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本編

70,パーティーの始まり

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  お屋敷はザ・洋館、って感じの赤レンガでできてた。なんだかどこかで見た気が……旅行かなんかで見たと思うんだけど……。あ、札幌の赤レンガ庁舎だ。なんか、思い出せてすっきりはしたけど、少し複雑な気持ちだ。異世界なのにって気持ちと向こうを思い出すのとでこう、もやもやする。でもそんなことどうにもならないし、今は無理にでも置いておこう。
  お屋敷の前ではバスカルヴィーさんを真ん中にして、たくさんの人が出迎えてくれた。ほとんどの人がメイド服か執事服だけど、バスカルヴィーさんの近くにいる人は違う。女性はドレスだし、男性はバスカルヴィーさんと同じような装飾が派手なものを着てる。でもバスカルヴィーさんとは似ても似つかない。  たしかに装飾は派手なんだけど、派手というか華やかに見える。多分家族なんだろうけど、本当かどうか疑ってしまいそうだ。頭二つ分くらい違うし。

「本日はお招きありがとうございます」
「いえいえ、アンジュ様、皆様ようこそお出でくださいました。さあ、どうぞ中へ」

  お屋敷の中は思ったより落ち着いた、綺麗な雰囲気だった。天井から大きなシャンデリアが釣り下がってはいるけど、豪華だと感じるのはそのくらいだ。柱には馬車と同じような彫刻が施されてるし、よく見たら床は大理石みたいだしものすごいお金がかかってるこのはわかる。でもどれもあんまり主張してこないというか、よく見ないと価値が分かりにくくなってるような感じがする。

「さあ、こちらへどうぞ。パーティーの準備は既に出来ております」
「あ、そうです。その、正直に申しましてパーティーのマナーとかに明るくないので、失礼がありましたら言ってください」
「ご安心ください、立食形式にしております。細かなことは気にせずにお楽しみください」
「そうなんですか、ありがとうございます」

  多分冒険者の私たちへの配慮かな。バスカルヴィーさん、最初は典型的な悪役というか横暴な人だと感じたけど、なんだかどんどん印象が変わるなあ。

「細かいこと気にしなくていいってのはいいな」
「だからって騒いだりがっついたりしていいわけじゃないわよ、ギル。大人しくしてなさいよ」
「分かってるよ」

  ミリアがギルをたしなめる。たしかに少し不安ではあるけど、ミリアとレベッカがいるし大丈夫でしょ。
  それより、この先にバスカルヴィーさんの占って欲しい人がいるんだよね。どんな人だろう。同じような商会のトップとかかな?
  パーティー会場に入ると、中にいた人達がいっせいにこっちを向いた。そのあとみんな近くの人とこそこそ話し出す。あんまりいい気分じゃないなあ。

「では、私は挨拶がありますのでこれで一度失礼致します。後ほど私の家族の紹介も兼ねて再びご挨拶に伺いますので」
「あ、はい。わかりました」

  そう言ってバスカルヴィーさんは会場の奥の、一段高くなってる所へ歩いて行く。

「だってさ。とりあえずバスカルヴィーさんの挨拶があるまでは自由に行動しない方がよさそう」
「了解。まあ、私たちは別々に行動する気はないけどね。ギルもいるし」
「どういう意味だよ」
「そのままよ。お願いだから変なことはするんじゃないわよ」

  ギルって信用ないなあ。まあフォローはあんまりできないけど。

「皆様、本日はようこそお出でくださいました。今回はいつものように長い前置きは無しとしましょう。実は今日は何人かゲストをお呼びしています。中央街で噂の占い師、アンジュ様。そしてセリゼの森に現れた灰色の魔物を退けることに素晴らしい活躍をなされたパーティ、金の竪琴の皆様です」

  拍手とともに、ばっ、と再び視線が集まる。やっぱり、とかいう声が聞こえてくるから、さっきのひそひそ話は私たちじゃないかって話してたのかな。

「そして、本日はここ、コルネシア帝国の皇女殿下。リーゼロッテ様もいらしてお出でです」
「皆様、こんばんは。ご紹介に預かりました、リーゼロッテ・バントベルツ=プリシラ=コルネシアです。本日は私も一人の客人として、ここで楽しい一時を過ごせればと思います」

  皇女殿下!?  え、こんなところに来ていいの!?  あ、いや、こんなところは失礼だ。他にも皇女殿下の紹介としては簡単すぎるというか、雑すぎるというか、リーゼロッテ様もそれでいいの!?  なんでバスカルヴィーさんのパーティーに!?  というか、バスカルヴィーさんって皇帝と繋がりがあるの……?  私そんな人に色々突っ込んだこと言ってたのか。今更だけど、少し顔から血の気が引いてくのが分かったよ。まさか占ってもらいたい人って……。いや、そんなまさか、ないない。……ないよね?
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