拶痛み入ります。クライヴ・アークライトです」
「ふたり共固い。クライヴ……お前リズにつられてるじゃないか」
「すみません、つい。いやぁ、賢そうなお嬢さんですね」
「無礼講とまでは言わないが、もうちょっと楽にしていいんだよ。リズの礼儀正しい所はとても良いことだけれど、ここには身内しかいないからね」
殿下は再び視線を先生達の方へ向けた。私もそれに倣うと、先生がお茶と一緒に出されたマロンクッキーをほうばっている姿が目に映った。あまりに彼が美味しそうに食べるものだから、ミシェルさんとクラヴェルご兄弟は、自分達の分のクッキーも先生に渡している。そういえば、甘い物に目がない方だったな。
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