木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

文字の大きさ
23 / 606
第1章 木こりと騎士は再会する

第23話 フェビルとグレア

しおりを挟む
「団長、突然どうされたのですか? あなたのような方が取り乱すなんて」


 メストとシトリンが下がった後、背もたれに体を預けたフェビルにグレアが不審な目を向けた。


「お前、俺のことをどんな風に思っているんだよ?」
「無茶無謀を率先して行い、細かいことは気にしない方ですよね?」
「酷い言い草だな」
「事実ですから」


 (まぁ、そのお陰で部下をほとんど失うことなく、魔物の討伐が出来たのですけどね)

 不貞腐れているフェビルに、小さく笑みを零したグレアは鎮静作用が入っている紅茶を出した。


「ですから、これを飲んでいつもの団長に戻って下さい」
「『いつもの団長』って……まぁ、ありがとう。いただく」


 豪快に紅茶を飲んだフェビルに、苦笑を漏らしたグレアは、近くにあった応接用のソファーに腰掛けると自分の分の紅茶を淹れて一息ついた。


「それにしても、『透明な色の魔力』ですか……『屋根伝いに走っている』と聞いたときは、平民には珍しい非属性の強化魔法を使える人物なのかなと思いましたが」
「あぁ、俺も最初はそう思った。だが、奴らの話を聞いた後に改めて報告書を見た時、確かに『透明な色をした魔力』と書いてあった。だから、強化魔法ではないだろう」
「そうですね。王国から認められている非属性魔法は、全て白色の魔力を放ちますから」


 空いたティーカップと報告書を持って向かいのソファーに座ったフェビルは、黙って報告書をグレアに差し出した。
 それを受け取ったグレアは、目にも止まらない速さで報告書に目を通すと深く溜息をついた。


「『屋根が壊れない程度に魔力を放って走っていた』ということは、魔力で自分の足を吹き飛ばすようなこともしなかったというわけですね?」
「そうだな。魔力の加減を間違えると自身の体すら吹き飛ばすから、それだけ魔力のコントロールがされていたということだろう」
「それに、レイピアに魔力を纏わせて魔法を打ち消す……その平民は一体、何者なのでしょう?」
「…………さぁな」


 応接用のローテーブルにあるティーポットで紅茶のお代わりをしたフェビルは、暗い表情で俯くと持っていたティーカップを置く。
 すると、報告書と脇に置いたグレアが真面目な顔で問い質す。


「団長、本当は平民のことを知っているのですよね?」
「だから、それは俺の勘違いで……」
「フェビル団長」


 顔を上げたフェビルに、グレアは眉を顰める。


「私は、あなたの無茶無謀に呆れながらも、部下を死なせず確実に魔物を仕留められるよう冷静に戦況を見極める力と、人を見る目があるあなたのカリスマ性を信じ、腹心として動いてきました」
「グレア……」
「私だけではない。あなたを慕い、あなたを信じ、あなたに命を預けた部下もたくさんいます」
「…………」


『グレア、俺と一緒に王都に来てくれないか?』
『構いませんよ。どうせ、あなたの無茶無謀に応えられる腹心は私しかいないのですから』


 フェビルが王国騎士団長兼近衛騎士団長を拝命する直前、フェビルの誘いにグレアは苦笑しながら引き受けた。
 そんな彼は、目の前で辛そうにしているフェビルを見てられなかった。


「無理に話してくれとは言いません。ですがいつも豪快に笑うあなたがそんな顔をしていては、部下達が心配してしまいます。ですからどうか、知っていることがあれば話してくれませんか?」
「そう、だな」


 (本当は話すべきなのだろう。だが……)

 深く溜息をついたフェビルは、心配そうな顔でこちらを見ているグレアに目を向けた。


「すまん、今は『俺の勘違い』ということで忘れて欲しい」
「……かしこまりました。それが、団長のご決断だというのならば」


 (すまんな、グレア。だが、腹心であるお前を……俺を信じてついてきてくれる部下達を守りたいんだ)

 悔しそうに下唇を噛むグレアに、フェビルは組んだ両手に力を入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!

六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。 家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能! 「ここなら、自由に生きられるかもしれない」 活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。 「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~

ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。 騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。 母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。 そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。 望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。 ※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。 ※表紙画像はAIで作成したものです

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

処理中です...