1 / 1
【一話完結】ロシアンルーレット
しおりを挟む
20XX年、政府はとある事実を発表した。
「運は素質である。」と。
TVで総理大臣は会見にて
「生まれながらに運動の才がある子、ない子。勉学の才がある子、ない子。
同じ様に生まれながらにして運がある子、ない子が存在している、と言う研究結果が報告されました。
私を含め各国のトップや、上に立つ者たちは須く運の素質を持ったものであります。
この結果を武器に日本を取り戻していきたい所存であります。」
そう発言した。
私はそのTVを見ながら、
運の良し悪しさえも科学的に証明されてしまうのでは神頼みなんて意味ないな。
神社とか商売上がったりだな。
等と考えていた。
「さて、明日も早いし今日はもう寝るか。」
私はそう呟くと居間にいる両親におやすみと言い、自室で眠りについた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぁぁ…。」
起床する。少々寝覚めが悪い、と同時に何か違和感を感じる。
「……ん?」
ガチャリ。ガチャリ。弾倉に弾を込める音と火薬の香りがする。
ここは一体何処なのだろうか。少なくとも自室ではない。
「ここは何処なんだ…?」
日常から暗転し私は急にこの部屋に連れてこられた。周りにも同じ境遇からか、ざわつく声がする。その刹那だった。
「皆様はとあるゲームをしてもらうために集まっていただいたとても“幸運”な方々です。」
黒いマントを羽織り仮面をした、165センチほどの体格の人間がモニターに映る。
いかにもデスゲームの主催者といった見た目をしており、声はボイスチェンジャーによって変えられているため性別は不明である。
ゲームだと?いきなり何なんだ。
そう考えていると
「皆様はロシアンルーレットをご存知ですか?」
と黒マントは答える。
ロシアンルーレット。
六連のリボルバーの弾倉に一つだけ弾を込め、シャッフルし、銃口をこめかみに当て引き金を引く行為だ。
毎回弾倉を回転させる場合は毎回1/6の確率で当たりがある。逆に言うと毎回5/6の確率で生存できる様なゲーム。
命がけであることには変わりはないが、おそらくこの主催者は私達にロシアンルーレットをさせようと企んでいる様だ。
…幸運なんかとは程遠いな。
と私は思った。
「ここには総勢300名の人間を集めております。ここで皆さんにロシアンルーレットを行っていただきたく思います。ここから出られるのは生き残った一名のみとさせていただきます。」
主催者らしき黒マントはそう言うと続けて
「ただ、普通のロシアンルーレットではつまらないと思いまして、特殊なルールで行わせていただきます。」
そう言うと黒マントはルールの説明をしだした。
要約するとこうだ。
・拳銃は1人ひとつ渡される。弾倉は一度引き金を引くごとに回転させる。
・主催者側の合図で引き金を一斉に引き、これを1人になるまで繰り返す。
・弾倉には3/6で弾が込められており当たる確率は1/2である。
・1人ずつに監視員がつき、弾倉のシャッフルは監視員が毎回行うものとする。
「この様な形でのゲームとなります。それでは皆様、ご武運を…。」
黒マントがそう言うと男が1人、私の前に現れた。
防弾チョッキにフルフェイスのヘルメットをつけている。どうやら監視員のようだ。
「こちら、銃でございます。先程の説明通り弾数は3発。シャッフルは毎回私が行わせていただきます。
もうすぐゲームがスタートしますのでお待ちください。」
そういうと監視員は私にシャッフルされた銃を差し出した。
銃なんて撃つどころか触ったこともない。
ましてやそれを自分に撃つなどできるわけがない。
そう考えていると
バンッ
と鉛玉の音が響いた。
「お、お、俺はこんなことやれるわけねぇ!!!に、逃げるんだよ!!!」
どうやら錯乱した者が渡された銃で、私の目の前の監視員を撃ったらしい。
出口もわからないのにどうやって逃げるか、と言う単純なことすら考えられないくらいに追い詰められていた様だ。
その直後に
ドンッ
と先の拳銃とは違う発砲音がした。
監視員の持つ銃は威力が高く、防弾チョッキなど着ていても貫いてしまいそうな音だった。
