リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

文字の大きさ
231 / 302

230話 調査(3)

しおりを挟む
「レオンを困らせてるコンティの贈り物か……で、この袋の中には何が入ってるの?」

「コンティドロップスです」

「コンティドロップス……ローシュの魔法使いたちの魔力の根源ですね」

「なんでまたコンティはレオンにそんなの贈ったんだよ。持ってて損はないかもしれないけど、基本的にお前には不要な物だろ。コンティもそれが分からないわけないだろうに。お前よく食うから、俺と同じ食事券みたいなのが良かったんじゃね?」

 コンティドロップスはコンティレクト神の魔力が詰まった不思議な石だ。ローシュの魔法使いにとってなくてはならない必需品。現地で国宝として扱われていて他国にはほぼ流通しない。
 コスタビューテ王宮にはレオン様がメーアレクト様を通じて手に入れた物が数個ほど存在している。そのうちのひとつがクレハ様のピアスだ。魔力を貯蔵するという石の性質と、レオン様の持つ感知魔法を組み合わせることで、石を所持している者の位置情報を得ることができる。
 レオン様にしか扱えないというデメリットはあるが、護衛や追跡を行う際にはなかなかに有用だった。コスタビューテでのコンティドロップスの使用例はそれだけになる。不要だなんて事は決してないが、ローシュの魔法使いたちと同じような使い方をする予定は今後もないだろう。
 石を食して魔力を得ることは内臓に大きな負担がかかると先生から何度も聞いた。持続性の無い一時的な力のために、身を滅ぼす選択をするのは容易ではない。

「今回コンティレクト神から頂いたのは、俺たちが知るコンティドロップスとは異なるものでした。神はこの石を事件の捜査に役立てて欲しいと……」
 
 テーブルの上に置かれた布袋をレオン様は再び手に取った。袋の口を開いて中に入っている物を取り出す。出てきたのは2センチ程度の透明な丸い石だった。俺と先生によく見えるようにと、石はレオン様の手のひらに乗せられた。通常のコンティドロップスは、コンティレクト神の魔力で満たされているため赤色をしている。よって、透明なものには魔力が入っておらずカラの状態を意味する。

「コンティはレオンに石を食って欲しいわけじゃなさそうね」

「コンティレクト神はこれと同じものをあと9個ほどくださいました」

「てことは全部で10個か!? ずいぶん大盤振る舞いだな。レオン、お前コンティに気に入られたんじゃね」

 先生は茶化したように笑っているが、レオン様は眉を下げて困り顔だ。石の生産元であるコンティレクト神からしたら取るに足らないことなのだろうが……ローシュの国宝を一度に10個も。なんだか色々と感覚がおかしくなりそうだな。

「お、石の色が変わってきたな」

 先生の声に導かれ、レオン様の手もとに視線を戻す。手のひらに乗せられていたコンティドロップスが徐々に色付いていく。レオン様の魔力を吸い取っているのだ。透明だった石が瑠璃色に変化した。
 
「なぁ、レオン。俺には普通のコンティドロップスにしか見えねーよ。何が違うのかな」

 レオン様はこれは特別だと……俺たちが知っているコンティドロップスとは違うと言っていた。魔力が入っていない状態だった事くらいで、通常のものとの違いを見つけることは出来なかった。先生が分からないのだから当然俺にも分かるわけがない。

「魔力を吸収して色を変えるという点は同じなのですが、こちらの石はコンティレクト神が手を加えた改良品なのだそうです。『簡易魔力感知』と呼んでおられました」

「簡易……魔力感知だと」

 魔力感知はレオン様がよく使っている他者が持つ魔力の気配を探り出す魔法である。あっけらかんとしている俺とは違い、先生はこの言葉で何かを察したようだった。
 コンティレクト神がレオン様のために特別に用意したコンティドロップス。これがレオン様の仰っていた扱いに困っている贈り物の正体か。魔力感知というと便利な魔法というイメージなのだが……
 レオン様は更に詳しい石の説明と、ご自身が抱いている懸念事項を語ってくれた。












「なるほどね……レオンが受け取った石にはコンティの術がかけられているわけか。通常の石であれば、こんなに早く魔力が抜けることはないからね」

「透明なコンティドロップスが反応して色を変えれば、近くに魔法使い……魔力を持つ人間がいることの証明になるのですね。そして石の有効範囲はおよそ3メートル。レオン様がお使いになる魔法には及びませんが、簡易と銘打ってあることを考慮すれば充分なのではないかと思います」

「石の有効範囲に魔力を宿したものが複数存在している場合は、より石の近くにあるほうを吸収するようです」

 レオン様が袋から出したコンティドロップスは瑠璃色に変化した。近くに先生もいたけれど、石を直に手にしていたレオン様の力の方を吸収したのか。
 この石さえあれば、俺たちでも魔法使いを見つけることができるな。

「このように石の変化を参考にして、誰でも簡単に魔力の気配を探ることが可能になるのです。非常に便利である反面、これが悪用されてしまうことを考えるとむやみやたら使うことは躊躇われてしまいまして……」

 レオン様の負担も軽減される。いい事づくめだと思ったが、簡単にはいかないらしい。こんな便利な物……使わない手はないだろう。でも主が危惧しておられることも理解できる。

「この石のことを知っているのは、コンティレクト神の訪問時に居合わせた数名のみです。彼らには次に俺の指示があるまで、石のことは口外しないよう命じてありますが……状況によっては石をメーアレクト様に預け、使用を見送ることも想定しています」

 コンティレクト神と対面したのはクレハ様とクラヴェル兄弟……それとクライヴにレオン様を含めた5人だという。万が一を恐れ、慎重を期す主の姿に身の引き締まる思いではあるが、実際に石を使ってもいない段階でここまでとは――
 どうすることが最善だろうかと考えていると、先生がまたもや爆弾発言を投下するのだった。

「あのさ、レオン。ちょっと気になったんだけど。もしかしてレオンの言う石を悪用するかもしれない人間ってお前の側近の誰かなのか?」 

「はっ? 先生、あなた何を………」

 先生は何を言っているのだろう。『悪用する人間』とは特定の誰かを指しているわけではないだろう。まして、我々の近くにそのような輩がいるだなんて……

「石を上手く運用していくことより、隠すことを考えている。俺にはお前が焦っているように見えるよ。まるで石を使わせてはいけない人間が既に身近にいるみたいな口振りじゃないか」

「レオン様……?」

 驚いて反応できなかったのだと思いたかった。先生の問い掛けに主は答えない。違うのならそう言ってくだされば良いのに。すぐに否定をしないのが、先生の言葉に対して思い当たることがあるのだと証明しているようで……
 胸の鼓動がドクドクと激しく高鳴る。先生は急かすことはせずにレオン様の回答を静かに待っている。切迫した空気が立ち込める室内。俺は無言で見つめ合うふたりをただ見守ることしか出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m 第1部の加筆が終わったので、ここから毎日投稿致しますm(_ _)m

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...