綺麗な感情~復讐者ミカ~

maikeru

文字の大きさ
1 / 1

"ある日"の惨劇

しおりを挟む
「早く帰らなきゃ...!」
小学5年生になりたての少女、千石美伽せんごくみかは急いでいた。いつもの帰路がとても長く感じる。
道を間違えたのかと心配になるほどだ。そうなるのも仕方がない。なぜなら今日は私の誕生日。
家ではお父さん、お母さん、妹の美結みゆ達3人がパーティーの準備をしているはずだ。
毎年違う飾り付けをしてくれるので玄関を開けたら何が目に飛び込んで来るのかとても楽しみだ。
去年は私の好きなくまのぬいぐるみが部屋の横一線に並んでたっけなぁ...
去年の出来事が鮮明に浮かんでくる。
 今年の誕生日プレゼントは何かしら..?
どれを貰っても嬉しいがつい考えてしまう。
欲しかったウサギのぬいぐるみだろうか。それともコアラの人形だろうか。
 そんなことを考えているともう家の門が目の前にあった。
まず大きく深呼吸をして落ち着く。ゆっくりと開ける。
そのまま思いっきり走り出しそうな気持ちを抑え、忍び足でドアの目前まで移動する。
今年は驚かされるだけで終わるつもりはない。こちらからも驚かせるつもりだ。そのため、学校帰りにいつもは友達と話して帰るが、今日はすぐ家路についた。あまりの緊張感に自然に口元が綻んでしまうが口をすぼめて我慢。
ここでばれたらおしまいだ。ドアのすりガラスを確認する。
誰の影もないことを確認。その後家の門同様ゆっくりとドアを開ける。
靴のマジックテープの音に注意しながら素早く靴を脱ぎ、フローリングへ小ジャンプ。着地、と思いきや敷いてあった玄関マットに足をとられよろける。
危ない! 体を捻り立て直そうとしたが抵抗虚しく、尻餅をつく。
なかなかの音がしたが、静かだ。気付いていないのだろう。今度は転ばないようにゆっくりと立ち上がり進行方向を向く。
1メートル前の角を曲がればすぐリビングだ。もう一度大きな深呼吸をしてダッシュの体勢をとる。
3、2、1、スタート!
大きな一歩を踏み出し、急カーブ。更に大きな一歩。
「たっっだいまー!!!!!」
リビングに入った瞬間、大きな声で叫ぶ。そして家族の驚いた顔と豪華な装飾が目の前に広がる───筈だったのだが、網膜に映し出されたのはだった。
シャボン玉が弾けたような赤い飛沫。倒れたテーブル、椅子。そして、倒れた人。
  ヒト?????????????
状況はよく理解出来ないが倒れているのが誰かは一瞬で分かった。
お母さんだ。間違いない。長い黒髪、細い指、やせ型の体。その体には大きな傷口。
絶えずに血が溢れ出ている。次に左を見ると壁にもたれかかっている人。お父さんだろう。首筋に、斜めの深い傷口。怖くなり、一番近いお母さんに近付こうとすると一人足りない事に気付いた。
美結がいない。
可能性があるとしたらリビングの奥の和室だ。和室は去年まで私と美結の机があった。
が、私の部屋が二階に出来て机を移動したため今は美結の部屋になっている。部屋には大きな窓ガラスがあり、よく美結と一緒に結露したガラスに絵を描いて遊んでだっけ。
懐かしくなり美結との思い出が溢れでて来そうになるが、ふと我に帰る。
そして、テーブルの横を通り、和室につながる襖をそっと開ける。
そこには仰向けに倒れた血まみれの美結と、馬乗りになり果物ナイフを大きく振りかぶっている男がいた。
眉毛まである前髪、赤く染まった洋服。あまりの驚きに見ていることしか出来ない。
男は動作をピクッと止め、大きな目でこちらを向いた。そしてそのまま狂気に満ちた笑みを浮かべた。
   
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

その後、視界は黒く染まった。









♪か~ごめかごめ か~ごのな~かのと~り~は~ い~つ~い~つ~で~や~る~ よ~あ~け~のば~ん~に~ つ~る~つ~る~つっぺ~つ~た~
な~べのな~べのそ~こぬけ~ うしろのしょうめんだ~れ?
歌声が聴こえる。懐かしい歌だ。
その歌は繰り返し歌われている。
何をしてたんだっけ。
そうだ、帰ったら家族が殺されてて.....ナイフ持った人がいて....   
そうか、私は殺されてしまったのか。でも、ここは多分美結の部屋だ。美結の机が見える。そして私は部屋の真ん中で"何か"に座っている。
なんで死んでるのにこんなところに居るんだろう。横を見てみると窓から夕陽が差し込んでいるのが見えた。つい見とれてしまう。また、美結との思い出が頭に浮かんでくる。
 何分経っただろう。気づくと、もう陽は沈んでいた。辺りは真っ暗だ。
歌も聞こえなくなっている。
外は雲っていて星が見えず、ぼーっとしていると突然雨と雷の音が遠くで聞こえてきた。
 あの世はまたずいぶんリアルだなぁ...と、感じていると
ピカッ!と雷の光が射し込む。明るくなる室内。
そして、見つめていた窓に室内の様子が映し出される。
映ったのは"何か"に座っている私。
しかし、座っていた"何か"は椅子ではなかった。
 人だった。
私は驚き、バランスを崩して転がり落ちた。
その拍子に部屋の電気スイッチを押してしまった。
室内がまた明るくなり部屋全体がわかるようになる。
そして座っていたものもはっきりと分かるようになる。
恐る恐る見ると、三人の人だった。
下からお父さん、お母さん、そして、男。
あの時の男だ。何故か血まみれだ。お父さんとお母さんもだ。
そこでやっと私は生きていると気付いた。死んでいなかったのだ。
 とすると、何故男は死んでいるのだろうか。
そんな疑問はすぐに解決した。目の前には血のついた果物ナイフが落ちていたのだ。そして手元を見ると血で汚れていた。
 私が....???
恐らくそうだろう。
お父さんとお母さんはなぜここにいるのか分からないが、それ以外に何があるのだ。
立ち上がろうとすると急に頭が痛くなり、声が聞こえた。
「綺麗な心を持ちなさい。」
お母さんの声だ。その言葉はお母さんが私にずっと言い聞かせていた言葉だ。 
「どうすればいいの?」
幼い頃の私の声だ。
「お母さんを笑顔にすれば綺麗な心になるわよ。」
「ほんと!?わたし、がんばる!」
そこで声は聞こえなくなってしまった。
 もう一度自分の手元を見て気づく。
「私の綺麗な心は無くなっちゃった。」
自然に声に出てきた。そして自己暗示を掛けるように呟き続ける。
「綺麗な心を取り戻さなきゃ。」
「綺麗な感情を取り戻さなきゃ。」
「その為にはお母さんを笑顔にさせなきゃ。」
しかし、どうやって笑顔にするのか。その方法が分からない。
だが、私は方法を呟いていた。
「色んな人が一緒に天国に居れば、喜ぶよね。」
その後は何も考えなかった。
私は無言で果物ナイフをポケットに入れ、家の玄関を出た。
    綺麗な感情を取り戻すために。



しかし、家に美結が居なかったことなど、その時の私の頭には無かった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...