すると、先ほどまで錯乱し騒いでいた男性は静かに床に倒れた。
その男を引き摺り回収するのは先程撃たれた監視員である。拳銃程度は通さない様な防具をしているようだ。
当たり一面が嫌な静けさに包まれる。
私を含む皆は気づいた。ゲームに勝つ以外で出る方法はないのだと。
「少々ハプニングがありましたが、皆様は銃を受け取られた様ですね。それでは一回目引き金を引いてください。」
黒マントがそう言うとモニターに5:00という文字が浮かぶ。その矢先に表示が少なくなっていく。5分のカウントダウンが始まったようだ。
「タイマーが0になる前に引き金を引けなかった場合も例外なく殺害させていただきます。」
どうやら引き金を引くしかないらしい。
私は震えながら銃口をこめかみに当てる。
撃たなければ。考えとは裏腹に引き金を引くことができない。
「残り10秒です。」
その声に驚き私は引き金を引いた。
カチャンッ
空砲の音。私は腰を抜かし地面にへたり込んだ。
「0です。引き金を引けなかった者を処分した後、生存者の集計をいたします。」
引き金を引けなかった者が各々についた監視員に連れて行かれる。
「残りは130名ですか。撃てなかった者も居ましたので妥当ですね。」
黒マントがそう言う。
その後、監視員は私の銃をシャッフルした。
「次のゲームです。」
すると息をつく間も無くタイマーが5分を表示する。
もうやるしかない。覚悟を決め私はすぐにこめかみに銃口を当て引き金を引いた。
一度行えたからか、生存できたからかスムーズに引くことができた。
カチャンッ
またしても空砲の音だ。私は生きている。
タイマーは残り3分30秒を指している。
まだ引き金を引けていない者もいる様だ。
カチャンッ
バンッ バンッ
カチャンッ
空砲の音と発泡の音が混ざる。
「残り10秒。」
カチャンッ
バンッ
カチャンッ
「残り時間0です。引き金をひかなかった方はいない様ですね。生存者の集計を行います。」
と言うとその間にまた監視員が私の銃をシャッフルする。
「集計結果、80名生存。1/2で当たるロシアンルーレットなのですから65名ほどになっていてもおかしくないのですが、やはり皆様は“幸運”な様ですね。」
「それでは次のゲームです。」
そう言うと三回目のタイマーが起動した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何回行ったかも極度の緊張で曖昧になってきた。朦朧とした意識の中で
「生存者は残り2人です。片方が当たりを引いた時点で終了となります。共倒れだけはやめてほしいものです。」
と聞こえた。
主催者らしき黒マントはそう言うと
「サドンデス。スタートです。」
といいタイマーをつける。
擦り切れた精神や、半ば自暴自棄になったこともあり受け取った銃をすぐにこめかみにつけ引き金を引く。
カチャンッ
隣でも
カチャンッ
と共に空砲が響く。
どうやら2人とも空砲だったらしい。
私は銃を監視員に渡して、次のシャッフルを待つ。
すると隣から
「なぁ……最後の1人なら出られるんだよな…??じゃあ俺はこいつを殺せば出られるよなぁ!!!!」
と言う声が聞こえる。
ふと振り向くと私に銃を向ける男の姿があった。
あぁ、私はここで死ぬのか。
ロシアンルーレットで死ぬよりはいいかもしれないな。とふらついた精神の中で考える。
そう思い目を瞑ると
カチャンッ
と空砲の音がした。
それと同時に監視員が隣の男を取り押さえた。
「他参加者に危害を加えることは禁止です。その男を処分してください。」
と黒マントの声が聞こえる。
「最後の1人になりました。ゲーム終了です。」
あっけなく終わってしまい気持ちの整理がつかない。
すると、奥の扉から主催者らしき黒マントの男が現れた。
「おめでとうございます。最後に隣の男の銃が空砲だったことも、ロシアンルーレットでここまで生き残ったこともあなたは最高に運がいい。」
そうしてマスクを外す黒マントはよく見たことのある顔をしている。
総理大臣だ。
「運は素質。私は、生まれながらに運の良い遺伝子を持つものを300人集めて一番運の才能がある者を側近にするつもりなのです。
