コミュ症の久美が大自然へ挑む惑星移民のSFファンタジー

乙巴じゅん

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終わりの章

新天地へ

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 久美はソーラーカーを借りることもできた。
「調査で必要と言ったら、すぐ借りられた」
 いつものようにテラスで同級生たちに話す。半ばは月乃が、久美の状況を説明する感じ。
「すぐに永住は無理と思うけれど、半日ぐらい生活するのも楽しいかも」
 興味はあるが、不安も多い同級生たち。この前の事件で、タウンの生活に嫌気が差したのも間違いはない。
 亜由美が、ちょっと警戒して話す。
「今じゃないかも知れないけれど。いつかタウンのシステムが動かなくなるのは気づいてもいるよね」
 タウンでは禁句になっている。不安を煽るという理由らしい。
「ちゃんと準備とかできたらね」
 それがみんなの思うこと。荒れ地の草原へ何も持たずに行くには勇気も必要だ。

 久美にとっては、それはそれで良い。行動するだけだ。後ろ向きなほかの意見に興味はないのが久美。
 月乃は久美が飽きてきているのも感じる。
「遠足のテントみたいなのができたら、考えよう。可愛い飾りが売られてたよ」
 お金も良い面があり、遠いタウンの珍しいのが手に入る。経済はわるいばかりでもないらしい。 飾りといってもいろいろある、と盛り上がるところへ、荒っぽい声がかかる。
「楽しそうだなあ」
 3人の男が立って、何故か肩を揺らしている。真ん中のひょったん顔の男が前に出る。
「お姉ちゃんたち。取引きしようぜ。一人でいいから俺たちと遊ばせろ。金はくれてやるぜ」
「いきなりなんですか」
 亜由美が立ち上がり抗議する。やはり、リーダーだ。
「こいつで良いや」
 後ろの、鼻の下が長い馬面男とカバに似た口のカバ男が囃すように言う。
「決まりだな。来いよ」
 ホットパンツに隠していたハサミを取り出して、亜由美へ向ける。
「そ。それは」
 怯える亜由美。
 久美が立ち上がり間へ入る。
「あの。刃物は危ないよ。タウン条例違反だと思う」
 刃物とかを人へ向けるのは禁止されている。しかし、ひょうたん男は余計に満足したようだ。
「よーし。お前も来い」
「亜由美。下がって」
 久美は強引に亜由美を後ろへ押すと、両手を前で合わせる。
「お願いか」
 ひょうたん男が笑う。
「スピン」
 久美は相手へジャンプして3回転。
「ぅぎゃっ」
 ひょうたん男が弾かれて倒れる。
「あぎゃっ」
 飛ばされたハサミが馬面男の肩に刺さった。
 フレアスカートが綺麗に広がりながら、久美は着地。
「スマッシュ」
 左手を伸ばして、カバ男へ掌を向ける。
「まいった。ごめんなさい」
 掌から何が出て来るのか。さすがに抵抗する気はないらしい。
「あらら。怪我しちゃったね」
 久美は馬面男に気が付いて近づく。血が溢れている、ゆっくりしていられない。短剣を取り出すと、馬面男の開襟シャツを切って、傷口を確認する。
「動脈じゃないね」
 リュックを胸の前に置き、止血スプレーを噴霧する。
「止まらないね。仕方ない」
 強力粘着剤を傷口へ吹き付ける。内部まで固めてしまうが、応急処置だ。
「ひっひひひーん」
 馬面男が奇声をあげる。
「我慢するのっ。あとは病院で処置すると思うから」
 久美は立ち上がると、座っていたテーブルへ戻る。

 亜由美は久美へ、助けてくれた礼をいうが、久美は気にしない。
「それより、次にお洒落なハンカチは探しに行こう。そろそろ行くから」
「これから仕事なんだ」
 綾香が残念そうにいう。
「ちょっと、kizunaタウンへ」
 今から行くのか、と全員が驚く。月乃は提案する。
「3日後で良いんじゃないの。慌てることもないって」
「そうか。分かった」
  いつもの返事だが、月乃は納得したように頷く。亜由美がみんなに確かめるように言う。
「3日後。急がしくなるね」
 しかし、すでに久美はソーラーカーへ乗り込んでいた。

