木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

閑話 辺境伯子息は一匹狼と出会う

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 ※フェビル視点です。



 ――俺とグレアが出会ったのは、奴が第二騎士団に入団し、俺のいた部隊に配属された時だった。

 新人教育を終えたそいつは、『一匹狼』というあだ名が付けられるほど誰とも群れず、そのくせ訓練の時には無鉄砲な戦い方で周囲に迷惑をかけ、教官役の騎士や同期たちと何かと揉め事を起こしていた。

 所謂、問題児だった奴に、周囲の奴らから距離を置かれるのも必然だった。


「よお、お前大丈夫か?」


 入隊して初めての実戦を終え、新人達が疲弊した顔でへばっている中、1人木陰で涼しい顔をして得物の手入れをしていた奴に俺は偶然声をかけた。


「見ての通り、大丈夫ですが」


 淡々と答えている奴を見て、俺はなぜか『面白い奴だな』と思い、ニヤリと笑うと奴の隣に座った。


「そうか! 新人でそんな口が利けるなんざ、お前はいずれ優秀な騎士になるんだろうな!」
「……そうですか。それは良かったです」


 バシバシと肩を叩かれているにも関わらず、眉1つ動かさず得物を手入する奴を益々気に入った俺は、その後、何かと奴を気にかけるようになった。

 他の奴らを揉めていたら仲裁に入ったり、一緒に飯を食ったりもしたし、鍛錬に付き合ってやった時もあった。

 そうしているうちに、涼しい顔をして他人と関わることを拒絶していた奴が、少しずつ俺と話すようになった。

 自分がかつて治癒師を目指していたこと。そして、第二騎士団に入団する前にスタンピードで家族が殺され、騎士を目指すようになったことを。

 死に急ぐような戦い方をしていたのも、そういう悲しい過去が原因だった。

 それを知った俺は、奴を立派な騎士にしようと益々気にかけるようになった。

 無茶な戦い方をすれば咎め、周囲との連携の大切さを滾々と諭した。

 すると、奴の中に騎士道精神が目覚めたのか、周囲の奴らとの関係を少しずつであるが修復していき、新人の頃のような無茶な戦い方をしなくなった。

 無鉄砲で死に急ぐような戦い方をする奴はいつの間にかいなくなり、騎士達から頼られる冷静沈着で理知的な騎士に生まれ変わったのだ。

 その頃には、俺は第二騎士団の団長を任せられるようになった。


「団長、またここの書類に不備がありましたよ」
「ガハハハッ、すまんな」
「全く……それと先日の作戦、あまりにも無茶が過ぎます。あそこは現場の判断に任せ、長期戦に持ち込んだ方が最小限の被害が抑えられていましたよ」
「だが、そんな悠長なことをしていたら魔物達が例の村を襲っていたかもしれないじゃねぇか」
「そうかもしれませんが……」


 得意げに笑う俺を見て呆れ顔で溜息をつくグレア。

 この光景が第二騎士団の日常風景になった矢先、あの事件が起きた。

 『サザランス公爵家』という王家の次に権力のある宰相家が、『ノルベルト・インベック』という愚か者の魔法により、国民の記憶からジルベール殿下と共に消えたのだ。

 俺を第二騎士団団長にしてくれた大恩人を誰も覚えていないという事実は、分かっていても胸に来るものはあった。

 その数日後、俺は手紙を通して近衛騎士団団長に任命された。

 その際、俺は陛下に手紙でこう伝えた。


『もし、多少なりとも俺に人事権があるのでしたら、何人か有能な騎士を近衛騎士にしたいのです。そして、近衛騎士団副団長に第二騎士団副団長グレア・ハースキーを任命して欲しいのです』


 あの人がいないこの国で、今の近衛騎士団が愚か者の手中にあることは分かっていた。

 それでも、俺は近衛騎士団団長としてグレアを……大切な腹心を傍に置きたかった。

 『一匹狼』と呼ばれた奴が今では大勢の騎士達に頼られる存在に成長したのだ。

 そんな奴に、俺は大切な騎士団を守って欲しい。

 これから行う『宰相ノルベルトの魔の手からこの国を奪還する』という壮大な無茶をするために。
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