各国との交渉でも運が有れば有利な条約を結べるやもしれませんしね。仮に生き残った貴方が使えなくても“運”の研究材料になりますし。」
「そうだ、最後にあなたの強運。
生まれながらの才能を直接見せてください。」
総理大臣はそう言うと矢継ぎ早に
「ほら、監視員。あなた最初に違反者に発砲した銃があるでしょう。その銃なら弾の数は5/6だ。渡して差し上げなさい。これで生き残れたなら本物でしょう。」
監視員はコクリと頷くと私に先ほどまでとは違う銃を渡した。
度重なる緊張と緩和。拘束によりとうに私の精神は壊れていた。
渡された銃をこめかみに当てすぐさま引き金を引く。
カチャンッ
空砲だ。
1/6の生存を引き当てたのだ。
すると総理大臣は
「……ぉ、おおっ!!!何という運!!!彼さえいれば私の時代が!!アメリカを超えることも夢ではない……!!強き日本を取り戻すことが……っ……。
そうだ!!貴様に褒美をやろう!!なんでも良いぞ!!だから私の元で……」
ドンッ
ドンッ
ドンッ
三発の発砲音。
「なんでも。
なら死んでください総理………。」
私は総理大臣に向けて3回引き金を引く。
「ごふっ……。な、なぜ。防具は身に付けているはず……っ…。」
刺すというよりも鈍く熱い痛みに総理大臣はパニックになっていた。
「運は才能。本当にそうなのかも知れませんね。最初に監視員さんが違反者に発砲しなければ防具を貫くこの銃はきっと私の手には渡らなかった。
貴方は300人から私という弾を引き当てるほどに運が悪かった。このロシアンルーレットは僕の勝ちです…。」
ドンッ
総理大臣の額を銃弾が貫く。
「あと一発…。」
精神疲労で擦り切れそうな意識の中、
弾が一発だけ残った弾倉をあえてシャッフルし、ガチャリと元に戻す。
私は銃口をこめかみに当て引き金を引いた。
ドンッ
1/6の死を引きあてる。
命を運ぶと書いて運命と読む。
命が運ばれる先が生か死かは誰にもわからない。
不運もまた、“運” であった。
完
「運は素質である。」と。
TVで総理大臣は会見にて
「生まれながらに運動の才がある子、ない子。勉学の才がある子、ない子。
同じ様に生まれながらにして運がある子、ない子が存在している、と言う研究結果が報告されました。
私を含め各国のトップや、上に立つ者たちは須く運の素質を持ったものであります。
この結果を武器に日本を取り戻していきたい所存であります。」
そう発言した。
私はそのTVを見ながら、
運の良し悪しさえも科学的に証明されてしまうのでは神頼みなんて意味ないな。
神社とか商売上がったりだな。
等と考えていた。
「さて、明日も早いし今日はもう寝るか。」
私はそう呟くと居間にいる両親におやすみと言い、自室で眠りについた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぁぁ…。」
起床する。少々寝覚めが悪い、と同時に何か違和感を感じる。
「……ん?」
ガチャリ。ガチャリ。弾倉に弾を込める音と火薬の香りがする。
ここは一体何処なのだろうか。少なくとも自室ではない。
「ここは何処なんだ…?」
日常から暗転し私は急にこの部屋に連れてこられた。周りにも同じ境遇からか、ざわつく声がする。その刹那だった。
「皆様はとあるゲームをしてもらうために集まっていただいたとても“幸運”な方々です。」
黒いマントを羽織り仮面をした、165センチほどの体格の人間がモニターに映る。
いかにもデスゲームの主催者といった見た目をしており、声はボイスチェンジャーによって変えられているため性別は不明である。
ゲームだと?いきなり何なんだ。
そう考えていると
「皆様はロシアンルーレットをご存知ですか?」
と黒マントは答える。
ロシアンルーレット。
六連のリボルバーの弾倉に一つだけ弾を込め、シャッフルし、銃口をこめかみに当て引き金を引く行為だ。
毎回弾倉を回転させる場合は毎回1/6の確率で当たりがある。逆に言うと毎回5/6の確率で生存できる様なゲーム。
