木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第2章 木こりと騎士は鍛錬する

第103話 メストの初仕事

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 森に入ったメストは、カミルの指示に従って、切り出して加工した木材を次々と倉庫に入れていく。
 そうして、森に入って約一時間。メストは本日最後の木材をカミルから受け取る。


「これで最後です」
「あいよ……っと! これで終わりだな」
「はい、お疲れ様でした」


 カミルが切り出した木材を倉庫まで運び終えたメストは、倉庫の中に置いてある樽に腰かけると額についた汗を袖で乱暴に拭う。

 (この量の木材を毎日たった1人で切って倉庫に運んでいるのか……スゴイな、カミルは)
 
 カミルの毎日の仕事量に感心するメスト。
 すると、魔石を外した斧を元の場所に戻したカミルは、魔石を入れたポケットとは反対側のポケットからハンドタオルを出すとそっとメストに差し出す。


「よろしければ、こちらを使ってください」
「あぁ、ありがとう」


 (このハンドタオル、いい匂いがするな。俺、この匂い好きかもしれない)

 カミルから受け取ったハンドタオルの匂いに、気を良くしたメストはそのハンドタオルで額や髪についた汗を拭き取る。
 そんな彼を一瞥したカミルは、運び終えたばかりの木材に目をやる。


「それにしても、あなた様の無駄の無い動きのお陰で、思ったよりも早く切り出しの仕事が終わりました。さすが、騎士様といったところでしょうか」
「いや、カミルの指示が適切だったから動けた。とは言っても俺は、カミルが切り出して加工した木材を倉庫に運んだだけだけどな」
「っ!?」


 (そんな眩しい笑顔、目に毒だわ!)

 労働終わりの清々しい笑顔を浮かべるメストに、僅かに頬を赤らめたカミルはそっと視線を逸らす。


「それよりも、木こりの仕事は良い鍛錬になりましたか?」
「あぁ、もちろんだ! 普段使わない筋肉が鍛えられて、とても良い鍛錬になった!」
「そ、そうですか……ならば、あなた様はもう少しだけここで休まれてから戻ってきてください。私は、先に戻って昼食を作ってきます」
「あ、それなら……」
「何ですか?」


 そそくさと倉庫の入口に歩いて行ったカミルが立ち止まって振り返ると、申し訳なさそうな顔をしたメストが頬を掻く。


「また、風呂を借りてもいいか? 思ったより汗を掻いて……」


 (あぁ、そう言うことね)


「それでしたら、私も汗を掻きましたので、昼食を作る前に沸かします」
「そ、そうか……あっ」
「今度は何ですか?」


 呆れたように小さく溜息をついたカミルを、メストは何かを期待するような目で見つめる。


「ステインに俺からご飯をあげてもいいか?」
「はい?」


 (突然、どうしたのかしら?)

 一瞬だけ怪訝な表情を見せたカミルに、メストは優しく微笑んだ。


「ご飯作ってくれたり、風呂を用意してくれたり……昨日の夜からカミルには、色々と世話になっている。だから、その恩義に報いるようなことをしたいなと思って」
「そういうことでしたら、私の仕事を手伝ってくれていただいただけで十分ですし、『恩義』と呼べるようなことは、そこまで……」
「いや」


 きっぱりと言い切ったメストは、樽から立ち上がると真剣な表情でカミルと向き合う。


「俺にとって、返すには十分だと思える恩義だ」
「っ!?」


 鍛錬の時以上の真剣な眼差しを向けてくるメストに、一瞬だけ目を見開いたカミルは小さく肩を竦めると頷いた。


「分かりました。お風呂を準備する前にステインの昼食を準備します。その間、ステインのお世話をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「分かった! 馬の世話は、仕事を一環で毎日やっているから任せて欲しい!」


 自信に満ちた笑みのメストに、小さく笑みを零したカミルは、メストに愛馬の世話を任せると我が家へ戻った。

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