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264話 犯人(1)
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「連れが働いた無礼に関しては、オレが代わりに謝罪します。申し訳ありませんでした」
「ご主人様を思う気持ちは立派だけど、カレンちゃんはもう少し落ち着いて周りを見ることを覚えた方がいい。感情に任せて突っ走って……その結果、守るはずだった主や仲間を危険に晒すことになったら本末転倒でしょ」
別行動をしていたノアが公爵邸に侵入したのは、カレンを救出するためだ。彼女が暴走しなければ2人揃って我々に捕縛されることにはならなかったはず。本人もそれを自覚しているためか、悔しそうに顔を歪めている。
「……という事で、カレンちゃんはそのまましばらく反省していて下さい。レオン殿下とセドリック隊長からOKが出たら口は自由にしてあげるからね」
『判断は2人に任せる』と、先生はレオン様と俺にカレンの対応を委ねる。先生のお説教が効いたのか、先ほどよりは幾分マシな態度にはなったが……完全に戦意喪失が確認できるまでカレンの拘束は外せない。
「それじゃあ……話を戻すけど、ノア君たちは島で事件を起こす前からグレッグの事を知っていたのかな?」
「ええ。まさか他国……コスタビューテに逃亡していたとは思わなかったので驚きました」
「逃亡? グレッグはニュアージュでも追われるような悪さをしていたの」
「指名手配こそされていませんでしたが、奴には複数の殺人、暴行などの事件に関与していた疑いがありましたからね」
「……そんな危険人物の渡航を許可するなんて」
つい思ったことを口に出してしまった。ニュアージュ側でグレッグの出国を事前に防いでくれていれば、あんな事件は起こらなかったかもしれないのだ。
「その辺りの対応が杜撰であったのは認めざるを得ませんが……なんせ奴も魔法使いなもので、我々のような普通の人間には手に余る相手であると理解して頂きたいです」
「まあまあ、セディ。ここでノア君たちを責めても仕方ないから。グレッグがサークスに命じてクレハたちを襲わせたように、悪事に魔法を使っていたとしたら捕えるのが難しいのは確かだろうしね」
「……すみません。出過ぎた真似をしました」
「いいよ。気持ちはよく分かるからね」
先生の言う通りだ。終わったことを蒸し返していてもどうにもならない。今はノアたちから提供される情報が、我々の捜査に役立つか見極めることの方が大切だろう。
「ちなみに、シエルレクトと契約を交わしている人間がどのくらいいるかノア君は知ってるのかな。エルドレッドとグレッグ以外の魔法使いの名前は分かる?」
「……正確な人数は分かりませんが、20程度だとエルドレッド様から聞いたことがあります。オレが把握している範囲ですと2名ほど……どちらもグレッグとは縁もゆかりも無い人物ですよ」
先生が質問をして、それにノアが答える。こんなやり取りがしばらく続いた。ノアはかなり慎重に言葉を選んでいるようで、答えられない質問に対しては適当なことを言わずに『分からない』と正直に伝えている。
「なるほどねぇ……予想はしていたけど、君たちのことが大体分かった気がするよ。グレッグのことが片付いたら改めて2人について話し合うことにしよう」
先生はノアとの問答で何かを確信したようだ。でもそれはグレッグのことではなく、ノアたちの身の上に関することらしい。ノアとカレンは先生の思わせぶりな台詞を受けて顔をこわばらせた。先生と対峙してからというもの、2人は脅されてばかりだな。同情はしないけど。
「……グレッグがニュアージュにいた時と同じやり方で悪事を働いていたのだとしたら、島を襲撃したのは彼の意思ではないかもしれません」
「それは……どういう意味かな、ノア君。グレッグに共犯者のようなものがいると?」
ノアの口からグレッグについて衝撃の情報がもたらされた。自分の出自に関する話題を逸らしたかったのかもしれないが、そうだとしたら思惑通りだろう。先生はもちろん、レオン様も俺も……ノアの話に一瞬で引き込まれてしまったのだ。
「あのグレッグという男は、神の力を与えられたという運の強さ意外は特段優れたところもない……いや、他者を平然と陥れて傷つける碌でもない人間だ。奴は魔法を金儲けの道具にしていました。それも、最悪な方法で……」
俺はグレッグを直接見てはいない。レオン様と奴を監視していた二番隊の報告を聞いただけになるが、彼らが行ったグレッグの評価もノアと大差なかったな。その辺にいるチンピラ……魔法さえなければ取るに足らない相手であると。シエルレクト神が契約する人間の人となりに興味が無いというのを証明してくれるような人物像だった。
「奴は金銭を受け取り、指定された人物を殺害する……いわゆる『殺し屋』のようなことをしていたのです。島での犯行も従来通りであるなら、何者かに依頼されて行ったものである可能性が高いです」
「なんだと……」
レオン様が驚愕の声を上げている。ここまで先生の言い付けを守り平静を保っていた主であるが、さすがに我慢出来なかったようだ。魔法使いであるということ以外、何も分からなかったグレッグの正体が明らかになる。
「それは……ずいぶんとショッキングな話じゃないか。ノア君、そのネタ……もっと詳しく教えてくれる?」