命がけであることには変わりはないが、おそらくこの主催者は私達にロシアンルーレットをさせようと企んでいる様だ。
…幸運なんかとは程遠いな。
と私は思った。
「ここには総勢300名の人間を集めております。ここで皆さんにロシアンルーレットを行っていただきたく思います。ここから出られるのは生き残った一名のみとさせていただきます。」
主催者らしき黒マントはそう言うと続けて
「ただ、普通のロシアンルーレットではつまらないと思いまして、特殊なルールで行わせていただきます。」
そう言うと黒マントはルールの説明をしだした。
要約するとこうだ。
・拳銃は1人ひとつ渡される。弾倉は一度引き金を引くごとに回転させる。
・主催者側の合図で引き金を一斉に引き、これを1人になるまで繰り返す。
・弾倉には3/6で弾が込められており当たる確率は1/2である。
・1人ずつに監視員がつき、弾倉のシャッフルは監視員が毎回行うものとする。
「この様な形でのゲームとなります。それでは皆様、ご武運を…。」
黒マントがそう言うと男が1人、私の前に現れた。
防弾チョッキにフルフェイスのヘルメットをつけている。どうやら監視員のようだ。
「こちら、銃でございます。先程の説明通り弾数は3発。シャッフルは毎回私が行わせていただきます。
もうすぐゲームがスタートしますのでお待ちください。」
そういうと監視員は私にシャッフルされた銃を差し出した。
銃なんて撃つどころか触ったこともない。
ましてやそれを自分に撃つなどできるわけがない。
そう考えていると
バンッ
と鉛玉の音が響いた。
「お、お、俺はこんなことやれるわけねぇ!!!に、逃げるんだよ!!!」
どうやら錯乱した者が渡された銃で、私の目の前の監視員を撃ったらしい。
出口もわからないのにどうやって逃げるか、と言う単純なことすら考えられないくらいに追い詰められていた様だ。
その直後に
ドンッ
と先の拳銃とは違う発砲音がした。
監視員の持つ銃は威力が高く、防弾チョッキなど着ていても貫いてしまいそうな音だった。
すると、先ほどまで錯乱し騒いでいた男性は静かに床に倒れた。
その男を引き摺り回収するのは先程撃たれた監視員である。拳銃程度は通さない様な防具をしているようだ。
当たり一面が嫌な静けさに包まれる。
私を含む皆は気づいた。ゲームに勝つ以外で出る方法はないのだと。
「少々ハプニングがありましたが、皆様は銃を受け取られた様ですね。それでは一回目引き金を引いてください。」
黒マントがそう言うとモニターに5:00という文字が浮かぶ。その矢先に表示が少なくなっていく。5分のカウントダウンが始まったようだ。
「タイマーが0になる前に引き金を引けなかった場合も例外なく殺害させていただきます。」
どうやら引き金を引くしかないらしい。
私は震えながら銃口をこめかみに当てる。
撃たなければ。考えとは裏腹に引き金を引くことができない。
「残り10秒です。」
その声に驚き私は引き金を引いた。
カチャンッ
空砲の音。私は腰を抜かし地面にへたり込んだ。
「0です。引き金を引けなかった者を処分した後、生存者の集計をいたします。」
引き金を引けなかった者が各々についた監視員に連れて行かれる。
「残りは130名ですか。撃てなかった者も居ましたので妥当ですね。」
黒マントがそう言う。
その後、監視員は私の銃をシャッフルした。
「次のゲームです。」
すると息をつく間も無くタイマーが5分を表示する。
もうやるしかない。覚悟を決め私はすぐにこめかみに銃口を当て引き金を引いた。
一度行えたからか、生存できたからかスムーズに引くことができた。
カチャンッ
またしても空砲の音だ。私は生きている。
タイマーは残り3分30秒を指している。
まだ引き金を引けていない者もいる様だ。
カチャンッ
バンッ バンッ
カチャンッ
空砲の音と発泡の音が混ざる。
「残り10秒。」
カチャンッ
バンッ
カチャンッ
「残り時間0です。引き金をひかなかった方はいない様ですね。生存者の集計を行います。」
と言うとその間にまた監視員が私の銃をシャッフルする。
「集計結果、80名生存。1/2で当たるロシアンルーレットなのですから65名ほどになっていてもおかしくないのですが、やはり皆様は“幸運”な様ですね。」