 久美はいつも担当区をまわる平穏な日々。3日目の朝は夜明けとともに第4環状線をまわり、広場へ来た。
「目的地kizunaタウン。出発」
 AIへ支持すると、低い草に覆われてまばらに砂利が見える場所をソーラーカーは進み始める。右から朝日が当たり、露で光る沿道の植物たち。拓けているのは20年前までは整備していた道だから。森に遮られて日陰になるが、曲線を描く道は岩の上から続く。
 森を回ると、朝日を正面に受けて、ほぼ真っすぐの砂利道。向こうにはkizunaタウンが待っている。
「これなんだよねー」
 久美は幅の広い川が近づくのを確認する。はたして通れるのか。グライダーで見た限りでは幅10メートルの川。
「深いかな。渡れますか」
 AIに尋ねる。
「河川補修しますか」
 架橋レベルが表示される。久美は最高レベルを支持。
「材料を準備せよ」
「うっとうしいね。渡れるようにすれば良いの」
「了解。仮橋を構成します」
 その方法があるのか、と久美は感心する。取り合えず渡れたら良い。

 やがて川の中から、にょきにょき鉄板が現れて先が開き、狭いが通れる橋が完成する。ソーラーカーを降りて勾配のある橋へ久美は近づく。
「準備されてたんだね。それでも、いつかは自力で作らないと」
 いつまでも、科学力に頼れないと感じている。今は、科学と共存しよう、と決意する久美。 歩いて急勾配になる橋を渡ると、坂になり、広がる草原。
「あれっ。これは広場」
 ハーブ系の草が茂り、確かに人工的な低木の配置と、計算されたようにクローバーが大地に広がる。
「もしかして長方形。近いんだ」
 正方形でタウンエリアは作られるが、準備するときは長方形だったと気づく。それならpyupyapyoタウンから2キロメートル。手ごろなタウンの間隔だ。
「やったあー」
 叫ぶように喜ぶ久美。しかし、まだ到達してない。橋を渡らねばならない。

 朝日が映し出す新天地。これから何をすべきか。久美は眩しさを増して行く太陽を見つめる。サングラス効果でコンタクトが適切に恒星のすがたを見せる。
 両手を広げる久美。
「サンシャイン、コラボレーション」
 なにかが湧き上がり、思い浮かぶ言葉。
「慈しみ。そうだよね。慈しむ心さえあれば」
 自然界も人間社会も慈しみを持てば共存できると気づいた。
「まずは。渡ろうかな」
 久美はソーラーカーへ戻ろうと、踵を返す。大自然の森と、通ってきた未開だった砂利道。
「あれっ。どうしたの」
 久美はソーラーカーの後ろに並ぶ兎車を発見する。綾香が手を大きく振る。
「来たよ。早く行こう」
「あとから、引っ越しのソーラーカーもくるから」
 亜由美が歩み寄りながら話す。
「今日は下見。気が早いね」
 橋から降りて言う久美。近くで月乃は、アングルとか考えるように構える。
「しっかりと、あのポーズは見たから」
「みんながみた。と」
 久美はちょっと恥ずかしくもなった。

 ちょっと騒々しくなったが、着陸予定のプレートが有る場所へ避難所みたいなプレハブハウス建築が始まる。
「何で未知留がいるのよ」
 久美はぶっきら棒にいうが、照れているし、みんなに関係がばれてもいる。
「すぐ住むには、あれだな。夜はどんな危険生物がいるかわからない」
「まだ夜は経験してなかったなー」
 久美は準備することも多いと気づく。
「みんなでやるさ。任せて」
「何を。誰に」
 久美はこの状況がなぜ起こっているか把握してない。未知留が声をかけて色々なタイプの人間が集まっている。建築、周辺警備など。今は調理準備をして、持ってきた食材でバーベキューをしようとしている。
「しばらくは、みんなタウンから遊びに来る感じかな。久美ちゃんはどうする」
「活動諸点をここへ移して。やっぱりタウンからすぐに引っ越しは無理かな」
「よしよしっ。そのための計画をたてよう。まず、一緒に夜を経験しようか」
「心強い。いやっ。あれっ」
 長い夜長に未知留と一緒というのは、ものすごく楽しいようで、重大なことのように思える久美。
「あの。それって。別に今更」
「よし決まりだ」
 こうして正式に付き合うことになる久美と未知留だった。
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