呆然としている我々とは違い、先生は至極冷静にノアの言葉を受け取めている。そして更なる有益な情報を得るために、話の続きを促した。
「ご主人様を思う気持ちは立派だけど、カレンちゃんはもう少し落ち着いて周りを見ることを覚えた方がいい。感情に任せて突っ走って……その結果、守るはずだった主や仲間を危険に晒すことになったら本末転倒でしょ」
別行動をしていたノアが公爵邸に侵入したのは、カレンを救出するためだ。彼女が暴走しなければ2人揃って我々に捕縛されることにはならなかったはず。本人もそれを自覚しているためか、悔しそうに顔を歪めている。
「……という事で、カレンちゃんはそのまましばらく反省していて下さい。レオン殿下とセドリック隊長からOKが出たら口は自由にしてあげるからね」
『判断は2人に任せる』と、先生はレオン様と俺にカレンの対応を委ねる。先生のお説教が効いたのか、先ほどよりは幾分マシな態度にはなったが……完全に戦意喪失が確認できるまでカレンの拘束は外せない。
「それじゃあ……話を戻すけど、ノア君たちは島で事件を起こす前からグレッグの事を知っていたのかな?」
「ええ。まさか他国……コスタビューテに逃亡していたとは思わなかったので驚きました」
「逃亡? グレッグはニュアージュでも追われるような悪さをしていたの」
「指名手配こそされていませんでしたが、奴には複数の殺人、暴行などの事件に関与していた疑いがありましたからね」
「……そんな危険人物の渡航を許可するなんて」
つい思ったことを口に出してしまった。ニュアージュ側でグレッグの出国を事前に防いでくれていれば、あんな事件は起こらなかったかもしれないのだ。
「その辺りの対応が杜撰であったのは認めざるを得ませんが……なんせ奴も魔法使いなもので、我々のような普通の人間には手に余る相手であると理解して頂きたいです」
「まあまあ、セディ。ここでノア君たちを責めても仕方ないから。グレッグがサークスに命じてクレハたちを襲わせたように、悪事に魔法を使っていたとしたら捕えるのが難しいのは確かだろうしね」
「……すみません。出過ぎた真似をしました」
「いいよ。気持ちはよく分かるからね」
先生の言う通りだ。終わったことを蒸し返していてもどうにもならない。今はノアたちから提供される情報が、我々の捜査に役立つか見極めることの方が大切だろう。
「ちなみに、シエルレクトと契約を交わしている人間がどのくらいいるかノア君は知ってるのかな。エルドレッドとグレッグ以外の魔法使いの名前は分かる?」
「……正確な人数は分かりませんが、20程度だとエルドレッド様から聞いたことがあります。オレが把握している範囲ですと2名ほど……どちらもグレッグとは縁もゆかりも無い人物ですよ」
先生が質問をして、それにノアが答える。こんなやり取りがしばらく続いた。ノアはかなり慎重に言葉を選んでいるようで、答えられない質問に対しては適当なことを言わずに『分からない』と正直に伝えている。
「なるほどねぇ……予想はしていたけど、君たちのことが大体分かった気がするよ。グレッグのことが片付いたら改めて2人について話し合うことにしよう」
先生はノアとの問答で何かを確信したようだ。でもそれはグレッグのことではなく、ノアたちの身の上に関することらしい。ノアとカレンは先生の思わせぶりな台詞を受けて顔をこわばらせた。先生と対峙してからというもの、2人は脅されてばかりだな。同情はしないけど。
「……グレッグがニュアージュにいた時と同じやり方で悪事を働いていたのだとしたら、島を襲撃したのは彼の意思ではないかもしれません」
「それは……どういう意味かな、ノア君。グレッグに共犯者のようなものがいると?」
ノアの口からグレッグについて衝撃の情報がもたらされた。自分の出自に関する話題を逸らしたかったのかもしれないが、そうだとしたら思惑通りだろう。先生はもちろん、レオン様も俺も……ノアの話に一瞬で引き込まれてしまったのだ。
「あのグレッグという男は、神の力を与えられたという運の強さ意外は特段優れたところもない……いや、他者を平然と陥れて傷つける碌でもない人間だ。奴は魔法を金儲けの道具にしていました。それも、最悪な方法で……」
俺はグレッグを直接見てはいない。レオン様と奴を監視していた二番隊の報告を聞いただけになるが、彼らが行ったグレッグの評価もノアと大差なかったな。その辺にいるチンピラ……魔法さえなければ取るに足らない相手であると。シエルレクト神が契約する人間の人となりに興味が無いというのを証明してくれるような人物像だった。
「奴は金銭を受け取り、指定された人物を殺害する……いわゆる『殺し屋』のようなことをしていたのです。島での犯行も従来通りであるなら、何者かに依頼されて行ったものである可能性が高いです」
「なんだと……」
レオン様が驚愕の声を上げている。ここまで先生の言い付けを守り平静を保っていた主であるが、さすがに我慢出来なかったようだ。魔法使いであるということ以外、何も分からなかったグレッグの正体が明らかになる。
「それは……ずいぶんとショッキングな話じゃないか。ノア君、そのネタ……もっと詳しく教えてくれる?」
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