ラスボス召喚術で異世界最強~剣聖の家に生まれた最弱召喚士は前世の記憶を取り戻し無双する【完結済・毎日更新】

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第一章 少年期 ラスボス召喚編

第9話『次代剣聖は破滅の階段を登る』

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 アイファズ・トロイメア視点

「なんだ……あれは……」

 今日は人生で最良の日となるはずだった。
 僕を幼いころから苦しめてきた兄さん――ラースがこの世から居なくなる日。

 自らの手を汚さず、それを特等席で眺めることができる最良の日。

 そうなるはずだったのに……

「あれが……兄さんの召喚術だっていうのか……」

 ライルという名の男が兄さんにとどめを刺そうとした瞬間――アレは現れた。

 それは美しく、妖艶で、そして……人ならざる『何か』だった。

 ――恐ろしい。

 僕は人を見て初めてそう感じた。

 いや、アレはきっと人じゃない。そんな物を超越した『何か』だ。
 僕はその『何か』にステータス鑑定をかけてみた。
 ステータス鑑定とは、相手のステータスを許可なく覗き見る技能だ。

 そうして僕の目の前に現れたのは――絶望だった。

★ ★ ★

 ルゼルス・オルフィカーナ 1013歳 女 レベル:不明

 職業《クラス》:なし

 種族:人間種?

 HP:32167/32167

 MP:なし

 筋力:11765

 耐性:8712

 敏捷:11598

 魔力:77198

 魔耐:87143

 技能:不死・不明・不明・不明・不明・不明

★ ★ ★


「なんなんだよ、アレはぁっ!?」

 そのステータスを見た瞬間、僕は怒鳴り散らした。
 あんな化け物……この世に存在していいはずがない。
 それほどの脅威が事もあろうに兄さんを守っていた。

「認めない……認めない……絶対に認めない!」

 兄さんが報われるなんて事……弟の僕が決して許さない。
 兄さんの不幸は僕の幸せ。
 だから僕は兄さんが報われるなんて展開……絶対に認めるわけにはいかないんだっ!

 兄さんが虐げられるように冒険者学校に働きかけ、不幸になるように誘導した。
 そうして今日、兄さんの死によって物語は完結するはずだった。

 なのに――なのに――なのに――

 そうして兄さんとライルという名の男の試合を見守っていると、どんなやり取りがあったのか、あの化け物女が退いた。
 そうして展開されるのは兄さんとライルという名の男の試合。

「よし……よし、よし、よしっ!」

 あの化け物女がなぜ退いたのか、その理由は分からないけどこれは良い展開だ。
 兄さんとライルという名の男の力量差はハッキリしている。

 なにせ、ライルのステータスは兄さんの約十倍。あの化け物女さえ手を出さなければ勝負にもならない差が――

 その時、兄さんから異様な圧が放たれた。

 そうして次の瞬間――兄さんの剣がライルの腕を斧ごと叩き斬った。

「はぁ?」

 なんだ、アレは?
 兄さんのステータスであんなことが出来る訳がない。
 念のため、兄さんのステータスをもう一度確認してみると――


★ ★ ★

 ラース(斬人《きりひと》憑依中) 13歳 男 レベル:12

 職業《クラス》:ラスボス召喚士

 種族:人間種

 HP:2068/2068

 MP:208/上限なし

 筋力:9136

 耐性:1103

 敏捷:9041

 魔力:0

 魔耐:0

 技能:ラスボス召喚[詳細は別途記載]・MP上限撤廃・MP自然回復不可・MP吸収・不明

★ ★ ★

 あれが……兄さん?

 あのステータス……筋力や敏捷だけならば剣聖の父さんに迫るステータス値じゃないか。
 それはつまり、僕をも超える数値で――


「いやはや、アレが剣聖の家を追い出されたという無能ですか。なかなかどうして……強い。王よ、彼をどう思います?」

 傍らからそんな声が聞こえてきた。

 王?

 まさか王がこの場に来ているっていうのか?
 僕はまだこの国の王、アレイス・ルーデンガルヴに会ったことはないが、噂だけは聞いたことがある。

 それは王でありながら、一流の武士《もののふ》であるという。
 だからこそ、王は何よりも強者を愛する。

 そんな王は時折お忍びで冒険者学校などの武術を学ぶ場に現れると聞いたことはあるが……よりにもよってこんな所に!?


「クッカッカッカッカ。愉快愉快。なかなかに面白い奴らではないか。のうボールド。彼奴等《きゃつら》、我が配下に出来ぬか?」
「王がお望みとあらば」
「戯《たわ》け! 主《ぬし》が彼奴等《きゃつら》に敵うわけがないであろうが。特にあの女よ。出鱈目《でたらめ》すぎるであろうが。全く……敵にだけは回したくないものよ。いや、敵に回すのも一興か?」
「……それほどの者達なのですか?」
「男の方は貴様より劣ると思うがな。あの女は文字通り次元が違うわい。儂の全盛期を遥かに超えた強さよのう」
「お戯れを……」
「なんだ。我の言葉を信じぬのか? それならばほれ、我が見たあの女のステータスだ。腰を抜かすなよ?」
「拝見します――――――は?」

 王の側近らしき男が兄さんの後ろに立つ化け物女のステータスを見て絶句している。
 無理もない。自身の技能で直接確認した僕だって未だに信じられないんだから。


「どうだ? 中々に愉快であろう?」
「『愉快であろう』ではありません! なんなんですかアレは!? 常軌を逸しています!」
「だから面白いのではないか。全く、貴様はまことにつまらん」
「『つまらん』どうこうの問題じゃないですよっ! っていうかさっきアレと敵対するのは一興みたいな事言ってませんでしたか? 本気ですか!?」
「おう、一興だと思ったのは本気よ。まぁ、あの女がその気になれば我が国なんぞ一日で焼け野原になりそうだがな。カッカッカ」
「『カッカッカ』じゃないですよっ! 絶対にそんな愚かな行為は控えてくださいね!?」
「分かった分かった。――――――ではボールドよ。あ奴らの事はどう扱う? 何やら錯乱しておるようだし、無関係の者にも手を上げたが? 罪にでも問うてみるか?」
「愚問ですね。罪になど問う訳がないでしょう。法とは人が人を罰するために用いられる物。あんな人外の者達に当て嵌められるものではありません」
「カッカッカ。言うではないか。それでは放置するか?」
「――――――それも一つの手ではありますが……何かしらの首輪はつけておきたいところですね。あの者達の力、その一端でも借り受けられるのなら爵位や金などいくらでも与えて構わないかと」
「うむ。違いない。だが、十分に慎重に動けよ? 国の存亡に関わるからのぅ。カッカッカ」
「はぁ……全くこの王は……。頭が痛くなる」

 そんなやり取りをして王とその側近は去っていった。

「なんだよ……それ」

 あの兄さんが……王に評価されている?
 今、この場で無関係の人を斬り捨てて狂乱している兄さんを罪に問わないどころか……爵位や金をいくらでも与える?


 なんだそれは――なんだそれは――なんだそれはっ!?


「くそぅっ!!」


 僕はその場で地団駄を踏む。
 しかし、そうしていても状況は変わらない。
 何かしら手を打たないと――


★ ★ ★

「おい校長」

「へ? げ、げぇ!? アイファズ様っ!? すみません! ラースの件については――」

 僕が声をかけるなり、兄さんの殺しに失敗した件について何かしら言い訳をする校長。
 だが、そんなもの今はどうでもいい。
 失敗した出来事の報告なんてどうでもいい。

 問題は、これからどうするかだ。

「あれは仕方がない。まさか兄さんにあんな隠し玉があったなんてね」

「は、はは。そうでございますよねぇ。では、ラース君の殺しの件については白紙という事で――」

 汗を拭きながら兄さんの殺しを取りやめにしようと言う校長。
 僕はそんな彼に対して――

「あ゛?」

 殺気を籠めた視線で返した。

「ひっ!」

 そんな僕の視線を受けて腰を抜かす校長。
 全く――ここで退いて一体どうするというのか?
 そんな事にすら考えが及ばない校長に対して怒りを覚える。

 僕はそんな怒りを押し殺して彼を諭しにかかる。

「いいですか、校長? 兄さんはすごい隠し玉を隠していました。でも、それは手に入れたばかりのものだ。今までずっと隠していた――なんて事はあり得ない」

 今まで不幸のただなかに居た兄さん。そんな兄さんがずっとあんな力を隠していたなんて考えられない。使う機会なんていくらでもあっただろう。

「手に入れたばかりの力……それはつまり使いこなせていない力とも言える。だから、兄さんがあの力を使いこなせていない間に始末する。それしか僕たちに生き残る術はないんですよ。今まで、僕たちが兄さんにしてきたことを忘れたわけじゃないでしょう?」

「そ、それはアイファズ様に言われたからやった事で――わ、私は彼を不当に扱うつもりなどなかった!!」

 言い訳ばかりする校長。
 まったく、往生際の悪い男だ。

 僕は素早い動きで校長の首を締めにかかる。

「ぐっがっ――」

 大した訓練も受けていない校長の首をたやすく僕の右手が掴む。

 少し力を入れるだけで彼はあの世行きだ。

 そんな彼の耳元で、僕は囁く。

「そんなの、兄さんからしてみればどうでも良いことですよ。兄さんを放っておいていいんですか? きっとあの力を使いこなし始めたらすぐに復讐しに来ますよ? 僕や父にその力は向けられ、そして当然――あなたにも兄さんは復讐しに来る」

「――――――」

 目を見開く校長。
 僕は続けて彼を誘導する――

「だから……ね? 兄さんを殺しましょう。幸い、兄さんの強さはまだ人の域だ。人数さえ集めればなんとかなる。僕は父さんにも声をかけて兄さんを殺すように動いてもらいます。みんなで力を合わせて……兄さんを殺すんですよぉぉぉ!!」

「わ、分かったぁぁ。分かった……から……離してくれ」

「おっと、失礼」

 ついつい熱が入りすぎてしまった。
 僕は校長の首を掴む力を少し緩める。
 そうして校長に笑いかけながら、協力を申し出た。

「それでは校長。これからみんなで力を合わせて兄さんを殺しましょうね?」
「は、はい」

「宜しい。それでは、僕はこれで――」

 僕は掴んでいた校長の首から手を離し、その場を後にする。

 さて――言葉にした通り、父上にも兄さんを殺すように動いてもらわなければ。

 まぁ、あの王とその側近の話を父上に聞かせればいいか。

 そのうえで兄さんは僕ら、トロイメア家を心の底から憎んでいるのだと嘯《うそぶ》いてやればいい。
 父上は喜んで兄さんを殺すのを手伝ってくれるだろう。


「くく、くくくくくくくくく」

 待っててね。兄さん。
 僕が兄さんを……絶対に不幸せにしてやる――
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