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『異なる剛毅 Ⅳ 』
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「――クソッ!」
彼は敗北した。復讐の劫火を纏い強襲したが、負けた。それはあまりにも呆気なく、赤子の手を捻るように。
ヒーローを倒すことには至らなかった。
「いやはや、勝手に動かれては困る。こちらには計画という物があってな。事を起こすその時までは札は隠して置きたかった。が、奴らの心を揺さぶるには申し分なしか」
しかし、例え敵わなくとも打撃を与えることができた。潰すことはできなくても、傷をつけた。彼への期待は低かったが、最低限のことは成功した。
「君に頼みたいことがある」
であれば、まだまだ使うことができる。
自身の計画を遂行させるためならば、どんな対価を支払ってもいい。彼が望む新たな能力を与えたっていい。
「明日、六道研究所を襲いこれを殺せ」画面には男の写真が表示された。「そうすれば、君にもう一度力を授けよう」
異能には異能、と思われがちではあるが、鉛一発に超人でも勝てない者が多い。肉体強度は常人と変わらない異能使いが多数いる。例え肉体強度が高くても見た目と変わらない者がほとんどなため、間違った知識が広まっている。
「あ、ああ! やってやる!」
彼は力を欲している。誰にも負けない強大で隔絶した能力を欲していた。
「奴を殺せる力を手にできるのなら、どんなことだってやる!」
だから、そのためならば、どんなことだって行える。
己の全てを賭してでも倒したい、殺したい相手がいる。彼の復讐の劫火は未だ火力が弱まることなく、燻る火の粉は日に日にその火力を強くしている。
今では近づく全てを燃やすほど熱く燃え滾っている。
◇
土間陽向はヒーローではない。その見た目から『ヴィラン』と認識された。だが、それで構わない。世間の認識を彼はもう信じない。受け入れない。認めない。己で見て感じたことを何よりも優先することにした。
だから、どう思われようとも彼は歩む。
陽向は大きく空気を取り込み一気に吐き出して、『叫喚』を発動させる。
それを聞いた者は何者も抗うことはできない。抗えずにその精神を乱し、そして壊す。
だがしかし、それは常人に限る。能力を獲得し、超人へと至った者にはただ思考を乱すことしかできない。
「きさ、まは――ッ?!」
しかしながら、ここには人の域を越えた者はいない。彼の能力に抗える者はいない。
彼の声が木霊する施設内、職員は次々に倒れ込む。陽向を通り過ぎた場所には狂乱の末死した者で溢れ返っていた。
「お前かっ! お前さえいなければ――!」
陽向はその男のみ能力が影響しないようにし、その首を掴む。
怪物となった手は容易く男の首を掴み、持ち上げた。
「これで、僕は奴を殺す力を手に出来る!」
虫の息となった男を目にして思わず口の端を吊り上げた。
「そうか……貴様、雲井の手先だな!?」
男は陽向の言動によって何者なのかがわかった。どうして、自分が死ぬことになるのかもわかってしまった。
「雲井さんが教えてくれたぞ。お前がしてきた悪事の数々……」
首を掴む強さが弱くなったが、しかしそれは一瞬のことだった。常人では怪物の握力から逃げることはできない。
「お前にも姉さんが死んだ責任がある。お前が――お前たちが姉さんを殺したのも同義! ――去ね!」
緩急を調節することで『叫喚』を耐えることが難しくなる。一気に最大出力となったことで、狂乱するまでもなくそのまま死んで逝った。
◇
朔天が語る話しは彼らにどう映っているのか、第三者として話しを聞くことができない朔天には知ることができないこと。だが、それでも知りたくなってしまう。
自分たちが歩んだ道を他者にはどう映るのか。ヒーローだけではない、ヴィラン、一般市民……様々な視点から物語を聞けばどう変化するのか。
気になる者の全てから否定されてしまうかも、と思うとそれを尋ねる勇気が湧いてこない。
「能力はその人となりを表す」
心が醜いから体もそれに呼応する、と怪物を目にした者が口にした。が、それは間違っている。心が弱いから殻を強くしないといけない。だから、異形の姿を形成する。しかし、心が弱くない者はわざわざ体を強くする必要もないので強力な能力を手にする。
「《DUAシステム》それは能力発現の手助けとはなるけど、能力者にする物ではなかった」
《DUAシステム》を使用したことがない彼らにとって、朔天が話すことは想像すらできない異様なものだろう。
彼らは第三者に頼ることなく己身一つで能力を獲得し、それを極めて来たのだから。
「神へと至る鍵。その意味は新世代を創り出す扉を開くための物だけではなかった」
《DeificationUpgradeArkシステム》は強力な能力を造るための物ではない。能力者の増産こそが生み出した理由だった。
「神へと至らす箱――偏在するかのように世界各地に能力者を生む母体の形成。それが目的だった」
元より、朔天とは目指す場所が違っていた。
「私とは当たりも掠りもしない目的だとは思ってすらいなかったよ……」
自嘲するように口にしているが、誰も笑えるようなことではない。今の世界を目にすれば笑っていいことではないのだから。
「さて、ここまでで半分。あと半分の辛抱だからもう少し我慢してね」
