木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第2章 木こりと騎士は鍛錬する

第107話 嘘と本音

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「すまない、まさかそこまで嫌だったとは思わなかった」


 カミルから妙案を強く拒絶され、落ち込んだメストは申し訳ない表情をしながら顔を俯かせる。
 そんな彼を横目で見たカミルは、少しだけ顔を歪ませるとそっと視線を前に戻す。


「いえ、お貴族様であるあなた様からそのような素晴らしい提案されるとは思いも寄らず……正直、身に余るものだと分かっています」
「いや、カミルは使用人として働くには十分すぎるくらい素養がある」
「そう、なのですね」


 顔を上げたメストから真剣な眼差しを向けられ、カミルは少しだけ目を伏せる。

 (本来なら、平民の身で貴族の屋敷で働けることは大変光栄なことである。なにせ、毎日の稼ぎで不安にならなくて良いのだから。そう、本来なら)


「ただ、色々あってあの場所を離れることが出来ないのです」


 (そう、私には家族との約束であの場所を離れることが出来ない。私のせいで、関係無い誰かを巻き込むわけにはいかないから)

 少しだけ悲しい表情をしているカミルの横顔を盗み見て、メストは先程村で繰り広げられていたカミルと村長の会話を思い出す。


「もしかして、カミルが村長に言っていた『あの方』に関係しているのか?」
「っ!?」


 僅かに顔を強張らせたカミルに、大きく目を見開いたメストが慌てて頭を下げる。


「す、すまん! カミルと村長の会話を盗み聞きするつもりは無かったんだ! たまたま耳に入ってきて、村長に俺のことをそう言ったら納得してくれたからもしかしてと思って……」


 肩を落としながら深々と頭を下げるメストに、小さく溜息をついたカミルが口を開く。


「あれは……」


『お嬢様、私は……』


「関係ありません」
「そうなのか?」


 恐る恐る顔を上げたメストを横目で見て、一瞬だけ複雑そうな顔をしたカミルが無表情に戻すと小さく頷く。

 (そう、あれは関係無いと言ってしまえばいい。そうすれば、あなたも私も彼も守れる)


「えぇ、そもそもあの話は、あなた様を守るためのです。それに、『あの方』って言ってしまえば、あの人達は簡単に信じてしまうんです」
「そ、そうか」


 (それにしては、やけにだと思ったのだが)

 カミルの話を聞いても、どうも落ちないメストは難しそうな顔で首を傾げる。
 すると、今度はカミルから質問が飛んできた。

 
「そう言えば、どうしてそのような格好をされているのですか?」
「へっ?」


 (いきなりどうした? それに、『そのような格好』って?)

 いきなり話が変わって驚いたメストが再び目を見開くと、再び小さく溜息をついたカミルは手綱を握ったまま顔をメストがいる方に向ける。


「それですよ、ベレー帽やアイマスク。森を出る前に、『村を出たら教える』っておっしゃっていたではありませんか」
「あ、あぁ……これか」


 (見た感じ、隠蔽の効果も偽装の効果も付与されていない至って普通のベレー帽とアイマスクだけど)

 メストのことをまじまじと見ているカミルに、戸惑ったような顔をしたメストがベレー帽とアイマスクを交互に触れると小さく微笑んだ。


「これは、『カミルと同じ平民になれたら、カミルの迷惑にならないかな』と思って用意した」
「私の、ですか?」


 (どうしてそこで私が出てくるの?)

 意味が分からず首を傾げるカミルに、笑みを深くしたメスト首を縦に振る。


「あぁ、俺も王都に来てから知ったのだが……どうやら『レイピアを持った平民』って、王都に住む平民と騎士の間では有名なんだ」
「有名……」


 (確かに、ただの平民がレイピアを持って騎士と渡り合っていたら、有名になるかもしれないけど……それと、私の迷惑がどう繋がるの?)

 さらに首を傾げるカミルに対し、メストは笑みを浮かべたまま自慢げに話す。


「だから、その有名なカミルと一緒の格好をすれば、周囲に『カミルの知人か親戚』と思わせることが出来る。そうすれば、騎士であり貴族令息である俺の正体はバレず、王都でのカミルの仕事も手伝いやすくなると思って」
「つまり、本物の平民である私の盾にして偽りの平民を演じれば、自分の正体がバレない上に私の仕事も手伝えるってことですね」
「うぐっ! そ、それはそうなのだが……本当に申し訳ないと思っている」
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