「それでは次のゲームです。」
そう言うと三回目のタイマーが起動した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何回行ったかも極度の緊張で曖昧になってきた。朦朧とした意識の中で
「生存者は残り2人です。片方が当たりを引いた時点で終了となります。共倒れだけはやめてほしいものです。」
と聞こえた。
主催者らしき黒マントはそう言うと
「サドンデス。スタートです。」
といいタイマーをつける。
擦り切れた精神や、半ば自暴自棄になったこともあり受け取った銃をすぐにこめかみにつけ引き金を引く。
カチャンッ
隣でも
カチャンッ
と共に空砲が響く。
どうやら2人とも空砲だったらしい。
私は銃を監視員に渡して、次のシャッフルを待つ。
すると隣から
「なぁ……最後の1人なら出られるんだよな…??じゃあ俺はこいつを殺せば出られるよなぁ!!!!」
と言う声が聞こえる。
ふと振り向くと私に銃を向ける男の姿があった。
あぁ、私はここで死ぬのか。
ロシアンルーレットで死ぬよりはいいかもしれないな。とふらついた精神の中で考える。
そう思い目を瞑ると
カチャンッ
と空砲の音がした。
それと同時に監視員が隣の男を取り押さえた。
「他参加者に危害を加えることは禁止です。その男を処分してください。」
と黒マントの声が聞こえる。
「最後の1人になりました。ゲーム終了です。」
あっけなく終わってしまい気持ちの整理がつかない。
すると、奥の扉から主催者らしき黒マントの男が現れた。
「おめでとうございます。最後に隣の男の銃が空砲だったことも、ロシアンルーレットでここまで生き残ったこともあなたは最高に運がいい。」
そうしてマスクを外す黒マントはよく見たことのある顔をしている。
総理大臣だ。
「運は素質。私は、生まれながらに運の良い遺伝子を持つものを300人集めて一番運の才能がある者を側近にするつもりなのです。
各国との交渉でも運が有れば有利な条約を結べるやもしれませんしね。仮に生き残った貴方が使えなくても“運”の研究材料になりますし。」
「そうだ、最後にあなたの強運。
生まれながらの才能を直接見せてください。」
総理大臣はそう言うと矢継ぎ早に
「ほら、監視員。あなた最初に違反者に発砲した銃があるでしょう。その銃なら弾の数は5/6だ。渡して差し上げなさい。これで生き残れたなら本物でしょう。」
監視員はコクリと頷くと私に先ほどまでとは違う銃を渡した。
度重なる緊張と緩和。拘束によりとうに私の精神は壊れていた。
渡された銃をこめかみに当てすぐさま引き金を引く。
カチャンッ
空砲だ。
1/6の生存を引き当てたのだ。
すると総理大臣は
「……ぉ、おおっ!!!何という運!!!彼さえいれば私の時代が!!アメリカを超えることも夢ではない……!!強き日本を取り戻すことが……っ……。
そうだ!!貴様に褒美をやろう!!なんでも良いぞ!!だから私の元で……」
ドンッ
ドンッ
ドンッ
三発の発砲音。
「なんでも。
なら死んでください総理………。」
私は総理大臣に向けて3回引き金を引く。
「ごふっ……。な、なぜ。防具は身に付けているはず……っ…。」
刺すというよりも鈍く熱い痛みに総理大臣はパニックになっていた。
「運は才能。本当にそうなのかも知れませんね。最初に監視員さんが違反者に発砲しなければ防具を貫くこの銃はきっと私の手には渡らなかった。
貴方は300人から私という弾を引き当てるほどに運が悪かった。このロシアンルーレットは僕の勝ちです…。」
ドンッ
総理大臣の額を銃弾が貫く。
「あと一発…。」
精神疲労で擦り切れそうな意識の中、
弾が一発だけ残った弾倉をあえてシャッフルし、ガチャリと元に戻す。
私は銃口をこめかみに当て引き金を引いた。
ドンッ
1/6の死を引きあてる。
命を運ぶと書いて運命と読む。
命が運ばれる先が生か死かは誰にもわからない。
不運もまた、“運” であった。
完
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる