71 / 97
本編
70,パーティーの始まり
しおりを挟むお屋敷はザ・洋館、って感じの赤レンガでできてた。なんだかどこかで見た気が……旅行かなんかで見たと思うんだけど……。あ、札幌の赤レンガ庁舎だ。なんか、思い出せてすっきりはしたけど、少し複雑な気持ちだ。異世界なのにって気持ちと向こうを思い出すのとでこう、もやもやする。でもそんなことどうにもならないし、今は無理にでも置いておこう。
お屋敷の前ではバスカルヴィーさんを真ん中にして、たくさんの人が出迎えてくれた。ほとんどの人がメイド服か執事服だけど、バスカルヴィーさんの近くにいる人は違う。女性はドレスだし、男性はバスカルヴィーさんと同じような装飾が派手なものを着てる。でもバスカルヴィーさんとは似ても似つかない。 たしかに装飾は派手なんだけど、派手というか華やかに見える。多分家族なんだろうけど、本当かどうか疑ってしまいそうだ。頭二つ分くらい違うし。
「本日はお招きありがとうございます」
「いえいえ、アンジュ様、皆様ようこそお出でくださいました。さあ、どうぞ中へ」
お屋敷の中は思ったより落ち着いた、綺麗な雰囲気だった。天井から大きなシャンデリアが釣り下がってはいるけど、豪華だと感じるのはそのくらいだ。柱には馬車と同じような彫刻が施されてるし、よく見たら床は大理石みたいだしものすごいお金がかかってるこのはわかる。でもどれもあんまり主張してこないというか、よく見ないと価値が分かりにくくなってるような感じがする。
「さあ、こちらへどうぞ。パーティーの準備は既に出来ております」
「あ、そうです。その、正直に申しましてパーティーのマナーとかに明るくないので、失礼がありましたら言ってください」
「ご安心ください、立食形式にしております。細かなことは気にせずにお楽しみください」
「そうなんですか、ありがとうございます」
多分冒険者の私たちへの配慮かな。バスカルヴィーさん、最初は典型的な悪役というか横暴な人だと感じたけど、なんだかどんどん印象が変わるなあ。
「細かいこと気にしなくていいってのはいいな」
「だからって騒いだりがっついたりしていいわけじゃないわよ、ギル。大人しくしてなさいよ」
「分かってるよ」
ミリアがギルをたしなめる。たしかに少し不安ではあるけど、ミリアとレベッカがいるし大丈夫でしょ。
それより、この先にバスカルヴィーさんの占って欲しい人がいるんだよね。どんな人だろう。同じような商会のトップとかかな?
パーティー会場に入ると、中にいた人達がいっせいにこっちを向いた。そのあとみんな近くの人とこそこそ話し出す。あんまりいい気分じゃないなあ。
「では、私は挨拶がありますのでこれで一度失礼致します。後ほど私の家族の紹介も兼ねて再びご挨拶に伺いますので」
「あ、はい。わかりました」
そう言ってバスカルヴィーさんは会場の奥の、一段高くなってる所へ歩いて行く。
「だってさ。とりあえずバスカルヴィーさんの挨拶があるまでは自由に行動しない方がよさそう」
「了解。まあ、私たちは別々に行動する気はないけどね。ギルもいるし」
「どういう意味だよ」
「そのままよ。お願いだから変なことはするんじゃないわよ」
ギルって信用ないなあ。まあフォローはあんまりできないけど。
「皆様、本日はようこそお出でくださいました。今回はいつものように長い前置きは無しとしましょう。実は今日は何人かゲストをお呼びしています。中央街で噂の占い師、アンジュ様。そしてセリゼの森に現れた灰色の魔物を退けることに素晴らしい活躍をなされたパーティ、金の竪琴の皆様です」
拍手とともに、ばっ、と再び視線が集まる。やっぱり、とかいう声が聞こえてくるから、さっきのひそひそ話は私たちじゃないかって話してたのかな。
「そして、本日はここ、コルネシア帝国の皇女殿下。リーゼロッテ様もいらしてお出でです」
「皆様、こんばんは。ご紹介に預かりました、リーゼロッテ・バントベルツ=プリシラ=コルネシアです。本日は私も一人の客人として、ここで楽しい一時を過ごせればと思います」
皇女殿下!? え、こんなところに来ていいの!? あ、いや、こんなところは失礼だ。他にも皇女殿下の紹介としては簡単すぎるというか、雑すぎるというか、リーゼロッテ様もそれでいいの!? なんでバスカルヴィーさんのパーティーに!? というか、バスカルヴィーさんって皇帝と繋がりがあるの……? 私そんな人に色々突っ込んだこと言ってたのか。今更だけど、少し顔から血の気が引いてくのが分かったよ。まさか占ってもらいたい人って……。いや、そんなまさか、ないない。……ないよね?
10
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる