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みんな心配性だよ
しおりを挟む「ねぇ、名前なんていうの? ちなみにオレは花屋敷コガネ」
ずっとオレを抱いててこの人の腕は大丈夫なのだろうか。相当長時間このままだよ?
王様の部屋を出てからローブを着た人も着いてこなくなって広い廊下を鎧の人がオレを抱いたまま歩いている。オレ、歩けるんだけど。逃げても元の世界に戻れないし降ろしてくれてもいいのに。
「漸く自己紹介ができます。俺はクロシュディウルです。此度、コガネ様付きの護衛に任命されました。用があってもなくても遠慮なくお申し付けください」
「くろでぃ…え…っと、くろ…」
覚えれなかったわけじゃない。聞き取れなかっただけだ!
「クロウと呼んでください」
「クロウさん? あの、腕痺れない? ずっとこのままだし。もうそろそろ腕痺れてるでしょ?」
「いえ、コガネ様。さんは不必要です。そのままで呼んでください。私は貴方の手足、盾、従者です」
なんだか言葉のチョイスが重々しい。
ニコニコしてるのに実際笑ってるかって言われたら笑ってないかもしれないし。
オレも様つけて呼ばれるの違和感しかないし、要らないよって言ったのに笑って流された。この人絶対食わせ者な予感がする。
なにを言っても降ろしてもらえなくて、オレはクロウのぴょこぴょこはねてるピンクに近い髪を眺めていた。この国の人って癖毛が多いのかな。王様なんてもこもこだし。最初に見たキラキラした婚約破棄男とか泣きそうな美女とか結構クルンクルンだった気がする。うっすらとしか覚えてないけど。
「あ、ちなみに年は十七なんでコガネ様の一つ下です」
「へ?」
一つ、下…だと?
この体格、この身長、この落ち着きで…。
「クロウ、オレを降ろせ!!」
年下の腕にフィットするなど、男子にあるまじき行為!
即効降ろせ!
ジタバタするオレにクロウは「活きがいいなぁ」ってまた笑う。どうしてそんな余裕があるのか。解せぬ。
暴れに暴れたけど、オレは最後までクロウに抱っこされたまま目的地に着いてしまった。
扉の前で待ち構えていた二人の兵士っぽい人たちが立派な扉を開く。
「うわぁ…」
この声は感嘆のうわぁじゃない。ドン引きのうわぁだ。
何十畳あるんだって部屋に御伽噺のような天蓋つきのベッド、それに煌びやかなソファとテーブルのセット。寝室だろうこの部屋の左と右に扉が一つずつ付いている。なんだろう。
そして気付く。入り口のとこに漫画とかでみるメイドさんの格好をしている人が六人いる。シックなメイドの格好をした人たちは軽いお辞儀をしたままで微動だにしない。
クロウにあの人たちは? って聞いたらオレのお世話をする侍女さんなんだって。
オレのお世話ってなにするの? あっちじゃあ料理の出来ないねーちゃんにご飯を作ってたくらいだよ。アラームがあれば朝だって起きれるし、褒められればそれなりに自分で出来ちゃう。
小首を傾げてクロウに尋ねれば、不思議なことだとばかりに「身支度に風呂のお手伝い、それに寝るまでコガネ様の傍に仕えるのが侍女です」なんて言われた。
ふ、風呂ってなんだよ。
「オレ、大人だからな! 風呂なんて一人で入れる!!」
バカにすんな! バカだけど!!
「しかし、コガネ様。なにかあっては我々も心配です」
「風呂でなにか心配することでもあんの?」
「溺れてしまったりすることですかね」
ねーよ!
侵入者でも居て、オレの命が狙われるってんなら心配だと言えるけど、オレ、十八歳だぞ?! 溺れる要素がない!
今までだって一人で風呂に入っているけど溺れたなんてことない。
「ですが…」
クロウと後ろにいる侍女さんはとっても心配そうな顔をしている。
侍女さんたちもオレより大きい。オレが子供にみえちゃうんだろうけど、さすがに風呂で溺れるなんてないよ。
でもクロウはまだ納得できないみたいでオレが風呂に入っている間扉の前にはいるからなにかあったら呼んでくださいって言ってきた。
外は夕焼け小焼け色でさっさと風呂にはいってゆっくりしたいなって思ってたから風呂の準備が整ったと伝えてきた侍女さんにお礼を言って服をポンポン脱いでいく。風呂場はプチ温泉かな? ってくらい大きかった。部屋の扉を開けて更に扉を開くと風呂場に出ると。風呂場のふちが広いからそこで服を脱ぐのが通例らしい。ふつうだったらそこに侍女さんが控えるらしいけど、女の人に身体を見られるなんてムリだよ。
旅行に行く為に家を出て、それからこの異世界にやってきて短時間だった筈なのに十時間くらい経過していたらしい。精神的疲労はあるけど、肉体的疲労は少ない。ほぼ歩いてないし。抱っこされてたくらいだもの。
オレ、ゆったり風呂に入っていてもいいのか。聖なる泉ってのをさっさと浄化しないといけないんじゃないかな。
ああ、でも風呂気持ちいい。
クロウ、本当に扉の前にいるのかな。
ハラリと、目の前にピンク色の花びらが散った。
なんだろう。
それにしても、今日は突然すぎてビックリした。賢いって褒められてうれしかたっな。
またハラリと今度は多めに花びらが落ちてきた。いろんな色の花びらだ。
お腹減ったかもしれない。この世界でなにが主食なんだろう。肉食べたいな。
ちらりちらり、ハラハラリと花びらが落ちてくるけど考えごとをしていたオレは途中から気付くこともなくあれやこれやと思考を散らかしていた。
そして気付いた時には遅かった。
「!!」
浴槽一杯が花びらまみれ。バラ風呂かと問いたくなるほど、否、オレが花びらで溺れそうになっている。
風呂から出たいのに花びらが邪魔でにっちもさっちもいかない。なんだこの花びら。いつのまにこんなになってたんだ?!
風呂はポカポカオレの身体を温めてくれるんだけど、そろそろ上がりたい。でも花びらが邪魔というか重たい。
あわあわと風呂場で焦って、思わずクロウの名前を呼んでしまった。
そしたらちゃんと声が聞こえたみたいですぐにクロウがきてくれて、花びらまみれのオレに呆気にとられたのは一瞬ですぐに助けてくれた。浴槽に浸かったクロウの足は濡れてしまった。
「これは想定外でしたが、お願いですから俺だけでも湯浴みへ連れて行ってください」
なんてお願いされてしまった。
いや、オレもね、まさか花で埋もれてあやうく逆上せるなんて思わなかったんだよ。
でもなんであんな花びらが積もったんだろう。
侍女さんたちは花びらを回収しているらしい。そうだよね、あのままだったらお湯も抜けないし、抜いても花で詰まっちゃうもんね。
ふかふかタオルで拭かれているオレを少し離れたところから眺めていたクロウは「目が離せないですね」なんて朗らかに笑っていたけど、風呂もまともに入れない年上として認識されたに違いない。
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