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第25話 動き出す
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「なるほど、それまた厄介なことに巻き込まれたものだねえ」
デスクの椅子に腰掛けて腕を頭の後ろで組み、椅子を使ってクルクル回りながら賀茂は言う。どうもこの人は緊張感というものがない。数多の修羅場を乗り越えてきたということだろうか。それともただ単に能天気なだけだろうか。きっと後者だな、そうであってくれ。
「でも、あの時大治くんから連絡もらってなかったら手遅れだったかもしれないねえ。いやあ、助かったよ」
「何言ってるんすか、手遅れも何も、、端から間に合ってなかったじゃないですか。すべてが終わってきれいさっぱり厄介ごとに巻き込まれた後にあんたは来たんですよ。」小吉がグラスに入った牛乳を飲みながらぼやく。左頬には絆創膏が貼られている。わんぱく小僧のような面白い顔をしている。
「でも、賀茂さん、どうして公園に小吉がいるってわかったんですか?」僕は賀茂さんの座っているデスクの向かい側にあるデスクを勝手に借りて座っている。机の上には「真野」と書かれた名刺が置いてある。やけにきれいな名刺だ。
「わかったというか、昨日の君たちの話を聞いてたから、とりあえずその辺に行ってみようと思っただけだよ。正直運がよかっただけだよ」やはりこの男、ただの能天気なのだろう。
「でも、これって、小吉が事件に巻き込まれそうってことですよね」小吉の頬を手当てした瀬奈が応急箱をガサゴソと物色しながら聞いてくる。
「ていうか、もう巻き込まれてるけどな」小吉が左頬を摩りながらぶっきらぼうに言う。渦中の時のことを思い出しているのだろうか。
「それはそうなんだが、そこはあまし心配しなくてもいいかなあ」賀茂が組んだ足をプラプラさせながら口にする。
「どうしてだよ」
「私たちがいるからだよ」賀茂は自信満々に言い放つ。
「はあ・・・」3人はキョトンとする。
「仕事柄、こういうことには慣れてるんだ。依頼によっては暴行に巻き込まれそうになることや裏社会で生きているような野蛮な連中と関わることだって日常茶飯事だ。そういう現場を私たちはいくつも乗り越えてきた。まあ、とにかく大丈夫だから安心したまえ」賀茂はプラプラさせていた体を止めて僕たちに正面で向き直り毅然と言う。不覚にもその言葉に呆気にとられて何も言えないでいた。この人はやはり、ちゃんとやってきたんだな。
「それよりも考えるべきは、その不良少年くんのバックに控えているのが何者かってことだね」賀茂が立ち上がり、本棚の方へ向かう。ぱっと見でも蔵書は1000を超えていそうな大きな本棚だ、すべてが本と言うわけではなくファイルや図鑑のようなものもある。中には『合気道指南書』『相手の技をいなす100の方法』なんてものもある。読んでいいのだろうか、是非1度読んでみたいものだ。
賀茂はその中から一つのファイルを手にする。
「以前請け負った仕事で似たような組織あったような気がするんだよねえ、銃器や苦薬を取り扱っている組織にいた諜報員にこれ以上悪事を働くと頭がおかしくなりそうだから組織から抜け出させて欲しいと言われたときにね」
「そんな依頼もあるんですね」
「あぁ、でもあの時は大学は絡んでいなかったし依頼者が情報を垂れ流しにしてくれてから簡単に突き止めることができたんだ。今回はちと難儀だね。ま、どうとでもなるだろうけど」
「でも、とにかく小吉が無事でよかった」瀬奈が応急箱を戻してそう言う。
「そうだね、無傷というわけには行かなかったけど生きててくれてよかった。改めて知らせてくれてありがとう、大治くん」
「いえ、結局間に合わなかったですし、僕は何もしてません」僕は俯きながらボソッと言う。実際、僕は本当になにもできていない。人に頼っただけだ。
「いや、ありがとう、大治。正直賀茂さんがきてくれたとき、少し安心したんだ。それにお前が俺に何かあったんじゃないかと思ってしてくれたことだろう。だから、ありがとう」僕を真っ直ぐにみて小吉は謝辞を述べる。背中がむず痒くなるのを感じ、体が少し熱くなった。
「あ、あぁ」
「さて、じゃあ本来の私たちの依頼を進めようか。小吉くんに絡んできた連中の中に里美という人がいたのは確かなんだね?」
「えぇ、確かに里美と言ってました。それに、去り際に俺のことをみながら何かを伝えたそうな雰囲気がありました」
「なるほど、じゃあ、その辺も含めて改めて依頼者とお話ししようか」賀茂が事務所の入り口の方を見ると「ガチャ」という音と共に扉が開く。
「こんばんは」
黒いパンツに白いシャツを着た小綺麗な男が入ってきた。ヒゲもきれいに剃られており清潔感がある。
「この方が君たちにお願いしている案件の依頼主だよ。鈴木さんだ。」
「わざわざありがとうございます、鈴木さん。では、こちらへどうぞ」
賀茂が歩きながら促す。
「はい」鈴木と呼ばれた依頼者も続く。
「君たちも同席するよね」
「えぇ。もちろん」
「はい」
「お邪魔します」
僕たちは事務所に3つある謎の扉のうちの1つ、いや、1つはトイレでもう一つは行ったな。2つのうちの1つの向こう側へ行くことになる。隣にいる小吉を見るとかすかに口角を上げている。絆創膏のおかげで悪戯っ子のように見える。不思議と緊張や不安はなかった。
デスクの椅子に腰掛けて腕を頭の後ろで組み、椅子を使ってクルクル回りながら賀茂は言う。どうもこの人は緊張感というものがない。数多の修羅場を乗り越えてきたということだろうか。それともただ単に能天気なだけだろうか。きっと後者だな、そうであってくれ。
「でも、あの時大治くんから連絡もらってなかったら手遅れだったかもしれないねえ。いやあ、助かったよ」
「何言ってるんすか、手遅れも何も、、端から間に合ってなかったじゃないですか。すべてが終わってきれいさっぱり厄介ごとに巻き込まれた後にあんたは来たんですよ。」小吉がグラスに入った牛乳を飲みながらぼやく。左頬には絆創膏が貼られている。わんぱく小僧のような面白い顔をしている。
「でも、賀茂さん、どうして公園に小吉がいるってわかったんですか?」僕は賀茂さんの座っているデスクの向かい側にあるデスクを勝手に借りて座っている。机の上には「真野」と書かれた名刺が置いてある。やけにきれいな名刺だ。
「わかったというか、昨日の君たちの話を聞いてたから、とりあえずその辺に行ってみようと思っただけだよ。正直運がよかっただけだよ」やはりこの男、ただの能天気なのだろう。
「でも、これって、小吉が事件に巻き込まれそうってことですよね」小吉の頬を手当てした瀬奈が応急箱をガサゴソと物色しながら聞いてくる。
「ていうか、もう巻き込まれてるけどな」小吉が左頬を摩りながらぶっきらぼうに言う。渦中の時のことを思い出しているのだろうか。
「それはそうなんだが、そこはあまし心配しなくてもいいかなあ」賀茂が組んだ足をプラプラさせながら口にする。
「どうしてだよ」
「私たちがいるからだよ」賀茂は自信満々に言い放つ。
「はあ・・・」3人はキョトンとする。
「仕事柄、こういうことには慣れてるんだ。依頼によっては暴行に巻き込まれそうになることや裏社会で生きているような野蛮な連中と関わることだって日常茶飯事だ。そういう現場を私たちはいくつも乗り越えてきた。まあ、とにかく大丈夫だから安心したまえ」賀茂はプラプラさせていた体を止めて僕たちに正面で向き直り毅然と言う。不覚にもその言葉に呆気にとられて何も言えないでいた。この人はやはり、ちゃんとやってきたんだな。
「それよりも考えるべきは、その不良少年くんのバックに控えているのが何者かってことだね」賀茂が立ち上がり、本棚の方へ向かう。ぱっと見でも蔵書は1000を超えていそうな大きな本棚だ、すべてが本と言うわけではなくファイルや図鑑のようなものもある。中には『合気道指南書』『相手の技をいなす100の方法』なんてものもある。読んでいいのだろうか、是非1度読んでみたいものだ。
賀茂はその中から一つのファイルを手にする。
「以前請け負った仕事で似たような組織あったような気がするんだよねえ、銃器や苦薬を取り扱っている組織にいた諜報員にこれ以上悪事を働くと頭がおかしくなりそうだから組織から抜け出させて欲しいと言われたときにね」
「そんな依頼もあるんですね」
「あぁ、でもあの時は大学は絡んでいなかったし依頼者が情報を垂れ流しにしてくれてから簡単に突き止めることができたんだ。今回はちと難儀だね。ま、どうとでもなるだろうけど」
「でも、とにかく小吉が無事でよかった」瀬奈が応急箱を戻してそう言う。
「そうだね、無傷というわけには行かなかったけど生きててくれてよかった。改めて知らせてくれてありがとう、大治くん」
「いえ、結局間に合わなかったですし、僕は何もしてません」僕は俯きながらボソッと言う。実際、僕は本当になにもできていない。人に頼っただけだ。
「いや、ありがとう、大治。正直賀茂さんがきてくれたとき、少し安心したんだ。それにお前が俺に何かあったんじゃないかと思ってしてくれたことだろう。だから、ありがとう」僕を真っ直ぐにみて小吉は謝辞を述べる。背中がむず痒くなるのを感じ、体が少し熱くなった。
「あ、あぁ」
「さて、じゃあ本来の私たちの依頼を進めようか。小吉くんに絡んできた連中の中に里美という人がいたのは確かなんだね?」
「えぇ、確かに里美と言ってました。それに、去り際に俺のことをみながら何かを伝えたそうな雰囲気がありました」
「なるほど、じゃあ、その辺も含めて改めて依頼者とお話ししようか」賀茂が事務所の入り口の方を見ると「ガチャ」という音と共に扉が開く。
「こんばんは」
黒いパンツに白いシャツを着た小綺麗な男が入ってきた。ヒゲもきれいに剃られており清潔感がある。
「この方が君たちにお願いしている案件の依頼主だよ。鈴木さんだ。」
「わざわざありがとうございます、鈴木さん。では、こちらへどうぞ」
賀茂が歩きながら促す。
「はい」鈴木と呼ばれた依頼者も続く。
「君たちも同席するよね」
「えぇ。もちろん」
「はい」
「お邪魔します」
僕たちは事務所に3つある謎の扉のうちの1つ、いや、1つはトイレでもう一つは行ったな。2つのうちの1つの向こう側へ行くことになる。隣にいる小吉を見るとかすかに口角を上げている。絆創膏のおかげで悪戯っ子のように見える。不思議と緊張や不安はなかった。
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