24 / 121
第一章 少年期 ラスボス召喚編
第24話『提案』
「――って感じですね」
ギルド長さんとその他職員二人にラスボス召喚について語った。
ギルド長さんはしばらく何かを考え込むかのように腕を組み、
「にわかには信じられないな」
と半ば俺が予想していた言葉を口にした。
まぁ、そりゃあ信じられないよな。
「召喚士はウチのギルドの冒険者の中にも幾人か居る。だが、彼らが使役できるのは基本的に自身より弱い魔物などだ。格上の、それも人知を超えた存在の召喚など聞いたこともない。それに、憑依召喚などという召喚方法も初耳だ」
そう、この世界の召喚士は基本的に自分より弱いものしか召喚出来ないのだ。
だから、俺のラスボス召喚は召喚士としては異例中の異例。
説明されてハイ納得なんて出来る訳がない。
「試しにここでその憑依召喚をやってみせてもらう……というのは難しいのだよね?」
ギルド長がそんな提案をする。
だが、彼が言う通りそれは難しい。
そんなMPを無駄にするような事、俺としても正直気が乗らないし、同時にオススメもできない。
「まぁ、そうですね。MPが減る云々であまり気が乗らないというのもあるんですが、何より俺が召喚するラスボス……召喚する人たちは俺の制御を離れた者しか居ないので正直、何をしでかすか分からないんですよ……」
ラスボスと言っても通じないと思ったので彼らにはラスボスの事を『人知を超えた力を持つ人たち』と言い方を変えて伝えている。
そこから一々説明するのも面倒くさいしね。
「なるほど。強大ではあるが制御出来ていない力……という訳か」
うーん、少しニュアンスは違う気がするが大体あってるしそれでいいや。俺は首を縦に振ってその通りだと肯定する。
「……ちょいと待ってくれ少年」
ギルド長がうーんと考え込む中、レイナさんが恐る恐る声をかけてくる。
「さっきの話だと……憑依召喚? ってのは少年自身の体に召喚する奴の力の十分の一を纏わせるんだよね?」
「ええ。まぁ俺自身もこの力についてそこまで分かっていないんですけど多分そんな感じかと」
まだ片手で数えられる回数しか召喚してない事もあって、俺自身もラスボス召喚についてはまだ手探りの状態なのだ。
ゆえに絶対そうだとは言えない。
「って事はあれかい? この間、少年はテラークのやつと戦ってたけど……アレ、憑依召喚じゃなくて普通に召喚してたらあの時の少年の十倍強い奴が現れてたって事かい!?」
あぁ、そういえばレイナさんはあの時、審判として間近で俺(正確にはウルウェイだけど)とテラークさんの戦いを見ていたんだっけか。
「まぁ、その認識で多分間違いないですね。もっとも、あの時はそんなMPはありませんでしたけど」
「………………」
俺の答えに対し、口を大きく開けたまま固まってしまうレイナさん。
うーん、まぁラスボスの性能ってこの世界じゃ完全にオーバースペックだからな。驚くのも無理はない。
そうしてレイナさんが黙り込む中、何やら考えていたギルド長が口を開く。
「そんな力を使っていて君自身は大丈夫なのかね? 副作用は?」
「副作用は――」
ない。と言いかけて少し悩む。
憑依召喚したときに召喚者の俺の精神すら上書きするラスボスの精神。あれが副作用と言えばそうなのかもしれない。
あれが酷くなると俺の精神が擦り切れ、最終的に俺自身がラスボスになってしまうという懸念点があるにはあるが――
『それについては言わない方がいいわね。『こいつはいつ暴れだすか分からない人間だ』なんて思われたら今後やりにくくなるわよ?』
まぁ、ルゼルスさんの言う通りですね。
そこに関してもぼかして答える事にしよう。
俺は考えた末に、副作用はない。あるとすれば憑依召喚の間は制御が効かないので近くに味方がいたとしても関係なく暴れまわるかもしれないとだけ伝えた。
「なるほど……。だから君は人気《ひとけ》が少なくなる夜に単身、魔物の群生地帯である森に向かったという訳か……。その間に君がやった事も全部召喚した者の意志だから君自身ではどうしようもない――と」
「まぁ、俺は俺が召喚する人たちの事が大好きですし、あまり彼らのせいにだけはしたくないんですが……まぁ、そういう認識で大丈夫だと思います」
そんな俺の言葉を受けて頭を抱えるギルド長。
「うぅむ。それだとここでラース君に対してこの世界の常識をいくら諭しても意味がない……という訳か」
「まぁ、俺が憑依召喚する対象は俺の記憶を一応は引き継いでるみたいなんで全くの無意味ではないはずですけど……それでも効果は薄いでしょうね」
なんたってラスボスだもの。
ラスボスに常識をいくら諭したってきっと彼らはそんなのお構いなしに自分のしたいように動くだろう(確信)。
「うぅむ……」
そこでギルド長はまたしばらく考え込む。
他の職員さんはそんな彼を見つめ、見守っているので場に静寂が訪れる。
そうして答えが出たのか。ギルド長は俺に対し、
「ラース君。君、狩りをする場所に拘りがないのであれば我々が指定する場所での狩りをしてくれないかい?」
なんてことを言ってきた。
「はい? それはどういう事ですか?」
ギルドが指定する場所での狩りだって?
それってつまりは厄介払いがしたいって事か?
俺が値踏みするような目でギルド長を見る中、彼は俺の視線に動じることなく話を続ける。
「いや、何。君のその力はとても強大だがとても扱いづらい物のようだ。だからこそ周囲に人が居ないような場所での狩りに興じていたのだろう?」
「まぁ、そうですね」
周囲に人がいる状態でラスボスを召喚なんてしたらかなりの確率で巻き込んでしまうからな。
「だが、それでも万が一という事がある。仮にその憑依召喚中に他の冒険者や、もしくは旅人なんかに偶然出会ったら君は危害を加えてしまうかもしれない」
「ええ」
その可能性は十二分にあるだろう。
そして、ギルド長は――俺に対して一つの提案をしてきた。
「だが、それを差し引いても君のその力は人類を脅かす魔物の殲滅《せんめつ》にかなり有用だ。腐らせておくのは惜しい。だからラース君。我々、ギルドに君のサポートをさせてくれないかい?」
あなたにおすすめの小説
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
転生少年は、魔道具で貧乏領地を発展させたい~アイボウと『ジョウカ魔法』で恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
男(30歳)は、仕事中に命を落とし異世界へ転生する。
捨て子となった男は男爵親子に拾われ、養子として迎えられることになった。
前世で可愛がっていた甥のような兄と、命を救ってくれた父のため、幼い弟は立ち上がる。
魔道具で、僕が領地を発展させる!
これは、家族と領地のために頑張る男(児)の物語。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。