休憩を挟みたいとか、今日はそれぐらいなどを言う暇もなく、朔天は物語の後半へと踏み入った。
彼は敗北した。復讐の劫火を纏い強襲したが、負けた。それはあまりにも呆気なく、赤子の手を捻るように。
ヒーローを倒すことには至らなかった。
「いやはや、勝手に動かれては困る。こちらには計画という物があってな。事を起こすその時までは札は隠して置きたかった。が、奴らの心を揺さぶるには申し分なしか」
しかし、例え敵わなくとも打撃を与えることができた。潰すことはできなくても、傷をつけた。彼への期待は低かったが、最低限のことは成功した。
「君に頼みたいことがある」
であれば、まだまだ使うことができる。
自身の計画を遂行させるためならば、どんな対価を支払ってもいい。彼が望む新たな能力を与えたっていい。
「明日、六道研究所を襲いこれを殺せ」画面には男の写真が表示された。「そうすれば、君にもう一度力を授けよう」
異能には異能、と思われがちではあるが、鉛一発に超人でも勝てない者が多い。肉体強度は常人と変わらない異能使いが多数いる。例え肉体強度が高くても見た目と変わらない者がほとんどなため、間違った知識が広まっている。
「あ、ああ! やってやる!」
彼は力を欲している。誰にも負けない強大で隔絶した能力を欲していた。
「奴を殺せる力を手にできるのなら、どんなことだってやる!」
だから、そのためならば、どんなことだって行える。
己の全てを賭してでも倒したい、殺したい相手がいる。彼の復讐の劫火は未だ火力が弱まることなく、燻る火の粉は日に日にその火力を強くしている。
今では近づく全てを燃やすほど熱く燃え滾っている。
◇
土間陽向はヒーローではない。その見た目から『ヴィラン』と認識された。だが、それで構わない。世間の認識を彼はもう信じない。受け入れない。認めない。己で見て感じたことを何よりも優先することにした。
だから、どう思われようとも彼は歩む。
陽向は大きく空気を取り込み一気に吐き出して、『叫喚』を発動させる。
それを聞いた者は何者も抗うことはできない。抗えずにその精神を乱し、そして壊す。
だがしかし、それは常人に限る。能力を獲得し、超人へと至った者にはただ思考を乱すことしかできない。
「きさ、まは――ッ?!」
しかしながら、ここには人の域を越えた者はいない。彼の能力に抗える者はいない。
彼の声が木霊する施設内、職員は次々に倒れ込む。陽向を通り過ぎた場所には狂乱の末死した者で溢れ返っていた。
「お前かっ! お前さえいなければ――!」
陽向はその男のみ能力が影響しないようにし、その首を掴む。
怪物となった手は容易く男の首を掴み、持ち上げた。
「これで、僕は奴を殺す力を手に出来る!」
虫の息となった男を目にして思わず口の端を吊り上げた。
「そうか……貴様、雲井の手先だな!?」
男は陽向の言動によって何者なのかがわかった。どうして、自分が死ぬことになるのかもわかってしまった。
「雲井さんが教えてくれたぞ。お前がしてきた悪事の数々……」
首を掴む強さが弱くなったが、しかしそれは一瞬のことだった。常人では怪物の握力から逃げることはできない。
「お前にも姉さんが死んだ責任がある。お前が――お前たちが姉さんを殺したのも同義! ――去ね!」
緩急を調節することで『叫喚』を耐えることが難しくなる。一気に最大出力となったことで、狂乱するまでもなくそのまま死んで逝った。
◇
朔天が語る話しは彼らにどう映っているのか、第三者として話しを聞くことができない朔天には知ることができないこと。だが、それでも知りたくなってしまう。
自分たちが歩んだ道を他者にはどう映るのか。ヒーローだけではない、ヴィラン、一般市民……様々な視点から物語を聞けばどう変化するのか。
気になる者の全てから否定されてしまうかも、と思うとそれを尋ねる勇気が湧いてこない。
「能力はその人となりを表す」
心が醜いから体もそれに呼応する、と怪物を目にした者が口にした。が、それは間違っている。心が弱いから殻を強くしないといけない。だから、異形の姿を形成する。しかし、心が弱くない者はわざわざ体を強くする必要もないので強力な能力を手にする。
「《DUAシステム》それは能力発現の手助けとはなるけど、能力者にする物ではなかった」
《DUAシステム》を使用したことがない彼らにとって、朔天が話すことは想像すらできない異様なものだろう。
彼らは第三者に頼ることなく己身一つで能力を獲得し、それを極めて来たのだから。
「神へと至る鍵。その意味は新世代を創り出す扉を開くための物だけではなかった」
《DeificationUpgradeArkシステム》は強力な能力を造るための物ではない。能力者の増産こそが生み出した理由だった。
「神へと至らす箱――偏在するかのように世界各地に能力者を生む母体の形成。それが目的だった」
元より、朔天とは目指す場所が違っていた。
「私とは当たりも掠りもしない目的だとは思ってすらいなかったよ……」
自嘲するように口にしているが、誰も笑えるようなことではない。今の世界を目にすれば笑っていいことではないのだから。
「さて、ここまでで半分。あと半分の辛抱だからもう少し我慢してね」
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