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カミリヤ
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カミリヤは今までわがままを言ったことがなかった。父に再三言われた言葉に囚われていたからだ。
「カミリヤ、お前にはとんでもない神聖力があるのだから、国のことを第一に考えなさい。自分のことには無欲でありなさい。お前は素晴らしい者で、お前は恵まれた者なのだから」
神聖力はその人の望みを叶えると言われている。カミリヤは都のオアシスが清い水をもたらすこと、たくさんの作物が作られること、交易が正しく行われ豊かになることを毎日祈っていた。
カミリヤは神殿で聖女として祈り続けること、そして王太子の妃になることが仕事だった。
神聖力が強い人には他の人の神聖力が見える。心臓を中心に球型に見えるものであり、強ければ強いほど大きな球となる。
この国の都ワーハは神聖力に包まれている。都は丸く半球型に神聖力によって囲われている。
大昔、大聖女と呼ばれた膨大な神聖力の持ち主の力が未だに都を守っているのだという。
カミリヤはその大聖女の子孫である。彼女自身は他の人の神聖力が見えるが他の人からは彼女の神聖力が見えない。
「カミリヤ様ねぇ、神聖力が全くないのによく聖女が勤まるわよね」
「大聖女の子孫だからって優遇されすぎ、王太子の妃にもなるんでしょ?」
「お飾りみたいなものなのにね、良いわね」
神殿ではよくそういった言葉がささやかれる。カミリヤは静かにその場を引き返すことが多い。
カミリヤはその人達を嫌ったことはない。彼女自身、自分の神聖力が全く見えないのだ。きっと何かの具合で他の人の神聖力が見えるだけでカミリヤには神聖力がないのだと彼女は思った。
今は亡き父はカミリヤのことをとんでもない神聖力を持つと言っていたが、父も大聖女の子孫としての自負からそう信じたかっただけなのだろう。
カミリヤは自身を信じていない。それでも聖女のお勤めとして、祈り続けていた。
時々兄が神殿に会いに来る。神官家系の生まれなのに学者の道を選んだ兄はよくカミリヤを励ましに来てくれた。
「カミリヤ、元気にしてるか」
「はい、お兄様」
「他の神官や聖女にいじめられてないか? カミリヤは優しいから俺は心配だよ」
神聖力について兄が話してきたことはない。ただ、兄はカミリヤを元気付けてくれる。
「私はただ祈るだけです」
カミリヤがそう言うと兄は困ったような顔をする。慰めるでもなくただただ困った顔なので、カミリヤは何故そんな顔をするか、不思議でならない。ただ、その顔は哀れんでいるようにも見えた。
「カミリヤ、お前にはとんでもない神聖力があるのだから、国のことを第一に考えなさい。自分のことには無欲でありなさい。お前は素晴らしい者で、お前は恵まれた者なのだから」
神聖力はその人の望みを叶えると言われている。カミリヤは都のオアシスが清い水をもたらすこと、たくさんの作物が作られること、交易が正しく行われ豊かになることを毎日祈っていた。
カミリヤは神殿で聖女として祈り続けること、そして王太子の妃になることが仕事だった。
神聖力が強い人には他の人の神聖力が見える。心臓を中心に球型に見えるものであり、強ければ強いほど大きな球となる。
この国の都ワーハは神聖力に包まれている。都は丸く半球型に神聖力によって囲われている。
大昔、大聖女と呼ばれた膨大な神聖力の持ち主の力が未だに都を守っているのだという。
カミリヤはその大聖女の子孫である。彼女自身は他の人の神聖力が見えるが他の人からは彼女の神聖力が見えない。
「カミリヤ様ねぇ、神聖力が全くないのによく聖女が勤まるわよね」
「大聖女の子孫だからって優遇されすぎ、王太子の妃にもなるんでしょ?」
「お飾りみたいなものなのにね、良いわね」
神殿ではよくそういった言葉がささやかれる。カミリヤは静かにその場を引き返すことが多い。
カミリヤはその人達を嫌ったことはない。彼女自身、自分の神聖力が全く見えないのだ。きっと何かの具合で他の人の神聖力が見えるだけでカミリヤには神聖力がないのだと彼女は思った。
今は亡き父はカミリヤのことをとんでもない神聖力を持つと言っていたが、父も大聖女の子孫としての自負からそう信じたかっただけなのだろう。
カミリヤは自身を信じていない。それでも聖女のお勤めとして、祈り続けていた。
時々兄が神殿に会いに来る。神官家系の生まれなのに学者の道を選んだ兄はよくカミリヤを励ましに来てくれた。
「カミリヤ、元気にしてるか」
「はい、お兄様」
「他の神官や聖女にいじめられてないか? カミリヤは優しいから俺は心配だよ」
神聖力について兄が話してきたことはない。ただ、兄はカミリヤを元気付けてくれる。
「私はただ祈るだけです」
カミリヤがそう言うと兄は困ったような顔をする。慰めるでもなくただただ困った顔なので、カミリヤは何故そんな顔をするか、不思議でならない。ただ、その顔は哀れんでいるようにも見えた。
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